作中で具体的にどこなのかはわからないですけど、多分府中でしょう。じゃなきゃ練習で使えないので
実は僕は、ダービーと同条件のレースに出たことがある。リギルにいたころの話だ。リギルの頃、実際僕はあまり成績がよくはなかったと思う。リギルのやり方は余り調子に合わなかったというのもある。
レースでは、先頭どころか、他のウマ娘の尻尾を追いかける格好になっていた。
『はぁっ、はぁっ、だめだ………長すぎる………!』
良馬場、芝、2400m。4番人気。このレースこそが、僕が1600~2000m限界説を感じたレースだ。
期待を込めてレースに出たはいいものの、逃げが通用しなかった。正確には他が速過ぎたというのもある。途中まではよかったのだけど、最後がきつすぎた。スタミナが完全に切れてしまい、ついていくので精一杯。9着だった。バ群に飲まれてなんとかゴールと言った感じで、先頭との差は二秒以上あったと思う。二秒なんて誤差と思うかもしれないが、ウマ娘の平均速力で考えれば、33mは差があった計算だ。
「スペちゃん、ファイト!」
府中にある神社に僕たちはやってきていた。無病息災、そのほか色々ご利益がある小奇麗な神社だ。死ぬほどきつい階段があることでも知られていて、密かな坂路トレーニングスポットである。使っても構わないと神社の神主さんからは言われている。
「スペ! ラストだー!」
階段上で沖野トレーナーがストップウォッチ片手に声を張り上げる。階段を登って、スタミナをつけるのだ。
「よーい! スタートォ!」
スペちゃんが鳥居をくぐって駆け上がってくる。凄まじい速度だ。坂道に関しては、彼女がチームで一番速いかもしれない。逃げ最速は僕ですけどね。もちろん。
しかし、本当に疲れた。僕は地面で胡坐を掻いて座っていた。呼吸を整えようと頑張っているところだ。
死屍累々。チームメンバーは地面に転がっていた。
「ヅガレダー! トレーナーどうして今日はスパルタなの?」
「もうちょっとがんばれっで……?」
テイオーとゴルシが不満を口にするが、沖野トレーナーは振り返りもしない。
「タイキシャトルの走り、見ただろ? 坂でスピードを落とさないようにするにはピッチ走法を体に叩き込むしかない」
僕が見ている前で、風のようにスペちゃんが階段を登って、今ゴールへ急接近!
「スペ先輩すごい! これ何本目?」
バテバテのスカーレットが四つん這いで階段下を覗き込んでいる。
何本目かは数えるのを忘れていたよ。
「今度のダービーは今までより長い! 疲れ切ったラストに坂があるんだ! これくらいでへばるなよ! スペ!」
喝を入れる沖野トレーナー。スペちゃんが綺麗なフォームで駆けあがってくるのが見えた。
ゴールイン。
「た、タイムは………?」
「42秒8」
『おおー!』
「やるじゃねぇか!」
「新記録ですね、トレーナー」
「やりました! どうですかトレーナー!?」
嬉しそうに振り返るスペちゃんに対し、沖野トレーナーは首を振る。
「おいおいせめて40秒切ってくれないと」
うーん、痺れる。締めるところは締める、緩めるところは緩める、厳しくするところは厳しくできるのは沖野トレーナーの美点だ。
スペちゃんが口をへの字に曲げて反論する。
「これが限界ですよっ!」
「あちゃーざんねん」
トレーナーが肩をひらりとすかして、挑発しにかかる。
「限界超えられないようじゃあの二人には勝てんだろうなぁ」
「トレーナーさん! もう一本お願いします!」
スペちゃんが階段下にかけていく。僕はそれを見て、ふうと息を吐いた。そろそろいいだろう。せっかくだからやらねば。
「沖野トレーナー、次、僕がいきます」
「いいねぇ、根性あるのは嫌いじゃない」
「クッソー! そこまで言われてやらないわけにもいかないジャーン!」
「俺もいきます!」
「私も!」
「あちゃぁぁぁアタシ三日目くらいの佃煮くらい疲れてるから~~」
「オラ行ってこいゴルシ!」
尻を叩かれ(比喩表現)ゴルシと僕達も再び階段チャレンジに挑むことになったのだった。
『…………』
たくさん
『ほどほどにな』
とか言いながらトレーナーは途中で帰ってしまった。まあ、色々仕事もたまってるんでしょう。書類仕事やらもあることだし残業もつけ放題にはできない。タイムカード切って働いてそうだしなんなら休日も仕事してそうなんだけどね。
ちゃんとご飯食べてるんだろうか。今度聞いてみよう。
「も、もういっぽんお願いします!」
「この辺にしておこうスペちゃん。ちょっとゆっくりしていかない?」
日暮れ後。夜景が綺麗に見え始める頃、僕とスペちゃんは階段に腰かけて雑談をしていた。
ちなみにメンバーは疲れて眠りこけている。風邪ひかないかな?
「ダービーに出たことがあるんですか?」
「ううん、距離とレース場が同じレース。距離が長すぎてだめだったんだよね。うまく限界を引き出せなかった……」
「限界ってどうやったら超えられるんでしょうか……」
「限界ね……」
限界を超える術があるならば、僕はそれをやりたいと思う。
僕を首を振った。
「僕にもわからない。まだ、超えたことがないんだと思う」
「そうですか……」
「これから一緒に探そう?」
「はいっ!」
「さてと」
僕はお尻の埃を払って立ち上がると、境内で寝ている不審者一歩手前の面々を見てため息を吐いた。
「起こさなきゃ……」
指摘を受けて修正
ううん難しい。ちょいちょい直してるので「ん?」と思ったら修正したんだなと思ってください
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