男女比偏った世界ならモテるという甘えた考えは捨てろ   作:HIGU.V

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叩いてみると破けるよ

「ですから! そこをどうにかお願いしますぅ!!」

 

「いや、だから……」

 

ここは俺の部屋。厳密には後見人という里親の家であり、後見人は政府の人間なので公舎になるのか? あまり詳しくないからわからないのだが。

 

何度も言うが親がいない俺は施設に預けられて、その後は後見人という形で生きてきた。本来孤児は子供のうちに意識レベルで女の子大好きに教育するらしいが、自我が強固だったからか、俺はそっち方面では落第を食らったからだ。

 

勉強も前世さんの学力が並以下だったので、まあ優秀な子供レベル止まりなので、返さなきゃいけない奨学金しか出ないし。

 

ただ、それだけだとさすがにいろいろ先立つものや将来への不安もある。成績だって高校レベルは正直限界が近いから。前世さん、もうちょっとこう頑張れなかったのかと思わなくもないが。だからアルバイトはしっかりしている。

 

んで、前は軽く触れた程度だったけれども。政府主導の、人口増加プロジェクトの一環で昔からやってる献血ならぬ【献精】。まぁぶっちゃけていうと、精子の買い取りである。

 

んで、何年か前に俺のところに来たのが彼女、駄場さんである。背は低いがタイトスカートのスーツの似合う大人な女性だが、実質的には下請けの会社である、孫請けかもしれない。

なので、営業職ということになるのだろうか?

 

というか、この男女比の社会で男性の家の住所が普通にぶっこぬかれているか、流されているかって。相当に闇が深い案件だと思う、来年入学のご家庭に学習塾のチラシが行くのとはわけが違うだろう。

そもそも、当時中学上がってすぐくらいの学生のところに来るのもめちゃくちゃ怖いんじゃないか? 俺は【もう】だったし、【こう】だから普通に受け入れたけれども。

 

後で教えてもらった、俺のところに来た理由だが、政府からリストが流れてきたのは事実で、それは持ち出し禁止だけれども。メモ用紙にメモして口の中に入れて隠して退出して、吐き出して復元したそうだ。だから安心してくださいねじゃないよ、こえーよ。やっぱ。

 

そして、そんな年端のいかない学生のもとを訪ねて、国のために精子出してください。というのである。献血と違って謝礼金は出るが、まともな親のいる家庭なら、門前払いであろう。

成人男性で、祐みたいに複数人を抱えてるとかじゃないなら、まぁ副業代わりにとなるかもしれないが。

 

割といい金額で買い取ってもらえるのと、専用の容器に入れて、毎週回収に来てくれるので、楽だったが。

ちなみに、祐には紹介してない。駄場さんと、俺のやっていること自体は話したが、お前もやるか? みたいなのを聞いてないという意味だ。多少困惑してたが、まぁ普通にもうやってるんだ的なリアクションなのは社会というか、国が悪いのかな。

 

さて話を戻すと、そう早速先日の懸念が問題として浮上したのだ。

 

「おねがいしますっ! あなたがいないと、わ、わたし、本当にクビになるんですうっ!」

 

最初にきたからというのも大きいが、この会社と契約した決め手は、この目の前のおばさ……おねぇ……うーん女性だ。

色々要領が悪くて、絶対に向いていない営業職をやっているという彼女は、確かそろそろサーからフォーになるかというくらいの年齢のはずだ。

 

小さい頃から男性とのあれこれを諦めて、仕事一本で頑張るとしていたのに、社会の荒波やらで摩耗して、こんな仕事でこんな立ち位置になってしまっている。会う度に雑談なんかをするから、色々聞かされている。

 

初対面の時渡された名刺に自分のスリーサイズを記載などしてて、涙ぐましい努力をしていた彼女の必死さに、正直おもしれー女って思ってしまったのだ。何よりあからさまに鯖読んでいたし。

 

そも、当時ですら、ぽっちゃりで不細工な少年の足元に縋りつくような必死の営業だった。そんなガッツがあるなら、もっと上行けそうだと思ったが。

 

「最近はもう、出部谷さんがいるから外回りの時間さぼって、他がいないんですぅ!!」

 

かなり、こうダメな人なのだ。

 

そもそも渡された3サイズも誤魔化しがすごかった。確認こそしてないが、なだらかな胸は上に10程足されて、腰とデカい尻は10以上少なく書かれている様子だ。そこは持ち味を生かせよとは思うが、コンプレックスなのだろう。ワカメとか言われそうなボリュームある髪の毛も、小柄な身長も嫌いだと言ってたし。

 

気を取り直してきつそうなタイトスカートのケツを突き上げるように土下座をしている、残念な生き物を見る。

 

「だから、俺前から言ってましたよね、現役中学生の精子だから高値で売れるんで一時的な物だって。その次は高校生ですっ! ってやってたけど、あと1年もしたら、価値がなくなるって」

 

「で、でもまだ2年生じゃないですか! あと1年はさぼれたじゃないですか!」

 

髪を振り乱して、そういうのは、まごうことなきダメな大人だ。実際会社からも、俺との契約がなければ契約打ち切りだったらしいから宜なるかなだ。

 

というか、元受け政府で、人によって売却額に差を出すって、なんか、こう、色々……いや、だめだ。まぁこの世界はそういうものなんだろうと納得するしかない。

 

「わ、わたし。まだ市立図書館の本棚、半分も読んでないっ!」

 

「だから、30過ぎてさぼりが図書館なのは、もうちょっと仕事頑張ってとしか…」

 

せめて喫茶店かファミレスにでも行ってくれよ、公園じゃないだけましなんだろうけど、

窓から見えるすぐ近くの図書館を思い出しつつそう思う。

 

んで、話を振り出しに戻して今もめてるのは、俺の息子がエンディングを迎えかけている件である。

 

竹之下の差し入れクッキーを食べてから、心因性なのかあまり元気がない。全くないわけじゃないが、どうにもという感じだ。試験前もこうなら良かったのだが。

 

この社会では日常的に接種できるのでやや供給過多だが、滋養と強壮のためしっかりとしたそういった豪勢なおかずを用意しても、反応が今一つだ。

 

前世さんも「もう生物として何も貢献もしてないな、資源を浪費して、ごみを排出する、ゴミ以下じゃん」と言っている。

 

事実、これが俺の唯一といってもいい、絶対的な社会貢献活動だった。冷静に考えて初めてから4年経ってるので、この国のどこかに俺の子供が何十人もいるかもしれないわけだ。聞いたら教えてくれる可能性はあるが、聞きたくはない……かな。

 

なおこの社会では、未成年関係の縛りというしがらみがなく、性欲が強いこの時期の学生はむしろ自然に作ってもいいくらいだ。とか考えられていて産休や育休制度が高校にあるけれど。

出したもの全部回収して最大効率で使えるシステムに回している俺は、少子化に対抗している立派な国民の一人だった。

まぁ今は無理なんだけど。

 

「いや、無理なものは無理なわけで」

 

協力したいのは山々なのだ、金にもなるし。駄場さんのこともそれなりの付き合いだから切り捨てるのには抵抗がある程度に好感度があるし。

 

「そ、そこを何とか」

 

もはやなんかの妖怪のように、パーマが強いくるくるの長いブラウンの髪の毛を振り乱して、足にしがみついてくる。

抱きすくめられてるのに、俺の脚に柔らかい感触がないのは指摘するべきか。しちゃ駄目だろうな。

 

でも、ないなら無いで、ケツがでかいのが際立っていいじゃないかと考えてみる。いや、そういうものか? 俺のおかずは全部でけぇのが多いから、その辺の良さはあんまり。

 

というか、手が股間まで伸びてきたので払いのける。自分の腹で見え難いので、気づくのが遅れた。いや、さすがにこれは捕まるでしょ。

 

元の世界換算でも三十半ばの女性が男子高校生の家に押しかけて、ズボンを脱がそうとしたら、アウトだよな。

 

「お、お願いしますううう、ふぇえええええん、どうかぁぁぁ!!」

 

しまいには泣き出したダメな大人に呆れた俺は、今日の夕飯はどうするかを考えて、事なきを得るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

何とか泣き止んで貰い、追加した今週分を渡して。半べそかいてる彼女を帰らせた後、部屋の換気と掃除をする。

 

「子供かぁ」

 

駄場さんは、最初から男性との結婚をあきらめて育った口だ。昔の写真を見せてもらったが垢抜けない感じはあったがそこまで悪くもない外見だったのにだ。

実際そういう考え人の方は多い。出産も求められ推奨されているが、厳密には義務ではないから。

 

男に生まれればイージーモードとよくネットで言われているが、正直否定はできない。

中学生、今は高校生だが、そんな子供に縋りついて恥をさらして、何とか食いつないでいるのだ、彼女は。哀れとは思うが同情するのは彼女への侮辱だろうか。

 

さぼりさぼりと嗜めるように言ってはいるが、男の家を訪ねて精子下さい。なんて仕事をやってれば、そりゃ心も荒むだろう。それは想像に易いことだ。

 

しかも彼女のところは、定期契約だから。決まった相手がいない人か、パートナーが少ない人という相手が中心だ。要するに性格に問題がある男性が多いわけで。心無い言葉をかけられることも多いだろう。

 

高校生以下の俺が価値が高いからなんとかなってたわけで、今日みたいなことが続けば、まぁ彼女は……

 

どちらにせよ、俺が高校卒業したら、特別契約先でなく、通常のそれが1つになるのだから、大変だろう。同情はするがどうにも出来ないことだ。

 

「こんなん忘れてくなよ」

 

先程彼女が、玄関の段差で土下座した時にひっかけたことにしたい、伝線し脱ぎ棄てられたストッキングをゴミ箱に放り込みつつ、また俺の価値が減っていく感覚を覚えて。

むかついた気分で食うレトルトカレーは、味が薄く感じた。

 

俺にできることは童貞で恋人なしの今の間は、当分続けることだけだから。

それは枯れるまでってことだな、と前世さんの言葉が頭に響くのだった。

 

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