恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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お前らも散々やったことだろうが。

 

 「し、死にさらせぇ!」

 

 がむしゃらに、短刀で突きだす赤鰐党のザコを胴払いで両断する恭太郎。血しぶきと臓物、断末魔が根津権現一帯に轟く。

 

 「おいおい。恭太郎。斬る場所を考えろ。」

 

 騒ぎになりそうな斬り方を咎める平太郎。コチラは浪人の一人を首を切断している。

 

 「赤鰐党が関わってるとなると、町方は動かん。」

 

 「いや、首を刈れ。町方は動かなくても人が来ると面倒だ。」

 

 「それはそうか。」

 

 二人共。返す刃で赤鰐党のザコの首をはねる。まるで雑草を鎌で刈り取るような、巻藁で試し切りをするように次々に首をはね続けた。

 

 「な、なんて腕前だ。」

 

 「道場剣術ではない。人を斬ってる剣だ。」

 

 「分かりきった解説どうも!」

 

 足が止まってる浪人二人を一太刀ずつ見舞って、真っ二つにした恭太郎と、ザコを屠る平太郎に震えが止まらない鰐手の権八は刺突十手を落とさないように手ぬぐいで固定するが前には出れなかった。

 

 「ひぃいいいい…っぐ!」

 

 逃げ出した赤鰐党のザコも平太郎の手裏剣であっけなくあの世に向かった。

 

 「金のかかった仕事や、このようなロクでもない場で相手をしたくない侍だ。。別の。そうでなくても真っ当にやりたい相手だが、仕方あるまい。」

 

 そう話しながら、最後に残った浪人が刀を抜いて構えた。総勢で赤鰐党のザコだけでも二十名は居たのに、残りはこの浪人と権八だけになっていた。

 

 「武州浪人・米子信次郎と申す。」

 

 最後に残った浪人は名乗りを上げ、脇構えを中段に構え直した。

 

 「その動きと構え。甲源一刀流か。」

 

 恭太郎が発した流派の名を聞いた浪人は構えは動かさず、表情だけピクリと反応した。

 

 「同門か?いや、顔には覚えはないな。何処で知った?師がこの剣を生み出して、まだ知るものも少ないと思ったものだが。」

 

 この米子なる浪人。赤鰐党のザコとは比べるまでもなく、斬り死にした他の浪人と比べて段違いの腕見える。多分、死んだ浪人たちが一斉に掛かっても負けないだろう。

 

 「チョットばかし頭の作りが違ってな。」

 

 刀を振って血油を飛ばし、中段に構え直す恭太郎だったが、権八に睨みを効かせながら平太郎が横に来た。

 

 「オレにやらせてくれ。あのゲスは逃がすなよ。」

 

 どうやらの恭太郎(コチラ)の答えを聞くつもりはないようだ。初めて戦う流派とやらに興味をもったのだろう。仕方ないと刀を下げて震える権八を睨む。

 

 

 「新陰流。本村平太郎だ。コチラに降る気はないか?」

 

 「残念だが、金をもらっている。残りの半金をもらわねば困るのでな。食い詰め武芸者には一生手に取ることのない。過ぎた金ではあるが…な!」

 

 米子浪人が振り下ろした一撃を平太郎は流し、逆袈裟に斬り上げるが当たらない。続いて米子浪人が右胴払いを見舞う。

 

 「戦国の御世から変わらぬ新陰流を学ぶとは……。」

 

 「む?これでも天下の御留流だぞ。ご浪人。」

 

 挑発のような。世間話のような言葉のやり取りを交わして斬り合う二人。米子の右胴払いを半歩下がってそれを避ける平太郎。身内びいきではなく米子浪人もそこそこの腕では有るが、平太郎の方が更に上だ。だが、米子浪人を切れない。剣を返せない。

 

 「……」

 

 「…ちぃ。」

 

 戦っている平太郎としても違和感があるの目や口を動かしたり、肩を上げ下げ。どうにかして違和感を無くそうとしてるのは分かるが、鬱憤の溜まった馬のような動きに吹き出しそうになる。

 

 浪人が、一合目、二合目、三合目(からたけ けさぎり つき)と繰り出す攻撃を軽く受けているように見えるが、どうにも平太郎はイライラし始めている用に見えた。

 

 「鬱陶しいわ!」

 

 四合(けさぎり)を受けたあと、あれだけ騒ぐなと言っていた平太郎が弾けたように吠えた。

 

 「さっきから剣を合わせるたびにパチパチ。目くらましのようなものを何度もしおって。堂々と構えて名乗ったから、小技を使うとおもってなかったわ。」

 

 「ふふふふふ。剣技は如何に人を斬るかに尽きる。その結果のためには、なんでもするのが剣客というものよ。拙者としてもこれだけ防がれるのは予想しておらんかったものよ。」

 

 先程までの澄まし顔から、目の色や顔の雰囲気が「鰐手の権八のよう」に、下衆の顔に変わる。

 

 「そっちが本性かい?」

 

 「正々堂々挑んでやれば、マトモな剣客、武士とやらは正面から受けてくれるからな。そこの若造に甲源一刀流と見破られた時はヒヤリとしたが、変わってくれてホッとしたわ。」

 

 我が剣技や術(※)に翻弄されて死ぬがよい。と、刀を構えたまましゃがみんだかと思えば、怪鳥のように叫びながら飛び上がり上空から斬りかかり戦闘が再開した。

 

 

 

 

 

 「どこのに行こうというのかね?」

 

 米子浪人と平太郎の戦いに見入ってると思ったのか。コソコソと逃げようとした鰐手の権八に刀を突きつけ、天空の城の映画の悪役のように、問いかける恭太郎。ニッコリ笑う顔は権八からはどう見えるのだろうか。

 

 「逃がすと思ったかな?今なら手がかりのお礼に無傷で捕まえてやるぞ?」

 

 「お、お礼?」

 

 二度の敗北、仲間の死、作戦の失敗。そして次々に草を刈る用に簡単に斬る侍。精神的に呑まれてしまったようで戦う気はなく、どうにかして逃げるかだけを考えているようだった。

 

 「オマエに口を割らせて、転がってる浪人の身元を洗えば大なり小なり手掛かりは手に入る。昔の事件で武士だけではなく、帯刀しているヤツは台帳に残してあるんでね。無宿者やヤクザだと上限をもらっても『当方は知らぬ。』で終わってしまうから。」

 

 精神的に呑まれている権八はもはや、巷を荒らし回る悪党の姿はない。あとひと押しすれば気絶しそうなチンピラに成り下がっていた。

 

 「オマエにはどんな手段を使っても証言だけはもらうからな。」

 

 「拷問でもする気か!?テメェら侍は人の命をなんだと思ってんだ!」

 

 喚きながらの権八の反論に思わず吹き出してしまった。

 

 「真っ当に生きてきた人間に、お前らも散々やったことだろう。」

 

 呆れ返った恭太郎は構えた国貞で一閃。胴丸を斬り落とす。足元に音を立てて落ちた鎧の残骸によって、権八は耐えれる一線を越え小便を漏らしながらその場に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 一方、米子浪人と平太郎の戦いも一方的な事になっていた。戦闘再開後の米子浪人による攻撃は上下左右の奇剣と、甲源一刀流による正道の剣。また、剣を合わせると起こる目くらましや耳鳴りで平太郎を押していたのだが、

 

 「恭太郎の方は一段落ついたようだな。コッチもだいたい分かったからソロソロいいか。」

 

 今は平太郎の押せ押せになっていた。米子浪人が上下左右に跳ねようとすれば間を外し、正道の剣で攻撃をするのなら目の眩みや耳鳴りによる違和感を無いかのように正面から返す。

 

 「き、貴様。他所見をするとは!我が術が効いておらんのか?」

 

 「目も眩むし、耳はキンキン五月蝿いが、そういうものだと割り切れば問題ないわ。」

 

 「そんなバカな!」

 

 米子浪人は愕然としたが、出来るもんは出来るのだから仕方ないと言わんばかりに「普通」に対応する平太郎の攻撃を防ぐのが精一杯。反撃の目を見つけるための一息入れる暇もない。

 

 「成仏するが良い。」

 

 左前の半身に身を変えると、脇構えから米子浪人の逆胴を薙いだ。振り切った刀身から、ピシャ。と、血しぶきが飛び散ると米子浪人の腹から出血と内臓。そして小判がこぼれて体が地面に崩れた。決着である。

 

 「感謝する。」

 

 一息吐いて懐紙で刀を拭い、鞘に納めると絶命した米子浪人に手を合わせる平太郎であった。

 

 「コレだけ騒ぎがあったのに、誰も出てこないのは助かるのだが、この惨状はどうするべきか。」

 

 周囲には赤鰐党と青鯱党の死体が二十を超える。先日、恭太郎が作った死体は二つ。和泉屋が対処したから何もなかったろうが、ココの死体は自分たちでどうにかしないといけない。

 飯を食いに出たのにとんだ騒ぎになった。今更ノリノリで戦ったことを後悔する平太郎だった。

 

 

 




 あと二話ぐらい本日中に投稿できるかな。ヒロイン登場まで持つ少しお持ちください。

登場シーンで一番と思う時代劇は?(今後の参考・指針に。)

  • 余の顔を見忘れたか。(暴れん坊将軍)
  • この紋所が目に入らぬか。(水戸黄門)
  • 閻魔様の御使ぇよ。(江戸の牙)
  • 天に変わって破れ奉行。(破れ奉行)
  • 地獄へ落ちな 等(必殺仕事人)
  • テメェら人間じゃねぇ!(破れ傘刀舟)
  • 手向かう者は斬れ!(鬼平犯科帳)
  • 桃から生まれた桃太郎!(桃太郎侍)
  • 白州で裁けぬ悪を斬る(鬼役)
  • この金さんの桜吹雪… (遠山の金さん)
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