僕はサイレンススズカ   作:キサラギ職員

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依存される側が実は依存して甘えていた構図、あると思います


43、先頭の景色は譲らない・・・!

 

「きっつ」

 

 水泳の次はさっそく自転車に乗って島をぐるっと一周だ。ウマ娘のバリキで自転車を漕いでるのだ、それこそ余裕で僕の全力並みの速度で巡行できるわけで、当然のことながら沖野トレーナーは原付スクーターでついてきていた。

 

「どけどけー!」

 

 ウオッカが妙に楽しそうだ。バイク好きなくらいだし自転車も、まあ好きなんだろう。ウマ娘の自転車は乗用車と遜色ない速度が出ちゃうし。

 

「スイーツ食べ放題はいただきますわ!」

「お先にしつれーい! 先頭はボクがいただくよーん!」

「テイオー! お待ちなさい!」

 

 マックイーン、最近尻尾を出してきたように思える。意外とというか、食い意地の張ったお嬢様版スペちゃんみたいなやつだった。もっといろいろ隠してそうだけどね。実は野球好きだったりして。んなわけねーだろ。

 僕は頑張って漕いでいるんだけど、それでもどんどんとおいて行かれてしまっている。チームというより個人のタイムアタック染みてきたな。

 全力を出している、つもりではいる。体力的に落ちているのは確かなんだけど、どうしても恐怖がある。

 思ってしまうのだ。もしもう一度負傷して、今度は再起不能になったら?

 天皇賞秋という運命を乗り越えては来たけれど、ここで再起不能になったら、僕はどうすればいい? サイレンススズカに、どう申し開きをすればいい?

 

「ぜえっぜえっぜえっ!」

 

 島ぐるっと一周の後は、島を横断する形で走っていく。普通の人間がやれば水泳の時点でバテバテだろうけど、そこはウマ娘。ぶっつけ本番でも普通に走れちゃうのだ。

 その為にはまず自転車を置かねばならん。僕は先を行くスペちゃんを追いかけて、自転車のペダルを漕いだ。

 

「………」

 

 スペちゃんは、苦しそうな表情はしていない。僕のことに合わせてくれているような気がする。実際他のメンバーがどんどん先に行くのに、スペちゃんは僕の目に見える範囲にいる。

 僕は自転車を指定のポイントにサイドスタンドを出して停めて、走り始めた。

 スペちゃんが前にいる。僕は情けないことに最後尾だ。

 少し先に、沖野トレーナーがいるのが見える。僕達を待っていたようだが………。

 

「スズカさん!」

「なに?」

 

 走りながら、スペちゃんが声をかけてきた。僕は返事をする。

 

「“本気を”出してください!」

「これが本気………」

「違います!」

 

 僕が言いかけるとスペちゃんが遮った。停止している沖野さんの横をすり抜けて、前へ、前へ。

 

「私の知っているスズカさんはもっと速くて、どんな時も全力で、私が追い付こうとしても追いつけない人なんです!!」

「スペちゃん………」

 

 僕は、スペちゃんの背後につけて走っている。これは先頭の景色等ではない。

 

「怪我は治っていると聞きました! あとは、本人のやる気次第だって! なして!? なして走らんと!? ねぇ、なして!?」

 

 事実だ。高負荷をかければ怪我する、“かもしれない”という話であって、再起不能だとかという話ではない。それに僕は、この負荷を受け流す手段を知っているじゃないか。

 スペちゃんは、僕の怪我の話について誰に聞いたのか。僕達の背後に付けている、沖野さんだろう。

 

「だから………」

 

 振り返ったスペちゃんの表情には、怒っているようでもあり、悲しそうでもあり、僕の心中に突き刺さる、寂しそうな視線が据えられていた。

 

 

 

 

 

「お願い“スズカ”! 本気で走って!!」

 

 

 

 

 

 

 

「依存してたのは僕の方だったか………」

 

 

 僕は目を閉じて、再び開いた。

 スペちゃんに大口叩いておきながらこの体たらく。恐れて、依存して、実力を意図的に温存していたのは、こんなことをするためじゃないはずだ。僕はサイレンススズカ。誰にも先頭を譲らない意地っ張りな女のはずだ。

 何をやっている? お前は走りたいはずだろう? 僕につきっきりになっているスペちゃんに甘えていたのは、実は僕の方だったのだろう。

 

On your left!(左から失礼)

 

 最近は英語の勉強もしてるわけだが、このセリフは言ってみたかったんだよね。

 僕は一息で最大速度を出した。左足への負荷を軽減する、独特な走法をにじませながら疾駆する。たづ………トキノミノルから教わったそれは、今の僕にはうってつけの走法だった。

 お前(スズカ)は、もっと速く走れるはずだろう? そうさ、できるはずだ。やってみせろ。

 僕はスペちゃんを背後から差した。

 

「それでいい! スズカ、お前は誰よりも速く駆け抜けて行け!!」

 

 原付に乗った沖野さんがどんどんと後方に追いやられていく。僕の発揮する速度は明らかにそれを凌駕しているからだ。

 天皇賞秋を思い出せ。この程度、屁でもない。たかがみんなを追い抜くだけじゃないか。

 

「うわっ、スズカが来た!」

「うそっ! あれだけリードしていたのにですか!?」

 

 ゴルシとマックイーンのお尻が見えてきた。頂く。

 僕の背後からスペちゃんが追いかけてくる。

 

「スズカさん、負けませんっ!」

「そいつはどうかな?」

 

 

 先頭の景色は譲らない・・・!

 

 

 僕はまず手始めにゴルシとマックイーンを左から抜いた。馬場と違ってコンクリートだ、走り方を工夫しなければバリキが逃げてしまうだろう。ターフと違って道は曲がりくねっている。徒競走を思い出せ。そうだ、お前は人間の走り方も知っているだろう。体を大きく倒し、遠心力を相殺しながら、今度はテイオーを横合いから抜き去る。

 

「うううっ!? 速いっ!」

 

 お次はウオッカと、逃げているスカーレットだ。ちらりとこちらを窺うその表情は焦り一択。貰った。

 

「やば!? くっそ速い! おいスカーレット! 後ろからってもう抜かれた!?」

「えっ!? あっ、速い! 追いつけないわ!」

 

「先頭の景色は、誰にも譲らない!! 誰にもだ!」

 

 全員を抜き去り、ついに僕は先頭へと躍り出たのだった。

 が、速度を上げ過ぎた。しかも下り坂で。ブレーキなんてものは僕達についていない。急カーブが見えてきた。

 そういや急カーブ注意の標識出てたなァ………。

 ………落ち着いてる場合じゃない!!

 

 

 

 

 

「あっやっば………嘘でしょ!?」

 

 

 

 

 

「とまれなーい!!」

 

 

 そして僕は見事に曲がり切れずに道をはみ出し、そのまま海岸へと突入。後ろを追いかけて来ていたみんなもまとめて海岸に突入して…………。

 

「お前ら大丈夫か?」

 

 まあ察してください。

 




一人一人では単なる火だが略
だが、私は謝らない!
まあスズカさんでもいいんですけどあえての呼び捨てはやって欲しい。喝を入れるためにも

ちなみに次の朝の更新はちょっとだけ厳しいです
チームメンバー全員にレースでもやらせてみようかな
幕間でもいいし、おまけでもいい
ネタが切れかかっている感じありますあります

そろそろ終盤だけどどうですよ?

  • すぱっと切って終わる
  • 匂わせて終わる
  • アフターが読みたい
  • 幕間もっとください
  • おまけが足りない
  • 沖スズならなんでも
  • その他
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