僕はサイレンススズカ   作:キサラギ職員

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スズ×エアグルーヴ、あると思います


50、トレーニングの日々

 

 

「走りたいな………」

 

 僕は、廊下を歩いていた。

 特に最近は走ることばかり考えているか、沖野さんのところにいる。沖野さんほったらかしにするとカップ麺とかゼリーで食事済ませて帰ったら酒飲んで寝てるような人なので、ほったらかしは色々とまずい。一番楽なのは独身寮に押しかけることなんだけどなー、それ目撃されると面倒だしー。

 

「すてきー……」

 

 ? 

 なんか素敵とか言われるんだけどなんで? 走りたいなって内面で考えてるだけですけど?

 

「スズカ?」

「ライアン。どしたの?」

「脚、本当に大丈夫なの?」

 

 ばったりと筋トレマニアことメジロライアンと出くわした。足の調子を聞いてくるので、返答をする。つもりでいたところもう一人出てきたではないか。

 

「あーライアン抜け駆け」

 

 チケタイことウイニングチケットちゃんも登場である。いちいち声が大きい子だ。酒でも飲んでんじゃないのかなって言うハイテンションで、ナリタタイシンって花屋の娘の子と、あと毛玉じゃないビワハヤヒデって子といつもくっついている。

 

「抜け駆けってなんの勝負だよ」

 

 ナイスネイチャもやってくる。あの、髪の毛を両側でくくった子だ。ボリューミーな毛量、手入れが大変そうだなと思う。

 

「だって一緒に言いたいし!」

「わがままなんだから!」

「じゃあ今一緒に言おうよ」

 

 一緒にって、ナイスネイチャさんや、何を言うんだい?

 三者肩を組んで、

 

『応援行くからね!』

「あ、ありがと」

 

 応援か。きっとみんな来るんだろうなあ。

 僕はその場でぺこりと軽く頭を下げたのだった。

 

 

 

 

 夕方過ぎ。僕は体育館で開脚前屈をしていた。全力疾走後のケアはかかせない。

 あーどうしよ。夜の空気堪能しようかな。でもオーバーワークとか言われるんだよな、沖野さんに。

 などと考えていると、制服姿のエアグルーヴとタイキシャトルが入ってきた。

 

「スズカ帰らないのか?」

「もうちょいね、やってから帰るよ」

「相変わらずストイックですネ!」

「負けたくないだけだよ」

 

 本心だ。厳しいんじゃない、負けたくないだけだ。誓ったからだ。

 

「復帰レースだもんな」

「心配してくれるの? ありがと、エアグルーヴ」

「心配などしていない!」

「Oh,ジャパニーズ“ツンデレ”、ですネ!」

「タイキ!!」

 

 相変わらず弄られがいのある女の子だよなぁ、エアグルーヴ。ボケのタイキシャトルと組み合わせると漫才が見られて個人的に好きだ。

 

「私も筋トレしたくなってきまシタ! スズカここでやってもオーケー?」

「構わないけど」

 

 え? こんな時間に? って僕が言うなって話なんですけどね。

 僕は目線を合わせてくるタイキシャトルに言った。別にここ占領してるわけじゃないからね。

 

「おっおいスズカの迷惑に……」

「ならないでしょ。ちょうど暇してたとこなんだけどエアグルーヴもやる?」

 

 僕が言うと、タイキシャトルがニコニコでエアグルーヴの腕を掴んで連れて行こうとする。

 

「ううむ……わかった、着替えに、ぐあっタイキ引っ張るんじゃない!」

 

 こうして、門限近くまで筋トレと柔軟を一緒にやったのだったとか。

 それにしてもタイキの言うベロちゃんってなんのことなんだろね。エアグルーヴ軽くキレてたけど。あだ名かなにか?

 こうして僕は、毎日練習を重ねていった。何せ、トレーニングでしかレースのようなことはやってきていないのだ。本番は、サンバイザーなる調子のいいウマ娘も出場することだ。警戒するに越したことはない。特に怪我上がりの僕のようなウマ娘はだ。

 

「スズカさん素敵よね………」

「ミステリアスっていうか……」

 

「………?????」

 

 最近こんな風に言われるようになってきたんだけど、いうほど素敵か? だって走りたいなって考えてるだけなのにそういわれるんだぜ。それともあれか、走りが素敵だって言ってるのかなだとしたら、それは嬉しいことだけど。女子にモテても別に嬉しくないのがなんとも。

 一人に愛されれば、それで十分だよ。みんなに愛されるほど、僕はできたウマ娘なんかじゃないんだ。

 

「スズカ。集中できてないぞ!」

「あ、ばれた。走りたいって思ってただけなんだけど」

「……集中はしてるのに、考えるのが走りたいって願望で上の空なのが実にお前らしいが……もう一本だ! 行ってこい!」

 

 最近の沖野さんはスパルタだ。僕にとって都合がいいんだけどね。

 

「応っ!!」

 

 僕は言うと定位置についた。自然体から、走り為の姿勢に移行。

 

「ふっ!!」

 

 呼吸を吐き出しつつ、片足を引き上げて、体を推進させる。

 敵は自分自身とはいえ、もしかすると開幕は先頭じゃないかもしれない。そうなると駆け引きが必要になるかもしれない。駆け引きをイメージしつつ、他のウマ娘の背中についたことを想定して、僕は足を動かした。

 インコース。背中に付けて風よけにしつつ足を溜める。コース後の直線で外側に膨らんで、ブチ抜く。そして、一息入れる。

 

「はっ!!」

 

 差す。

 

「先頭は僕のものだ!」

 

 僕は仮想の敵に吠えた。

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