恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 5日近く寝て、ロクな食事してないと体がガタガタになるので、皆さまも風邪にはお気をつけてください。


間・本田基政と友は変わり者

 

 (まさか大御所様に秘密裏の仕事と、脇差しを賜るとは。ご先祖様もお喜びであろう。)

 

 駕籠の中で脇差しを布で包み、抱くように持つ本田基政。もとい、平太郎。武士として、幕臣として直接、秘密裏の仕事を頼まれ、更には刀を賜ると言う破格の名誉に感激した平太郎であったが、

 

 (………もしや、大御所様も、何かに付けて府内に出ていることを知っていたのであろうか?)

 

 少し冷静になると、その考えにたどり着き背筋に冷えるものが流れた。しかし、すぐさま考えを放り出す平太郎。

 

 「それにしても恭太郎は青い顔をしてたな。」

 

 門で別れるとき、珍しく青い顔をしていた友を思い出して平太郎は、ふと昔を思い出した。

 

 

 

 

          〜十余年前〜

 

 「神原殿!いざ勝負!」

 

 恵土城内の稽古場で木槍を構えたオレに、青い顔をする神原の若殿。木刀を構えながら、

 

 「なんでメシを食ってたら、引きずられて稽古場にいんねん。」

 

 なんてことを言ってたが、食事を自分で作って、炊事場の面々と談笑しながら食べる。大名の子息として非常識この上ない。

 

 「上様の側近候補として、大名の跡取りとして、芸事にうつつを抜かすのは武門の家の仲間として見逃せん!その性根を叩き直してくれよう。」

 

 絵や書なら百歩譲ってともかく、楽器などでは芸者の仕事だ。武士のやるべきものではない。

 オレは一歩踏み込み、槍を突き出した。十歳を越えたばかりの幼い平太郎だが、本田家臣では武術で勝てる者は居ない。武芸指南役ですら手玉に取る腕前なのは、並の武芸者でも相手にならない事の証明でもあったろう。

 

 「なんと!?」

 

 胸を突かれて吹き飛ぶ恭太郎を想像していた平太郎だったが、ケラ首を叩き槍を防いでいた。平太郎は驚愕し、周囲や隠れて見ていた面々も驚愕する声が漏れた。

 平太郎は更に一歩踏み出し、そのまま吹き飛ばそうと力を入れるが、恭太郎は身を下げて踏みとどまる。

 

 (び、びくともせぬとは…)

 

 木刀と木槍が擦れる音と、対峙する二人が力み、口から漏れる声が稽古場に流れる。

 

 「オレ。いや、某の槍を防ぐとは……。目が曇っておりました。」

 

 「ふ、防ぐというより、防げたの方が、た、正しいな。」

 

 多少、余裕がありそうな平太郎に対して、顔を赤くして答える恭太郎。胸を突くとヤマが当たったから防ぐことが出来た。ヤマが外れていたら本当に吹き飛んでいたに違いない。

 

 「ど、どうした?こ、このままだと千日手だぞ。」

 

 「このまま力を込め続けて居ればソチラが音を上げよう。某が槍を引けば、すぐさま某は斬られよう。」

 

 多少、腕に疲れを感じ始めた平太郎とは違い、言葉の通り、恭太郎は全身から汗が吹き出して限界が近い。

 追い込むために更に力を込める平太郎。

 

 「な、情けないが、ぶ、武芸の腕では勝ち目は無さ……そう…だ。」

 

 「ならば潔く降伏したほうが良いぞ?無理に力を入れすぎると頭を痛めるぞ。」

 

 更に力を込める平太郎。木槍はしなり、恭太郎の顔は赤黒くなっていた。

 

 (勝った!)

 

 そう思った平太郎だったが、恭太郎が迫り合い、力がぶつかるケラ首が斬り落とされた。

 力のぶつかる先がなくなった平太郎はコマのように回りそうになるのを何とか踏みとどまり、恭太郎は力が抜けてその場に崩れ落ちるが、留まった。

 

 「城内の私闘は厳禁である!」

 

 二人の武器だけを切捨てた剣術指南役が一喝すると、観客は蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、恭太郎と平太郎はお叱りを受けたが、公式的には「この一戦」は無かった事と処理された。

 

 

 

 

 

 (あの後から、恭太郎とは公私共に付き合うようになった。人の付き合い始めとはわからんものだ。)

 

 未だに「公式チートかよ!畜生め!」と言う言葉は理解できないが、平太郎としては剣術と組討は五分で戦える相手は恭太郎しかいない。

 

 「たまに面白い動きをするのが楽しいな。」

 

 平太郎は楽しいかもしれないが、恭太郎の本音としては初めの頃は「1度見ただけで、覚えるとかお前なんなの?」と思っていたのは知らぬが仏だろう。

 

 「殿。先程から何を?」

 

 「ふふふ。何。恭太……いや、和泉守のことを思い出して、思わず呟いてしまっただけよ。」

 

 駕籠の外から家臣に声をかけられ、大名モードで答える平太郎。恭太郎ほどではないが、平太郎も「変わり者大名」として広まっているので家臣としては動きの一つ一つに気を使い、ビクビクしている面もある。

 家を継いで時間が経つ恭太郎のように「やり方」が広まってないのだろう。

 

 (毒を盛られてもわかるが、幸運にも恭太郎と違い、そんな悪党は今のところ居らんのは良いことだ。この脇差しを仲根(なかね)都筑(つづき)の二人に見せたら腰を抜かすかもしれんな。……だが、正直に話せんから何か手を考えんとな。)

 

 隠密まがいの仕事などと言ったら嘆くだろうな。と、考えつつ駕籠の揺られる平太郎だった。

 

 

登場シーンで一番と思う時代劇は?(今後の参考・指針に。)

  • 余の顔を見忘れたか。(暴れん坊将軍)
  • この紋所が目に入らぬか。(水戸黄門)
  • 閻魔様の御使ぇよ。(江戸の牙)
  • 天に変わって破れ奉行。(破れ奉行)
  • 地獄へ落ちな 等(必殺仕事人)
  • テメェら人間じゃねぇ!(破れ傘刀舟)
  • 手向かう者は斬れ!(鬼平犯科帳)
  • 桃から生まれた桃太郎!(桃太郎侍)
  • 白州で裁けぬ悪を斬る(鬼役)
  • この金さんの桜吹雪… (遠山の金さん)
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