─────────鏡宗次の死体があった。
月明かりがその姿を明瞭に照らしている。
肩から腰にかけて袈裟に懸けられた深い切り傷は、当時のままのように残存していた。
違う点は、鼻の曲がるような腐敗臭を伴い、「弾痕」に受けた頭部の銃創が新たに出来たことだった。
「.........は、あ?」
驚愕する。
それも当然のこと、かつての自分の心と共に殺した相手が、目の前に転がっている。
「ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな」
「出てくるな僕から出ていけお前はいらないんだクソ親父クソ親父クソ親父クソ親父クソ親父」
頭の中が真っ白になる。
痛みと恐怖、孤独と憎悪が心と思考を支配する。
少女は抗うかのように目の前の
手にした
今度こそ仕留めたと確信するように。二度と出ないようにと願うように。
「ハ......ハァ...ァ...ハァ......」
「くそっ......最悪の気分だ、くそ、くそっ」
少女は息を荒げながらも、頭から血が引いていくのを感じる。
ドクドクとした鼓動と血の流れは燿の精神に一定のリズムを齎す。
最後の一息、頭部を踏み潰すことで漸く頭に登った血が下り始める。
「ッ......ふーーーーーー.........」
深呼吸。
呼吸を繰り返し、息を吸い、吐くことだけに集中する。
「......」
周囲を見渡す。
身体が欲する酸素は隅々にまで巡り始め、燿はいつもの冷静さを取り戻しつつあった。
「...方向が違う。あっちの山は...なんて名前だったっけ」
燿が目視した方向は愛宕山だった。
今までは常に比叡山より百鬼夜行の群れが雪崩れ込み、街を通り過ぎれば
自ずと消滅していった。あるいは、そう見えた。
だが、今回の場合は先ほどの父親の死体と同じように、明らかに異質な存在─────
ゾンビ、死者、そうした形容のみが適するような、
生理的に不快な異臭を伴う存在達が群れを為していた。
「群れが来るな...見た所前のと同じみたいだし、とりあえず屋根に跳ぼう」
路地へと移動し、塀と取っ掛かりを用いて屋根へと登る。
そこから見えた光景はまさに圧巻と呼べるものであり、およそこの世と呼べるものではなかった。
「...うっ...わ、なに、これ。」
燿が見たのは、二つの山より流れ出る亡者と化生の群れだった。
二つの群れは街で交差するように吐き出され、ぐちゃりと時折音を立てながら潰れていた。
それは見事なまでの破壊劇であり、今まで平気な顔をしていた街々は時折軋む音を立てている。
「ん?なんだろ」
ふと、気が付く。
街の数か所に、ぽっかりと穴が開いている。
正確に言えば、穴が開いているように見える────その範囲を避けて群れが通り過ぎている。
燿はその穴に目を凝らす。
どの穴の中にも、1~4人程度が、シェルターに保護されているように存在していた。
「この穴の仕組みか発生原理だか分からないが、利用出来るものは調べる価値はある...」
「でも今の体力じゃ危険か...」
踵を返してアジトに戻ろうとした時
ドン、と背中を叩く衝撃が伝わる。
「──────は?」
そこには、屋上にすら湧き出る死体の姿があった。
ダクソ3をやり始めましたが、そのせいでダクソ的な要素を入れたくなってくる...