恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 総合評価300。お気に入り150超えたのを見て、喜び急いで書きました。短いながらも続きです。
 2022/08/24 どうしても次の話に続かなかったので修正しました。


折れたぁ!?

 

 「吠えないし、飛び込みもしない。なんだよコイツ。」

 

 「殺気はないのが何故だか分からん。が、当たったら死ぬぞ。この威力は。」

 

 駄々をこねる子供のようにバタバタして暴れている獣人間の手足を刀で弾く二人。

 野良犬や猫でさえ、攻撃する時に怒りや迫力が出るものだが……

 

 「初めて闘る形の相手だぞ。なんというかやり難い!」

 

 「無形の位とか、狂気の剣とかはやったことがあるけど、訳わからん相手だ。」

 

 飯山土佐守が戦った相手は獣のような動きだと聞いたが、コイツは獣のような俊敏さも、恐怖を誘う叫び声もなく、手足をバタバタしているだけ。殺気も怒気も狂気もない。

 

 ((わ、わけが分からん。))

 

 二人は、空腹で力が入らないだけではなく、強い戸惑いで剣先も鈍りに鈍っていた。このときに奇襲を受けようものなら軽くはない被害を受けるだろう。

 

 「ぐぬぬぬぬ……!!へ?止まった?いや、動いた?」

 

 二人を刀ごと押しつぶすように大きな獣の手で押し込むが、崩れそうになる寸前で力を緩める。しかし、こちらが体勢を立て直すと、バタバタと暴れる。

 

 「平太郎!なんだよコイツ!」

 

 「俺がわかるか!一度、距離を取るぞ。」

 

 「ガッテン!」

 

 間を取るために爪を二人同時に弾くと、後ろに跳んだ。

 

 「恭太郎!前!」

 

 しかし、後ろに跳んだきょうたろうの前に獣人間が、この闘いで初めて俊敏な動きで距離を詰めて、爪を恭太郎に振り下ろした。

 

 「何だよこいつ!!」

 

 だが、振り下ろした爪の速度は受けれる程度。刀で受けると再度押しつぶすように力を入れる。もはや、恭太郎は戸惑いを通り越して混乱してきた。

 

 「こんちくしょうがぁ!!」

 

 渾身の力を込めて押し返す。

 

 

          ペキンッ 

 

 

 と、情けない音がして、愛刀の国貞が割れる様に折れた。

 

 「ギャアアア!国貞が折れたぁ?!」

 

 一瞬、時が止まったように周りが固まったあとで、恭太郎の絶叫が弾けるように響いた。

 

 「何してくれてんじゃぁ!!!」

 

 「グ?!……グルル?」

 

 ブチンとキレた恭太郎の怒声に、獣人間は両手を上げて驚くように左右を見ると、

 

 「逃げた!?」

 

 回れ右をして逃げ出した。

 

 「刀を返せぇ!」

 

 「待てって!?刀折れてんだぞ!?待て待て!」

 

 折れた刀を振り回し、追いかけようとする恭太郎を羽交い締めにして、宥める平太郎。

 

 (たしかに愛刀を折られたらオレもキレるよな。)

 

 とは思ったが暴れる恭太郎を宥めきれず、仕方なくバックドロップを叩き込み鎮圧した。

 

 

 

 

 「国貞が……」

 

 「あ、あの、コチラの御仁は大丈夫でしょうか?」

 

 「気にしないでくだされ。」

 

 騒ぎを聞きつけたのか。北町奉行所の同心たちが二人のもとにやってきたが、タンコブを作り、折れた刀を拝んでいる恭太郎に引きつつ、平太郎に事の仔細を聞きながら、近くの番所に向かうことになった。

 

 

 

 

 「粗茶ですが。あとコチラもお茶請けにどうぞ。」

 

 「コレはありがたい。」

 

 番所に到着した二人(内活動停止一名)に北町同心がお茶と菓子を出してきた。粗茶というには謙遜が過ぎる茶と菓子が心と体を癒やす。

 

 「拙者、北町奉行所の筆頭同心・青鬼赤彦(あおきあかひこ)申します。」

 

 「は?し、失礼。変名ですかな?」

 

 平太郎は思わず聞き返すが、後暗は首をふる。

 

 「いえ、本名です。私で六代目になります。」

 

 「左様か。失礼した。」

 

 スゲェ名前だな。と出来るだけ顔に出さないように謝罪する平太郎。失礼ながら先祖は、何を考えてそんな名前にしたのやら。

 

 「この度の騒ぎですが…」

 

 「その件につきましては…」

 

 名前には驚いたが、平太郎に質問をする内容は、疑問に思うものを漏れなく質問と返答をやり取りする平太郎と赤彦。後で見せてもらった調書も上手くまとめていて読みやすい。

 

 「おい。屋台の爺さんを清めて、身内に知らせてこい。夜に」

 

 「へい!」

 

 岡っ引きと同心に命令を下す姿を見ると、名前の事を忘れてしまう働きだ。

 番所には二人と赤彦だけが残り、折れた刀を拝んで涙を流す恭太郎を横目で見てから大きくため息をつくと、

 

 「よしよし。帰るぞ。恭太郎。」

 

 平太郎と赤彦に担がれ、和泉屋に運ばれるのであった。

 

 「うわぁ…」

 

 店についた三人を出迎えた用心棒は、真っ白になっている恭太郎に引きつつ、和泉屋の離れに布団を敷き、その中に放り込んだ。

 

 

 

 

 

 「…………はぁぁ。」

 

 和泉屋に運ばれた恭太郎。自失茫然となっていたのだが、一眠りしたことで現実が見えたのか。深い深い溜息を吐いて、折れた刀を鞘に納めた。

 

 「修理できるかな。これ。」

 

 訂正しよう。まだ、どこかしら(・・・・・)現実に戻っていない。しかし、このまま無腰のままでは侍としても、曲りなりにも剣士として落ち着かない。

 

 (腰が軽いってのはどうにも、なぁ。)

 

 重い気分を抱えつつも、軽い腰と、回る思考は現実を訴えてくる。それに、昼間に獣人間とやらが襲ってこないとも限らない。

 昨晩の襲ってきたのか。遊んできたのか。よくわからない化物でも手こずったのに、新町奉行の飯山土佐守を襲った様な狂暴な相手が次に来たのなら、今の状態では…

 

 (勝ち目は薄い。今のオレだと殴っても自爆だな。)

 

 全力で殴った想像をした恭太郎の脳裏には、拳が砕けるイメージがはっきりと想像できた。

 想像した手の痛みによって、落ち込んでた気分を現実が押し込み、布団を片付けて屋敷に戻ることにした。

 

 

 

 




 今更ながら、獣人間って安っぽい名前だなぁ。でも、初期案の『怪奇!怪人・外套獣人』って奴よりは、分かりやすいか。

※勝手に紹介していいのか分かりませんが、コチラの作品は大変参考にしたいです。(苦情などが有れば消します。)

 大江戸騒動記~棟平屋の軌跡~(作者・社畜のきなこ餅様)
 
 https://syosetu.org/novel/233567/

二人目の女性キャラは……

  • 戦士系
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