「ウェミダー!」
テイオーが大喜びしていた。
夏合宿に来た。と言っても短期間海でちょっとした特訓するだけなんですけどね。
「スペちゃん意外とおっきいなあ」
尻尾ですよ?
「ゴルシおおきいなあ」
身長ですよ?
「スカーレット、中等部かよ……この前までランドセルかぁ……」
身長だからな?
やったことと言えばスクワットしたり腕立てしたりバーベキューしたり勉強したり……。
海でツイスターもやったけどこれいる? 嫁入り前の娘にさせるポーズじゃないよ! これいうの二回目だけど! スペちゃん四つん這いだしウオッカ大股開きだし! 元男の精神を持つ僕が言うのもアレだけどはしたないと思います!
ていうか泳いでないじゃん! と思ったのでみんなでちょっと泳いだけどね。水泳はできるんで。
当たり前ということなんだけど沖野トレーナーは勉強もできた。先生と比べると流石に教え方が拙かったけど、大学とか出てるだろうし、普通に理解できたね。
「寝るな!」
まあはしゃぎ過ぎたテイオーがうつらうつらしたりするということはあったのだけど。
僕?
「走りたいなあ……こんな海岸走れたら素敵だろうなあ」
「集中しろ!」
と突っ込まれてたよ。
合宿というよりこれはあれだね、修学旅行だと思ったね。あの勉強とは名ばかりの、観光旅行。
まあ走ったんですけどね。ひとりで。
あと散歩もした。
「沖野トレーナー、ちょっと海岸走らない?」
「スズカ、ウマ娘基準で考えるのはやめろ」
「じゃ、散歩しよう!」
「それなら、構わないけどよ」
夜の海岸を二人で散策したりもした。
なんかヒューヒューみんなに言われたんだけど意味が分からん。普通に散歩してるだけじゃん?
「え? みんなもしないの?」
とか言ったらすごく残念なものを見る目で見られたんだけどこっちも意味が分からん。
こうして月日は流れて、夏の次にやってくるは秋だ。
秋のトゥインクルシリーズファン大感謝祭―――まあ実質的なオープンキャンパスみたいなもんじゃないか。そんな時期になったのだった。
出し物に関してはチームごと、クラスごとにやるものが基本で、スピカはやらないことになった。出し物は一般の業者の人が大量に押し寄せてやるし不足するということもないしね。
なにしろトレセン学園に入れるチャンスだ。ウマ娘用の商品の宣伝の為に企業が出し物をやってくれるという例がわんさかある。シューズとか、蹄鉄とか、ウェアもそうだし、食品関係もそうだ。トレセン学園、すごい人材が多すぎて麻痺しがちだけどエリートたちの集いだからね、特にこの『中央』は。入学できた時点でエリートみたいなもんだ。
「こことこことここと………うーん悩むなあ」
僕は部屋をぐるぐる左回りしながら悩んでいた。せっかくだし楽しまないとな。時間は限られてるし、やりたいこともあるので、計画をあらかじめ立てておかないと。
「スペちゃんはどこ回る?」
「私ですか? 私は――――」
感謝祭当日。
みんなで回ろうぜって話だったんだけど、
『これより、秋のトゥインクルシリーズ、ファン大感謝祭を開催いたします。心行くまでお楽しみください』
「カイチョーの声だ! スペちゃん、ちょっと行ってくるね!」
「テイオーさん?」
あぁ、確かにこの声シンボリルドルフの声なんだろうとは思う。イベントとか、集会とかで何度か聞いたことあるけど、こんな声だったな。
テイオーがぴょんぴょん飛び跳ねて、それからものすごいスピードで走って行ってしまう。
「カイチョー!」
随分慕ってるよなぁ。個人的には会長さん嫌いじゃないんだけど、何もかも見通してくるようなあの目つきが怖くてね。人の内面まで観察してるような、あの目。実際に詳しく話したことがあるわけじゃないから、人間性までは知らないけどね。*1
「今日は、みんなで……」
「ふふ……予想はしてたけどねぇ」
「よぅし今日は稼ぎまくるぞー! 看板娘よろしくな」
一方ゴルシはゴルシ弁当とか書かれた箱を抱えていた。お前……弁当も作れるのか。ゴルシが料理してるところを想像するだけでもう面白いんだけど、この後の展開が読めるようだ。かけてもいいけどなんか仲のいいマックイーンが看板娘になるんだろう。隣でむすっとして腕組んでるけど、君逃げた方がいいよ……あっ捕まった。
「ええっ!? どうしてわたくしがー!? 離してください! わたくしは皆さんと一緒に楽しみたいのにー!!」
ゴルシにマックイーンが拉致される。なむなむ……。看板娘さんよ、骨は拾ってやるからな。
「さて、どこから回るのがいいかな」
「私は全部回るつもりだけど、あんたについてこれるかしら?」
ウオッカとスカーレットがそんなことを言い始める。君たちほんと仲いいよね。これはもう読めたよね。
「なんだと! 俺が先に回る―!!」
「ちょっと、何フライングしてんのよ!?」
ウオッカとスカーレットが走り出してあっという間に見えなくなってしまう。
ぽつんと残された僕達は苦笑いするのであった。
「は、早くも散り散りに……」
「スペちゃん、行こうか、楽しまないとソンだよ」
「そうですよね!」
こうして僕たちは、二人であちこち回ることになったのだったとさ。
どこから回ろうかな。計画だと……。