恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 かなり駆け足になり、文をとして読みにくいかもしれませんが、コレにて新撰会事件の本筋は終わりとなります。
 あと一、二話ほど小終結の話を入れて次の章になります。


悪党ならいいが、外道は駄目だ

 

 「ぎゃあああ!!」

 

 一刀一殺。恭太郎は大太刀を振り下ろし、薙ぎ払う。その度に悪党の体は両断される。速度と重さで恐ろしい威力で、振り回される大太刀相手では、二束三文の刀は木の枝の様にへし折れる。

 

 「な、なんだコイツラ。数で押し込んでも意味がねぇ!……ぐぅ!」

 

 背中を合わせる平太郎が繰り出す槍は、突けば急所を貫き、振り回せばケラ首が腹を破り、首を折る。石突ですら穂先のように体を貫く。

 

 「手応えがねぇなぁ。」

 

 台風のように血飛沫を撒き散らす二人はどちらともなく呟いた。白装束は赤く染まり、その姿にたじろぎ、逃げ出そうとする悪党も容赦なく殺していく。個人個人の細かい罪状は知らないし、もしかしたら所属したばかりで罪を犯してないものもいるが、

 

 『悪党に付き従って、この場に居たお前が悪い。』

 

 と、慈悲もなく殺す二人に恐怖が広まり、尻もちをつく悪党すら殺す。

 

 「ひいいい!」

 

 鬼気迫る威圧を放ちつつも、機械の様に処理する二人。ついには恐慌状態になり、ヤケクソに迫る悪党が出てくる。もちろん、あの世にご招待だ。

 

 「美濃守ぃ。動くなよ。」

 

 「一人残らずあの世行きだ。」

 

 斬って斬って斬りまくる二人は一歩一歩、首魁に迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 「美濃守様!駄目でございます!助けを求めに出た面々が戻りません!」

 

 「逃げたのか?!」

 

 「町奉行の西尾隼人正様も外に向かわれたのに戻らないというのは、もしや外にも刺客がいるのでは?」

 

 まさか?!とは思ったが、屋敷内でコレだけの大騒ぎになっているのに周囲から尋ねる者がいないのは周囲もグルなのでは?

 余裕綽々であった谷久保美濃守ですら、恐怖を覚えて槍を構える。

 

 「まさか本当に大御所さま。いや、御公儀がワシを闇に葬るつもりなのか?!」

 

 構えた槍は「イザとなればワシが槍を振るうまでよ。」と自信満々に話していた姿はなく、槍先は震えている。

 

 

 

 

 

 

 「ワシは町奉行・寺沢主膳正なるぞ!」

 

 「仕事をしないどころか、進んで良民を苦しめる奉行がいるか!」

 

 ためらうことなく両断する恭太郎。縦一文字の真っ二つになった悪奉行。背中を合わせた平太郎は横一文字に名前を知らぬ火盗改メの長官。内臓を撒き散らし、地に伏せる旗本たち。

 

 (本当に皆殺しにするつもりだ。)

 

 地位有る人間にも容赦無しで振るわれる攻撃に、新撰会の悪党たちは、生存本能に従って大名二人に近い悪党は飛びかかり、遠い悪党は門に向かって逃げ出す。しかし、門は開かない。そうなれば斬死にするべく飛びかかる。

 

 「おい。門を閉めたか?」

 

 「いやいや、そんな細工はしてないぞ?」

 

 「こりゃしくじったら、同じ目に合うかもな。」

 

 「御公儀の恐ろしさの一端を知った気がする。」

 

 血糊でドロドロになった大太刀と槍を地面に突き刺し、腰の刀を引き抜いた。

 

 「ひー、ふー、みー。うん?おい、悪党。大木屋はどこ行った?」

 

 平太郎が周囲を見渡すが、押し込んだ時にいた商人が一人見えない。斬り殺した覚えはないが…

 

 「おのれ!清左衛門。いや、忠右衛門!逃げおったか!」

 

 地団駄を踏む美濃守。もはや、悪党の首魁・高名な武家の面影はない。

 

 「……見苦しい。」

 

 平太郎の言葉に怯えていた美濃守の目に火が戻り、噛みついた。

 

 「どこの誰かは知らぬが!貴様も立身出世のために、この様な汚れ仕事をしてるのではないか!」

 

 だが、武家の誇りなどなく、悪党のまま噛みついた美濃守。

 

 「いや、正直言って、これ以上出世したくないよなぁ。」

 

 「だよなぁ。上様に好かれるのは良いが、何かに付けて呼ばれてこんな仕事をするのは勘弁してほしいもんだ。そうであろう?中務大輔殿。」

 

 「左様、左様。和泉守殿。」

 

 あまりの見苦しさに、悪いイタズラ心に火が着いたのか。大名モードで対応する。

 正体が分かった美濃守は「出世なんかヤダヤダ。」と述べる有力大名二人に絶望やら怒りやらを覚え、

 

 「小井出!槍の男は任せる!こうなったら覚悟を決めてコヤツらを斬り殺すのだ!」

 

 下種なりの覚悟を決め、震えを止めた美濃守は残った数名の雑魚と共に恭太郎に槍を向けた。

 こちらも同様の覚悟を決めた小井出も、美濃守から平太郎を離すように刀を構えた。

 

 「貴様を殺し、その藩を乗っ取ってくれるわ!」

 

 

 

 

 

 「オマエ。道場主らしいな。」

 

 「なるほど、先日の密偵はお主の手か。」

 

 小井出たちの誘いに乗り、多数の死体が転がる中庭に移動する平太郎。古備前派の刀が血を求めるように鍔が鳴る。

 

 「オレの友達さ。さぁ、胸を貸してやるから、かかってこい。」

 

 小井出の秘剣とやらを楽しみにして八相に構える。しかし、悪党たちは動かない。

 

 「じゃ、コッチから行くぞ。」

 

 流れるような太刀筋で小井出の取り巻きを斬り殺す。

 

 「貴様、あの密偵より腕が立つな。だが、我が秘剣。避けきる事も、防ぐも出来ぬぞ。かすり傷でも受け続ければ死ぬのだからな。」

 

 「ほぉ。面白い。もう一度言おう。胸を貸してやるから来い。」

 

 八相の構えを解いて刀を下げる平太郎。チョイチョイと手のひらで呼び寄せるような仕草をする。

 

 「バカにしおって。後悔するが良い。」

 

 小井出は中段に構え直すと、平太郎に間合いを詰める。侮りもない必殺の間合いまで、あと一歩の距離に入ると踏み込んだ。

 剣の間合いに入ると刀を上段に振り上げ、唐竹割りに振り下ろした。

 

 (我が秘剣は避けれぬ!)

 

 小井出の秘剣は『相手に剣の軌道を反対に見せる。』という幻術も合わせた技。

 恭太郎が受けた切り上げの傷も、

 

 『振り下ろし見えた剣は、実は真逆の切り上げであった。』

 

 というネタやタネが分かれば簡単なもの。だが、幻術を解いて普通の斬撃も合わせれば、目に頼る人間からすれば恐ろしい技だろう。

 

 「()った!」

 

 構えを取っていた恭太郎も避けきれなかった剣。しかし、平太郎はニヤリと笑いながら刀を下げているだけ。小井出は必殺を確信した。

  

 「よっと。」

 

 その必殺の秘剣を平太郎は軽く避ける。続けざまに、幻術と通常の剣技を混ぜて繰り出すが、体捌きだけで避ける。

 

 「な、なぜ当たらん!?」

 

 「恭太郎も油断がすぎるな。」

 

 くだらない相手だ。と、力なく下げた刀を振り上げ、小井出の刀を弾き、胴を両断した。

 

 「き、きさ……ま…。な…なぜ……。」

 

 「勘だな。ま、恭太郎に浅手を与えたのは褒めてやるがな。相手が悪かったな。オレは本田平八郎忠勝の直系だぞ?」

 

 東国無双の子孫に、かすり傷を狙う程度の小技で勝てるとでも?と、褒めつつも見下す平太郎の目を見た小井出は、剣名を上げることもなく、美濃守屋敷の死体の一つになった。

 

 「恭太郎。終わったぞ。」

 

 屋敷内に声をかけ、愛刀の血を拭き取り、鞘に納めると地面に刺してあった槍と大太刀を回収すると庭石に座り込んだ。

 

 

 

 

 

 「ま、まさか、小井出があっけなく……。」

 

 (話だけで、避けきったのかよ。相変わらずバグじみた戦闘力だな。)

 

 槍を構えた美濃守の周りには、もはや誰もいない。周囲にいた雑魚も、小井出が平太郎に斬られる間に恭太郎に斬られていた。

 

 「美濃守。覚悟せよ!残りは一人。」

 

 「ま、まだだ!まだなのだ!なぜだ。なぜワシが死なねばならぬ。悪い事ならば、他の幕閣も、お主らもしておるだろうに!」

 

 「悪党ならいいが、外道は駄目だ。貴様のやり方は不幸になる人間が多すぎる。」

 

 「ほ、ほざくなぁ!!」

 

 槍を繰り出す美濃守。自慢するだけあって大名芸とは言えない一廉の武芸者だ。大番頭として名前を売っただけはある。

 腐ってない昔の美濃守というものは、もっとすごかったのか?と勿体ないとも思ったが、今は腐った悪党。いや、外道。

 

 「それ!それ!それ!それぇ!!」

 

 何度も繰り出す槍を避ける恭太郎。気合を込めた一撃を避けると、ケラ首を掴み、槍を両断する。

 

 「まだまだぁ!」

 

 両断された槍を捨てると、襖を倒しながら後ろに飛び下がり槍を構える。どこから出したのか。そういう異能なのかもしれない。

 

 「せめて苦しまずに死ぬが良い。」

 

 刀を中段に構えた恭太郎は、突き出された槍を避けると美濃守を袈裟懸けに両断した。血を吐き、真っ二つにされた美濃守は咄嗟に身をひねったのか。両断されたのにも関わらず即死する急所は避けたようだ。

 

 「ま゛、ま゛で…。ま゛っでぐれ゛。和泉守殿。」

 

 恭太郎の足を掴む美濃守。止めを食らわすべく剣を振り上げるが、

 

 「大木屋の……金には触れ……るな…。食われ……る…ぞ。」

 

 それだけ伝えると無念この上ない表情で事切れた。見開いた目を閉じてやり、刀を拭い、鞘に納めた。これによって、谷久保美濃守を首魁とした新撰会は壊滅した。 

 

 「なに?いない?」

 

 死体の処理をするべくやってきた覆面をした面々が屋敷中を調べたが、黄蛸党の親玉・大木屋だか、十菱屋と呼ばれた狒々爺は見つからなかったと言う。

 この覆面の一味は『龍助殿の手先です。』と、言うだけで必要以上の事は喋りもしなかった。

 龍助とは沼田意次の別名と知っていた二人も余計なことを聞かずに処理と探索を任せることとした。

 

 「お二方様。火をかけますゆえ。待避を。」

 

 押し出されるように美濃守屋敷を出た二人は用意されていた駕籠に乗り込みその場を後にした。

 

 『谷久保美濃守にて火災が発生し、隠していた火薬に引火。屋敷に生き残りは居らず。付け火の犯人は探索中。』

 

 後に幕府はこの様に発表した。しかし、燃え尽きた屋敷からも黄蛸党の親玉の死体は見つからず、唯一の所在不明として、この事件に関わった人間の心にシコリを残すことになったが、コレによって新撰会事件は解決ということになった。




 感想・誤字脱字ありがとうございます。

二人目の女性キャラは……

  • 戦士系
  • 魔法系
  • 僧侶系
  • 賢者系
  • 盗賊系
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