ヒーローと亜人   作:ガジャピン

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第20話 個性因子

 佐藤が丸井を始末したその日の朝。佐藤はリベンジエッジの面々をこの工場にある応接室に集合させた。応接室といっても豪華な家具が置かれているわけではなく、安っぽいソファ二つに木製テーブル、テレビのモニターとそれを置く木製の台があるくらいだ。台の中にはゲーム機が収納されている。

 

「今から動画を撮りたいと思う」

 

 佐藤は開口一番でそう言った。リベンジエッジの面々は何故いきなりそんな話になるか分からず、困惑の表情を浮かべる。

 そんな彼らの反応を気にもせず、佐藤はテレビモニターのチャンネルを手に取り、モニターの電源を入れた。そこからチャンネルを次々に切り替え、ニュース番組にする。女性アナウンサーの声が聞こえてきた。

 

『──次のニュースです。昨夜一時頃、東京都内のビジネスホテルで爆発がありました。この爆発で四名が死亡、三名が負傷しました。この爆発の原因は破片手榴弾であると思われ、爆発元となる202号室にいた人物の身元確認、この爆発の目的、一昨日のテレビ局を占拠した事件との関係性について、警察とヒーローの捜査が今後も続けられる方針です』

「ちょうど良いニュースがあるね」

 

 爆発により一部が崩れたビジネスホテルと、その下に『ビジネスホテル爆発。死者四名負傷者三名』のテロップが流れている画面を観ながら、佐藤は頬を緩ませた。

 リベンジエッジの面々はこの事件を起こしたのが佐藤だと薄々勘付いているが、それを言った時の佐藤の反応が怖いため、何も言えなかった。

 その中で猿石だけは一人青ざめた顔をしている。猿石はそのホテル周辺の監視カメラの位置データを調べたため、リベンジエッジの面々の中でただ一人この事件の犯人が佐藤だと確信している人物であり、この被害者が丸井だろうと目星がついている人物である。

 佐藤は猿石が丸井を殺したと気付く可能性が一番高いことを当然分かっているため、猿石の方に意図的に目を向けている。猿石は佐藤と目が合うと慌てて視線を下に向けた。

 その反応に佐藤は満足すると、佐藤は一度両手を叩いた。

 

「さぁ、動画作成しよう」

 

 そして、動画の撮影が始まった。

 

 

 動画撮影終了後、猿石はパソコンに向かって作業していた。そこに佐藤が顔を出す。

 

「どう? 進んでる?」

「あ……はい、言われたものは大体完成しました」

 

 猿石は佐藤に視線を合わせず、パソコンのモニターを注視したまま言った。

 

「仕事早くて助かるよ。本当にキミは優秀だ」

「あ、ありがとうございます」

 

 それからしばらく沈黙が訪れた。

 猿石は佐藤の方をチラチラ見ると、意を決したかのように口を開く。

 

「あの……ビジネスホテルの爆破事件を起こしたのは佐藤さんですか?」

「うん」

「……丸井さんを殺すために?」

「そうだよ」

 

 あまりにも佐藤が普通に答えるため、猿石は言葉が出てこなくなった。

 佐藤は猿石の肩に手を置く。

 

「何故我々はヒーロー相手に先手を取り続けられるか。それは我々の情報をヒーローに与えず、我々がヒーローの情報を得ているからだ。だからこそ我々は効果的な作戦を立てることができる。丸井君は我々の情報を知り過ぎていた。我々のアドバンテージを守るためには、万が一を無くす必要があった。丸井君にその気は無くてもね。彼の犠牲は必要な犠牲だったんだ」

「……丸井さんはきっと情報を漏らさなかったです」

「かもしれない。だが、『個性』で心を読めるヒーローがいるかもしれないし、操ったりできる『個性』があるかもしれない。そう言うのを考えれば、丸井君の意思は重要じゃないんだよ。存在自体がリスクなんだ」

「……でも……」

「いや、分かるよ。彼は仲間だった。私も辛かったよ」

 

 佐藤の表情が沈痛な表情になる。だが、猿石は佐藤という人物を理解している。きっと楽しそうに丸井を殺したのだろう、と猿石は思った。だからといって、それを表に出さないのが猿石の処世術であり、防衛方法だった。

 そして、佐藤はその猿石の心を読んでいるが、それを口にしたりしない。お互い本音を分かっていながら、それに気付いていないような白々しいやり取りを続けている。

 そんな二人の会話を、部屋の外で聞いていた人物がいた。沙紀である。彼女は佐藤から命じられた役割を果たしたことを佐藤に報告しようと、この部屋に来ていた。沙紀は両手を口に当て、目を見開きながら扉の横の壁に背を当てていた。

 そんな状態だったため、佐藤が扉を開けて出てきた時、沙紀は逃げようとして逃げられなかった。佐藤と沙紀の視線がかち合い、お互いに「あ」という声を漏らす。

 

「その、佐藤さん、アレ渡してきました! それじゃあ……」

 

 沙紀は口早にそう言うと、逃げるようにその場から離れていく。

 そんな彼女の後ろ姿を見ながら、佐藤はため息をついた。

 

 ──ノリ悪い人、もう一人増えちゃうかな。ま、いいけど。

 

 そんな佐藤の後ろで、猿石は恐怖で体を震わせていた。彼は予感しているのだ。佐藤の銃口がいつかこちらに向く日が来ることを。

 

 

 沙紀は走っていた。倉庫にいるであろう(さとし)と針間のところを目指して。

 

 ──針間さん、やっぱり佐藤さんに優しさなんて無かったよ。

 

 だが、沙紀は佐藤の言い分も理解できた。情報が自分たちにとって生命線であることは、佐藤が来る前から分かっていたことだからだ。

 とにかく、自分たちに逃げ道など無い。それが分かれば、沙紀はただ眼前のことを楽しもうとする才能があった。佐藤の予想に反して、今の彼女は佐藤を裏切るなど考えてもいなかったのだ。

 

 

 

    ◆     ◆     ◆    

 

 

 

 その日の十八時半、怯えきった顔をした女性がテレビ局に駆け込んできた。

 当然テレビ局は佐藤が起こしたテレビ局占拠事件の影響で警備が厳重になっており、その女性は入口の警備員に止められ中に入ることはできなかった。

 女性は自分を止めた警備員に対し、涙を浮かべながら懇願する。

 

「お願いします! 中に入れてください! 私はプロデューサーにこの紙を渡さないといけないんです! じゃないと、私の子どもがヴィランに……!」

「お、落ち着いてください! お子様がどうされたんですか!?」

「だから! ヴィランに子どもが誘拐されて……! 言われた通りにしないと子どもが殺されちゃうんです! この紙をプロデューサーさんに渡してください!」

 

 女性は手に持つ紙を警備員に差し出す。

 警備員は反射的にその紙を受け取り、折り畳まれたその紙を広げた。近くにいた他の警備員三人も覗き込むようにして、紙に何が書かれているか確認する。

 その書かれた内容を要約するとこうなる。『十九時からの番組を中断し、動画を放送すること。しなかった場合、このテレビ局に関わる者及び近しい者たちを殺す』

 これを読み終わった警備員たちはお互いに顔を見合わせ、その内の一人が腕時計で時間を確認。あまり残された時間がないことを悟ると慌ててテレビ局の受付に行き、事情を伝えた。

 外にいる紙を渡した女性はその場でへたり込み、顔を両手で覆って嗚咽を漏らしている。

 結局その紙はプロデューサーのところまで届き、プロデューサーは警察を呼びつつも、その紙の要求に従うことを決めた。従う一番の理由は、ただ動画を流せばいいという彼らにとっては軽い要求だからだ。だが、従わなかった場合の制裁は重すぎる。プロデューサーにとって、テレビ局員全員とその親しい者たちの命と要求を天秤にかけた時、要求を受け入れた方が圧倒的にマシだったのだ。

 この一連の騒動はこのテレビ局だけの話では無かった。チャンネルを持つテレビ局のほぼ全てがこの騒動に巻き込まれていた。そして、その中のほとんどが要求を呑むことを選択した。

 

 

 

    ◆     ◆     ◆    

 

 

 

 テレビ局の騒動の少し後。警視庁にある会議室の一室。部屋の内装は机と椅子、壁の一面に設置された巨大モニター以外はほぼ何も無いシンプルな空間。ちなみに巨大モニターはパソコンの画面を出力することもできるし、場合によってはテレビも観れるし、録画された映像記録媒体を再生することもできる。

 その会議室に今、多数のヒーローと警視総監と副総監が座っている。来ているヒーローの中で目立つヒーローはエンデヴァー、ミルコ、ホークス、クラスト、リューキュウ、エッジショット、ギャングオルカ、グラントリノ、イレイザーヘッド、ミッドナイト、プレゼント・マイクあたり。この中で事務所を持っているヒーローはサイドキックに事務所を任せていた。

 彼らの前に白衣を着た初老の男が立つ。彼は落ち着きが無く、俯きながらも視線をあちこちに動かしている。

 

「あ、あの、予定していたもう一人がまだ到着していないようで……」

「それはつまり、遅刻していると?」

 

 警視総監が微かにイラつきを滲ませながらそう言った。そもそも帽子ヴィランについて重要なことが分かったと招集をかけたのは彼らの方なのだ。呼び出した張本人が遅刻とはジョークにもならない。

 白衣の男はますます狼狽(うろた)える。

 

「もうすぐ! もうすぐ来ますので! あとほんの少しだけ時間をいただいてもよろしいでしょうか……?」

「……キミが説明することはできんのかね?」

「私など、彼の理解力の半分にも達していません! 彼は……オグリ博士は生物物理学者の天才です! 特に個性研究の分野では他の追随を許さないほどの成果をあげています!」

「オグリ博士のことは当然知っている。だが、認識にはズレがあるようだ。彼は七十年も前の論文を支持し、固執して周りの学者から嘲笑を浴びた変人だ。あの論文は何と言ったか……」

「超常特異点」

 

 警視総監が思い出そうと額に手を当てた時、入口方向から男の声が割り込んだ。室内の全員が入口に注目する。割り込んだ中年の男は携帯灰皿を手に持ち、その中にタバコの灰を落としつつ、再びタバコを咥えた。もちろん室内は禁煙である。

 警視総監と副総監はその男に対し、怒りで頭に血が上った。

 

「貴様、オグリィ! 遅れてきた挙げ句に喫煙か! どこまでふざければ気が済む! 我々は貴様の狂言に付き合ってやれる時間など無いのだ!」

「すみません! 本当に申し訳ありません!」

 

 謝罪は張本人ではなく、最初からいた白衣の男がした。ペコペコと何度も頭を下げている。オグリと呼ばれた男は白衣の男に感謝の一つも示さず、口から紫煙を吐き出した。

 この男はオグリイキヤと言い、黒の短髪に無精ひげ。服装は柄付きのジーパンに柄シャツ、黒のジャケットを羽織っていて、学者とは思えない服装をしている。

 

「タバコには文句を言うのに、そこの炎男には何も言わないのか?」

 

 オグリはエンデヴァーを指差した。エンデヴァーは無反応。ただオグリに視線を向けている。

 

「タバコとエンデヴァーの炎を一緒にするな! エンデヴァーの炎は別に他人に迷惑をかけていない!」

 

 副総監が怒鳴る。

 

「なら俺も他人に迷惑をかけていない。扉を開けて通路に煙がいくようにしている」

「遅刻しているだろうが! 何が迷惑をかけていないだ!」

「……副総監、今はタバコの話をしているんだ。流れが読めないのかね? 遅刻に関しては、まぁそうした方がいいと思った。俺がいないと始まらないだろうと予想したが、予想通りの対応をしたようだね、荒井博士」

「オ、オグリ君! 頼むよホントに!」

「分かってる。え〜、集まってもらったのは他でもない。帽子ヴィランの左腕の分析結果を伝えたかった。あまりにも面白くてね」

「面白い?」

 

 全身肌色のタイツで包み、目を縁だけのマスクで覆っている黒髪長髪の女性ヒーロー『ミッドナイト』が反応した。

 

「そうとも。分析した結果、個性因子は一切確認できなかった」

「あの帽子は『無個性』だったっつーのか!? そんな馬鹿な!?」

 

 ミルコは思わず立ち上がった。

 オグリはタバコを吸い、紫煙を吐き出す。

 

「兎のお嬢ちゃん、言葉は正確に言おう。帽子ヴィランは『無個性』じゃない。……そうか、君か。この帽子ヴィランと戦闘して生き残ったヒーローは。君がこの帽子ヴィランの能力を確認し、条件付きの再生能力と断定したんだったな」

「そうだ。そう考えないと説明がつかねえ。てか、『無個性』じゃないってどういう意味だ? テメエが個性因子が無いって言ったんじゃねェか!」

「はぁ……『無個性』の定義も知らないのか、ここの連中は」

 

 オグリはため息をついた後、室内に集まった顔を見渡す。その中の誰からも声はあがらなかった。

 

「『無個性』とは、個性因子を持ちつつも何らかの特徴、能力が発現しない生物をさす。これで理解したかね? 個性因子そのものが無いということと、個性因子がありつつも個性が無いことの違いが」

「……どっちも大して違わねえじゃねェか」

 

 ミルコがボソッと呟く。

 

「ラビットヒーロー……バカかね、君は」

「あぁ!?」

 

 ミルコがドスの利いた声を出してオグリを睨む。

 オグリは携帯灰皿にタバコを押し付け、吸い殻を携帯灰皿に捨てた。そして、その携帯灰皿をポケットにしまう。その後、オグリは入口から荒井博士のいる隣まで歩き、その前の机に置かれている水の入ったコップを手に取る。

 

「個性因子をこのコップで例えるなら、このコップが個性因子であり、コップの中に入っている水が能力にあたる」

 

 オグリはコップの水を一気に飲み干した。空になったコップを机に置く。そんなオグリの隣で荒井博士が「私の水ぅ……」と呟いていたが、オグリは一切反応しなかった。

 

「この空のコップの状態こそ、無個性だ。つまり何らかの手段によりこのコップの中に個性という名の飲み物を注げるなら、無個性は個性を手に入れることができる。脳無が何故複数の個性を持っていたかはこれで説明できる。オール・フォー・ワンの個性こそ個性因子に個性を与える能力だからだ。そして個性因子そのものが無いということは、この個性という名の飲み物を注ぐ器そのものが無いということであり、オール・フォー・ワンだろうがこの生物に個性を与えることはできない。個性が発現する余地が全く無いのだよ、個性因子が無いということは。ここが一番の違いだ」

 

 いつの間にか話が本題に入っているため、室内の面々は自然と黙っていた。ミルコも舌打ちした後、静かに席につく。

 

「個性因子には容量(キャパシティ)が存在する。大量の個性を与えられてキャパシティを超えた場合、その生物は廃人となったり肉体が大量の個性に適応できず崩壊する。キャパシティには個体差があり、一つしか個性が使えない者もいれば大量に使える者もいる。これはオール・フォー・ワンの限界が分からない以上、キャパシティの最大値は出すことができない」

 

 オグリは警視総監と副総監の方に視線を向ける。

 

「そういえばさっき超常特異点の話をしていたな。最近は個性特異点なんて言うみたいだが。俺を異端呼ばわりする奴らはその暴論を支持しているからなんてよく言うが、あれは暴論じゃないよ。現実を見たまえ。世代を経るごとに強力かつ複雑になっていく個性を。個性は遺伝的情報と本人の素質によるものだと判明している。なら、話は単純だ。さっきのコップの話で例えるなら、どんどん混ざりあい濃厚になっていく個性のミックスジュースが世代を通して作られているってわけだ。まあ、相性が悪くて上手く混ざらない場合もあるがね。そこの炎男の息子がそのパターンだ。半身ずつに別々の個性なんて、いかにも分かりやすい」

 

 エンデヴァーは露骨に顔をしかめた。エンデヴァーには焦凍(しょうと)という名前の息子がいて、今は雄英高校の1―Aに在席している。焦凍の個性は半冷半燃であり、右半身が氷を操る個性で、左半身が炎を操る個性となっている。

 エンデヴァーは不機嫌そうに口を開く。

 

「とっとと次の話に行け。個性因子が無いから帽子ヴィランは個性そのものが無い。それで終わりの話だろう」

「そう、帽子ヴィランは個性因子による個性を持っていないという話だ。だが、ラビットヒーローは『再生』らしき能力を確認した。そうだな?」

「あ、ああ」

 

 ミルコは戸惑いつつ応えた。

 

「なら、答えは一つだろう! その帽子ヴィランは個性因子とは別の要因で『再生能力』を発現させたのだ! 新たな人類の可能性を感じるだろう! それと、だ。これを観たまえ」

 

 オグリは机に置いてあるパソコンを操作し、壁一面のモニターにパソコンの画面を出力した。画面には報道ヘリが帽子ヴィランの報道ヘリを撮っている映像が出されている。

 

「いいか、ここだ」

 

 オグリは帽子ヴィランの報道ヘリの操縦席をズーム。画質は荒くなるが、操縦士らしき人物は影も形もない。室内にざわめきが起きた。

 

「どういう原理かは分からないが、人ではない何かで操縦している。これもこの帽子ヴィランの能力かもしれない。個性因子とは違う要因なら、能力に制限は無いかもしれないし」

「そういえば……私透明なヤツと闘ったな。帽子ヴィランとの戦闘後に」

 

 ミルコが静岡刑務所で帽子ヴィランと戦闘した時のことを思い出しつつ呟いた。室内の視線がミルコに集中する。

 

「何故そんな重要な情報を黙っていた!?」

 

 エンデヴァーがミルコに怒鳴る。

 

「何故って、帽子ヴィランの能力じゃねえって決めつけてたんだよ! あの時は状況が混乱してたから、帽子ヴィランの仲間が近くにいたか、脱走したヴィランの個性かと思ったし」

「脱走したヴィランは全員確保したが、その中に透明になれる個性を持つ者はいなかった」

 

 警視総監が口を挟む。

 

「人じゃねえよ、私が闘った透明なヤツは。人ってよりはなんかコンクリブロックを蹴った時みたいな感触だったからな」

「ということは、とりあえずこの帽子ヴィランは透明な何かを操れる個性も使用できるという認識でよろしいかしら? というより、そもそも帽子ヴィランは死んだのでは? 死んだならこの話し合いに何の意味があるのでしょう?」

 

 金髪のショートヘアで金色の瞳の女性──リューキュウが言った。彼女は暗めの赤いチャイナドレスのような服を着ている。そんな彼女の個性は『ドラゴン』であり、その名の通りドラゴンに変身できる。

 オグリは腕時計を見た。モニターのリモコンを操作し、テレビのチャンネルに合わせる。途端に室内がテレビの音で騒々しくなった。

 警視総監が怒りの眼差しをオグリに向ける。

 

「おいオグリィ! ここは貴様の家ではないぞ! どれだけ好き勝手──」

『十八時三十分頃、帽子ヴィランの仲間を騙るヴィランが子どもを誘拐し、その母親を通じて我々に要求をしてきました。要求内容はあるサイトの動画を流すことであり、流さなければ我々と我々の親しい相手を殺すと伝えてきました』

 

 モニターに女性アナウンサーが映り、原稿を読み上げている。その内容に警視総監は黙り、室内はシンと静かになった。モニターから流れる声だけが室内に響いている。

 

『私たちは苦渋の決断を迫られ、最終的に動画を流すという要求を呑むことにしました。視聴される国民の皆さまには、私たちに選択肢が無かったことをご理解していただきたく存じます。それでは、動画を流します』

 

 モニターはまず『PATRIOTS(パトリオッツ).com』というサイトが映り、次にそのサイトをクリックしたトップページに貼られている動画の再生ボタンをクリックした。すぐに動画は全画面再生となる。

 その動画は、ハンチング帽にミリタリーベストを着た中年男がカメラに向けて手を振るシーンから始まった。

 

『国民の皆さん、また会ったね。こんばんは』

 

 帽子の男からそんな和やかな言葉が飛び出した。それが日本国内を更なる混沌(カオス)に叩き落とす始まりとなることを、この時この場にいた者たちはひしひしと感じていた。




今回の個性因子の説明はかなり独自解釈が含まれていると思います。
あと、この回に出てくるオグリ博士は亜人のオグラ博士のパラレルワールド的存在として出しています。いわゆるゲストキャラというのでしょうか。
ただ、書いてて分かりましたが、原作のオグラ博士のセンス溢れる独特な言い回しは私には無理でした。そこは温かい目で見てもらえると助かります。ちなみに亜人原作のオグラ博士で一番好きなシーンは中指立てながら「コレが見えるか?」と言ったシーンです。あの憎たらしい顔といい、亜人を読み直すたびに笑ってしまうポイントです。
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