恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 ようやく名有りの女性キャラが出せました。アンケートに投票してくださった方遅くなりました。


懐が温かいと言うだけで安心感があるんだぞ。

 

 「……朝だ。」

 

 周囲が明るくなり、鶏が鳴き、農民が作業のために隠れ潜んでいた納屋の周囲から音が聞こえる。

 結局、ヤクザ者も町方の追手もなく朝を迎えることが出来た。万が一に備えて一睡もせずに周囲に気を張っていた恭太郎は、昨日の気分転換で回復した以上の疲労をくらっていた。

 

 「………死んでないよな?気絶するぐらい殴ったけど手加減してたはず。」

 

 徹夜した疲労と空腹で鈍い頭で女性(タヌキ面)に近づき、ペチペチと頬を叩く。息はしているようだが目を覚まさない。もしや、気絶ついでに爆睡してんのか?

 

 「おい。おい。そろそろ起きろ。コッチも用はないけど時間の無駄だから。起きろよぉ。」

 

 流石に寝ている女性(タヌキ面)を担いで運んでたら不審者だ。人さらいと間違えられるかもしれない。こりゃ失敗したな。

 

 (昨日の夜は屋敷に駆け込めばよかったな。)

 

 ペチペチと覗き込むように頬を叩き続ける恭太郎。彼は知らないことだが、ボコボコにされたヤクザと町方は増援を呼ぶ前にブチのめされていた。

 

 『この話が大きくなるとメンツが更に潰れてしまう。』

 

 そのために、恭太郎たちが簡単に壊滅させたが、ヤクザも町方も赤鰐党にビビっていたことが、ほぼ公然の秘密となっているのでコレ以上の恥の上塗りはしたくないのだろう。

 まぁ、簡単に言えば『なかったこと』にした。……出来てはいないが。

 

 

 

 「ぎゃああああ!!!」

 

 「へ?……ブッシャ!」

 

 絹を裂くようなとは程遠い、断末魔のような叫び声と、一歩遅れて頬に打ち込まれた拳の音が納屋に響いた。

 頬をペチペチ叩いていた恭太郎は、働きが鈍くなった頭で反応できずに直撃。納屋の壁をぶち破り、そのまま地面に叩きつけられた。

 

 「何じゃ貴様わぁ!」

 

 「待て待て待て。何もしとらんわ。……いったぁ。頼むから経緯を説明させてくれ。相変わらずどんな腕力してるんだよ。」

 

 素晴らしい拳を食らった恭太郎は痛みで目が覚めた。騒ぐ女性(タヌキ面)にまずは『自分は無罪』であることを宥めながら精一杯の言葉を使って伝えた。

 歯や骨は大丈夫だが、口の中を切ったのか出血して生暖かい。

 

 「いいか。落ち着け。な?」

 

 「私の操を奪ったりしてないな!不埒な真似をしたのであるなら貴様を殺してやるぞ。」

  

 「だから待てって。この通りだ。」

 

 火を吐きそうな。髪が逆立ちそうなほど頭に血が上っている女性に膝をついて頭を下げる。土下座である。

 怒鳴り散らしていた女性(タヌキ面)も侍が深々と頭を下げたことで怒鳴るのをやめて、握っていた拳を緩めた。

 

 「お侍さま?とんでもない声が聞こえましたが?」

 

 「騒がしてすまんな。」

 

 騒ぎが聞こえたのか数名の農民が近づいて、声をかけてきた。話を聞くと、廃納屋から飛んできてペコペコしていたのを見て、何かあったのかと様子を確認しに来たと言う。

 

 「すまぬが、近くの駕籠屋から駕籠を呼んでくれぬか?」

 

 「え゛ぇ!!こ、こんなに貰っちゃ…」

 

 恭太郎は浪人に懐から一分銀を二枚渡した。

 

 「なに。大切な仕事を中断させるのだ。コレぐらいしなければな。」

 

 「ようがす!任せてくだせぇ!」

 

 農具持ったまま駆け出していった農民に手を振って見送る恭太郎は、女性の方に向き直る。

 

 「今から浅草の方に向かうがよいか?」

 

 「随分と懐が温かいようじゃな。それにワザワザ駕籠まで使ってなぜ浅草に向かうのだ。」

 

 恨みがましい目で見てくる女性。懐具合が気になるのかチクチクと嫌味のように「そんなに金を使って、良いところをみせたか?」「ドコの成金か?」の様に行ってくる。

 

 「はぁ〜。」

 

 その態度に大きく溜息を吐く恭太郎。

 

 「なんだよ。その嫌味なため息は?」

 

 「越前敦賀の鬼姫殿は随分と薄情でございますな。コチラとしてはいい加減に、気がついて欲しいですかね。」

 

 コチラも嫌味な態度で返す恭太郎。自分の正体が知られていると分かった女性は立ち上がり構える。

 

 「何者だ?お主は?」

 

 「酒居飛騨守殿の屋敷ではお世話になったのですがね。恭太郎ですよ。和泉の神原家の。」

 

 「あー!あの嫌味野郎か!元服前の小童なのに、よく父上噛みついておったな。はははは。」

 

 若気の至りなので許してくれよ。と、昔のやらかしを思い出して小さくなる恭太郎。頬の痛みや口の出血なんて気にならないぐらい恥ずかしい。名乗らなかったのは『昔のやらかしを思い出してほしくなかった』からだ。

 

 「それにしてもお主。こんなところで何しておるのだ?大みょ……モガモガ。」

 

 声がデカいんだよ。と羽交い締めにして黙らせた。それにしても昔と変わらずスゲェ腕力だな。 

 

 「お忍び。お忍びだから静かにしろっての。人が集まったり、この姿で傅かれても面倒なんだよ。分かった?分かったか?」

 

 うん。うん。と頷く越前敦賀の鬼姫こと『御珠姫(おたまひめ)

 

 「ぷはぁ。確かに父上も一万石の大名であったが疲れて疲れて仕方がないと言っておったからな。二十二万石ともなれば大変。目をつぶっておいてやろう。」

 

 はっはっは。と、豪快に笑う御珠姫。今は笑っておくが良い。浅草。つまりは、和泉屋に着いたら覚えとけよ?

 なにせ、相手は決まっていないが嫁入り前の娘。しかも、姫が『庶民の盛り場』なんて下賤な場に居たなんて知られれば、大名のお忍びより御家に迷惑がかかる。

 まぁ、何が言いたいかといえば、『説教を覚悟しとけ』って事だ。

 

 「お侍さま。駕籠を連れてきました。」

 

 「忙しいところ。助かった。かたじけない。」

 

 ペコペコと頭を下げながら農作業にもどる農民を見送りつつ、駕籠屋に酒代を弾んで渡し、御珠姫を駕籠に乗せた。

 

 「和泉屋まで頼む。」

 

 「へい!これだけ心づけを貰えればなんだってします。任せてください。行くぞ!」

 

 駕籠が上がり、浅草に向けて発進した。

 

 「へい!」「ほ!」「へい!」「ほ!」 

 

 「町駕籠に乗ったのは初めてだが、快適なものだな。それにしても、随分金を使うものよ?なぁ、恭太郎。」

  

 「懐が温かいと言うだけで安心感があるんだぞ。酒手も渡せる。」

 

 機嫌よく駕籠で運ばれる御珠姫。一万石の姫様。しかも何人も居る姫の一人では贅沢は出来ない。嫌味の一つも言いたくなるものだろう。

 

 「大名なんぞ。ドコもヒィヒィ言ってるのにな。賄賂でも受け取っておるのか?……いや、すまぬ。お主は無いな。」

 

 (酒居家は名家ではあるが、分家の支藩出身だと肩身も狭いのだろう。だが、今日は寝かせてくれ。)

 

 飯ぐらいは好きなものを食わせてやるか。と、懐を叩く恭太郎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  




 確認できなかったので詳細はわかりませんが、日間ランキングに載ってたとのこと。大変ありがとうございました。
 誤字脱字報告も助かっております。
 追記・2022/08/19 日間オリジナルランキング 32位 確認できました。本当にありがとうございます

登場シーンで一番と思う時代劇は?(今後の参考・指針に。)

  • 余の顔を見忘れたか。(暴れん坊将軍)
  • この紋所が目に入らぬか。(水戸黄門)
  • 閻魔様の御使ぇよ。(江戸の牙)
  • 天に変わって破れ奉行。(破れ奉行)
  • 地獄へ落ちな 等(必殺仕事人)
  • テメェら人間じゃねぇ!(破れ傘刀舟)
  • 手向かう者は斬れ!(鬼平犯科帳)
  • 桃から生まれた桃太郎!(桃太郎侍)
  • 白州で裁けぬ悪を斬る(鬼役)
  • この金さんの桜吹雪… (遠山の金さん)
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