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「地名(自然現象)」「若人(健児)」「つわもの(ますらお/もののふ)」「集う」「声高く」「戦技(技量/練武)」「鍛える」「おお(ああ)」「我ら」「部隊名」
リズムに七五調を採用した上で上記を使うとオリジナルの隊歌ができます。隊歌を創作する際にはぜひ参考にしてください。
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■ 本話登場人物紹介
【宇佐美誉(うさみ・ほまれ)】
大尉。第92戦術機甲連隊第13中隊長。コールサインはパッパ1(MiG-29SEK)。
陸軍大学校を卒業しているらしい。部下に危険な命令や無神経な物言いをすることが多い。
【湯川進(ゆかわ・すすむ)】
中尉。第92戦術機甲連隊第13中隊の中衛小隊長(B小隊長)。コールサインはパッパ5。
グレネード装備のF-4EJ改を駆り、九州北部の防衛戦を戦い抜いた(33話)。自身を危険に晒す命令でも素直に遂行するが、宇佐美大尉に対しては内心反発している。
山口県出身で家族も同郷。BETAの西日本侵攻前に仙台へ引っ越させることに成功したが、さらなる引っ越しを勧めることを切り出せずにいる(49話)。
【草水虹華(くさみず・こうは)】
中尉。第92戦術機甲連隊第33中隊の後衛小隊長(C小隊長)。コールサインはラビット9(A-10C)。
父が送ってくれた合成緑のたぬきをまずいと切り捨てた(56話)。
【日高大和(ひだか・やまと)】
中尉。第92戦術機甲連隊第11中隊の前衛小隊長(B小隊長)。コールサインはゼノサイダ5(F-14N)。
寡黙な性格。近接戦闘に長けており、その腕前は斯衛軍の衛士にも劣らない(13話)。
【八倉世理子(やくら・よりこ)】
大尉。第92戦術機甲連隊第31中隊長。コールサインはサイウン1(JAS-39CB)。
新年に着隊。上級幹部教育課程を好成績でパス、陸軍大学校への入校を勧められたがそれを蹴って前線部隊勤務を希望した衛士。
♪
戦術鍛え
銀の
おお我らは
♪
1999年5月6日。
帝国軍参謀本部が催した嫌がらせのような壮行会に、第92戦術機甲連隊関係者は呆れていた。日本帝国本土防衛軍中央音楽隊の連隊歌吹奏で送り出されたあと、第92戦術機甲連隊および協力諸隊は攻撃準備に取りかかる。
すでに実戦を経験している第92戦術機甲連隊の衛士たちに、緊張の色はない。
完全に孤立無援のハイヴ突入戦をやるわけではない――しかも第92戦術機甲連隊全中隊揃っての作戦だ。
「間引き? ハイヴまで攻略しても構わんのだろう?」
そんな軽口を叩いた宇佐美誉大尉を湯川進中尉はジト目で見たが、同時に出来なくもないのではないか、と思っていた。
午前9時ちょうど。
望月作戦は航空宇宙軍からの偵察情報の受信、および六郷土手要塞からの小型無人偵察機の発進から始まった。
ほとんど無音、華々しさのなき作戦発動の瞬間である。
六郷土手要塞の前面には、小型種を除けばBETAは存在しない。
戦車級以上の個体は横浜ハイヴの拡大と周辺の“均し”に追われているのであろう。
故にまず目標となるBETA群を捜索しなければならない。
「こちらスピアー1。日本人の諸君、悪いが一番槍は我々がいただいた」
六郷土手要塞から最初に飛び出したのは韓国陸軍第51戦術機甲大隊のKF-16であった。
多摩川の対岸へ短噴射で着地すると、反応して姿を現した兵士級を轢殺する。
主脚が血肉で汚れるのを一顧だにせず、金色のセンサーアイを輝かせながら、小型種が潜んでいそうな廃墟を120mm弾で吹き飛ばす。
「大物を殺れないのが残念だがな」
彼らの背後では、工兵部隊が多摩川に架橋を開始している。
戦車部隊や補給部隊の渡河のためだ。
工兵もまた強化装備を纏い、自動小銃や機関銃で武装しているが、それでも兵士級や闘士級は相当な脅威である。
第51戦術機甲大隊に与えられた任務は、まずこの架橋作業を援護することだった。
続けて第92戦術機甲連隊および帝国斯衛軍大宰府警備隊が、多摩川を越えて南進を開始する。
「こちらHQ、園田だ――
午前9時30分頃。
穏やかに、静かに始まった望月作戦は、すぐに激戦の様相を呈し始めた。
旧横浜商科大学跡地に設けられたNE6ゲートから這い出してきたのは、師団規模のBETA群。
続けて旧大口駅周辺のN2ゲートから同じく師団規模のBETA群が出現する。
光線級の所在を確かめるための威力偵察として斯衛軍の58式105mm榴弾砲と韓国陸軍の155mm自走榴弾砲が火を噴く最中、突撃級から成る前衛集団と第92戦術機甲連隊が激突した。
迸る土煙。
廃墟を圧し潰しながら行われる高速突撃。
これを迎え撃つのは、第92戦術機甲連隊第33中隊“ファイアラビッツ”。
そして各機は長大な対戦車砲を抱えていた。
(これで欠陥品だったらあの丸顔の営業マン呪い殺してやる~)
ラビット9、草水虹華中尉機が構えるのは、2本の支脚を有する商品名“つらぬく! 203mmれんたくん!”。
……改め203mm大口径連隊支援砲“屠龍”。
かつて重爆撃機を撃墜するために戦車砲を積んだ重戦闘機にあやかった命名だ。
いま第33中隊のA-10Cは、1000m以内で突撃級の正面生体装甲を貫徹可能という謳い文句と性能試験の結果を信じ、まさかの一列横隊を敷いている。
203mm砲が突撃級の外殻を貫徹できなければ、おそらく全滅するであろう。
――慌てず騒がず落ち着いて。
試し撃ちの際に現れた特命商品アドバイザー西人志の言葉が、ぐるぐると衛士たちの頭を駆け巡り、そして時はきた。
突撃砲とは全く異質な衝撃。
続けて虚空に解き放たれた203mm重徹甲弾は高速で迫る突撃級に直撃。
弾芯は容易く突撃級の生体装甲に侵入し、その内側の生体構造を滅茶苦茶に破壊して突撃級の後部から抜けた。
「よし――」
一瞬で絶命した12の突撃級。
後続の突撃級はそれに激突、あるいはそれを押し退けて高速突撃――その傍から2射目の203mm重徹甲弾が襲いかかる。
横一線に生まれた全高16mの障害物。
続く突撃級はこれを乗り越えて攻撃を敢行しようとする。
つまりその速度は大いに低下する。
また上り、下りの際には脆弱な頭部・腹部・後背部をこちらに向けることになる。
その好機を、第33中隊の衛士たちは逃さない。
A-10Cが吼える。
両肩部のGAU-8アヴェンジャーが高速回転し、36mm弾の五月雨が足の鈍った突撃級に叩きつけられる。弾け飛ぶ火花と生体装甲の破片、そして撃ち砕かれる脆弱な生体部位。中には脚部に直撃弾を受け、バランスを崩して死骸の山から生きたまま転がって擱座する個体も現れた。
「ラビット1、こちらHQ。突撃級の動きを共有する。確認せよ」
「HQ、こちらラビット1。了解。……HQ、陣地転換の必要ありや?」
「ラビット1、こちらHQ。いま転換先を送る」
突撃級の群れは死骸と擱座個体で生成された防壁、すなわち第33中隊を迂回し始めていた。
迂回を選択した突撃級は鶴見川に沿って北上を開始。
その頭を抑え、右側面を叩くべくすでに1個中隊が噴射地表面滑走していた。
「
無防備な脇腹を晒しながら巡航する突撃級の縦隊。
そのど真ん中へ、鈍色の野良猫たち“ワンワン・ジェノサイダーズ”が仕掛けた。
中衛A小隊と後衛C小隊が突撃級の複縦陣、その側面目掛けて突撃砲を連射する。
ほとんど狙っていない。
が、次々と突撃級たちは脚部を射抜かれ、地表を抉りながら停止する。
そうして生まれる渋滞へ、前衛を担うB小隊が斬りこみをかけた。
寡黙な野武士然とした日高大和中尉は、可変翼による急制動でまごつく突撃級目前に着地すると、その
狙いは絶命にあらず。
戦場で活用できる“生きた障害物”を増やすこと。
光線級は決して誤射はしない。
故に生きたまま転がしておけば、光線級の視界を遮りたいときに役立つ。
他のBETAも同様。死骸を乗り越えることはあっても、生きたBETAを踏みつけてゆくことはない。
「こちらサイウン1。突撃級に対する発砲を禁ずる」
「了解」
この局面で第31中隊“サイウン・トルネーダーズ”は、突撃級に対する誘引役にあたった。
射撃は禁止。第92戦術機甲連隊本部はまず彼らに戦場の空気を吸わせようと考えたのである。
高度な電子機器の塊であるJAS-39CBが現れるとともに、新手の突撃級たちはこれにすぐ食いついた。
「旧田島町まで引きずり出す!」
八倉世理子大尉以下、第31中隊の衛士たちには余裕がある。
いくら突撃級の最高速度が速いといっても、適切な距離を空けてさえいれば、JAS-39CBの機動性ならば後方短噴射の連続で追いつかれることはない。
またJAS-39CBの全高は通常の戦術機によりも遥かに低い。
つまり多少浮き上がっても遠方から光線級に狙撃される可能性もまた低かった。
そうして眼前の餌に誘き寄せられた突撃級の群れは突出し――左側面後方に出現した第33中隊のA-10Cによる中距離砲撃を浴びることとなった。
36mmガトリング砲の連射により、堅牢な正面装甲のみを残して破裂していく突撃級の群れ。
速度を緩め、旋回を試みようとする傍から突撃級は皆殺しにされていく。
2個師団規模のBETA群は最大3000体の突撃級を擁するとされるが、この数十分間で過半数の突撃級が撃破の憂き目に遭った。
「旧鶴見橋周辺に要撃級200!」
斯衛軍と韓国陸軍の砲兵部隊が放った榴弾を迎撃するためのレーザーが青空に伸びる中、第92戦術機甲連隊とBETA群の戦闘は、六郷土手要塞と横浜ハイヴの合間に流れる鶴見川の周辺で展開した。
午前11時ごろまでは一進一退――というよりは零進零退といった様相である。
旧鶴見橋周辺から渡河して攻撃に臨む中衛集団と、第13中隊(MiG-29SEK)・第32中隊(シュペルエタンダール)・斯衛軍大宰府警備隊(82式瑞鶴)が対戦したが、要撃級と戦車級から成る大群では突破力が足りない。
一方の衛士たちは要撃級や戦車級の大群を突破する必要がない。
そうしている間に韓国陸軍は、多摩川を越えて旧川崎市民広場に36mm機関砲弾や戦術機用誘導弾の補給コンテナを運び込んでいた。
「ここから、ですね」
六郷土手要塞に設けられた第92戦術機甲連隊本部で作戦をモニターしていた幹部たちは難しい顔をしている。
ここまでは未だ被撃墜機は1機も出ていない。
が、光線級、重光線級が最前線に姿を現せばそうもいかなくなる。
こちらは損害覚悟で光線級吶喊を繰り返さなければならない。
おそらくすでに地上には少なく見積もっても500体以上の光線級、重光線級がいるはずであった。