恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 あと一話ぐらい投稿したいなぁ。でもこのままだとキリのいいところになりそうにない。


間・『和泉屋にて。』『悪党は次の手に。』

 

『和泉屋にて。』

 

 「なんでおらんのだ!おのれぇ。」

 

 「ま。ま。ま。落ち着きくだされ。姫様。あ、いや、小珠さん。」

 

 和泉屋の離れでは地団駄を踏む小珠を宥める和泉屋の主・源左衛門。今日も屋敷から抜け出し、夜遊び大名二人を連れて恵土で遊ぼうかと思っていたのだが、

 

 『お役目で、和泉屋の方へ。』

 

 と、本田、神原両家の恵土家老から言われ、神原家の下男・勝蔵を引きずって和泉屋に来たという経緯なのだが、いざ店に来てみたら、二人共居ないのでイライラしている。

 勘弁してくれよ。と勝蔵と源左衛門は考えたが口は出さず、代わりに酒を出した。

 

 「昼間から酒とは。分かっているな。」

 

 ニヤニヤと酒を飲む小珠にホッとする二人。酒でも飲めせれば大人しくなる。と、聞いていたが対処法がピッタリ当たったのは本当に助かる。二人は小珠の卓に酒の肴と水を置いて、離れから逃げ出すように源左衛門の自室に移動した。

 

 

 

 「勝蔵さん。災難だったね。」

 

 「まさに鬼姫様でした。首根っこを掴まれたと思ったら、軽々と神輿みたいに運ばれましたよ。」

 

 顔を真っ赤にする勝蔵。なにせ半蔵門から浅草まで大の大人がワッショイ、ワッショイ・・とは言ってないが、軽々と担がれて衆目にさらされたのだ。そりゃ恥ずかしくなるだろう。

 

 「それにしても恭太郎様たちは何処へ?」

 

 「今は両国の船宿『真砂』におりますよ。恵土家老の村上様から教えてもらったので間違いないかと。」

 

 茶をすする二人は複雑なため息をつく。なにせ二人が話しているのは、町同心でも、浪人でも、街ぶらつく藩士でもない。国持の大名なのだ。しかも、将軍に個人的に会える上に頼まれごともされるほどの地位もある武家。

 今更ながら無茶が多い武士の世界にゾッとする二人。・・・・いや、例外だからね?こんなこと。

 

 「府内の町人たちは赤鰐党が居なくなって安心かと思えば、実際は新撰会とやらが未だに暗躍してる。しかも、その親玉は解っちゃいないが御公儀に顔が利く人間。」

 

 表に出れば『幕府のメンツに関わる』と、もみ消される可能性が高い。それを大名が将軍の命令で対応するなんて無茶苦茶も無茶苦茶。

 『若き将軍の民草を助けるための密命』などと書けば格好がつくが、実際は『将軍や大御所が幕府の威信にかかわるから側近に無理を命じ、裏で処理させる』というものだろう。

 ゾッとしていた二人は、深く考えると胃腸まで悪くしそうだ。と考えるのを止めて話を変えた。

 

 「そ、それにしても裏口が騒がしいですな。」

 

 「ああ、用心棒の押し売りですよ。南の福井町にある神道流の道場とか。たしかに安いですし、腕も並より立ちますが、どうも目が気に食わない。断っているのですがねぇ。」

 

 「それにイザとなれば殿様たちもいますからね。」

 

 「そりゃ本末転倒ですよ。恭太郎さんたちの心配をしたばかりじゃないですか。」

 

 ハハハハハ。と朗らかな雰囲気になった二人は、しつこい押し売りを追い返そうと部屋を出る。

 

 「き~い~た~ぞ~。」

 

 「「ゲェ!?」」

 

 障子を開けると、酒で酔っ払っているはずの小珠が居た。障子に影が映らないように伏せて話を聞いていたらしい。ユラリと立ち上がり震える源左衛門と勝蔵を離れに引きずり込んだ。

 

 

 

 

 

 

『悪党は次の手に。』

 

 

 「まさか深川の建材屋にあれだけの金があるとはな。」

 

 「ええ。ええ。これで大番頭復帰は確実。後回しにしていた大名就任への活動資金も流れるように用意、根回しができましょうぞ。」

 

 「ようやった。小井出。」

 

 「ありがたき幸せにございます。」

 

 四ツ谷の旗本屋敷。谷久保美濃守屋敷にて悪党三人が山吹色のお菓子を大事そうに撫でていた。そう。三人である。一人は新撰会と白鯨党の親玉・谷久保美濃守。一人は青鯱党の親玉・小井出重行。そして最後に居たのは狒々爺と想像した姿がそのまま出てきた商人風の男。

 

 「それにしても、まさか自分の店を襲わせるとは。考えもしなかったぞ?大木屋。」

 

 「いえいえ。私は今は『重菱屋清左衛門』でございますよ。」

 

 ハハハハハハ。と、和泉屋とは違う笑いをする三人。そう。最後の一人は大木屋忠右衛門。改め、呉服問屋『重菱屋』の主・清左衛門。

 

 「吉宗公から材木問屋は儲かるとはいえ、下火でございますからね。父祖伝来の仕事なんて義理は金には変えられません。さっさと切り捨てて次に商売を変えるが吉です。店を変えるのにも、商売仲間との付き合いや縁作りにも金がかかりますからな。」

 

 無駄金は使わないに越したことはありません。と、清左衛門は五十人近くの人間の人生を奪ったことを悪びれもしない。

 

 「この借りは高いですぞ?なにせ父祖伝来の店と商売を失って、大きな賭けに出させたのですから。」

 

 「ふふふ。任せるがいい。大番頭から若年寄や寺社奉行。果ては大名・老中となれば、呉服の売りどころに困ることなど一生ないから安心しろ。」

 

 大名御用だけではなく、大奥御用達になれば、今まで材木問屋で得ていた利益の倍は軽く稼げる。素晴らしい事この上ないと笑いが止まらない悪党たち。

 

 「ワシが幕閣として口を聞き、重菱屋が金を使い、小井出が邪魔者を斬る。持ちつ持たれるよ。今思えば、赤鰐党など早めに切っておけばよかったわ。小井出もワシが出世すれば、用心棒の押し売りなどせずとも、剣で食えるようにしてやる。」

 

 話せば話すほど欲は止まらず、笑いも高くなる悪党たちであった。




 誤字脱字報告ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

登場シーンで一番と思う時代劇は?(今後の参考・指針に。)

  • 余の顔を見忘れたか。(暴れん坊将軍)
  • この紋所が目に入らぬか。(水戸黄門)
  • 閻魔様の御使ぇよ。(江戸の牙)
  • 天に変わって破れ奉行。(破れ奉行)
  • 地獄へ落ちな 等(必殺仕事人)
  • テメェら人間じゃねぇ!(破れ傘刀舟)
  • 手向かう者は斬れ!(鬼平犯科帳)
  • 桃から生まれた桃太郎!(桃太郎侍)
  • 白州で裁けぬ悪を斬る(鬼役)
  • この金さんの桜吹雪… (遠山の金さん)
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