恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 小珠の使い所に困るなぁ。とりあえず、そろそろ獣人間の役どころも終わりになりそうです。強敵だけど、頑張れば倒せる描写ってのは難しいなぁ。


なぁんだ。この程度か。

 

 獣人間の爪は石壁をツルハシのように削り、牙と顎を使えば、丸太すら楊枝のように噛み割る。敏捷性を始めとした身体能力も人間相手では過剰な能力。

 

 『どうやら、ネズミが三匹。放って置いても良いとは上は言いましょうけど、身辺はキレイにしておきたいものですね。』

 

 暗に処分しろと命令され、和泉屋に飛び込んだこの一頭。群れの中でも上位の個体。言うことを聞けずに遊びに飛び出し、つまみ食いをするような子供とは違う。

 

 『斬られなかったし、剣も折った。』

 

 と、ネズミと遊んでいた若い個体に聞いていたので、

 

 (その程度の二人。ついでに商家で食いだめでも。)

 

 軽い気持ちで忍び込み、用心棒らしい男を食らった。その姿を見つかり、閉じ込められたのだが自慢の身体能力で蔵を破壊。

 刀を構えるネズミ二匹に襲いかかるまでは良かった。

 

 (殺そうとすれば当たらない。足止めしようと傷を狙えば防がれる。剣に斬られない毛があるのに斬られて血が出る。なぜ?)

 

 かすり傷程度、出血もすぐ泊まる程度のモノ。動きは鈍りもしないが、食事をした蔵付近から動けない。

 コチラは予想も予測も外れ続けているので戸惑っているのだが、何故か優位に進めているアチラのネズミ二匹も戸惑っているように見えた。

 

 (何故?何故?何故?)

 

 戸惑い、混乱する獣人間は更に攻撃の手を速めた。

 

 

 

 

 

 「なぁ。なんというか。こんなに簡単にさばけたか?両国で戦ったヤツのほうが、やりにくかったぞ?」

 

 古備前派の大刀で獣人間の爪を避けつつ、伸び切った腕を切り払う平太郎。そうはいっても、どんな作りの毛なのかわからない硬い毛によって、かすり傷程度のモノしかあたえられないが。

 

 「そうだな。コッチのほうが速いし、力もあるが…」

 

 恭太郎も新調した大刀で爪を避けると、踏み込んで足首に斬りかかる。しかし、硬い。

 

 「殺気や敵意が漏れすぎで、狙い所がバレバレだからやりやすいんだろうよ。」

 

 両国で戦った相手は、この場で戦っている獣人間と比べると子供が遊ぶように無邪気のようで、殺意なども無くて先が読みづらかったが、この相手はバレバレだ。予備動作もデカいし、視線が狙いから離れない。

 覚悟というか。強敵だと気を張っていたのだが、大したことがない。もちろん当たれば重傷は間違いないだろうが、

 

 「なぁんだ。この程度か。」

 

 当たらなければ問題ない。と、言わんばかりに二人は獣人間の攻撃を避け、小さい傷を与え続ける。爪も牙も身体能力も厄介では有るが、何よりこの刃を通さない毛がこの場では一番、面倒だ。

 獣人間も迂闊であり、考えなしでは有るのだが、アホではないのか。致命傷になりそうな突きや毛の薄い場所への攻撃は避ける。

 

 「ウウウゥゥ…!」

 

 しかしながら、獣人間からすれば攻撃は当たらないのに、人間二人からの小さい攻撃でダメージは少しずつだが増えている。

 この場に釘付けにされているので、人質や回復のための新しいエサも取れない。

 

 「見え見え過ぎるぞ。」

 

 「ほれ。コッチだ。」

 

 平太郎が獣人間の背中を斬れば、反撃すべく振り返った背中を恭太郎が斬りつける。挟み撃ちのドツボにはまり込んだ獣人間はますます混乱して、動きが単調になる。

 卑怯?最悪ワンパンで死にかねない相手なのだから、まだ手段を選んで戦えないから仕方ないのだ。……仕方ないとしてくれ。

 

 「それにしても、コレだけ騒いでも騒ぎがおきんな。」

 

 「なんか仕掛けたのかもしれないが、そんな事考えるよりこの獣が優先だろ。」

 

 嬲り殺しに近い状態でズタズタにしていく恭太郎と平太郎。繰り返される作業のような斬撃。その中のいくつかが、深く肉を切り裂き血が吹き出る。

 

 「オオォォォ……」

 

 その場に膝を付き、咆哮ではなく呻くような声を漏らす獣人間。恭太郎と平太郎も崩れた獣人間に容赦なく攻撃を続ける。

 傷つき生命力が下がったためか、獣人間の毛が柔らかくなり、今まで通らなかった斬撃が素直に通り、二人の大刀が肉を裂き、血が吹き出す。

 

 「なるほど、斬れば死ぬのはかわらないか。」

 

 両者ともに想定外の状況になり、満身創痍の獣人間にとどめを刺すべく恭太郎は上段に大刀を構える。万が一の反撃にも平太郎が対処できるように控えている。

 

 「喋れるなら尋問するが、見たところ無理のようだ。」

 

 淡々と一言こぼすと恭太郎は大刀を振り下ろし、首筋に食い込む感覚が手に伝わり、このまま両断すれば終わる。

 

 

   「ヴォオオオオ!!」

 

 

 大絶叫というべき獣人間の声と同時に、パァン!と、弾けるよう二人は吹き飛ばされる。

 勝ちを確信してた二人は予想外の状況に対応できず、和泉屋の母屋に叩きつけられた。

 

 「不覚……。痛ってぇ……。」

 

 背中を強かに打ち付けた恭太郎は和泉屋の母屋内で立ち上がるが、足元がおぼつかない。

 和泉屋内部にいた奉公人たちは、布団ごと吹き飛ばされているにも関わらず寝息を立てていた。なるほど、やはり異常があったのか。などと、思いつつ外にいる獣人間に視線を向ける。

 

 「恭太郎。大丈夫か?」

 

 「なんで、普通に戦ってんだよ。」

 

 視線の先には、何事もなかったように戦場に戻っていた平太郎が、膝が笑っていながらも攻撃を続ける獣人間と戦っていた。

 その様子に、信じられん。と、苦笑いが出てしまった恭太郎。

 

 「やはり柔らかくなっているな。刀が通る。」

 

 足腰に強いダメージがきて歩くに歩けない恭太郎を他所に五分以上に戦う平太郎。しかし、獣人間は諦めずに暴れる。

 せめて道連れにしてやろう。といった気迫を込めて暴れている獣人間に中々トドメをさせない平太郎は一歩距離をとった。

 

 「あっぱれ!とは言えん相手だが、その気迫は認めてやろう。」

 

 八相に構えた平太郎は獣人間の攻撃を避けつつ、袈裟斬りに両断した。

 

 (相変わらず反則的な腕っぷしというか。)

 

 斜めに真っ二つにされた獣人間より、平太郎の剣技に呆れる恭太郎。しかし、追い詰められた獣はコレで終わりではなかった。

 両断された上半身部分に残った腕で、平太郎の頭を握りつぶすために手を伸ばす。

 

 「舐めんな。……うぉっぶ?!」

 

 こともなげに獣人間の悪あがきを避けた平太郎だったが、攻撃を行った上半身が弾け、血肉が散弾のように襲いかかり平太郎は血まみれになってしまった。

 

 「ギャーギャー五月蝿いわ!酔いが覚めて寝れんではないか!このボケ!」

 

 獣人間の上半身を弾けさせた右拳を握り、残った下半身を踏み潰しながら、左手で持った徳利から酒を飲む酔っ払い娘が、珍しく寝ずに立っていた。

 

 「……なんじゃ?こいつは?」

 

 弱っていたとはいえ、悪酔いのノリで殴って四散させた獣人間を見つつ小珠にゾッとした恭太郎と平太郎であった。




 アンケートは予想通り『島津』でした。……いや、ブッチギリだよ。参加ありがとうございます。アンケートの内容は後々、敵幹部(?)として出てきますのでお待ち下さい。

最凶の大名は?(ちょっと詰まっているので、候補から。三傑は殿堂入り)

  • 独眼竜が筆頭格・伊達家
  • ウッカリが大惨事・上杉家
  • ルール無用の残虐ファイト・武田家
  • 御屋形様以外は大暴れ・北条家
  • 騒動多く、死人も多い・前田家
  • 義絶・絶縁・キチ◯イ多数・浅野家
  • 恨みは根深く、身分も五月蝿い・毛利家
  • 内乱寸前、藩祖はヤンデレ・細川家
  • 官兵衛以外、曲者・黒田家
  • 薩人マシーン等の異名多し・島津家
  • 分家や親族にはトンだやつが?・真田家
  • フィクションでは大悪党・柳生家
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