緋弾のアリア -黒砂ー   作:silentr

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14.再装填

 あー…しんど。

 

 なんやねんコイツ。わけわからんこと叫んだと思ったら、いきなり性能が良くなりおったわ。

 

 これが例のパートナーがいる神崎っちゅうわけか。ピン(一人)で動くのと違いすぎるやろ、反則やで。

 

 まあ、ちいと色々ヤバいかもなあ。

 

 ホント、イロイロ――マずイカ…?。

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 アリアの銃撃が土佐の腹と胸に当たった。

 土佐はが前屈みになりながら、よろよろとした足取りで後ろに下がる。

 数歩さがると、両手をダラリと垂らした姿勢のまま動かなくなった。

 

 「ゲホッ!あー…バカスカ撃ちおって…こんチビィ」

 「ふん、散々背中をマッサージしてもらったお礼よ」

 

 あんだけ至近距離でぶち込んで倒れないとか、どんだけ頑丈よ…。

 

 頭を垂れ地面を向いたままで顔は見えない。意地なのか倒れようとはしなかった、かなりの苦痛が体を駆けめぐっているはずだった。

 

 じっと痛みに耐えるように動かない土佐。

 

 土佐を見ながら、アリアは”痛いだろうな”とさっきまでの自分の姿を重ねていた。

 

 息が詰まり、逃げたくても逃げられない痛みが体中を駆けめぐる。それは想像を絶する。

 

 痛みは自分がただの脆い人間だということを認識させる。

 痛みは簡単に怒りを誘発させ、痛みは簡単に恐怖を植えつける。

 

 さっき土佐がアリアにやっていたことはそれだった。

 

 見えないところ――

 

 つまり背中からの攻撃で痛みを与えて恐怖を植え付けた。

 

 そして、見える痛み――

 

 土佐の嫌みな笑い顔や態度でアリアの怒りを引きずり出した。

 

 そうやってアリアの平常心を失わせていた。アリアが自分でも気づかないうちに。たぶんはじめて会ったときから、こいつの攻撃ははじまっていた。だから、土佐はあれほど簡単に背中へ攻撃ができた。

 

(わかったからって、簡単にどうにかなるもんじゃないけど。)

 

 一回手ひどくぶっ倒されて、かなり頭が冷えたから、わかったことだった。

 

 土佐が苦しんでいるうちに追撃してはいけないルールは無いが、さきほどから土佐はアリアが攻撃できる程度まで回復してから、次の攻撃をしてきた。

 あくまで殺し合いではなく、決闘にこだわっているという態度なので、アリアもそれに従うことにした。

 というより、先ほど無理矢理起きあがったので、実はまだかなり体が痛い、だから少し休みたいという方が気持ちとして強い。

 

 チラリと見物席の方を見る。

 

 そこには椅子に座ってこちら見ているキンジがいた。なんだか、部屋が白く見えるが気のせいだろうか。

 

 キンジはアリアを睨むように見ていたが、その目は心配そうだ。

 

 倒れたときキンジの声がアリアを呼んだ――呼ばれた気がした。

 

 だからアリアは起き上がった。そして、立ち上がったときにキンジと目があった。

 

 正面に土佐がいるのに、なぜかアリアはキンジと目があった。

 

 ――気のせい?。

 

 いや、確かに目を合わせた。アリアには何故か確信めいたものがあった。

 

 あの目――覚えている。

 

 アリアはその目を前にもみたことがある。アリアを信じている目。誰も信じてくれないアリアを信じた目。

 

 心配かけたかな?――きっとかけたよね。ごめんキンジ。

 

 あたし、あんたのパートナーなのにね。

 

 あたしのこと信じているあんた放っといて、諦めそうになってた。

 

 でも――大丈夫。

 

 キンジがいるってわかったから。

 

 背中の寂しさがなくなっていた。風の抜けるような空虚さも消えていた。

 

 今は背中が温かい。優しさを感じる。

 

 キンジが近くにいる。見ている。信じてくれている。

 

 わかった――キンジと何かが繋がったのが――わかった。

 

 

 

 だったら――あたしは強くなれる。

 

 

 

 □ □ □

 

 

 

 と、まあ――

 

 

 なんとなく勢いに任せて格好良く起きてみたものの、実はあまり打つ手が無い。

 

 土佐の攻撃に隙がない。

 

 やたらと撃ってくれれば、まだ隙もできやすい。

 だが、例えこちらが撃ち込んで挑発してもノってこない。リボルバー式の拳銃を使っていることもあるだろうが、とにかく必要なとき以外は撃ってこない。

 

 そんなわけで、逆にこっちがやたら撃てば弾切れを起こして、さっき背中を撃たれたように自滅となる。

 

 そして、アル=カタ戦――近接戦もだめとわかった。

 極端な話、土佐は背後に拳銃を落とすだけで撃てる。

 近づきすぎれば、「どうぞ背中に撃ってください」といっているようなものだ。

 

 土佐は最初に一撃入れたときに言った「アホらしくてつき合わない」と。あれは、苦手という意味じゃない、接近戦なんてしたらあっさり終わるという意味だ。

 本当にどうかしていた、さっきはこんなことさえ気づかなかった。

 頭に血が上って、接近戦にこだわりすぎだった。

 

 抜いてから撃つのは早い。曲撃ちはしてくる。

 全く気が抜けないから、慎重にならざる得ない。

 

 さらに、アリアの攻撃が通ったためか、さきほどまで感じた変な余裕が消えていた。

 土佐は、いまでもまだグッタリとうなだれているが、隙らしいモノはない、アリアが攻撃の構えを見せれば、すぐにでも反応するだろう。

 

 

 ――本当に嫌なヤツ――

 

 

 さて、どうしようか。

 

 あの暴発攻撃が厄介だが、土佐がそれをやらないところがある。アリアは、何度か撃ち合いそして数発食らったことで、なんとなくわかっていた。

 

 真正面。

 

 近づきすぎれば、こちらの背後の警戒がおろそかになるので危険。だが、適度な距離ならば土佐自身に当たる可能性がある。それに正面なのにわざわざやる必要がない。

 

 最初に一度やっているが、あれはアリアが知らなかったからできたことだ、二度目の成功率はほとんどゼロ。まず使ってこないだろう。

 

 もう一つはたぶん土佐の背後。

 

 見えないところは不確実すぎてやらないと思う――だが、あくまで推測。

 

 「神崎ぃ、ごっつう利いたで…」

 

 ようやく復活した土佐が見下ろすようにアリアを見る。ニヤケ顔が消えていた。

 

 (ふん、よっぽどそっちのほうがいい男じゃない。)

 

 「お気に召したなら、いくらでもあげるわよ。」

 

 アリアは銃を見せつけて挑発的な笑いを浮かべる。

 

 にらみ合いながら、アリアは視線をうかがい土佐の動きを読みとろうとした。が、双方動かず埒があかない。

 

 (まずは後ろから行ってみるか…)

 

 走り出す。スピードならこちらが上のはず、ならば動きが制限される銃は構えては意味がない。それに、普通に撃っても無駄弾になるのは経験済みだ。

 

 土佐の姿が近づく。

 

 土佐の右手の中指がわずかに――気をつけて見ていないとわからないほどわずかに曲げられる。

 

 何度か撃ち合って気づいた、土佐が撃つ前の癖だった。

 

 両手が空くので動きは自由に組み合わせることができる。ここは立体的に攻撃をしかけたいが、あいつの早撃ちがそれを許してくれない。

 一度横に飛んで土佐の左側へ。無理な方向変換をしてただでさえガタガタの身体が軋む。かまっていられない。

 

 土佐は抜かない――撃たない――警戒している。

 

 土佐の左側を抜ける――攻撃がない――自分が近接戦をしないと読まれてる。

 

 ――だけど――

 

 地面を蹴る。跳躍。銃をホルスターから抜きながら体を捻り――振り向く。砂埃がアリアの後を追うように尾を引いた。

 

 振り向きざまに二丁の拳銃を突きつける。土佐の背中に。

 

 ――え?

 

 最初に目に入るはずの土佐の背中。しかし、アリアの瞳に――銃口が映った。振り向きもせずに土佐は銃を構えていた。土佐のわきの下から銃口の暗い穴がアリアを見つめていた。

 

 土佐の指が引き金を引く――回避――できるわけない。

 

 ――ならば――

 

 かまわずアリアは引き金を引き絞った。

 

 パァン――土佐の銃が吼えた。

 

 ガガン――少しだけ遅れてアリアの銃が叫んだ。

 

 二種類の銃声の余韻が重なり混ざった。

 

 お互い弾かれるように反対方向へと吹っ飛ぶ。

 

 「ぐっ」「がぁ」二つの呻きが同時に発せられる。

 

 土佐は背中を撃たれて、前のめりに倒れると地面の上をザリザリと音を立てて滑った。アリアは胸を撃たれ背中から地面に落ちと、ごろごろと後ろに転がる。

 

 相打ち。

 

 (ちっ!タイミング変わっとるんかこのチビ。)

 (後ろ見ないなんてコイツ!と――胸!撃ったわね!)

 

 悶絶して、しばらくの間動かない二人。

 

 ゴロリと体を横に倒しほとんど同時に動きだした。ギシギシと軋む体を起こす。

 二人とも顔も体も砂にまみれていた。頬の砂が汗を吸って、泥の固まりのようになってこびり付いていた。

 

 足で踏ん張るように体を持ち上げて立ち上がる。中腰のままで大きく肩を動かし息をする。痛みに耐えるだけで一気に体力が削られていった。

 

 顔だけを上げて、再びにらみ合う二人。

 

 「土佐ああああああ!!」アリアが叫んだ。

 「なんやああ!チビィ!!」土佐が叫んだ。

 

 「胸ぇぇ!撃ってんじゃないわよ。あんた、成長止まったらどうしてくれんの!」

 胸を撃たれたせいで、かなり頭にきたアリア。たぶん本来心配するところは、そこではないことには気づいていなかった。

 

 「あああ?知るかボケェ!遠山のヤツに揉んでもらえばええやろがあ!」土佐が疑わしい知識を叫び返す。

 

 アリアの動きがピタッと止まる。

 その目を大きく見開き、何かに驚いた顔をしていた。

 

 ゆっくりと顔を下に向けて自分の胸を見つめる。

 同じようにゆっくりとした動作でキンジの方を見る。

 視線を元に戻し、スタスタと歩いて土佐の傍まで来ると、その顔を近づけ、そして――

 

 「そういうもんなの?」と真剣な顔で聞いた。

 「知るかアホ」

 「なんですって――!!」

 

 二丁拳銃を突き出すアリア。それに気づいた土佐が距離を置く。アリアはそのまま狙いもなくいきなり発砲。

 

 ガガガガン!

 

 (なにしとんのコイツ?)

 

 土佐からずいぶんと離れたところの地面が、砂埃をあげてガスガスと穴が開いていく。

 

 「あんたね!わかる!?切実なのよ?白雪とか――なんか――こうね。こう!ムカつくのよ?あんたにわかる??」

 

 アリアは「こう」と言うたびに胸の前で円を描くような動作をする。どうやら胸が大きいことを表現したいらしい。

 アリアは訴えるように叫んでいた。ポロポロと涙を流しているが、それは土佐の弾丸が当たった痛みでないことは確かだ。

 

 (なんかようわからんが、可愛そうなヤツだ)と土佐は思った。

 

 「だから遠山と相談せい」相手にするのが嫌でとりあえずキンジに振る。

 アリアは「わかった…」と不満げな返事をすると、肩を落としトボトボと歩いて何事もなかったように元の位置に戻る。

 

 (い、今撃ったらあかんのかな…?)と思いながら、アリアが元に位置に戻るのを眺めていた土佐。

 

 とりあえず再び距離を置く二人だった。

 

 

 

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