恵土転生〜え?江戸じゃないの?〜   作:塩焼きサンマ

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 堅苦しいのはこの話まで。純時代劇風なのもこの話まで。


間・徳河家基は回想する。

 

 『余が動くと幕閣にしろ何にしろが「決まり決まり」とうるさくて仕方ない。最近、恵土府内が騒がしいのは城内でも話に上がる。人の口には戸は立てられぬものよ。』

 

 余が恭太郎にささやくが、驚きもたじろぎもしない。さすがは徳河四天王の末裔にして、余が誇り頼みにする者の一人よ。

 

 「あやつに任せれば良い方向に向かうであろうな。過程はともかくとしてじゃが。」

 

 余は恭太郎との思い出にひたることにした。そう、初めて出会ったのは父・家治から引き合わされた15年も前になろうか。

 

 

 

 

 

 「竹千代よ。これからお主の遊び相手になる神原家の恭太郎と申すものだ。」

 

 余。いや、ワシが竹千代と呼ばれ前髪が残った若造のときに恭太郎に出会ったのだ。なんでも神君家康公に従い徳河四天王と呼ばれた一家の末裔とか。

 

 (父の紹介とは。これは沼田の爺が関わっているに違いない。)

 

 若かったワシは若さゆえの潔癖か。悪い噂を持っていた父の側近である沼田意次のことを好きではなかった。

 その紹介で来たものなどロクなものではない。そう決めつけていた。

 

 「神原恭太郎と申します。」

 

 またこの男も将軍跡取りとしての地位目当て。適当に相手をすれば良い。

 

 「励めよ。」

 

 などと考えていたが、アヤツは他の武家とは違っていた。ある時など、

 

 「南蛮菓子の技法を用いて菓子を作りました。また、コチラは南蛮の茶で『ティー』と申しますもので。」

 

 武家の跡取りでありながら菓子を作り、見たこと無い茶を入れ。ある時は…

 

 「恭太郎。何をしておるのだ?」

 

 「西の丸様を描いております。」

 

 これまた見たことのない技術で鏡に映したような絵を描きあげ、

 

 「恭太郎。今日はなんじゃ?」

 

 「国元の父より、藩政改革を頼まれましたので返事を書いております。」

 

 世継ぎの遊び相手をしつつも、自分の国の仕事もこなしていた。あまりにも他の形式張った面々とは違うことに悪感情は吹き飛び、父より遊び相手に紹介され2年が経過する頃には、

 

 「ささ。今日は何じゃ?何をするのじゃ?」

 

 何かにつけ、どこにでも恭太郎を連れて回る様になっていた。だが、それが気に入らぬものも多く『小才子モドキ』と苦々しく思う人物も多く、

 

 「神原の小倅めが〜」「あの様な者が武家の棟梁に〜」「沼田にいくら賄賂を積んだのか。」

 

 などと陰口や嫌がらせが恭太郎に向けられたが、アヤツは何事もなく対処し、逆に叩きのめしていたというから面白い。

 後々聞いたが、何人かの不届き者を成敗して居たというからアヤツの働きには舌を巻くわ。

 どうやら誰かは知らんが、ワシが将軍になるのを善しとしないものがいるのだろう。将軍を継いだあとは何となくだが分かるがな。

 

 「遠乗りに行く。続け!」

 

 働きの極めつけが五年ほど前に鷹狩の時じゃ。南蛮よりペルシャ馬なる名馬が届いたときき、ワシは喜び勇み、父の前ということもあり良い姿を見せようと奮起しておった。

 しかし、気がつくと人気のない場所に誘導され、覆面姿の大男に馬から叩き落された。

 

 「……!!」

 

 受け身も取れず背中から地面に叩きつけられたワシは声も出せず、このまま大男に絞め殺されると必死に抵抗したが呼吸が整わないまま意識が遠のき始めたころに、

 

 「俺の飯の種に何をするか!」

 

 血相を変えた恭太郎がワシを締め上げていた大男の首を両断した。更にワシが血に汚れぬように羽織までかける気遣いを見せる始末。

 なんだか不敬なことを言っていたが、その働きによって無礼を咎める気にもならん。

 

 「忍びなら忍べ!この真っ昼間。しかも平原で黒装束。目立ち過ぎだ!そして、何かに付けて跳びはねるな!」

 

 次々に脇差しによる剣術と、見たこともない組打術で大男の仲間。どこかの忍びたちを屠る恭太郎。父・家治が異変に気が付き捜索を行い始めた頃には、恭太郎によって曲者たちは骸に変わっていた。

 

 「大義。大儀である。おのれ。どこの曲者であろうか。」

 

 ワシの無事と、打ち身以外の怪我もないことを確認した父は、恭太郎を褒め称える。本当ならば護衛対象から目を離して危険に合わせた時点で切腹モノなのだが、ワシが取りなしたことにより父の怒りの矛先は護衛たちより、曲者に向いていた。

 

 「草の根分けても根絶やしにしてくれよう。意次!良いな!」

 

 「御意」

 

 明日まで行われるはずの鷹狩は父の怒りによって、その場で終わりを告げ、ワシは兵に護衛されたまま恵土城まで戻ることになった。命には変えられぬが、籠の鳥が久々に外に出れたものを、 このような終わりにされたことには大いに不満に思った。

 

 

 

 

 

 「ふふふ。祖父の大丘忠光、父の沼田意次の様に恭太郎も重用し幕府の舵取りをいずれさせねばな。恵土府内の問題もあやつに任せるのも、そのためのものよ。」

 

 そのために国持の大名にもして、好き勝手することも黙認しておる。

 

 (この恵土の膿を出せるだけ出してもらわねばのう。)

 

 ニヤリと笑い、息を吐くと何時もの政務と現実に戻る家基に小姓たちは理解できない反応を示す者もいれば、どこかに連絡を入れる者もいた。

 

 




 アンケートは8月9日火曜日の24時までとします。2票入ってる。良かった。え?志が低いって?

登場シーンで一番と思う時代劇は?(今後の参考・指針に。)

  • 余の顔を見忘れたか。(暴れん坊将軍)
  • この紋所が目に入らぬか。(水戸黄門)
  • 閻魔様の御使ぇよ。(江戸の牙)
  • 天に変わって破れ奉行。(破れ奉行)
  • 地獄へ落ちな 等(必殺仕事人)
  • テメェら人間じゃねぇ!(破れ傘刀舟)
  • 手向かう者は斬れ!(鬼平犯科帳)
  • 桃から生まれた桃太郎!(桃太郎侍)
  • 白州で裁けぬ悪を斬る(鬼役)
  • この金さんの桜吹雪… (遠山の金さん)
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