榊恭太郎。恵土に帰る。
時代は戦国乱世が終わり二百年にあと一歩届かない時間が過ぎた恵土時代。徳河幕府も今は11代将軍・徳河家基が大将軍となり、平和も成熟した時期。
「やはり蕎麦は恵土よな。」
「分かってるねぇ。ご浪人さん。うどんはともかく、蕎麦に関しては恵土はどこにも負けねぇよ。」
世界有数の大都市・恵土の一角。雑多な身分の集まる蕎麦屋で蕎麦をすする薄汚れた侍が一人。
「そのとおりだな。一年ぶりに恵土に戻ってきたが思わず涙が出るかと思ったぞ。」
「おや?浪人さんかと思ったら、どこかの御家中の方でしたか。」
「いやいや、気楽。とは言えぬが家に奉公する侍よりマシな仕事をしておるよ。」
おかわり。と、二杯目を頼む侍・名を榊恭太郎。一応は仕法家。現在で言うところのコンサルタント業をして一年は恵土。一年は地方を回りつつ生活をしている。と、言う表向きの建前を持つ訳あり侍。
「うむ。旨い。」
ズルズルと蕎麦をすする恭太郎。あとニ杯ほど腹ごしらえを済ませて恵土の家に戻ろうと考えていると急に外が騒がしくなった。
(ちょうど飯時。大工か職人か。威勢の良いのが来たかな?)
気にすることではないな。と、蕎麦をすすっていたが蕎麦屋の入り口が打ち壊され、赤く派手な羽織を身につけたヤクザものが店に流れ込んできた。
唖然としている客を掴み、叩きつけ、店の備品を投げつける。
「あ、アイツラは赤鰐党だ!吾妻橋を越えて本所からきやがったのか?!」
「知ってんなら話が早ぇな。ココを縄張りにしてた腑抜けどもに変わってな。ウチが浅草を押さえる。商売を保証してやるかわりにショバ代払いな。」
と、啖呵を切った若い男がどこで用意をしたのかしらないが、大量の灰を店中に撒き散らした。
「何しやがる!……ギャッ!」
数名の男が噛み付いたが、若い男に殴られて地面に崩れる。そこに取り巻き共が袋叩きにする。
「こうなりたくなかったら、周りの店や住民にも伝えることだ。」
ワッハッハと笑う若い男。店の中に居た客は怯える者、何もできずに悔しがる者、関わらないようにする者が大半であった。
その様子を見て、赤羽織の面々は勝ち誇る。
「おい。」
……が、勝ち誇った赤鰐党なる面々の正面。蕎麦の器を持った恭太郎がゆっくり啖呵を切った若い男に近づく。
「何だテメェは?このカエルの様に地面に叩き伏せられたいヤツか?」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべる若い男。その男に恭太郎は灰まみれになった蕎麦を器ごと叩きつけた。陶器が割れる軽い音と蕎麦が飛び散る音が店に響く。
「人の飯を駄目にした挙げ句、他の人達の飯時まで邪魔しやがって。」
ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!
顔面に蕎麦を叩きつけられた若い男は叩きつけられた勢いそのままに、顔面を掴まれ地面に後頭部を叩きつけられた。倒れた若い男は、そのまま恭太郎に連続で蹴りを浴びせられるが
「飯の恨みってのは根深いもんだ。それも一年ぶりに恵土に、帰ってきた旨い蕎麦を駄目にしやがって。」
数歩下がった恭太郎が助走をつけて気を失ったらしき若い男を店の外まで蹴飛ばした。
ポーンと、いう擬音が聞こえる様な軽々と飛ばされた若い男が地面に落ちる。
「おい。店の修理代と袋叩きにした客の治療費置いて失せろ。」
先程まで勝ち誇った笑みを浮かべてた若い男が連打を受けたことによって赤鰐党の面々は笑みがなくなり、ゾッとしつつ唖然とした顔になった。逆に…
「いいぞ!」「そこら辺の芋侍とはちげぇな!」「赤鰐党に喧嘩をうるなんて…」
店の客たちが、やんややんやと騒ぎ立てる。
「野郎!」
唖然としてた赤鰐党が正気に戻ると長脇差に手をのばし、懐から短刀を取り出そうとするが、またゾッとした青い顔に戻った。
「刃物を出すなら、コッチも抜かせてもらうぞ?」
恭太郎が長柄の愛刀に手をかけていた。斬られる!?と思ったのか赤鰐党たちは気絶した若い男を引きずり、蕎麦屋を荒らすだけ荒らすと逃げ出した。
「誰も斬らないっての。それにしても公方様のお膝元なのにあんな奴らが蔓延ってるなんてな。……はぁ。それにしてもカッとしちまったな。」
恭太郎は頭をガリガリと掻きむしると、やんややんやと喜ぶ客に、しばらくこの辺りに来ないように念押しすると、懐から小判を取り出し、
「すまんな。店の修理代と身を隠すための金だ。落ち着くまでココを離れた方がいい。」
蕎麦屋の店主に押し付けると早足で店をあとにした。
(あれだけ啖呵を切った割には尾行も追手もなしか。)
後方をチラチラ確認しつつ、浅草を千代田の方に向かった。
書きたいときに書いていくので、勢いや意欲がなくなったら止まるかも。
※恵土=江戸
ヒロイン第一候補として出てほしいのは?
-
時代劇の定番・男装娘
-
同じく定番・姫様
-
ファンタジー要素なら妖怪・幻獣
-
時代小説では悲恋多し・くの一
-
時代劇でのメインヒロイン少ない・京女
-
まさかまさかの女大名
-
思いつきにくいが商家の娘
-
障害が多いすぎるぞ!・巫女や尼