恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 すいません。ヒロインと言うか女の子は次に出ると思ってましたが、書いていくとあと二話は出そうにありません。


二度あることは三度ある。

 

 「すまんかった。」

 

 痛む顔を擦りながら平太郎と稲荷屋金兵衛に頭を下げる恭太郎。手を上げて答える平太郎とアタフタする金兵衛の動きの対比に何故かホッとする。

 

 「とりあえず分かってることを教えるから、それから話そう。このままだと地図も出した意味ないからな。」

 

 和泉屋の丁稚小僧に数枚の紙を貰い、話しながら説明する恭太郎。

 

 ・赤鰐党は新撰会という組織を構成する一つ。

 ・他には白鯨党、青鯱党、黄蛸党があるが構成員の詳細はわからない。

 ・依頼人は期限を言ってないが早めの方が良い。

 ・ある程度の情報と幹部を知ってるのが赤鰐党。でも、とっ捕まえても無宿者やヤクザ崩れなので証人にならない。

 ・ついでに赤鰐党の構成員を快眠妨害の怒りに任せてぶった斬った

 

 

 「……と言ったところかな。赤鰐党のヤツラが言うには俺たちを恐れて奉行所が動かないらしいが、多分、有力武家(うえ)の方から圧力や金が回ってる。」

 

 恭太郎の説明で、青くなった金兵衛が尋ねる。

 

 「アッシ。とんでもない事に巻き込まれてやせんか?」

 

 ニコリと笑う大名二人に震えあがりながらも逃げないあたり、このキツネ男も大概変わり者だろう。

 

 「白鯨党と新撰会の親玉は有力な武家。なら、今の南北奉行が親玉とは考えられんか?」

 

 「北町の寺沢主膳正と、南町の西尾隼人正は祖父の代からの犬猿の仲。アレが演技ならアカデミー……いや、大した狸だろうが、御城の中でもやってるぞ?」

 

 「なら無いか。」

 

 「無いな。なら官位、石高、家柄がそれより高いやつか?」

 

 『頭』の中を探す平太郎。数名の旗本の名前を紙の上から書き記した。

 

 「得川大和守、石川玄蕃頭、谷久保美濃守、楊生(やぎゅう)丹波守の四人だな。」

 

 恭太郎が書き込んだ名前を見て、頭痛を覚える平太郎。

 

 「上から書院番頭、昔の小姓番頭、先の大番頭、御側衆兼取次。」

 

 「悪い噂を聞いたことがない。幕閣としては『かなりマトモで働き者』と聞くような人間だ。」

 

 頭を抱える二人に、金兵衛が恐る恐る尋ねる。

 

 「そんなに不味い相手なんですかい?」

 

 不味いも何も、表立って権力を使えば御公儀に傷がつく。さすがに『手段を選ばなくていい。』とは言われても、将軍・家基の名に傷が付けば、家基はともかく大御所・家治が激怒するだろう。

 沈黙する二人に青い顔は白くなっている金兵衛。

 

 「待て待て。まだ、ココにいる面々が悪党と決まったわけじゃない。なにせ、真っ当な幕閣。………もし、この中の誰かだったら。」

 

 「だったらなんです?」

 

 言葉に詰まる平太郎に金兵衛が訪ねたが、言葉は返ってこない。

 

 (でも、時代劇のお約束だといるんだよなぁ。こういう評判のいいヤツの中にも。そうなるとぶった斬るしかなくなるわけか。)

 

 時代劇だけじゃないけどなぁ。と、恭太郎が思わず天を仰ぎ、

 

 「まずは赤鰐党をどうにかしよう。そのついでに調べよう。」

 

 「「異議なし!」」

 

 臆病風に吹かれたわけじゃない。準備が足りないのだ。恭太郎は誰ともなく言い訳しつつ、名前を書き上げた紙を懐にしまって、二枚目の紙に次の議題の「赤鰐党」と書いたところで金兵衛が手を叩いた。

 

 「気分転換に場所を変えやせんか?なんなら、ウチの店でも行きましょう。」

 

 確かに場所を変えれば考えも切り替わるだろう。刀を腰に差すと、金兵衛の言葉に従って店を出ることにした。

 

 「源左衛門殿。少し外に出てくるぞ。」

 

 「恭太郎さん。そろそろ夜も深まります。危のうございますぞ。平太郎さんも軽々と動かれましては。」

 

 「安心せよ。明日の昼までには帰る。」

 

 「そ、そうはおっしゃいましても……」

 

 渋る源左衛門だったが、数回の問答で諦めて三人を見送った。昨日の夜には居なかった用心棒が今日はいる。問題はないだろう。

 

 

 

 

 「お、アレがアッシの店で。へっへっへ。」

 

 ゆったり歩くこと一時間。金兵衛が持つ提灯で夜目にボンヤリと見える建物を指した。

 金兵衛の店は小さいが、小料理屋というよりはこじんまりとはしているが料亭といえる立派な造りだ。

 

 「中々立派な店ではないか。」

 

 「へっへっへ。店に入ったらもっとビックリさせやすよ。」

 

 どうやら道中で金兵衛の調子も戻ったようだ。金兵衛が小走りで店に向かい、十歩ほど距離が開くと、目の前にスッと浪人が現れて通せんぼをする。

 

 「な、な、な、何だアンタ?!」

 

 金兵衛の問いかけに浪人は答えず刀を抜いた。叫びを上げ、思わず提灯を落とした金兵衛は、数歩下がると尻もちをついた。

 

 「金兵衛!」

 

 平太郎が金兵衛に駆け付けようとするのだが、ズラズラと闇に隠れていた集団出できて平太郎の進路を塞ぐ。その面々は落とし提灯の光に照らされ、赤い羽織が見えた。赤鰐党の雑魚たちだ。

 

 「こりゃ、根津権現のお導きってか。」

 

 そして、聞き覚えのある嫌な笑い声を上げて、前方の集団と、恭太郎と平太郎を囲むように後ろに出てきた。

 

 「昨日の今日だが、ツケを払ってもらうぜ。そして今日こそ赤鰐党の恐ろしさを教えてやるぜ。」

 

 鰐手の権八。今日は鉤爪付きの手甲と、刺突十手の他に胴丸鎧をつけていた。

 

 「昨日は睡眠。今日はメシか。オマエは。いい加減にしてほしいな。赤鰐党の権八とやら。」

 

 「今日は青鯱党の先生方も連れてきたから、ただじゃすまねぇぜ。先生方に払った御礼金と、朝から集金した手間賃も合わせていただくぜ。」

 

 いや、青鯱党連れてきたなら、それだと赤鰐党の恐ろしさじゃないだろ?と、恭太郎と平太郎は内心突っ込んだ。

 

 「二度あることは三度ある。昨日は仲間を斬られて尻尾を巻いたのに何しに来たんだ?」

  

 鯉口を切る恭太郎を見て、ニヤニヤと鎧を叩きて笑う権八。

 

 「テメェのなまくらじゃ、この鎧は切れねぇ!その面をグチャグチャしてやるぜ。まずはその町人からだ。誰だか知らねぇが、一緒に居たのを恨みな!先生!お願いします。」

 

 十手を構える権八は、金兵衛の前で抜刀している浪人に頼んだ。腰が抜けたのか動けない金兵衛は無惨に斬られ死ぬ。

 

 「せ、先生?どうしたんです?」

 

 ……事はなく、浪人は彫像が倒れるように崩れ、絶命した。

 

 「平太郎。いい仕事だな。」

 

 「金兵衛。そこから離れろ。余裕があったら死体(ソイツ)の頭から手裏剣回収してくれ。」

 

 へ?と、へっぴり腰で薄明かりで見える死んだ浪人の眉間には棒手裏剣が深々と突き刺さっていた。

 

 「む、無理ですよ。旦那ぁ!」

 

 「じゃ、さっさと逃げな。」

 

 平太郎の言葉に四つん這いになりながらも自分の店に向かって逃げ出した。

 

 「て、て、てめぇ!侍なのに不意討ちなんて卑怯だろうが!」

 

 「お前が言うな。ホントに一度目といい、二度目といいロクな事がないな。オマエと関わると。」

 

 長柄の刀を抜きながら溜息を吐いた恭太郎。

 

 「だが、侍を連れてきてありがとうよ。お前と一緒に泥を吐いてもらおうかね。」

 

 だが、刀を構えてお礼を権八に述べる恭太郎。

 

 「な、何強がりを言ってんだ!コッチには先生がまだ四人いるんだぜ!」

 

 強がるようにニヤリと笑う権八だったが、恭太郎にしろ、平太郎にしろ危機を覚えているように見えない。それどころか。

 

 「恭太郎。斬って捨ててもいいんだろ。」

 

 「この赤鰐党の親玉以外は首だけでもいいぞ。」

 

 闇で顔が見えないが権八には笑っているように感じた。二人の顔を見ることが出来たなら、その笑みは獲物を前にした獣のように見えただろう。

 

 (泥を吐かせると言っているのに首だけ?)

 

 恐怖のようなものを感じとったのか。権八は慌てて命令を下した。

 

 「行け!行ってくれ!せ、先生たちも、野郎共も一斉にかかれば、どうって事はねぇ!!」

 

 「昨日もそれで駄目だったろうに。今日は二人だぞ?そうだな。こういう時にはこう言うべきかな。」

 

 恭太郎は刀を構えたまま咳払いをして、

 

 「今宵の虎徹。いや、国貞は血に飢えておる。」

 

 日暮れまでに思考が詰まって暴走して、平太郎に叩き直された姿は微塵もなかった。

 

 

 

 

 

 




 感想、誤字脱字修正ありがとうございます。

登場シーンで一番と思う時代劇は?(今後の参考・指針に。)

  • 余の顔を見忘れたか。(暴れん坊将軍)
  • この紋所が目に入らぬか。(水戸黄門)
  • 閻魔様の御使ぇよ。(江戸の牙)
  • 天に変わって破れ奉行。(破れ奉行)
  • 地獄へ落ちな 等(必殺仕事人)
  • テメェら人間じゃねぇ!(破れ傘刀舟)
  • 手向かう者は斬れ!(鬼平犯科帳)
  • 桃から生まれた桃太郎!(桃太郎侍)
  • 白州で裁けぬ悪を斬る(鬼役)
  • この金さんの桜吹雪… (遠山の金さん)
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