「権八とやらが捕まった?」
四ツ谷御門近くの旗本屋敷。谷久保美濃守は書を読みながら報告を聞いた。しかし、焦ることも大きく驚くこともはない。元々金を手に入れるための駒以下の切り捨てる相手だ。
「大木屋。仕掛けは問題ないな。」
「はい。もちろんでございます。御前様の心を乱すことはありますまい。あの下郎を捕まえた者たちは今頃頭を抱えております。」
小判を数える大木屋は自信満々に答える。美濃守は満足気に頷くが少し眉をひそめた。
「それでも昨日の今日で赤鰐党やらがココまで被害を受けるとは思っておらんかったな。」
「町方でしょうか?それとも目付?まさか公儀の隠密では?」
心配している風に見えたのか黙っていた小井出がいくつかの想像を伝えるが美濃守は一笑に付した。
「目付が動けばワシの耳に必ず入る。町方は命大事な小役人。奉行ですら責任を取りたくないので目と耳を塞いでおるわ。公儀の隠密にしては動きが派手すぎる。」
「まさか町人共が雇った用心棒ですかな?赤鰐党の処理が終われば目標金額まで百両と少しになりましょうが、余計な手間をかけますな。」
大木屋も考えを伝える。香具師の元締めや、落ちぶれたヤクザの集まり、地回りや大店など赤鰐党が暴れまわって利益を失ったり、被害を受けた面々が雇ったとなれば候補が多すぎる。
「第一の候補としては和泉屋の用心棒か。浅草に赤鰐党が来ると分かれば町の顔役として対応するだろう。そうなるとやり難い。」
あそこは幕府と関わりがあるうえに、将軍・家基のお気に入り泉藩の変わり者の御用商人。獲物を別の場所にするべきだろう。
浅草に道場を持つ小井出の意見を受けた時は、まさに名案と思ったものだが、短絡に受けすぎたものだ。と、考えたが仕方ないと切り替えつつ、読んでいた書をしまう美濃守。
「小井出、大木屋。赤鰐党に関しては知らぬ存ぜぬぞ。金ずくで雇われたのなら金を積めば対応できおう。公儀の隠密ならば切って捨てるまでよ。」
大番頭に。権力ある地位に戻ればなんとでもなる。美濃守は決意を固め、大木屋と小井出は甘い汁を更に旨くするために働く気を張り直す。同情も感謝もしないが、赤鰐党が消えたことによって更にまとまる悪党たちだった。
「ぎゃああああ!!!」
本所にある赤鰐党の住処は根津権現以上の惨状が広がっていた。食い詰め浪人や悪御家人が集まった青鯱党が赤鰐党を次々に処分していく。
無宿者やヤクザくずれの集まりである赤鰐党が怖いもの知らずのヤツや、腕っぷしに自信が有るやつも居ただろう。しかし、武芸の心得がある青鯱党は小井出の道場で「使い物になる」程度まで鍛えられている。
「ま、待て!金なら奥……ぎゃああああ!」
淡々と処理する青鯱党は家探ししつつ、赤鰐党。いや、無宿者たちを奥へ奥へと追い込む。
「金は手に入れた。戻るぞ。残りはいないな。」
「床下、屋根裏まで探し、殺し尽くした。残りはない。」
無宿者を殺し尽くした確認をした青鯱党は建物を後にする。帰り際に火を着けて証拠隠滅まで行う徹底ぶりで赤鰐党は消滅した。
万が一、外に居たとしても赤鰐党がなくなったとなれば、報復に怯えるか。無宿者として取り締まられる道しかないので問題ない。親玉の小井出にいい報告が出来ると青鯱党の幹部たちは美濃守屋敷に向かった。
赤鰐党の本拠が火事になった報告は火消しに届けられたが、赤鰐党が居るのでは?と無頼者を恐れて準備と出動が遅れてしまい
、火事は火消し地で止まるまで広まり本所一帯に大きな被害を与えることになった。
恵土の町で好き放題をやっていた赤鰐党はこの火事によって消滅した。
「恵土に帰ってきて一週間経ってないのに、騒ぎが起きすぎだろう。恭太郎が居るところに騒動ありだな。」
話を聞いた平太郎はそうボヤき、
「三日もかからず、悪逆無道の赤鰐党を良く滅ぼした。が、騒ぎが大きすぎる。幸い良民に死者は居らぬが騒ぎが大きすぎる。」
沼田意次からは後々に、こういう趣旨の伝言伝えられた。赤鰐党関係に関しては否定できない恭太郎は乾いた笑いで誤魔化すのが精一杯であった。
22時ぐらいにもう一話書いて投稿します
登場シーンで一番と思う時代劇は?(今後の参考・指針に。)
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余の顔を見忘れたか。(暴れん坊将軍)
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この紋所が目に入らぬか。(水戸黄門)
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閻魔様の御使ぇよ。(江戸の牙)
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天に変わって破れ奉行。(破れ奉行)
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地獄へ落ちな 等(必殺仕事人)
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テメェら人間じゃねぇ!(破れ傘刀舟)
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手向かう者は斬れ!(鬼平犯科帳)
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桃から生まれた桃太郎!(桃太郎侍)
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白州で裁けぬ悪を斬る(鬼役)
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この金さんの桜吹雪… (遠山の金さん)