ロマンシング・サガ-ミンストレルソング- 真実への選択 作:ナタタク
「う、うう、ああ…」
熱病に侵されたようなだるさを覚えながら、傷だらけの男が洞窟の中をさまよう。
脳裏に響くのは3人の男の声。
どこからともなく聞こえるその声は氷のような冷たいもの、己のみを満たす快楽に包まれたもの、ドスの聞いた声。
いずれの声からも共通して感じるのは、己への殺意。
「いや…だ…!死にたく、ない…!!」
どんなに殺意を向けられても、生きたいと願う心。
生き物それぞれが持つ当たり前の感情。
だが、3つの声の持ち主はそれを許さない。
自分という存在を許さない。
やがて、地割れのような激しい揺れが襲う。
周囲の岩が崩れ、己を覆いつくすような巨大な岩が襲いかかる。
「うわああああああああ!!!!!」
「…!!はあ、はあ、はあ…」
岩が当たるか当たらないかというタイミングで急激に視界が変化し、そこはテントの中に代わっていた。
そばにあるろうそくの炎と暗がりの中にかすかに見える模様。
それは先ほどまで見た無機質な岩とは全く違う、人の手の入った暖かいもの。
どうにか首を動かして、周りの状況を確認する。
(なんだろう…足のあたりがちょっと変だ…)
体からはだるさを感じ、両腕を使ってどうにか上半身を起こしていく。
鉛のように重たい体をどうにか動かした彼の目に映るのは、掛布団に包まれている自分の下半身と自分の左足あたりに頭を置いて眠っている少女の姿だ。
明るい夕日のような髪をしていて、左右が紺色と朱色に分かれた服を身に着けているようだが、側面部分がないようで、体から離れることがないように両側面にそれぞれ2本のベルトのようなものがついている。
上半身を改めてみると、彼女の着ているものと似た織物でできた服で包まれていて、彼女の物とは違い、側面まですべて包まれている状態だ。
体を動かしたことで気づかれたのか、少女はうっすらと目を開ける。
「あ…起きたぁ??ダメだよ、おじいちゃんも言ってたけど、体がかなり弱ってるみたいだから」
少女に抑えられた青年はそのまま再び布団に横たわらせられる。
先ほど起き上がった時も無理をしていたのは確かで、今は起き上がれるとは思えない。
「君…は…?」
「私?私はアイシャ」
「アイ、シャ…??」
「そう、それで…あなたは誰なの?洞窟の中で倒れてたけど…」
「洞窟…洞窟…」
洞窟、その言葉と同時に先ほどまで見た光景を思い出す。
もしかして、あの落石で大けがをして、それから彼女に助けられたと思うのが自然だとすべきなのだろうか。
だが、おかしいのは自分の体の状態だ。
かなり疲れているのはわかるが、それでできるであろう傷が何一つない。
あの落石に飲まれてからどれだけ時間がたったのかはわからないが、起きたときにはもう治っていたというのはかなりまれに思える。
もし仮に治るまで眠っていたとなると、どれだけの時間眠っていたのかわからない。
「ねえ、ねえ…誰なの!ねえ、答えてよ!」
アイシャの声でようやく思考が戻った青年だが、その自己紹介する中で最も基本的なものが答えられないことを自覚する。
「分からない…わからないんだ」
「わからないって…もしかして、名前…が?」
頭を抱えた青年への少女の素朴な疑問に肯定するように首をかすかに動かす。
考えてみると、他にも自分にはわからないことがある。
どこからきて、どうして彼女の言う洞窟にいたのか。
出身地や家族のこと、何もかもを答えることができない。
「僕は…僕は、誰…なんだ…!?」
「記憶喪失…ふむぅ」
翌朝になり、目を覚ました青年の様子を見に来た老人が彼の話を聞き、考え始める。
水色のスカーフを首に巻き、ゴーグルをつけた老人は昨晩まで看病をしてくれたアイシャの祖父で、このガレサステップの部族の一つ、タラール族の長老のニザムだ。
彼から助けられた時の話を聞き、青年が驚いたのはアイシャに助けられたのは昨日の昼であったことだ。
そして、衰弱していたのは確かだが、けがは一つもなく、裸にマントを一枚だけまかれた状態で倒れていたという。
そのマントに身元の分かる手掛かりがあればよかったものの、そのようなものはなく、青年も確認したが、名前も何も刻まれていない、ただのマントでしかない。
「あの…もし、なんですか…」
「うん、何かね?」
「お邪魔でしたら…その、出ていきます。ご迷惑をおかけするは…」
「いや、誰も迷惑などと言ってはおらんぞ。それに、そのまま出ていかれて、それからどうするのかね?」
「まぁ…僕が倒れてたってところにまず行って、それから…ええっと…」
「まったく、これでは何もつかめぬまま行き倒れるのは目に見えておるな。何か思い出すまででええ。ここにおれ」
「そんな…急に言われても。それに…僕にできることも分からないし…」
「ガレサステップは広く、魔物も多い。タラール族は互いに助け合って生きてきた。その掟に従うまでのことじゃ。それに、覚えていないようじゃが、ワシの孫娘を助けてくれたしのぉ」
「え…??助けたって?」
「そうそう!あなたを見つけたとき、私…魔物に追いかけられてたの!それで、倒れているあなたを見つけて、急に起きたあなたが手から炎を出して、魔物をやっつけてくれたの!まあ…それから急にまた倒れちゃったけど…」
全く身に覚えのない、自分が起こした行動に青年は首をかしげる。
やった覚えはないが、それもまた、失ってしまった記憶の一部なのだろうか。
「思い出せぬかもしれんが、おぬしは孫の命の恩人なんじゃ。その恩人を助けぬ理由がどこにあろうか」
ニザムもアイシャも嘘を言っているようには見えない。
それに、純粋に感謝されているように思えて、むず痒い感覚を覚えてしまう。
「ええっと…じゃあ…その、お世話に、なります…」
「やったぁ!これからよろしく!ええっと…」
「ああ、そうじゃな。記憶が戻るまでの名前がなければのぉ…」
いつまでも名無しというわけにもいかないが、どんな名前で呼べばいいのか。
ニザムとアイシャも悩み始める。
「うーん、どうせつけてくれるなら、たとえ仮でもまぁ、かっこよく…なんて」
青年の初期ステータス
名前 ???
性別 男
クラス ???
HP 115
LP 12
BP 5/15 +3
腕力 9
体力 8
器用さ 8
素早さ 10
知性 9
精神 8
愛 7
魅力 9
スキル 火術法L1、???、???(強い力で封印されている)、???(強い力で封印されている)
えー、ということで、この記憶喪失の主人公の名前をアイシャとニザムに代わって考えてくれる人を募集します!
感想を書いて、一緒にそこで名前も書いてもらうという形で。
感想については自由に書いてもらって構いません。
一応…彼の本当の名前については既に決まっていますが、記憶が戻るまでは秘密ということで。