ロマンシング・サガ-ミンストレルソング- 真実への選択   作:ナタタク

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第2話 ウソ

「ほら、こっちだよー!早くはやくー!」

「そんなに急がなくてもいいと思うけどなー!!」

楽しそうに馬を走らせるアイシャの後ろを、青年を乗せた馬がついていく。

アイシャに助けられて1週間が経過し、体力も回復した彼はこうしてアイシャと一緒に行動するようになった。

この1週間で分かったことは、彼女たちの言う通り、炎の術が使えることで、少なくとも基本中の基本といえる炎を放つ術であるヘルファイアと生命力を高めることで徐々に肉体を回復させる生命の炎、そして自分自身に炎のバリアを展開するセルフバーニングは使えて、実際にタラール族の狩人とともに狩りに出た際には、こうした術が使える人間がいないことから頼りにされた。

そして、馬乗りが好きでよく草原に飛び出すアイシャの護衛を頼まれることになった。

こうして一緒に行動することで、もしかしたら記憶を取り戻すきっかけをつかむことができるかもしれないという期待もある。

「ライト、おいて行っちゃうよー!!」

「置いていかれると、帰れなくなっちゃうって。それに、なんで呼び捨て?一応…年は君より上っぽいけど」

「だって、ライトさんって感じ全然しないしー!」

ライトという仮の名前をつけられた青年を1週間見てきたアイシャには、ライトが大人の男性という感じには見えなかった。

確かに炎の術が使えて、助けられた時は頼もしさを感じたが、こうして過ごしているとそれだけじゃないところを何度も見ることになった。

マイペースなところがあり、おまけに記憶喪失の影響のせいなのか、マルディアスのことやガレサステップをはじめとした、この世界における常識や歴史について何一つ知らないという状態だった。

そのくせ、術や武器の扱い方はある程度わかっている様子で、初めて会話したときもそうだが、標準語も話せるというアンバランスさ。

そのことを不思議に思われるのは当然だが、当の本人はラッキーだなんて思っている。

(だって、話せないともしかしたらアイシャ達に助けてもらえなかったかもしれないし、ちゃんと話せてラッキーだったよ!)

そんなことを笑顔で言われたのを思い出し、妙に子供っぽい感じがしたので思わず笑ってしまう。

ガレサステップの北東に進んだ、ドライランド中央に位置する都市ウソ。

ドライランド北部にある港町のノースポイントとドライランドの南隣にある国ローザリアの中継地点であり、同時にガレサステップの部族にとっては外の世界と身近に交流することのできる数少ない場所でもある。

狩猟で手に入れた肉や毛皮、そして部族内で作った工芸品をこの中継地点に集まった商人に売り、手に入れた金で塩や魚介類、野菜などを手に入れて持ち帰っている。

アイシャがライトをここへ連れてきたのは、もしかしたらここでライトの身元を知っている人がいるかもしれないというニザムからの助言があったからだ。

「どう?ライト。ここだと、何か思い出せそう?」

「わからない…。見たことがなくて、いろんな服装の人がいるなっていう感じしか…」

「うーん、だめかぁ。もしかしたら、行商人さんかな、なんて思ったけど…」

唯一ライトが持っていたマントは少なくとも旅人用に作られたもので、行商人やキャラバンガードもよく装備しているものだ。

ここに来れば、何か記憶の手掛かりがつかめるかもしれないと思ったが、やはりマント1枚では選択肢が多すぎるため、難しいだろう。

「でも、なんだか楽しいな。こうしてみると、いろんな人がいるんだね。この…ええっと、なんだっけ…その、マルディアス、だっけ?いいなって思うな」

「いいな…って言うのは?」

「なんていうのかな…。いろんなものがあって、面白いっていうか、楽しいっていうか…あ…すみません」

アイシャにどう話せばいいのか考えるのに夢中になってしまい、ついついぶつかってしまった相手のことをよく水に謝罪し、そのまま通り過ぎていく。

そんなライトとライトの話を聞くアイシャの後姿をぶつかられた大男は見つめる。

長いあごひげをみつあみにし、胸元のはだけた緑色の服に海賊帽をつけた男が腕を組んで彼の後姿を見つめる。

「ったく、失礼な若い奴だな」

「キャプテン、遅くなりました」

ライトたちの姿が人ごみの中に消えていくのと前後して、見慣れたトカゲのような姿の亜人が男のそばまで近づいてくる。

グレーの鱗でオレンジ色の厚手の服を身に着けた亜人、ゲッコ族。

ドライランドの港町であるノースポイントから定期船が出ている北東の島、ワロン島にのみ生息が確認される亜人であり、その多くは人間からの干渉を避けるべく、ジャングルの中で生息している。

それ故に、この個体のように人間と関わる存在は少ない。

「ゲラ=ハか。どうだ?『こいつ』については何かわかったか?」

「いえ…残念ですが、ここでも何の情報もつかめませんでした。キャプテンは?」

「同じだ。ま…そんなもんだとは思っちゃあいたがな…」

キャプテンと呼ばれた男は懐に入れている古びた書物を手に取った。

 

「ああー--、疲れたー!」

ライトが荷物を置く中、アイシャが敷かれている布団に入り込む。

ウソの宿屋はテント群となっており、それぞれにあてがわれたテントの中で旅人や行商人が休む形となっている。

出されるのはテントと寝具のみで、食事などは出ない代わりに安く泊まれる。

明日の朝にウソを出て、ニザム達の待つキャンプへ戻る予定だ。

「でも、ごめんね。ライト。手がかりが見つからなくて…」

「いいよ、アイシャ。それより、今日は楽しかったから、ありがとう」

「それならよかったけど…」

「そういえば、商人の人から聞いたんだけど、最近魔物が活発化してるんだって?」

「そうなの。どこでもそうみたいって、おじいちゃんも言ってたし…」

あくまでもこれは、ウソへ定期的に行き来している男手からの伝聞でしかないが、アイシャも馬で草原を走っていると、魔物の数が増えていて、見たことのないような個体も見るようになった覚えがある。

ライトと出会う前の話ではあるが、草原を馬で走っていたアイシャは普段ならばおとなしく、人を見るとすぐに隠れるような魔物に突然襲われたこともある。

その時はライトとは別のとある人物に助けられたおかげで一命をとりとめることができたが、そうした悪い方向への変化を身をもって感じることになった。

また、まだこれは真偽不明の情報ではあるが、ローザリア西部に位置する辺境であるイスマスが魔物の大規模な攻撃にあったという話もある。

「なんでこんなことになったんだろう。変なの…」

「…ごめん。嫌な話しちゃって。さ…早く寝よう。寝坊しないようにしないと」

「ん…。そうだね、お休み!」

寝床に入ってすぐにアイシャの小さな寝息が耳元に聞こえてくる。

そんなあっという間に眠ったアイシャの様子に笑みを見せ、ライトも目を閉じた。

 

ワーーー、ワーーー!!

外から悲鳴にも似た大声が響き渡り、その声で眠っていたライトの目がわずかに開く。

「なんだろう…??」

まだ眠気から覚めていないが、幻聴のような響きから次第に確かに人の声に聞こえてくる。

外で何かが起こっているのを感じたライトは隣で眠るアイシャの肩に触れる。

「アイシャ、アイシャ!!起きて、アイシャ!!」

「んん、どうしたの…ライ…キャア!!」

地面が大きく揺れ、起き上がろうとしたアイシャを思わず抱き寄せる。

急に抱かれたアイシャは驚きながらも、その顔はライトの胸に隠れていた。

「一体、外で何が…??」

上着だけを羽織ったライトが真っ先にテントの外に出る。

一番暗い夜明け前のようだが、燃えているテントや屋台のせいか、昼間のような明るさに感じてしまう。

その炎のおかげで、今起こっている異変を確かに知ることができた。

赤と青、黒の3つの異なる色の頭と胴体を持つ大蛇。

本来この地域では決して姿を見せないと思われていた魔物、パイロヒドラの姿がそこにはあった。




第1話で募集した主人公の仮の名前募集でしたが、結果としてライトに決定しました。
名前を考えてくれた小碓さん、ありがとうございます!

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