「どうした?善太夫?」
少しの時間、意識が過去へ旅立っていた善太夫は恭太郎の声で、気を取り戻す。
「いえ、なんでもございません。お目にかかった刀はございましたかな?」
「あるにはあるんだが……和泉守系の刀が無くてなぁ。」
恵土中の刀剣屋が発刊してる目録を
その系統の和泉守系の刀がほしいが、恭太郎が腰に差してた『和泉守国貞』は名刀。しかも、その息子である『井上真改』は『大坂正宗』と言われるほどの人気の名刀。そのせいで両者の刀は値段はとんでもなく高いし、数も少ない。
さらに系統は違うが、同じ和泉守が付く『兼定』になれば、大大名ですら喉から手が出る名物。偽物のほうが多い。
恭太郎が『国貞』を腰に差せたのも、無銘であり、元服の祝いに当時の御用商人に送られたモノを使っていたからだ。……失礼。話が広がってしまった。
ともかく、未練たらしいが国貞に思い入れのある恭太郎ではあったが無いものは無い。たとえ在庫が有ったとしても恭太郎の小遣いでは買えない。
(刀の一振りぐらいの贅沢は許されるとは思うのですが。)
善太夫や親しい家臣はそう思っていたが、恭太郎は頑として自分のことでは、公金を使おうとしない。
「直刃の刀であれば、いくつかございますが?」
「直刃はいらん。別の刀を探すぞ。」
刀の目録を受け取り、善太夫が国貞と似た刀を示すが、首をふる恭太郎。印をしていた一面の刀は直刃ではなく、反りが強いモノばかりであった。
折れた愛刀の国貞が、直刃系の刀であったから義理立てしてるのか。それとも、戦時では大太刀を使うので、万が一に備えて強靭な太刀・大刀を求めているか。
「あの化物に襲われたら、
「御意に。…ですが、何度も申しますが、無理だけはあまりしないでくだされ。」
「上様や大御所様から頼まれてる時点で無理難題なんだよなぁ。ともかく、行ってくる。」
善太夫が目録から勧めてくれる刀に納得できなかった恭太郎は刀蔵に保管されていた刀を一つ掴んで腰に差す。いつも通りの抜け道を使い、和泉屋に向かうのだった。
「和泉屋さんに頼まれては、イヤとは言えませんなぁ。それに、コチラのお侍様は、和泉屋さんのご贔屓と聞きました。これからウチもご贔屓にしてほしいものですな。」
藩邸の抜け出し、和泉屋に向かったはずの恭太郎。和泉屋源左衛門に頼み込み。付き合いのある刀屋を紹介してもらうことにした。
紹介してもらった理由としては、目録を出している店は和泉藩の以外との付き合いもあり、飛び入りの客では『良い刀』を売ってくれない可能性もある。と、考えたからだ。
そして和泉屋と同行して、紹介されたのは、愛宕下・日影町(現・新橋付近)にある刀剣商『柏葉屋』という小さな店であった。
『人の紹介でのみ商談を受け、しかも気に入った人にしか刀を売らぬ。』
というほど偏屈な商売をしている刀剣商らしいのだが、恭太郎と和泉屋の前に座る中年の主人『柏葉屋六兵衛』は、とても偏屈な商売をやる人間には見えない。
「それで和泉屋さん。今日はどんな刀をお望みでしょうか?」
「いやいや、私が買うのではありませんよ。コチラのお方が必用としてまして。」
「コレは失礼を。榊恭太郎殿と、申されましたな。どの刀でもそちら様が時間が許す限り、見てくだされ。」
刀蔵に案内された恭太郎は内心ウキウキしながらも、澄まし顔で刀を確認し始めた。
「これは?!」
一つ一つをしっかり確認していたために、目にかなった二振りの刀が見つかる頃には、日暮れ前になっていた。……必要なのはわかるが、仕事しろよ。
「これは大変失礼しました。和泉屋さんがお目をかけるわけですな。」
二振り『無銘』の刀をホクホク顔で持って帰る恭太郎と和泉屋源左衛門に深々と頭を下げる柏葉屋六兵衛の顔もどこか満足気だった。
とりあえず、四章目のアンケートをやろうと思います。候補はあっても決めかねてまして。
四章目候補の選択をお願いします。(候補と殴り書きはあるが進行はゼロ。)
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当初の予定通り・妖怪事件(二件目)
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異能の力などを深堀(?)するメタ的小話
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恵土を出る話(上方へ)
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アンケートで決まった『盗賊系』の早出し
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メイン二人以外の話