僕はサイレンススズカ   作:キサラギ職員

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ツイスターゲーム、スペちゃんのお尻しか記憶に残ってませんでしたね、ええ(懺悔)


3、体幹トレーニングはパワートレーニングなのか否か

 

「全然起きないや……」

 

 授業。それは中等高等教育あるいは大学に相当する教育を施すためのもので、ウマ娘としての基本的な知識も当然のことながら入ってくる――――。

 のだが、僕の興味は走ることだけだ。あとはアウトドアくらいか。要するに、全然勉強に興味がないのだ。いつも窓を見つめて走れるかどうかを、あとは授業で当てられないように祈ることくらいである。

 しかし、参った。これでも時間には厳しい方なので起きてご飯を食べ顔を洗い歯を磨き身支度整えて余裕を持って登校するのだが。髪の毛が面倒なのが欠点である。伸ばした方が綺麗と言われて伸ばしたけどめんどくさいんだよな。結婚した人が断髪してしまう理由がよく分かった。

 ………しかし、声をかけて揺すっても、こいつ全然起きない。そう、スペちゃんである。

 

「ぐかー……ことりさんまってぇ」

 

 どんな夢を見てるのか知らんがギリギリになっても起きないのだ。その、ベッドで布団抱いて腹を見せて寝るのを止めろ。元男の記憶がある僕に言われるって相当だぞ。

 

「置いていこうかな……いやでも」

 

 ここで見捨てると初遅刻の記録を刻ませてしまうので、なんとか起こさねば。

 頬をぺちぺち叩く。

 

「スペちゃん、起きて。起きてください」

「ぐう」

「起きて……起きろ」

「ううう」

「起きろ!」

「うーん」

 

 ほんとは起きてんじゃねぇのこいつ。ちょっといらっとしたけど、ここはマジックで顔に落書きを……しないよ。一応は優等生ぽく振る舞ってるんで。

 担いでいこうかな。ファイアーマンズキャリーで。ウマ娘の膂力ならできちゃうんだよね。聞いた話では引退後レースの成績が芳しくなくても、引っ越し業者とか工事現場とか消防士とかに引っ張りだこらしい。

 ビンタしようかな。シャワーで水ぶっかけてさ。起きてください! 私ですサイレンススズカです! とか。いかん妙な電波を受信したな。しないよ。*1

 

「こちょこちょこちょ!」

「ひあ!? あははははははは!? すっスズカさん!?」

 

 くすぐったら流石に起きた。きょとんとしているので時計を指さす。

 

「準備しないと間に合わなくなっちゃ……なっちゃいますよ」

「あっ!? もうこんな時間!? スズカさんありがとうございます!」

 

 ペコペコしながらいきなり服を脱ぎ始めるので、僕は慌てて目を反らす。自分のは何度も見たけど他人のは見る趣味がないので。

 ………でかいな。僕のが小さいだけなんですけどね。別に気にしてないよ。空気抵抗が少ないからいいじゃん。……少ないじゃん。

 

 ということでウマ娘特有の走力で登校。

 

「おはようございますー!」

「あったづなさんおはようございます」

「おはようございます!!」

 

 校門で待ってた理事長秘書のたづなさんに挨拶をして校舎へインだ。

 

 もちろん授業は上の空。いいんだよテストだけ通過できりゃ。あとは宿題。宿題は教科書と睨めっこすれば大体何とかなるし。

 スペちゃんに多分優等生のイメージを持たれてるぽいけど、僕はこんな調子である。幻滅? してくれてもいいよ。そんなことより走りたいだけだし。

 放課後。エアグルーヴ先輩にスペちゃん呼び出し食らってたけど、なんかやらかしたんかなぁ。会長の説教食らうくらいのことってなんだろう。

 

「ん?」

 

 放課後。校庭のターフを走っていると、遠くにスペちゃんとトウカイテイオーが並んでどこかに走っていくのが見えた。なんだろう。施設の案内とかだろうか。

 僕は興味があったけど、まずは後ろに並んできている子が僕のことを風よけに使おうとしているのを後ろ目で確認した。

 

「させないよ?」

 

 一気に加速。ズダンと蹄鉄をターフに埋めて、関節のショックアブソーバーを使って伸ばす。引き離すのを感じる。少し速度を緩めて一息入れて、それから差す。逃げて差す。これが僕の戦法だ。ようは、誰にも前を譲らなければ、競り合いにはならない。理論上はそうだ。

 後ろの子はある程度粘ったけど、体力切れを起こしたのか失速した。

 

「むーりー!」

 

 無理だろうねぇ、僕に追いつけると思うなんて。もっとトレーニングを積んできて欲しい。

 

 まあトレーニングと言ってもチョイスが謎なんですけどね。なんでツイスターゲームやらされてるんですかね? 僕は。嫁入り前の娘にさせるポーズじゃないぞこれ。低いブリッジ(?)のウオッカの上に四つん這いで伸し掛かるスペちゃん。

 

「レースは格闘技だと思え。相手が体当たりしてくることもある。それでもバランスを崩さないよう体幹を強くしないといけないんだ」

「トレーナーさん、これほんっっっとうに意味あるんですか?」

 

 沖野トレーナー相手には敬語が取れる僕だけど、周りに人がいるときは極力敬語にする。一応目上なんでね。

 

「意味はある!」

「本当に?」

「鍛えながら同時に楽しいだろ? 楽しいのは大切だぞ」

「なあ私にもやらせてくれよ沖野っちぃ!」

 

 っちってなんだよゴルシ。お前ノリがいいなほんと。

 

「これ意味ないわよね……」

「あ、腰が……」

 

 呆れ返るスカーレットと、苦悶の表情のウオッカ。がんばれ、もう少しだ(?)

 もうめちゃくちゃである。リギルのメンバーが通り過ぎていくその眼の冷たいことと来たら。ウオッカの腰が逝く前になんとかしたいけど面白そうな恰好なのでその旨を良しとする。

 という遊びみたいなトレーニングもあったわけだけど、普通のトレーニングもあった。走り込みとか、筋トレとか。なんだよやればできるじゃないかよ。

 走り込み、腿上げミニハードル越え等、普通のトレーニングを日々積み重ねていく。スペちゃん、今までトレーニングなんてやったことないにしては、なかなか根性あるなと思った次第である。

*1
334か所の刺し傷だぞ!

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