スズカ「高尾山?」
「でよー、結局どんな男が好みなのかって話なんだけどよー」
「え?」
一行はカフェテリアにいた。カフェテリアで食事を摂り、雑談に興じていたのだ。たいていの場合はレースの話題であるが、年頃の娘らしく話題は恋愛に移っていた。
一人、食後ぼーっとして『走りたいなあ』と思考をぼんやりとさせていたスズカは、話題に乗りそびれ、聞き返していた。
「やっぱゴルシちゃんはアレだな! 100年後に宇宙一緒に行ってくれるような男が好きだな!」
「イミワカンナイヨー!」
ゴールドシップは相変わらずわけのわからないことを言う。たいていの場合頭の上に疑問符が大量発生するのだが、メンバーほぼ全員が『まあゴルシだし』で納得している。
テイオーがピーピー甲高い声で反応を示すと、ゴルシは腕を組んで顎をしゃくった。
「テイオーはどうなんだよぉ」
「最強無敵のテイオー様のお眼鏡にかなうオトコノコなんているわけないでしょー?」
テイオーがどうだと言わんばかりに自信ありげに薄い胸を反らす。
ゴルシはずずずと氷で薄まったコーラで喉を潤すと追及する。興味があるんだかないんだかわかんない顔で。
「じゃ欲しくないのかよ」
「そりゃあ欲しいケドー……って何言わせるのさ!」
テイオーはばんと机に手を付いた。顔が若干赤らんでいる。
「やっぱ俺はバイクが似合う渋い男が好きかなぁ……」
と小声で話を挟んでくるのはウオッカである。脳裏にあるのは間違いなく自分の父親であろう。恥ずかしいのか声がどんどん小さくなっていき、ついには無言になる。
隣のスカーレットは呆れた顔である。
「今の私たちは恋愛にうつつ抜かしてる場合じゃないっていうのに、ほんとあんたって」
「う、うるせぇなぁじゃあスカーレットはどうなんだよ!」
「やっぱり完璧で頭が良くて……」
やれ顔だ身長だ次々出てくる注文にウオッカはげんなりする。大人っぽい外見のスカーレットであるが、このあたりの感性はまだ子供っぽいらしい。
「おう、スペはどうなんだよ」
「へぇっ!? 私ですかぁ!? こっぱずかしいです! そ、そうですねぇ、力持ちで農作業ができて、牛のお世話ができてぇ……あっトラクターとか使えると助かるなぁ」
出るわ出るわ実家での生活がどんな状態なのかが伺える情報の数々。旦那が自分の農家にやってくることを想像しているのだろうが、まるで従業員募集でもしているような口ぶりに一同苦笑いである。
ちなみに北海道弁はもちろんイントネーションも若干引っ張られており、動揺がすぐに見抜くことができる。
『………』
謎の沈黙が挟まり、視線が一斉にスズカに向くと、ぽーっとしていたスズカはキョロキョロとあたりを見回した。
「僕、ですか?」
丁寧語になったりならなかったりするのはご愛敬である。
話を聞いていたのかいなかったのか、数秒沈黙すると、語り始める。
「僕より身長が高いと嬉しいですね。髪型もおしゃれに気を使っているといいかも」
ふむふむと皆が頷き続きを促すと、スズカはどこか遠くを見ているような目で口を開いた。
「でも外見はそんなに重要じゃなくて、内面の方が………お前の人生がどれだけ道悪でも、俺はお前の人生を、その選択肢がどうなろうとも、応援してやるって感じの、いい意味の放任主義というか……」
『………』
約一名該当者がいるような、いないような、そんな気持ちになってみんなが続きをわくわくして耳を傾ける。
スズカの天然っぷりは筋金入りである。頭の大部分を走りたいに支配されているらしく、授業で指されるとボケボケな回答をしてみんなが笑顔になることもしばしばなのだ。
スズカは口元にかすかに笑みを乗せて、首を傾げてから答えを続けた。
「………そんな人が見つかればいいなあって思ってます」
「ずこーっ!」
ゴルシが盛大に机に突っ伏した。スズカの隣にするりとやってくると肩をいやらしい手つきで撫でる。どこから取り出したのかグラサンをすちゃっと装着して渋い声を出す。
「かつ丼食うか? 故郷のお袋さんも泣いてるぞ」
「奢ってくれるの?」
「そうじゃねぇよ!」
スズカが期待にあふれた顔で反応をする。奢ってくれるなら食べると言わんばかりである。
ゴルシが思わずツッコミに回る程のボケっぷりを披露したところで昼休憩がお開きになったとか。
Q.超回復について簡潔に説明しなさい
スズカ「筋力トレーニングによって筋肉が破壊された後、おおむね48時間~72時間で発生する回復期間のこと。破壊と回復を繰り返すことで筋肉は肥大していくことで知られている。なおトレーニング終了後30分……(略)」