恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 UA6000アクセスありがとうございます。とりあえず次の章の頭だけ投稿しておきます。

 2022/08/23・文になってなかった部分を大幅修整。1786文字から1676文字へ。


悪党ノ三 神出鬼没・獣人間
獣人間現る


 

 新撰会事件から一週間が経過した。新撰会の親玉として生き残っていた西尾隼人正も、すぐさま処刑された。

 この話が恵土府内に出たころは恵土住民から、町奉行所への不信感はあったのだが、

 

 『奉行からの圧力はなくなった!』

 

 と、懸命に働く町方によって少しずつ不信感は晴れているようだ。夜廻りも強化され、赤鰐党などが闊歩してビクビクしながら町に出ていた町民たちも、今では酒を飲んで酔いつぶれても無事になるほど治安が回復していた。

 

 「親父。ごっそさん。ココに置くよ。」

 

 「へい。まいど!」

 

 この男は飯山土佐守。年齢は五十二。問題続きである北町奉行所の奉行に就任した二千七百石の大身旗本だ。

 大身旗本といえば、新撰会の一つ・白鯨党を思い出すが、この男は、そのような悪の徒党には関わることはなく、それどころか、何処の派閥にも属さない変人。として城内では有名な人物であった。

 

 『是非とも幕府の権威回復のために町奉行職を!』

 

 と、将軍に直訴し。将軍近くに仕える小納戸頭取から町奉行になり、恵土の治安維持に取り組むという出世や御役大事の旗本からすれば、開いた口が塞がらない変人。しかし、それは逆に言えば武士としての本分と意地を守る硬骨漢でもあった。

 本日も奉行自らの夜廻りを行い、夜鳴きそばに話を聞いた帰り、

 

 「………何者だ。北町奉行・飯山土佐守と知っての狼藉か?」

 

 表通り。しかも、そのド真ん中で、頭まで外套を被った面々に囲まれた。この状態で、良い方向で囲まれた。と、思えるほど平和ボケした武士ではない土佐守は鯉口を切った。

 

 「行け!」

 

 土佐守の正面に立った人影が、声をかけると周囲の人影が飛びかかった。上下左右からの連続攻撃が土佐守に飛び跳ね、襲いかかる。

 

 「ぬ!なんと!」

 

 忍びか。曲芸か。刃物や飛び道具に気をつけなければな。と、構えていた土佐守だったが、外套から飛び出してきたのは毛むくじゃらの三本爪だった。想定外の攻撃に怯むが、

 

 「化物め。舐めるでない。コレでもワシは腰の刀でふらつく軟弱者ではないわ。我が二刀の錆びしてくれよう。」

 

 気を持ち直し、大刀と脇差しを抜き、構える。

 

 「もう一度言っておこう。舐めるでないわ!」

 

 脇差しで弾き、大刀で曲者の胴を斬った。人間ならば致命傷になる鋭い斬撃だ。

 

 「むぅ?」

 

 しかし、血は吹き出さず、刀を持った手にも肉を斬った感覚はない。何やら硬い線に刀を滑らせたような不思議な感触に疑問を持ったが、外套を来た謎の敵は手を緩めない。

 土佐守は、四方八方からの化物の攻撃に飛び込むような見せかけ、相手の脇を抜けるように横っ飛びで避けた。

 転がるように不格好な動きだが、これによって化物たちの囲みを抜けた。

 

 「もう一度問おう。何奴だ?」

 

 立ち上がり二刀を構える土佐守。肩で息をするが、まだ闘志は枯れていない。

 

 「ほう?腑抜け旗本では無いようだな。」

 

 「舐めるでない。と、言ったはずだが?」

 

 化け物に命令を下した人影が試すような声で話し、土佐守は皮肉げに返す。  

 

 「その割には息が上がっている。強がりは止めなさい。」

 

 意思表示と言葉を話す人影は、パチリ。と、指を鳴らす。

 

 「な、なんだと!?」

 

 一体だけを残し、残りの正体不明の面々は下がった。罠か?と、息が整わない体に苛立ちつつ、土佐守は油断なく刀を構える。

 毛むくじゃらの三本爪が外套を引き裂くように脱ぐ。すると、中から出てきたのは、二本足で立った狼・人狼のような化け物だった。

 

 「本当に化け物だったか!ぐぁあああ!!」

 

 驚くほど俊敏な動きで、体当たりをぶちかました人狼は倒れ転がった土佐守に覆いかぶさり両手の爪で連打する。先程までの四方八方からの攻撃は遊びに見えるほどの動きの変化だ。

 土佐守は両手の爪の連打を刀で防ぎきれずに、爪の一撃を脇腹に食らってしまった。

 

 「おのれぇぇ!!」

 

 血が溢れるが残った力で両手で握った脇差しを人狼の口に叩き込んだ。人狼は力が抜け、土佐守の上に倒れ込んだ。

 

 「ふふふふ。いやいや、コレは想定外だな。だが、次の一匹はどうだ?」

 

 死んだ人狼を押しのけ、脇腹から血をこぼしながら立ち上がった土佐守。出血は酷いが爪の威力が思ったより低かったのか、致命傷ではない。

 しかし、体力の消費と怪我によって、もはや立っているだけで精一杯であった。二匹目が来れば確実に死ぬだろう。

 

 

 「お奉行!」「お奉行。どこでございますか!」「あ、あれはなんだ!」

 

 「運の良い奴め。引くぞ。」

 

 奉行の帰りが遅いのを気にした与力・同心が土佐守に気が付き、地面に倒れた人狼が見えたのか駆けつけてきた。

 外套を着ていた面々は、命令を下した人物を担ぐと、巨体に似合わぬ跳躍力で屋根の上に逃げると、そのまま姿を消すのだった。

 

 

 「お奉行!」「戸板をもってくるのだ!」「医者だ!医者を呼べ!」

 

 脅威が去ったことで土佐守はぶっ倒れ、与力・同心たちは事後処理のために駆けずり回る。この日から、人のように二足歩行する獣が出るようになった。と、恵土府内で噂が広まるのだった。

 

 

   




 明日、明後日ぐらいから仕事が本格化しそうなので、しばらく投稿速度落ちます。お許しを。

二人目の女性キャラは……

  • 戦士系
  • 魔法系
  • 僧侶系
  • 賢者系
  • 盗賊系
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