【完結】鉄屑戦記   作:河畑濤士

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オルタネイティヴ5がもたらす結果についてはご存じのとおり「ユーラシア大陸の海没、全地球規模での大気移動(真空地帯の発生)等」です。

超重光線級はTEに登場しました。

G弾の原理を応用したBETAの攻撃は構想としてはあったようです。

それ以外は独自設定となります。

この確率時空は先に触れたとおり、何の介入もなければ想定を超える規模の重光線級によって桜花作戦が失敗する形になります。

原作設定との矛盾点等、ご容赦ください。

次回更新は27日(月)を予定しております。



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■75.空に浮かぶは明星に非ず。

 

 XF-2がささやかな戦果を挙げたその数週間後、明星作戦は発動した。

 

 結局のところ明星作戦は各勢力の思惑が反映された一大統合作戦となった。

 

 作戦の第一段階は帝国海軍連合艦隊による近畿地方・東海地方に対する艦砲射撃――敵勢力の漸減と東進阻止を目的とした交通路を寸断する火力投射。

 同時に日本帝国航空宇宙軍による軌道爆撃が始まり、国連軍主体の陽動部隊が横浜ハイヴ南方の神奈川県茅ケ崎市から逗子市一帯に強襲上陸、続けて日本帝国本土防衛軍・大東亜連合軍が多摩川から攻勢を開始する。

 

 作戦は複数回の地表への増援を確認した時点で、第二段階に移行。

 国連宇宙総軍が再びAL弾を主体とする軌道爆撃を実施し、横浜ハイヴ上空に濃密な重金属雲を生成。そして軌道降下兵団が横浜ハイヴのゲート直上に落着し、速やかにハイヴ坑内に突入を果たした。

 

 しかしながら、軌道降下兵団は想定外の事態に見舞われる。

 

 突入前、横浜ハイヴはその地表構造物の規模と門の分布範囲の広さから、フェイズ2・最大深度は約400mと目されていた。過去のハイヴ攻略戦において人類は深度500mまで達したことがあるため、それを思えば反応炉到達は決して不可能ではない。が、ハイヴに突入した軌道降下兵団は、地下構造に足を踏み入れてルートスキャンを進めるとともに愕然とした。

 

 地下構造に限っていえば、フェイズ4相当。

 

 つまり最大深度は約1000m前後となる。

 

 この時点でかりそめの統合作戦司令部は動揺し、そして“割れた”。

 降下部隊だけでは横浜ハイヴを攻略するのは不可能。残された選択肢は撤退か、あるいは陽動と退路となる門の確保にあたっている全地上部隊を投入し、乾坤一擲の大勝負に出るか。

 ここで明星作戦に至るまでのすべてが裏目に出た。

 表向きは国連の旗の下に集っている彼らだが、国連太平洋方面総軍の下に指揮系統が統一されているわけではない。

 作戦指導は各勢力の協議によって進められ、前線は複数の戦域に分割され、諸隊が個別に戦っているという様子。部隊ごとに担当戦区が割り振られるのは特別なことではないが、その上位にあたる組織が別個に存在しているため、いまいち連携がとれていない――むしろお互いにお互いを警戒している始末であった。

 

 通常戦力での攻略は不可能とみて作戦中止と早期撤退、そして新型爆弾の使用を求める米国。

 

 それを米軍の抜け駆けとG元素独占のための布石とみるオーストラリア。

 

 なまじここまでの過程がうまくいっている以上、地上部隊を突入させれば勝てると踏む日本帝国。

 

 兵站の問題が解決できない以上、通常戦力での攻略は不可能であり、また米国の新型爆弾を以てしても、多数のBETAが守るメインシャフトとホールが残る可能性がある以上、反応炉到達は困難とみる大東亜連合。

 

 結果、統合作戦司令部としては何も決断できない状態が続き、日本帝国本土防衛軍は門に張りついたまま、軌道降下部隊はハイヴ坑内で探査と戦闘の連続で消耗していく。

 

 かくして米国政府は痺れを切らし、新型爆弾――通称“G弾”の使用に踏み切った。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 重力偏重。

 

 その一言で片づけられない無数の異常が、紙面には並んでいる。

 

 植生異常。

 海抜高度の変化。

 周辺大気圧の上昇。

 

 たった2発、しかも予期されていた出力が発揮されなかった2発のG弾は、半永久的なダメージを横浜の地にもたらしていた。

 光線級の本照射を防ぎ切り、接触した物質を分解する防御不能の超兵器。

 

(米国はG弾をBETAも人類も圧倒する、核の上位互換――それくらいに思っているのかもしれないが)

 

 西部方面司令官は香月夕呼から送られてきたレポートに目を通しながら思った。

 

(……)

 

 仮に米国政府が準備を進めているオルタネイティヴ5、ユーラシア大陸に対する複数発のG弾同時使用、これが実行されれば地球は崩壊するであろう。

 まず発生する大規模な重力偏重によって大洋から海水が引き寄せられ、ユーラシア大陸は海没するであろう。あるいは反対側の北米・南米大陸が海没、一方のユーラシア大陸は真空状態に陥ることになる。

 

 いずれにしても日本列島は、壊滅する。

 

 地球上に残るのは、干上がった旧大洋地域から舞い上がる塩に覆われた大陸、真空状態となった大陸、不安定な大気圧によって常に超大型台風が駆け巡る大陸、そのいずれかだ。

 その過程で低軌道上の軍事衛星は、そのほとんどが地に墜ちることになる。

 

 そして最悪なことにこれだけの被害をもたらしてもなお、BETAを根絶するには至らない。

 

 生き残った僅かな人類は、崩壊した地球環境とBETA、その双方と戦わなくてはならなくなる。

 

(……いや)

 

 西部方面司令官は昏い瞳で、瞳と紙の合間にある虚空を見た。

 

 今日(こんにち)に至るまで、G弾は“使われすぎた”。

 

 大陸と大洋の破壊など、G弾がもたらす大破壊の一表層でしかない。

 

 G弾の炸裂は、接触した物質を無条件で消滅させるだけではない。

 

 時間と空間に、多大な影響を及ぼしている。

 

 2発のG弾でさえ時空を歪ませたのだ。

 

(いまやこの地球は、巨大な超時間因果導体だ――)

 

 オルタネイティヴ5の発動によって生じる大規模時空震動は、数年後から数十年後に大規模時間逆行を引き起こす。

 もしかするとそれは見かけ上の逆行に過ぎないのかもしれないが、ともかく主観的には時間は巻き戻り、地球から未来の情報が流入した人々がごくごく少数ながら現れる。

 その人々が未来の展開を明確に知覚できるタイミングも様々。

 中には精神疾患、あるいは実際に発狂してしまう者もいる。

 

 故にオルタネイティヴ5の発動を阻止するには至らない。

 ならば、と限定的なG弾使用により、人類勝利を勝ち取ることも考えられよう。

 しかしながら最大出力のG弾であってもオリジナルハイヴは破壊しきれない。

 ユーラシア大陸外縁部のハイヴに対して最低限のG弾を使って戦線の押し上げと時間稼ぎを図れば、それは超重光線級どころか、超重力光線級(グレイレーザークラス)の登場を促すことになり、結局のところ大規模時空震動と時間逆行を惹き起こすこととなる。

 

 技術革新の連続を以てしてもオルタネイティヴ5発動までに敵指揮系統の頂点を潰すのは困難である。

 通常ではありえない技術進歩と新兵器の投入でユーラシア大陸外縁部の戦線を押し上げても、それはBETA側の通常ではありえない新属種――たとえば電子戦級(パルスクラス)重光線要塞級(レーザーフォートクラス)遠隔級(スウォームクラス)重光線爆撃級(ボンバークラス)といった厄介な個体を生み出すこととなり、結局のところ人類はG弾使用に一縷の望みを託すことになる。

 

 それ故に人類の命運は超兵器にあらず――BETA側が光線級、あるいは(人類側がギリギリ攻略可能な)新属種で対策可能と考えている現行の戦術機にある。

 

(……)

 

 BETA大戦、オルタネイティヴ5の発動、人類の絶望的なまでの敗勢――。

 

 これを繰り返している間は、まだいい。

 

 人類の最終勝利に向けた偉大なる猶予期間だ、といえる。

 

(……)

 

 西部方面司令官が危惧しているのは何かといえば、宇宙の倒壊である。

 

 論理の飛躍がすぎる、と自身でも思うが、地球のみならず宇宙全体の時間が巻き戻っているのだ。

 

 ありえない話ではないだろう。

 

 

 

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