・スペちゃんが立ち直っている
ので合宿のちょっとギスギス感がなくなってガチアスリートの戦いみたいになってます
「Aチーム スペちゃん、ウオッカ、テイオーにマックイーン………Bチーム、僕にゴルシにスカーレットかぁ」
何やら部屋の扉に紙が貼ってあった。これは………なるほど、仲良し組を分けて、あえて競わせるやり方か。豊臣秀吉形式ということかな。
沖野さんは一人部屋か。いいな、一緒に泊まりたかったけど流石にそれは分別がない。
「ということで今回の夏合宿は二チーム制で行う!」
玄関に集合させられた僕達は、僕の予想した通りのことを言われたのだった。
スペちゃんと僕は特に仲がいい。マックイーンとゴルシもそうだ。ウオッカとスカーレットもそうだ。テイオーはみんなと仲がいいので、適当に振ったんだろう。数がどうしても奇数なので割り切れず、四人と三人になっているのはもう仕方がないだろうが。
「そして合宿のテーマは……」
『慣れ合い禁止』
と書かれた紙をばばんと沖野さんが見せつけてくる。結構字うまいっすね。習字でもやってたんだろうか。
「お前たちはアスリートだ。誰かと競う前に、まずは自分自身と戦わなくちゃならない。そこで今回はチームを分けて、競ってもらう。合宿の最後には勝負をしてもらう。以上だ!」
沖野さんが号令をかけた。
「よしいけ!」
「あいさ!」
僕はゴルシとスカーレットと共に走り始めた。全速力で走ってるわけじゃない以上ついてはいける―――というのは甘かった。最近メキメキと実力を付けている二人と、何か月も鍛えていなかった僕では雲泥の差がある。
「くそっ!」
どんどんとおいて行かれる。これだよ、これ。先頭を取りたいのに取れないこの感覚………たまんないね。最高に気持ちが昂る。絶対に抜く。
しかし抜けない。
「はっ、はっ、はぁっ、ちぃぃっ!」
ゴルシが加速する。なんて足だ。特に整備されてるでもない草原の上をゴリゴリと戦車のように進んでいく。
スカーレットが逃げていく。同じ逃げだが、僕の逃げよりも速い。
みんな成長しているのだ。僕が怪我をして停滞していただけかもしれないが。もう一度怪我をする可能性も十分あるが。
「知ったことか!」
加速する。二人の背中を追いかける。この程度で骨が折れるわけがないのだ。僕のトレーナーとしての勘がそう言っている。しかし、抜けない。それどころか息が切れてきた。
「くっそ、くそ………」
足が止まる。体力の減少は思ったより激しいらしい。
「違うな、怖いんだ……」
もう一度骨を折ったら? 開放骨折でもしたら? 同じ場所を二度粉砕骨折したら?
そんな恐怖心が限界の先を見せることを拒否しているように思える。これはもう、トラウマというやつだろう。無意識的に力にセーブをかけてしまっているのだ。訓練して、何度も反復して、克服するしかない。
「沖野さん! もう一回! もう一回やる!」
「よし、その意気だ!」
僕はスタートラインに戻ってきた。ちらりと違う方向を見ると、実にイキイキと走っているスペちゃんがいる。立ち直ったようだ。立ち直ったようで、実際には元通りにはなっていない僕と比べると、なんと強い子だろう。
「スズカー無茶すんなよなー」
「そうですよ無理は禁物ですよスズカ先輩。トレーナーに心配させちゃダメだと思うから」
「いや! 無茶をしないと先には進めない。今度は抜いてやるから覚悟しておけっての」
僕はそう挑発を吹っ掛けると再び走り始めたのだった。
負けてたまるものか。もう、負けないって誓ったんだから。
「………雰囲気変わった感じしねぇ?」
「変わったというか腹が決まった感じはするわよね………」
「トレーナーとの絶妙な距離感もちょい気になるってゴルぴっぴの本能が言ってる」
「わかる」
そこ、聞こえてるぞ。
「トライアスロン??」
「そうだ」
海岸に集められた僕達は、水着(?)に着替えさせられていた。これ水着だけど、あれだよね、トライアスロン用の服だよね。
沖野さんは少し先に見える丸い形をした島を指さした。
「ここからあの島まで泳いで行ってもらう。そして自転車でぐるっと一周回って、山を登って下ったところがゴールだ」
「はえー随分準備に時間かかってそうだね」
まず許可とらんといかないしね。自転車の準備もそうだし。多分船か何かで沖野さんついてくるんだろうし。
沖野さんはあからさまにやる気を失ってる面々を前に言う。
「景品として、なんとリギルのホテルのスイーツ食べ放題券を付ける!」
「じゃお先!」
僕は誰よりも速く海に飛び込んだ。トライアスロンなんてやったことはないが、これは面白そうじゃないか。水泳はそこそこ得意だ。ウマ娘のバリキがあれば、すいすいと行ける。
フライング? いいんだよ、そんなこと。先手必勝だわ。
「スズカさん! 負けません!」
次に飛び込んだのはスペちゃんだ。
「あ、フライングありかよ! ゴルシちゃんのサメ泳法見せてやんよ!」
「俺も行くぜ!」
「ま、待ちなさい! わたくしが先ですわ!」
「待ちなさいよあんたたち!」
後ろから続いてくる面々を前に僕は先行する。水中なら骨への負担もないだろうしな! 自転車もそうだし。走りは…………克服しないといけないんだ。やるしかない。
「先に行って待ってるぞー!」
後ろからモーター音が聞こえてきたかと思えば、水上オートバイで沖野さんが抜いていく。ますます前職が不明な人だなぁ。趣味でやってるのかもしれないけどね。なんとなくだけど、元スポーツ選手っぽいところがあるし。トレーナーになったというからには、そういう学校出てるはずなので、興味がないわけがないだろう。
流石にウマ娘でも水上オートバイに勝てるはずがない。沖野さんが先に上陸して自転車を準備しているらしい姿が見える。
「負けてたまるもんか!」
僕はクロールで海水を掻きながら、水がかかってうまく発音できないものの、呟いたのであった。
ゆるというかしっとりしてきたな
鬼束ちひろ聞き過ぎですかね? これはサザン聞きなおしてマンピー(規制)