榊恭太郎。負傷する。その報告は各関係者に秘密裏に届けられた。恭太郎こと神原和泉守基康の屋敷。つまりは和泉藩邸に届けられたことによって一部の武士がキレていた。
「ドコのだれじゃあああ!!!」
「ぶっ殺したるわぁ!!」
「殿の敵ぁ!!」
槍、鉄砲を構え、刀を腰にさす甲冑姿の武士たちは恵土家老・村上善太夫に詰め寄った。家老屋敷に集まった武士たちは『恭太郎のお忍び』を知っている口の固い面々だ。
「待て待て。殿の傷は浅手。命には関わらぬものだ。落ち着くがよい。」
冷静に対応する善太夫だったが、組屋敷を調べている途中で、報告を受けた時に、一番キレていたのは彼である。続きの報告で『命に別状なし。浅手である。』と報告が来るまで父祖伝来の槍を取り出し、犯人のところに乗り込もうとしていたのだ。ちなみにココに集まった武士たちを集めたのも善太夫だ。
「もうすぐ殿が戻られる。落ち着くのだ。血気にはやって殿に心労をかけるでないぞ。」
グヌヌヌ・・。と、地団駄を踏んで悔しがりながらも、大人しく自分の家に戻っていった。『お忍び』を知らない家臣たちは、本日未明の『小珠襲来事件』で金をもらって遊びにでるか。仕事をしており奇跡的に騒ぎは広がることなく収束した。
「スマンかった。油断したわけではないが、見事に切られたわ。」
両手をついて善太夫に謝る恭太郎。善太夫が騒ぎを収めて二時間後。正午を過ぎた頃に本田家の駕籠で運ばれた恭太郎だったが、到着した頃には噂が大きくなりすぎて、『殿が本田家で危篤に。』となってしまい。遊びに出ていた家臣たちも集まって大騒ぎになっていた。
「すまんが、騒ぎを収めてくれ。」
「殿。しばらくお忍びはおやめくだされ。今回は浅手でありましたが、流石に心臓が止まるかと思いましたぞ。」
「今回の一件が終われば落ち着く。個人的には動かぬ。誓ってだ。」
また頭を下げる恭太郎に、仕方がないですな。と、溜息を吐いた善太夫は騒ぐ藩士を宥めに外に出ていった。
入れ替わるように勝蔵が入ってくる。何か言われると思ったが頭を下げ、
「平太郎様と小珠様が参られました。」
と、告げると下がっていった。こりゃしばらく『お忍び』は出来んなぁ。
恭太郎は自分の身の重さを嫌でも自覚することになった。自覚していたと思っていたが、今回は流石に考えなし過ぎたな。
「思ったより元気そうだな。よかったよ。」
「ええい!家臣を貸せぃ!道場になだれ込んでやる!」
いつもどおりの平太郎と、怒りが爆発している小珠に軽く挨拶をする恭太郎。勝蔵に茶と、酒を用意させた。
「まさか切られるとはな。油断か?」
「考えなしではあったが、油断まではしてない。確かに唐竹割りを避けたのだが、切り上げを受けたように切られたよ。」
ポリポリと頭を掻く恭太郎は未だにタネがわからない。多分、厚手の小袖を着てなかったら、傷が深くなり、最悪死んでいたと考えたら今更ながら恐ろしさを感じている。
「遅くなったが、コッチも調べがおわったぞ。ほれ。酒だ。」
恭太郎と違い、被害者たちを調べていた平太郎は調べの結果を懐から取り出した。覗き込もうとした小珠に酒を渡して黙らせた。
「こういうところはチョロいな。」
悪い笑いをする平太郎を横目に、調書を読んでいくと、
「神楽坂の寺は谷久保美濃守に金を無心されてるな。断ってるが。」
ペラペラと読み続ける恭太郎。
「材木問屋『大木屋』は大番頭を辞めたあとだが、谷久保美濃守に金を渡してるな。無役の大身旗本に金を渡した理由は分からんが、大番頭に戻るための活動資金か?」
「建材屋『丸山』も谷久保美濃守と関わりがあるな。こっちも金か。問屋株を買うつもりだったのか。どう思う?恭太郎。」
平太郎が答えが分かっている質問をするが、恭太郎は調書を閉じると、
「中務大輔殿。御城にまいろうか。」
「承知し申した。」
大名モードになった二人は一度別れて、裃に着替えると、沼田意次と通った隠し通路を使って、恭太郎は将軍・家基に。平太郎は大御所・家治に拝謁するため御城に上った。
「この調べは間違いないのか?まさか幕閣が関わっているとは思っていたが、先の大番頭だけでも頭が痛いのに、南北町奉行、火盗改メの面々まで、白鯨党に関わりがあるとは。」
流石にショックだったのか頭を抱える将軍・家基。同時刻に同じ調書を見せられていた大御所・家治と沼田意次も衝撃を受けていたが、飲んできた泥や毒の量が違うのか。一息で続きを促した。
「上様。大丈夫でございますか?」
「大事無い。父上も知っておるのだろう?」
「はい。二君に仕えるような事をして申し訳ありません。」
頭を抱える家基。父親・家治が同じような事をしているのが、父と同じ様な考えに至って嬉しいやら、手のひらで踊っていたようで悔しいやら。複雑な感情を覚えつつも、
「構わぬ。余と大御所は同じ徳河宗家。天下泰平のために膿を出すことに関して、天下への忠誠はあれど、尽くす相手に貴賤はない。」
少し悩んでいたが、正の感情が勝ったようで、笑って恭太郎を許した。
「それで上様。本日登城した件は報告だけではございません。上様が、私事でお頼みされた一件でございますが……」
恭太郎が家基を睨みつけるように見て話すと、一息置いてから、
「本当に手段・地位に関わらず処分してよろしいか?」
家基は、心から信頼する恭太郎の久しぶりに見る顔にたじろぐが、負けないように背筋を伸ばす。
「責めは余がとる。人とは言え腐ったものは斬らねばな。余、いや、ワシが命じたのだ。遠慮なくやるがよい!」
扇子を振り下ろし、畳を叩いて決意を示した。その態度に深々と頭を下げると脇差しを少し引き抜き、鍔を鳴らして鞘に戻した。金打である。
「頼むぞ。」
家基の言葉を背中に、御城を後にする恭太郎であった。隠し通路で待機していた妙な顔をしていた平太郎と合流して、新撰会の処分について話し合うために藩邸に戻るのだった。
アンケートで暴れん坊将軍がトップなら、あれだけある話から何を参考にしようかな。そうなると二次創作になるのかな。
二人目の女性キャラは……
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戦士系
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魔法系
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僧侶系
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賢者系
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盗賊系