恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 会社のクーラーが壊れて、外の方が涼しいでござる。


簡単な話だ。死ね。

 

 美濃守の御目見得が行われた日。その日の夜。半蔵門前の和泉藩邸には武装した神原和泉守基康と、本田中務大輔基政。

 

 「まさか四六時中張り付いてくるとは思わなかった。」

 

 「アイツが居ると、退屈しないが厳粛な空気が続かない。」

 

 「だよなぁ。」

 

 今回は酒でなんとか潰せたが、何度も同じ手は使えそうにない。いくらチョロくても策が一つだけでは、通じなかったときにお役目だったときが大変だ。いくらあんな人間離れ、女離れしてる小珠でも、気心がしれた友達で女だ。

 喧嘩ならともかく殺し合いには巻き込むわけにはいかない。

 

 「善太夫。小珠は大丈夫か?」

 

 「はい。狸寝入りしてないかシッカリ確かめました。」

 

 「ご苦労。シッカリ見張ってくれ。」

 

 御意。と、頭を下げてその場を離れる善太夫。これから谷久保美濃守の屋敷に殴り込む事をしったときは、「是非にお供を!」と熱望したが小珠を頼み込んだので渋々引き下がった。

 

 「月が雲に隠れて、幸いというべきかな。松明などの明かりがなければ真っ暗だろうな。」

 

 雲が広がり、真暗な空を見る二人の姿は、白装束に鉢金、たすき、足元は革のブーツ。……え?一つ変なのがあった?

 刀や槍が通りにくくて、歩きやすくて、足元がしっかりしてる靴といえば、後世の軍隊が履いていた軍靴。と、模したものを恭太郎が作らせたのだ。

 草鞋でも良いのだけど、当たりどころが悪いと切れるんですよ。アレ。

 

 「……いや、今更ながら天下御免の密命と言えば格好はつくけど。」

 

 「だよなぁ。やってることは隠密や刺客だよなぁ。」

 

 本当に今更ながら、何度目になるか分からない愚痴をこぼす二人。他にも言って良いの?といった内容を次々にボヤく。

 しかし、ボヤきながらも革靴の紐や、たすき、帯を締め直し、刀と槍に不備がないのを確かめる。

 

 「だけど、やらんとな。」

 

 「宮仕えの辛さよ。さて…」 

 

 「「行くか。」」

 

 二人は白で固められた服装を隠すように黒い外套を羽織ると、藩邸を後にした。

 いつも使っている愛刀に、天下御免の脇差しを腰に帯び、恭太郎は刃渡り三尺の大太刀を背負い、平太郎は槍を担ぐ。

 半蔵門から四ツ谷御門までは目と鼻の先ではあるが、武家屋敷が立ち並ぶ。普段は少なからず人がいる通りも仕組まれたかのように、人っ子一人いない。四ツ谷御門ですら見張り役人の姿が見えない。

 どうやったのか知らないが、お膳立ては出来ているのだろう。

 

 「ドンチャン騒ぎだな。」

 

 「新撰会とやらが集まっているし、親分の出世祝いよ。騒ぎたくもなるわな。」

 

 門の内側からかすかに聞こえるダミ声の歌声に、ウンザリしながら潜り戸を叩く平太郎。

 

 「何者で?」

  

 扉を開いて訪ねた侍は声一つ出せずに、喉と心臓を平太郎の槍に貫かれた。

 

 「門を開く前に尋ねるんだよ。次の人生で役に立てな。」

 

 倒れた侍に一声かけると、騒ぎの中心である屋敷の中央を二人は目指す。数名の侍や浪人が道中に居たが、有無を言わさずに殺す二人。

 大名モードの厳かさでも、お忍びモードの穏やかさもなく、威圧感を纏いながら進む二人は、非情な殺人カラクリに見えることだろう。

 

 「新撰会は今日滅ぶ。」

 

 「この屋敷にいる悪党どもは根絶やしよ。」   

 

 「「恵土の膿よ。滅ぶべし。」」

 

 少数ではあるが、警戒して武器を構える悪党どもを次々に殺す。それによって周囲に悟られることもなく、無人の野を進むように騒ぎの中心まで歩みを進めるのであった。

 芝居がかってる?これから大量殺人になるかもしれないのだから、こうでもいてないと気が気でないのだ。

 

 

 

 

 

 

 「「「ハハハハハ」」」

 

 谷久保美濃守の屋敷の中央。悪党たちの宴が催されている離れでは我が世の春の始まりを確信している新撰会の面々。

 上は大身旗本、下は食い詰め浪人と混在している場ではあるが、主・美濃守が無礼講を許しているのか。徳利を割ろうが、喧嘩をしようが、殴り合いの喧嘩をしようが咎めもない。 

 

 「みすぼらしい浪人のダミ声でも、今のワシには天女のささやきに聞こえるわ。」

 

 「左様ですな。まさか丸々金が残るとは。美濃守様の仰るとおり、さらなる出世に金を使えますな。公方様たちもようやく美濃守様の才能に気がついたのでしょうな。」

 

 「そうおだてるな小井出よ。重菱屋。これからも頼むぞ。金のことは任せる。」

 

 「お任せください。この金を倍。いえ、数倍にしてご覧にいれましょう。」

 

 「頼みにしてるぞ。ココに居る面々はワシの大望のために動いてもらう。今日は英気を養うがよい。」

 

 おおぉ!!と、喜ぶ青鯱党の浪人や悪御家人。更に儲かると笑う黄蛸党の商人崩れ。そして、白鯨党の旗本達。

 その旗本たちの中には、あろうことが南北町奉行に、火盗改メの長官まで見えた。世も末というならこのようなことだろう。

 

 「それにしても小井出。お主の道場を襲ったという浪人者。どこの密偵であろうか。」

 

 「両奉行、火盗改メの話では、その様な密偵も手先も居ないと。まさか目付や老中でしょうか?」

 

 「だとしても、今のワシには手出しできまい。若造老中の得川定信あたりが動いたとしても、大御所様肝いりで大番頭に再任したワシに手を出すことが出来ないだろう。」

 

 「何故でござります?」

 

 「証拠を見つけようがあるまい。万が一にも証拠を見つけたとしても、ワシを罷免しようとすれば大御所様のメンツを潰す。ワシらが行っていた悪行すべてを知ったとしても、処分を下せば大御所様だけではなく、幕府の全体のメンツを潰す。」

 

 「つまりは?」

 

 「堅物共が正義とやらを振りかざそうとしても、幕府のメンツと権威を背負ったワシに厳罰を下すことが出来まい。」

 

 ハッハッハ。と、笑う美濃守に、追従して笑う悪党ども、なるほどお約束である。つまり、この流れで来るのは…

 

 「ならば闇から闇に葬るまでよ。それとも、最後に改心して腹を切るか?」

 

 という言葉が聞こえると、障子が勢いよく開かれた。そこには白装束を身にまとった二人の侍が立っていた。

 酒を飲んでいた新撰会の面々は堂々と入ってきたことで、宴の余興だとでも思ったのか。この離れ周辺では止める人間は居なかった。

 

 「何者だ。ここは大番頭・谷久保美濃守の屋敷と知っての狼藉か!」

 

 小井出と南北町奉行が声を揃えて詰問した。

 

 

 

 

 

 

 「いかにも。知った上で要件があり、押し入ったのだ。」

 

 恭太郎が大太刀を担いで悪党たちの詰問に答えた。

 

 「なにぃ?何用だ!いや、名も名乗らない狼藉者などに関わる意味はない!者共!血祭りに上げてやれ!」

 

 小井出の言葉に刀を抜いて立ち上がろうとした浪人が、平太郎の槍によって串刺しにされる。

 その光景に周囲は刀を抜き、悪党どもの幹部たちも立ち上がる。

 

 「控えい!この御紋に逆らうか!悪党ども!」

 

 恭太郎と平太郎は脇差しを引き抜き、悪党どもに見せつける。葵の御紋が刻まれた『天下御免の脇差し』だ。悪党どもは驚き、二人から下がる。

 

 「頭が高い!これは悪党成敗の天下御免。その方らの悪行について自覚がござろう!」

 

 二人が脇差しを鞘に戻し、槍と大太刀を構える。

 

 「何のことかわかりかねますな。なにか証拠がございますかな?まさか証拠もなしで、このような暴挙をなされるのか?」

 

 美濃守はこの状況でありなが、何も知らないと態度を変えない。

 

 「見苦しいぞ。美濃守。いや、悪党ども。証拠もなく、この様な事をすると思っておるのか?馬鹿者め。潔く腹を切れば御上の慈悲もあったろうが……」

 

 腹を切ってもそんな事はないのだが、一応言っておく二人。

 

 「もはや、温情を与える慈悲もない!」

 

 「おのれ!どこの誰かは知らぬが、好き勝手の暴言ゆるさぬ!斬って捨てぃ!」

 

 二人を四方八方に囲む新撰会の面々。美濃守も手を振ると、槍が現れた。殺る気満々な悪党どもにも怯えもせずに背中を預ける大名二人。

 

 「天に変わって成敗するとは言わん。やってることは幕府の権威を守るための刺客とかわらんからな。」

 

 疲れたように平太郎が話すと、思い出したように恭太郎が美濃守に顔を向けた。

 

 「ああ、美濃守。ここに来た要件だったな。俺たちは詰問したり、事の是非について聞きたいわけでもない。簡単な話だ。死ね。」

 

 刃渡り三尺の大太刀を振り上げ、悪党一人を両断したことによって血の宴が開催された。

 




 仕事が本格化するまえに新撰会は終わらせたいな。

二人目の女性キャラは……

  • 戦士系
  • 魔法系
  • 僧侶系
  • 賢者系
  • 盗賊系
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