絶対に百合に挟まらない司令の懐刀系性癖山盛りTSヤニカス不死リコリス   作:千年 眠

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 肩を打つ反動にも、耳を刺す衝撃波にも、トリガーを引いた自分にも、すべてに現実感を抱けなかった。

 跳ね上がる銃身を体が勝手に抑え込む。頭の中は真っ白なのに、右手はいつの間にかボルトを往復させて次弾を装填している。

 俺はストックから頬を離して、銃から吐き出された巨大な空薬莢が乾いた高音を立てて地面を跳ねるさまを他人事のように眺めていた。

 薬莢は屋上の隅の、深さ数センチもない排水溝に転がり落ちた。弾頭が圧入されていた穴──ケースマウスから出る一筋の白煙。同時に薄く漂う硝煙の悪臭。それが、俺を夢から覚ました。

 

 

#2:

Business as usual,

Murder as usual

 

 

「……あ」

 

 喉の奥から漏れるかすれた声は、自分の意志で出したものではなかった。

 俺は今、何を撃ち抜いた? わかりきっているはずの問いが何度もリフレインする。まるで結論を出すことを拒否するように。

 スコープを覗く。ズームアウト。視界の震えが止まらない。

 白黒の軽自動車はすでに俺が撃った瞬間の地点にはいない。タイヤ痕がずっと手前に続いている。二本の黒い線と一緒に筋を残す液体の正体を、俺は知りたくなかった。

 車は六〇mほど手前に来たところで停車していた。フロントバンパーは対向車に強く擦ったらしく一部がひしゃげていて、反対車線にはみ出したボンネットの隙間からは、エンジンから噴き出したとおぼしき茶色いオイルが血のようにじくじくと滲み出ている。

 そうか。道路を汚していたのは、これだったか。

 俺は呼吸を思い出した。

 

「は、はっ……はぁっ……はぁっ……」

 

 距離約二七〇m、マンションの高さは二五m。だから約五度の俯角をつけてフロントガラス越しに胸元を狙ったつもりだった。

 けど、風の影響か、車速を見誤ったか、千束とたきなの姿に驚いて反射的に(りき)むかした結果、弾は本来よりやや下のグリルに飛び込んでエンジンを貫いた。

 状況を分析すると、そういうことになるのかな。

 アルミ製のシリンダーブロックが盾になったなら、さしもの.408Cheytac(一〇.四mm)弾も威力が多少落ちる。ウォールナットはともかく、後ろにいた千束にまで当たる可能性は低いはずだ。

 俺は祈る思いで二人の姿を探した。車内にはいない。リスの着ぐるみはまだ運転席にいる。背を丸めて腹を押さえ、痛みに悶えているような仕草を見るに、初弾は命中したみたいだ。

 今なら確実に仕留められる。邪魔するものは何もない。もう一度、トリガーを──駄目だ。目標が移動した。赤い制服を着た腕がウォールナットを開け放たれたドアの陰に引きずり込んだ。

 車の反対側でも青い袖がちらりと見えたかと思えば、助手席に積まれていた黄色いキャリーケースが消えた。例に漏れず、ドアと地面の隙間からはローファーを履いた足が見えている。

 ドアでは弾は止まらないが、狙いは絞れない。ウォールナットに当てられても、今度こそ本当に千束を巻き添えにしてしまう。

 それだけは絶対に嫌だ。味方殺しなんて胸糞悪くてしょうがない。何度やったって慣れない。思い出したくもない。本当はそんなの、間違っているんだろうけど。

 考えるな、俺。それを考えるべきは今じゃない。俺という名の武器のパフォーマンスに支障が出ることは避けないと。そう言い訳して、記憶に蓋をする。

 懺悔は後ですればいい。今は仕事の時間だ。

 

 現在、彼女たちは狙撃を警戒して車を離れられずにいるが、俺もフレンドリーファイアを恐れて撃てずにいる。

 千日手のようでしかし、こっちにはいずれ通報を受けた警察かリコリスか、最悪両方が来る。それがタイムリミット。細かい風向きや偏差を教えてくれるスポッターがいないからなるべくしてなった事態ではあるけど、初弾で仕留められなかった俺は凄まじく不利だ。

 こうなったら接近して懐のワルサーPPKで仕留めるしか手はない。どうせウォールナットの死亡は確認しなきゃいけないんだ、やってやるさ。

 そう思って銃を置きかけたが、その時スコープとは反対側の左目が漠然と見ている景色に違和感を覚えた。こういうのを職人の勘がささやいた、というのかもしれない。

 右目で初弾を撃った場所をもう一度見ると、やはりいた。

 ワンボックスが一台、軽に気づいて急停車した。車内にはプレートキャリアを着た男が、前から見えただけで五人。全員サングラスで視線を隠している。それに筋肉の付き方が素人じゃない。

 このタイミングでこの格好、九九%黒だ。

 俺は狙いを助手席の一人に定めた。いつでも撃てる。

 

「頼むから撃たせるな、退け……」

 

 千束とたきなはスナイパー、もとい俺を警戒して身動きが取れない。今後ろから攻撃されたら一巻の終わりだ。俺がカバーしないとまずい。

 ウォールナットは殺す。でも二人は死なせたくない。同じ人間なのに矛盾してるよな、フェアじゃない。

 俺は誰にでもフェアなやつが好きだ。

 だから俺は俺が嫌いだ。

 ああそうさ。俺にこんなクソ仕事を押し付けるDAも、そんな組織が作るイミテーションの平和をありがたがる日本も、そんな内情を欠片も知らないこの世界も、全部嫌いだよ。

 みんながみんな、仕方ないって、こうするしかないって、いかにもどん詰まりですみたいなツラをして、俺を腐りきった大気で取り巻いて窒息させようとする。

 同じ汚れた空気なら、俺は味がするほうを吸って生きていく。ジッポやマッチの火が、このどうしようもない閉塞感を焼き払って、一時だけでも忘れさせてくれると信じている。

 だから傭兵、殺される前にとっとと失せろ。お前らのようなのがいるから俺の息が苦しくなる。俺が俺でいられなくなる。自分が好きでいられなくなる! 

 

「馬鹿野郎が」

 

 座席の下に手を伸ばして、足元のアサルトライフル──木製ストックのAKを拾い上げたそいつを、俺は何のためらいもなく撃った。知り合い以外の人生を守れるほど、俺は強くなかった。

 トリガーを引いた瞬間、フロントガラスが一面真っ白にひび割れた。弾丸が通り抜けた小さな穴だけが異様に赤黒く、その奥ではきっと、男の胸部が木っ端微塵に吹き飛んでいた。ひょっとすると後ろにいた人間さえもそうなっただろう。

 ボルトを引いて排莢。

 ボルトを押して装填。

 レティクルを左にずらす。全開にしたフロントドアの後ろに隠れているのが一人。お構いなしに撃つ。ドアに弾痕が刻まれると同時に、下にはみ出た二本の足首が飛び跳ねて一瞬消え、こちらに靴底を向けて倒れる。バケツをひっくり返したような出血量だ。もう助からない。

 排莢。装填。

 サプレッサー付きとはいえ、馬鹿でかい銃声を三発も鳴らして二人を確実に殺している。下の道路はもう大混乱だ。みんな血相を変えてすっ飛んでくるだろうな。

 

 早く退かなきゃなのに、何やってんだろう、俺。

 心とバラバラに、俺の目は傭兵の生き残りを探した。

 俺から見て右側のスライドドアが開いた。助手席の後ろにいた男が、出血する腹を押さえながら這うように出てきて車の後ろに隠れた。角度の関係で姿は見えない。流れ弾が怖い。こいつはやめておく。

 撃てそうな敵がいないから、俺は代わりにワンボックスのエンジンを撃って破壊した。ラジエーターからぶちまけられた緑色の冷却水が道路に広がっていく。これでもう、こいつらは千束たちを追えない。

 排莢。

 安全のためボルトは引ききったまま、索敵がてら彼女たちの無事を確かめようとスコープの倍率を切り替えたその時、千束がドアの陰からワンボックスのほうに飛び出していくのが見えた。

 彼女の片手には銃、もう片手には鞄。何をする気だ? 俺は一瞬戸惑ったが、すぐに気づいた。

 そういえばそうだったなって、思い出した。

 錦木千束は、敵の人生を守れるだけの強さを持つ人間だった。そして、その選択肢を選ぶことが許される場所にいた。

 ワンボックスの後ろに隠れていた、赤いキャップを後ろ向きに被った長髪の男のもとへ、彼女は走った。それで初めて、俺は敵の顔立ちや髪型といった要素を認識した。

 

 俺は銃を置いた。時間を使いすぎたし、すぐに撃てそうな敵はいないし、それに千束の決断を踏みにじる気もなかった。

 足元のフルフェイスを被り、ミラーシールドを完全に下ろす。赤いシングルライダースの前を開けて脇下に軽く触れ、ホルスターと予備マガジンの位置を手で確かめる。

 だがこれはあまり使いたくない。背負っていたバックパックを探る。ファーストエイドキットのパッケージを押しのけて、底に沈んでいたグリップ付きの催涙スプレーと特殊警棒を引っ張り出した。

 特殊警棒を持つ左手に、スプレーのピストルグリップを握る右手を乗せる。これはハリエス・テクニックといって、本来は拳銃と懐中電灯を同時に構えるためのものだ。

 制服を着ない任務のとき、俺は必ずこうした低殺傷武器を用意させる。見知った顔の人間を殺すときほど、気分の悪いものはないから。

 エレベーターへ走りながら腕時計を見た。本当ならとっくにウォールナットの死に顔を拝んでいるはずの時刻だった。計画通りに進む計画は少ない。仕方ないさ。

 下行きのボタンに触れようとした瞬間、頭上のランプが動いた。一階から誰かが上がってくる。考えるより早く、俺は隣の内階段を駆け下りていた。

 警察かな。リコリスかな。特殊急襲部隊(SAT)だったら面倒だな。手すりから一瞬だけ顔を出して、階下の様子を伺った。

 三階下でベージュがかった白の制服がちらりと見えた。巡回中の白服(サード)か。敵としては当たりの部類かな。

 

 不意討ちしよう。駆け足から忍び足へ。腰を落として手すり壁の陰へ身を隠す。ビブラムソールが木目調の床に吸い付く度に発する耳障りな鳴き声はずいぶん小さくなった。白服の部隊は被害拡大を恐れてか、けたたましい音を立てて駆け上がってきている。俺が近くにいることには気づけない。

 先頭の隊員が俺が隠れている踊り場に足を踏み入れた。

 その瞬間、クラウチングスタートのように前へ踏み込みながら立ち上がる。

 飛び出してきた驚きに眼を見張る少女。彼女が下ろしていた銃を持ち上げるより、俺が顔に催涙スプレーを噴射するほうが早い。予め構えていたんだ、当然だ。

 短い悲鳴を上げる彼女を押し退けて、後続と、そのまた後続の隊員にもスプレー。三点バーストみたいに短く。

 四人目は近かったから、スプレーの下で順手に持っていた警棒を手首のスナップで振るい、拳銃を手からはたき落とした。奇襲にうろたえる顔を流し目で捉えながら横を抜けつつ、返す手首で脇腹に手加減した打撃を入れて制圧。息が詰まるほど痛いだろうが、痕が残るほどじゃない。そこでじっとしてろ。

 階段を駆け下りると踊り場で五人目と鉢合わせた。さすがに反応してきて、銃を向けてきた。少しヒヤっとしたが、この距離で腕を伸ばして撃つのは良くないな。

 俺はそのまままっすぐ突っ込んで、グロックの銃口を自分の薄い胸に押し付けて引き金をロックさせた。ショートリコイルの銃は、マズルを何かに押し付けるとセーフティが働いて撃てなくなるんだ。

 そのまま相手を抱き締めるように引き寄せ、密着した姿勢から優しい膝蹴りを叩き込む。もろに食らって、華奢な体が少し浮く。吹き飛ばして壁に頭をぶつけさせるわけにもいかないから、俺は気絶したそいつをそのまま抱いて勢いを殺してから、そっと床に寝かせた。

 

 五人だから、一個分隊にプラス一人。残り三人は? 

 手すりから下をクイックピークすると、二階下からすぐに撃ってきた。手すり壁がコンクリ製で助かった。白服二人はどうとでもなるが、危ねぇな。あのトリガーハッピーな青服(セカンド)

 手すりを飛び越えてショートカット。銃弾が翻るライダースの裾を掠めた気がする。かがめて身を隠すと、奴らはしっかりと牽制射撃を入れながら上ってくる。頭を出させないつもりだ。

 じゃあ手はどうかな。催涙スプレーだけを手すりから出して、向かいの階下側を薙ぎ払うように連続噴射。悲鳴と咳が聞こえる。目が使えなきゃ撃てないだろう。

 ヘルメットのベンチレーションを全閉。ありったけ息を吸って止め、また手すりを飛び越えて強襲。悶える三人の真ん中、階段の中腹に着地。

 白服二人は制服の襟までオレンジ色の催涙剤で濡れて、両目を抑えながら激しく咳き込んでいた。戦うどころか立っているのすら辛そうに見える。無視。

 問題はさっきしこたま撃ってくれた青服だ。白服と同じ惨状なのに、充血した目からぼろぼろと涙を流しながらも俺をしっかりと睨んでいる。大した根性だ。

 両肘を曲げ、銃を斜めに構えたエクステンデッド・ポジション。いい選択だ。だが俺の左右には戦意を喪失した仲間が二人。精密に狙えないその構えで、お前は本当に俺を撃つのか? 

 体が硬直した。撃てないよな。それを狙ったんだから。俺は彼女に警棒をそこそこの力で投げつけた。前腕に当たる。構えが崩れて──まずい、足を踏み外した。

 俺は彼女に飛び付き、空中で姿勢を入れ替える。階段の角で何度も背中をぶん殴られた。初めてのダメージだ。

 

「離せこの、変っ態!」

 

 庇ってやったのに心外なことを叫んで暴れるそいつの手から銃のスライドだけを奪って俺は立ち上がった。何回肘打ちしやがるんだお前。まだ脇腹が痛てぇよ。

 回収した警棒を畳んで尻ポケットにねじこみ、階段を降りようとすると、彼女はグリップだけの拳銃で俺を撃とうとした。

 俺は奪ったスライドを見せびらかしてから、踊り場から内廊下に全力で──俺の全力は常人の全力とは違う。俺のは過負荷で筋繊維が千切れるくらい、つまり火事場の馬鹿力って意味──ぶん投げて逃げた。撃ちたきゃ取ってこい。

 

 その戦闘を最後に、俺は追っ手に会うことなく地下駐車場へ続くドアの前にたどり着いた。

 出くわしたのは八人、痕が残るような怪我は負わせてない。理想的だ。ただ催涙スプレーは残り四割ほど。駐車場に何人いるかだな。

 丸いノブをひねり、金属製のドアをわずかに開けて偵察。

 正面、出口の上り坂を塞ぐ形でパトカーが三台も停めてある。リボルバーで武装した警官が車の周囲にざっと見えただけで六人。

 バイクなら通れそうだが、車同士の隙間を通るのにスピードが落ちて捕縛されるだろうから無力化は必須。住民の車を盾にして銃撃戦を演じてもいいが、相手が警察じゃあ時間をかけるほど応援を呼ばれて大変なことになる。それにウォールナットにも逃げられそう。

 考えろ俺。こんなの慣れっこだろ? 今までどれだけヤバい案件をこなしてきたと思ってる。物資もある、銃もある、恵まれてる方じゃないか。

 敵は六人。密集している。

 俺の持ち物はワルサーPPKにナイフ、警棒、催涙スプレー、あと止血用の諸々と、ジッポと煙草と携帯灰皿。

 五秒、喉の奥で唸って閃いた。

 

 あいつら、催涙爆弾で一網打尽にしよう。

 一度ドアを閉める。バックパックから追加で取り出すは、救急キットに入っていたガスバーナーと止血帯が一つ。

 カセットボンベから取り外したバーナーを床に置き、上から押さえながら太腿の(シース)に挿していたコンバットナイフを思い切りノズルへ叩きつけ、無理矢理長さを切り詰める。銃身長一センチってとこかな。

 次に催涙スプレーとカセットボンベをわずかに上下にずらし、止血帯で束ねて固定。缶がちょっとへこむくらい強く締め上げたからそうそう外れたりしないはずだ。

 最後にボンベに短くなったバーナーを戻す。炎の吹出口は催涙スプレーの缶へ向けておく。ノズルの長さは読みどおりだ。どこにも干渉しない。これならしっかり中身を熱してくれるだろう。

 これで爆弾は完成。点火してから何秒後に爆発するか全く分からないのが唯一の難点だが、即興で作ったにしてはいいクオリティだと思う。まさに即席爆発装置(IED)って感じ。

 ぶった切ったバーナーに火を点ける。すぐに爆発してほしいから火力は最大にセット。たった数秒でボンベは二本とも温かくなってきた。怖すぎる。

 一秒たりとも持っていたくないから、ドアを開けるや一目散にパトカーのもとへダッシュ。明らかに危険な物体を持っている俺に警官が怒号を飛ばす。

 あんたたちが腰に挿してるM360Jは飾りじゃないんだ。爆発物を持った凶悪犯には警告より先に銃弾をくれてやったほうがいいよ、お巡りさん。

 

 警官がホルスターから銃を抜いた頃にはもう、俺は催涙爆弾を投げつけて左へ飛び退き、駐車されていたセダンを盾にして伏せていた。

 数秒後、耳が痛くなるくらい大きな破裂音がした。

 トランクの方からフルフェイスに守られた頭だけを出して見てみると、駐車場の出入り口にはオレンジ色をした霧が立ち込めていた。屈強な警官たちは霧の真っ只中で一人残らず地べたに倒れて、まるで赤ん坊みたいにむせび泣いている。

 炸裂したボンベの破片で負傷して、そこに催涙剤のカプサイシンが……死にはしない怪我だが、下手すると死ぬより辛そうだ。完全に拷問の手口だよ。尋問対象にやったことあるもん、俺。

 不要な苦痛と怪我を負わせてしまったことに心の中で深く謝罪しながら、俺はバイクの元に走った。

 エンジンをかけて早々にスロットルを大きく開ける。前輪をブレーキでロックしたまま後輪を滑らせてクイックにターン。激痛に苦しむ警官たちとパトカーの間を縫って地上に出て、左折。ウォールナットの元へ急ぐ。

 路上は無人だった。走っている車は一台もいない。みんな乗り捨てられている。DAは一体どんなカバーストーリーを流布したんだろう。都市ガスのパイプラインが破裂して爆発の危険あり、とか? 

 まあ、何でもいいか。それは俺の仕事じゃない。俺の仕事はターゲットを殺すことだ。

 

 さあ、リスの姿を探せ。

 千束とは戦わない。どうせ勝てやしない。

 たきなとも戦わない。銃の腕じゃ敵わない。

 俺より強い護衛が二人か。きついな。

 でも、ウォールナットは手負いだ。見つけ出して鉛弾をぶち込んで、本格的に警察が追っかけて来る前に逃げられれば、なんとか俺の勝ち。正面戦闘なんかしなくていいんだ。

 大量の放置車両の隙間を縫うように、俺は来た道を遡る。この先に、奴らがいる。

 M200で撃ち抜いた軽自動車まで、あと一〇〇m。その時、道路の真ん中に人が立っているのが見えた。速度を落として近づく。

 青い制服に学生鞄、長い黒髪に隠れたインカム。たきなだ。

 

「ここから今すぐ逃げて! テロです!」

 

 そうだね。俺がそのテロリストだよ、たきな。

 ライディングポジションをもっと低く。バイクのカウルでホルスターやリグを隠す。

 悟られないよう、首はそのまま。目だけでウォールナットを探す。このあたりにはいない。軽自動車を見て、いなければそこから血痕を追おう。

 

「あの、聞こえますか! テロが起きて……」

 

 聞こえてるよ。声を聞かれたくないから、返事をしないだけ。

 スロットルを大きく開ける。スーパーチャージャーが吠える。エンジンが絶叫する。さっきのアクセルターンで温まったリアタイヤがたわみ、粘り、急加速。

 そこをどいてくれ、たきな。

 あんたを轢き殺したくはない。

 そう、飛び退け。それでいい。

 

「千束さん、不審なバイクが一台抜けました! 色は赤と黒──」

 

 クソ。そりゃいるよな。最強のリコリスがさ。

 でも、千束の銃には非殺傷弾しか入ってない。

 勝てなくても、やりようはある。

 接敵はすぐだった。千束はミニバンの屋根に上って、まるで門番みたいに軽自動車の斜め前に立ちはだかっていた。あんたがそこにいるってことは、その後ろにいるんだろ、ウォールナットが。

 しかし上から見られたか、さすがに武装してることがバレただろうな。案の定、銃口がこちらを向く。まだ距離はある。非殺傷弾は精度が悪いから、めいいっぱい接近されなければ撃たれても当たらない。よしんば当たっても俺はバイクを手放さない。

 その構えは虚仮威しだ。そうだろ? 

 千束は焦ったように目を見開いた。そうだよな、銃で狙われてるのに構わず突っ走るなんて狂気の沙汰だ。

 千束の銃弾は撃っても撃っても当たらない。

 俺はそうなるって知ってたよ。

 

「たきな!」

 

 千束は葛藤するように目線をわずかに下げたのち、その名を呼んだ。

 悪い予感がする。まさかこれだけ離れてて? 

 後ろから殴られるような衝撃が、一、二、三。

 順に左肩、腰、右太腿。なんて正確な射撃。

 喉から熱くて鉄臭いものがこみ上げてくる。

 千束。お前、信条を曲げたな? 

 俺はバイクの姿勢を強引に乱し、あえて転倒させた。

 カウルの両脇に突き出した樹脂製のスライダーが路面に当たり、猛烈な勢いで削れていく中、俺はハンドルから手を放してその庇護のもとを離れる。

 何度も何度も転がった。アスファルトで全身がすりおろされた。今更痛みに反応することなんかないけど、無様な気分だ。何秒地べたを滑ったんだか、数えちゃいないが、結構長かった気がする。

 頭がくらくらする。血がたくさん出てる。足が削れてて立ち上がるのが億劫だ。倒れたまま、ショルダーホルスターからPPKを抜いた。

 計算が正しければ──ほら、上を向いたらいた。

 

 軽自動車の裏。へたりこんだリスの着ぐるみ。腹にダクトテープを巻いている。

 ああ、だから千束は近くにいたのか。たぶんこいつの応急処置で時間がかかって、ミニバンに上るしかなかったんだ。どうりで、最後の門番には適任じゃないなと思った。

 寝転んだまま、血まみれのグローブをつけた両手で銃を構える。スライドを引いて、初弾を装填。めいいっぱい上を向けば、照星は奴に被った。

 腰を抜かして後ずさるそいつに、一発、二発、三発。

 心臓に二発当てた。最後の一発は、被弾の衝撃で後ろに倒れていくウォールナットの顎をかち上げた。頭を狙ったつもりだったんだけど、当たったんならいいか。

 真っ赤な血が噴き出す。俺とおそろい。ざまあみろ。

 誰かが遠くで叫んでる。でもそれは俺を心配したものじゃない。傷はそのまま、立ち上がって、その拍子に──

 

 ──着ぐるみの、首と体の継ぎ目から、亜麻色の髪がちらりと見えた。

 

「……え?」

 

 俺はその、ウェーブのかかった髪の持ち主を知っている。

 着ぐるみは胸から血を流して動かない。

 そうだ。止血。救急キットがある。

 血を止めなきゃ、死んじゃう。

 でも先に、本当に()()なのか確認しなきゃ。

 俺は着ぐるみの頭を外そうと一歩近づいて。

 脇腹に砕けない弾が一発撃ち込まれた。

 倒れそうになったけど、なんとかぎりぎり、つんのめるだけで耐えられた。

 確かめたい。でも二人が来る。

 助けたい。でも捕まったら、顔を見られる。

 走る。

 大破した体は動かすのが難しい。でも今再生したら、二人に暗殺者の正体が俺だってバレる。フルフェイスはボロボロだけど、まだちゃんと顔を隠せてる。バックパックも破れてない。俺を割り出せる証拠は何も残らない。

 血液や肉片なんてくれてやる。そんなのじゃDAに秘匿された俺は見つけられない。存在しない人間の一部がいくらあったって意味がない。

 ひび割れた視界の端っこ、ワンボックスの陰、俺の狙撃を食らった赤いキャップの男。前に乗ってたやつが威力を殺したおかげで生き残れた男。

 そいつはすごい顔で俺を見た。知ってる言葉でなにかを言ったけど、意味を持ったものには聞こえなかった。

 走る。走る。走る。

 後ろから声がする。怖い声がする。俺は千束が怖い。

 怖い。眠たい。気持ち悪い。吐きそう。捕まりたくない。血が足りない。難しいことが考えられない。なにもかも最悪の気分。

 倒れているバイクを引き起こす。エンジンはかかりっぱなし。

 またがって、ギアを入れて、酔っ払いみたいにふらふら走った。

 壊れた体でどこまでも逃げた。

 逃げ続けた。

 

 

§

 

 

 びくりと体を震わせて起きた。

 いつの間にか服が自分のものに変わっている。全身の傷もない。

 自分がどこにいるかわからなかったけど、持っていた空の紙コップを見たら、ちゃんと理解できた。

 俺、あの後ちゃんと逃げ切ったんだ。

 他人事みたいな思い出し方だった。

 ここは古い遊覧観光船の中。俺は木製のベンチシートに腰掛けている。もうじき日が落ちるのか、向かいの窓は暗い紫色をしていた。他の乗客がいないせいで、夢を見ているみたいに現実感がない。

 

「疲れてるな」

 

 男の声がして、右を向いた。彼は俺から少し離れたところで、窓枠に手をついて外を眺めていた。俺を呼びに来たんだって、なんとなくわかった。

 

「日の出埠頭まで、あと一〇分ってとこだ。一眠りするなら外しとく」

「いや、いいよ。そこまでじゃない」

 

 紙コップに口をつけて、もう数滴しか残っていないコーヒーで喉を潤した。どこにもこぼした形跡がないから、ほかはたぶん居眠りする前に全部飲んだんだと思う。

 

「そうか? 大立ち回りだったって聞いた」

「……M200が大体の原因だよ」

 

 男は外を眺めたまま、何度か小さく頷いた。

 

「SR-25を、配置する予定だった。フルサイズでセミオート、精度も十分。だろ?」

「俺もそれかなって思ってた。経験あったし」

「何日か前、突然上からお達しがあったんだ、五〇口径を置けと」

「……じゃあ、抵抗したんだ」

「ああ。M200が限界だった」

「それでも、ありがとう」

「よせよ、当然のことだ」

「ノース・ポールを黙って仕込んだのも当然?」

「もちろん。だってお前の任務だ」

「おおー、仕事のできる男じゃん?」

「お前こそ、俺の仕事っぷりを一番わかってる男じゃん?」

 

 彼はそこで初めてこちらを向いて得意げに笑った。笑った顔が褒められるのを待つ子犬に似ていたのがおかしくて、俺も喉の奥で笑った。

 お互い満足するまで笑ったあと、彼が伸ばしてきた拳に、俺は自分の拳を打ち付けた。それは俺たちが無事に仕事を終えた時の、ある種のお約束みたいなものだった。

 

「なにはともあれ、お疲れさん」

「タチバナさんも」

 

 俺たちは示し合わせたわけでもなく一緒に外へ出た。

 それから二人で何を喋るわけでもなく、狭苦しいプロムナードデッキに置かれたベンチの両脇にそれぞれ座って、夕日に照らされていた街並みが少しずつ暗くなっていくのをぼうっと目で追っていた。

 普段ならいくらでも出てくるはずなのに、どうしてか話したいことは一つも見つからなかった。でも別に、沈黙を不安に思う関係でもなかった。

 

「ブルズアイはお好き? ダーリン」

「ハハ。最高じゃん? ハニー」

 

 途中、煙草を貰って一緒に吸った。燃えるのが早くて、煙が山ほど出た。俺たちは吐いた煙で輪っかを作って遊んだ。

 そして、汽笛が鳴った。

 

「またなサイトウ」

「うん」

「なあ」

 

 船を降りる俺の背中に向けて、タチバナさんはこう言った。

 

「一ヶ月ぶん、たっぷり寝ろ」

 

 俺はその言葉に曖昧に頷いて、タラップを渡った。それから後ろに立っているはずのタチバナさんに片手をひらひら振って、歩き出した。

 歩きながら、スキニーのポケットからスマホを出して時間を見た。

 今から行っても、着く頃にはリコリコは閉まっている。でも。

 ミズキさんの無事が知りたい。

 千束とたきなの無事が知りたい。

 明日、パンケーキを食べに行くと約束していたから、誰にも傷ついていてほしくない。引き金を引いたのは自分のくせに、身勝手にもそう思っている。

 

 あのとき俺は、誰を撃った? 

 わかりきっているはずの問いが、目覚めてからずっとリフレインしている。まるで結論を出すことを拒否するように。

 その感覚は、昼間の狙撃のときと同じ。

 千束を殺したんだと、そう思ったときと同じ。

 息ができない。

 腐った大気が俺を取り囲んでいる。

 

 俺はタクシーを捕まえてリコリコに向かった。道中何度か居眠りしたせいで、時間の感覚が飛び飛びで、気づいた頃には完全に夜になっていて。

 そして、CLOSEDの札がかかったドアの前にいた。

 俺はみんなの連絡先を持っていなかったから、こうするしかなかった。

 明るい窓は一つもなかったけど、ドアのステンドグラスだけはおぼろげに中の光を透過して、暗闇の中で幽霊みたいに浮かび上がって見えた。

 誰かが中にいる。

 俺は断頭台に上る気持ちでドアを押す。

 カウンターに、一人。

 亜麻色の髪の毛。ウェーブのかかった長髪。カウンターライトだけが点いている暗い店内で、それだけが光を受けて鮮明に見えた。

 

「……え」

 

 夢だと思った。俺の本当の体はまださっきの船で居眠りをしていて、この光景は、ミズキさんを殺した事実を受け入れられない自分が作り出した妄想なんだ、って。

 

「遅かったわね」

 

 穏やかなはずの声に俺はひどく怯えた。無意識に後ずさって、背中がドアにぶつかった。自分の体なのに制御がきかなかった。

 いつもはこんなじゃないのに。

 

「晩酌に付き合ってちょうだい?」

 

 私服姿のミズキさんは振り返らない。ただ、カウンターに置かれた一升瓶を持ち上げて、隣の席のグラスに中身を注いだ。

 俺は茫然としたまま、そこに腰掛けた。

 隣でグラスを置く音がする。

 

「幽霊に会ったみたいな顔」

 

 俺は何も言えなかった。いかなる時も機密は守られなければいけなかった。

 

「ねえ。この間、あなたのスケジュールを当ててみせたの、覚えてる?」

 

 俺はグラスになみなみ注がれた焼酎の液面を見ながら、小さく頷いた。そこ以外に目線を向けるのが怖かった。

 無意識に震える手を、俺は反対の手で強く握って隠した。

 

「なんで分かったと思う?」

「……わかりません。俺の仕事を知ってる人間は、DAの中でも限られます。デジタルデータにさえ残らない時もある」

 

 グラスをゆっくり持ち上げて、今にもあふれそうな酒をすするように飲んだ。度数二〇%前後。この体にとっては水同然だ。

 

「前はDAにいたって話、したでしょ?」

「はい」

「知り合いがまだいるのよ。四六時中おちゃらけてるダメ人間なんだけど、仕事だけは誰よりもできるやつでね。そいつが時々、気まぐれに教えてくれるの」

「それって……」

 

 さっき、船に。

 

「まさか、タチバナさん?」

「知ってるの?」

「兵站を、担当してます。俺の仕事の。それでよく会う」

「アイツほんっと悪ガキでしょ?」

「まあ、無邪気っていうか、なんていうか」

「もう、あんなのに気ぃ遣うなんて優しいんだから!」

 

 ミズキさんが笑ったのが聞こえて、俺もぎこちなく口角を上げた。嘘でも笑うと手の震えが収まる気がした。

 俺はグラスの焼酎を三分の一、ごくりと喉を鳴らして飲んだ。

 

「そう、それで……ウォールナットの依頼を受けたときに、あなたが動いてることを知ったの」

「……わかってたんですか」

「二週間前に知ったわ。だから、対策してた」

「俺がウォールナットの拠点を割る前……」

「着ぐるみは派手に血が出る細工つきで、私がウォールナットになりすまして死んだふり。タイプⅣアーマーと防弾プレートで全身ガチガチにしてたから、ご覧の通り無傷よ! スナイパーの弾より熱中症が怖かったくらい」

 

 座りながら上半身をくねらせて得意げにポーズを取る彼女の発言に、俺は心臓が止まりかけた。

 

「待って、タイプⅣですか? 俺が撃ったのは.408シャイタックです。それじゃ防げない……」

「え、そんなヤバいので撃たれてたの私!?」

 

 俺は自分なりの分析をミズキさんに話した。

 奇跡的に照準がずれて、エンジンごと着ぐるみを撃ち抜いた。それで威力が殺されて、二人は助かったんだろう、と。

 

「狙いが狂わなければ、俺はミズキさんを殺してた。後ろに乗っていた千束もです」

 

 俺は脳裏にこびりつく最悪の想像をかき消したくて、残りを一気に飲み干した。それでも俺は欠片も酔わない。不死身の体は毒殺にも耐えるらしく、薬にも酒にも、人間離れした耐性があった。

 こういう時くらい、酔えたらいいのに。

 

「怖かったでしょう」

「えっ?」

 

 自分の耳を疑った。どうして彼女からそんな言葉が出るか、全く理解できなかった。

 殺されそうになったミズキさんのほうが、俺を怖がるべきだ。銃口を向けられて、後ずさってたじゃないか。

 肩に手が乗せられた。怖い。

 触れられるのは、怖い。

 心の内に、触れられてるみたいで。

 

「あなた、ずっと震えてる」

 

 ミズキさんは俺の目を見ていた。

 千束と同じ目だ。

 考えを見通されてるみたいで、怖い。

 

「え、や、そんなこと」

 

 こちらに向き直って手を伸ばしてくるミズキさんに、俺は反応できなかった。引っ張られる。恐怖に耐えかねて小さく悲鳴を上げた。その時にはもう、目は固く閉じていた。

 最初に感じたのは温かさだった。目を少しずつ開けると、ふわふわした亜麻色の髪とミズキさんの肩が見えた。

 抱き締め、られてる。手が、背中をさすっている。

 どうして? 

 

「大丈夫」

 

 なんで。

 

「大丈夫……」

 

 どうして。

 

「私も、千束も、ちゃんと生きてる」

 

 どうしてそんなに、優しくするの? 

 息が、うまくできない。

 頭を、撫でられている。短い髪が、優しく撫でられている。

 

「あなたは悪くないわ」

 

 喉の奥から、変な声が勝手に出た。

 

「ひ、ぐ……う……うっ……」

 

 そっか。

 俺。

 泣いてるんだ。

 

「ごめんなさい……」

「大丈夫」

「ごめ、なさい……」

「いいの」

「おれ、なんてこと……」

「大丈夫。大丈夫。私はここにいるわ……」

 

 泣いたのなんて、初めてだ。

 温かい腕に抱かれていると、この人はちゃんと生きているんだって、そう思える。殺さなくて済んだんだって、感じられる。

 泣いていたのは、たった数分のようにも、数時間のようにも思えた。涙が流れれば流れるほど、心は洗われていった。

 俺は新しい涙が出なくなるまでそうしていた。

 

「……すみません。もう、大丈夫です。ありがとうございます」

 

 そう言って、離してもらった。なんだか足元がふわふわしているような気がして、幸せな夢を見ているようだった。

 

「あ、ごめんなさい、涙で服が……」

「ううん、気にしないで。力になれてよかった」

 

 俺は目頭に残っていた涙を指で拭った。その間、ミズキさんは一度席を立って、酒瓶をカウンターの後ろに隠しに行った。

 スマホの時計を見た。思ったより時間が経っていた。外はきっと真っ暗だろう。

 俺はカウンター越しに話しかけた。

 

「ミズキさんはどうやって帰るんですか?」

「歩きかな、飲んじゃったし……あ、グラス頂戴」

「はい……家まで送ります」

「ほんと? ありがとー!」

 

 二人で手分けして戸締まりをした。明かりを消して、グラスを洗って、すべては元通り。今夜あったことは、俺とミズキさん以外、誰も知らない。

 街灯の下を並んで歩く。前にも後ろにも人はいない。二人分の足音と、誰かの家の庭から聞こえる虫の声だけが聞こえている。

 静かで、いい夜だと思った。

 

「あんたさ、せっかくだし上がってきなさいよ。宅呑みしましょ」

「え、でも」

「家主がいいって言ってんだから、あとはあんた次第よ」

「……じゃあ、お邪魔します」

「っしゃ決まり! さっさと帰って酒よ酒ー!」

「まだ呑むんスかミズキさん……」

 

 二人きりで路地を歩いていると、古い映画を思い出す。線路を歩いて、森に死体を探しに行く四人の悪ガキたちの話。

 その再現をしてみたくなって、俺は歩きながらミズキさんの尻を足でちょいと小突いた。

 いたずらに気づいた彼女はにやりと笑って足を振りかぶり、俺の尻を力いっぱい蹴り返し、快音を夜の住宅街に響かせた。

 

「痛ってぇ! マジの蹴りじゃん今の!」

「オホホホホ! 捕まえてご覧なさーい!」

「あ、逃げた!」

 

 走り出すミズキさんを俺は追いかけた。

 そう、丁度こんなシーンがあったっけ。

 ……いや、やっぱりちょっと違ったかな?




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