男女比偏った世界ならモテるという甘えた考えは捨てろ 作:HIGU.V
祐の恋人関係は結構うまくいっているようだ。
夏休みも折り返しに差し掛かり、宿題などとっくに終えた俺は、祐の家で彼の宿題を手伝ったときにそう思った。
理由はわかりやすく、今時紙のカレンダーに予定を書き込む祐の癖で、毎日のように誰かとのデートが入っていることが分かったからだ。
俺がバイトに精を出している間にリア充活動である。おう、いいぞもっとやれ。だからこの華の家にお泊りというのは触れないでおいてやるよ。
夏は書き入れ時で短期のバイトを……なんてできればいいのだが、男性更衣室を用意できないとかで、野郎向けはあんまりないため、結局いつものバイトのシフトを増やしているだけである。
クッキー嘔吐事件の後竹之下とは少しぎくしゃくしたが、顔を合わせる回数が増えて、すっかり元通りだ。昨日も元気に宿題終わったんですかと煽ってきたため、余裕でと返しておいた。残念ながらうちの高校の方が偏差値高いんだ……共学だから。
さて、そんな些事は置いておいて、大事な祐のハーレム事情だが。やはりというべきか気づいたことがあった。
それはゆかり先生とのデートの回数が極端に他に比べて少ないことだ。受験生の先輩ですらちゃっかりコンスタントに会っているのにである。
社会人の為余暇が少ないのもあるが、やはり先生という立場がそうさせるのだろう。というわけで、早速余計なお世話を焼くことにしたのだ。ちょうどよい行事もあったので。
あくる日、今日俺と祐は暑い中制服で登校している。なんてことはない登校日だからだ。いや厳密には登校日ではないか……強制されるボランティアの日だ。そう、学校説明会に駆り出されるのである。学校は何時だって生徒を搾取する。
1,2年の男子生徒は全員参加である、実質的に客寄せパンダだが仕方ないであろう。まぁ、これも社会の闇の一部だ、去年鯉田姉妹と祐が2度目に出会ったイベントなので、無下にはできないのだ。
3年は受験だし新入生と会うこともないしで免除されるが。2学年併せても10人しか男子いないのだ。そら有効活用するよね。
閑話休題、去年もやったようにイベントを手伝い、ちょっと話をしたりとして数時間の拘束が終わった。俺は基本裏方だったけどね。それは良い望むところだし。そして放課後、というか要件が終わった後にこう切り出すわけだ。
「先生―カラオケ行きませんかー、英語の歌歌ってモテたいんですけど」
教室には俺含めて男子4人とゆかり先生だけである。一応学校行事なのでフィードバックがあるのだ。
「え、カラオケ? 突然?」
「いや、夏ですし、祐も行くよな?」
「あ、うん。お前が行くなら」
先生達もこの後解散なのは知っている。そして祐とはこの後デートの予定が入ってないことも。
いや、そこは入れておけよとは思ったが、まぁ夏休み前に説明会の後は祐とゲーセンにでも行くかーくらいの話を前にしてた記憶もある。
いや、それで空けられてたとかはないよな? 適当な口約束だぞ、デート優先しろよ。まぁいいか。今は置いておこう。
「うーん、そうねぇ」
雪之丞君は、そそくさと教室を逃げるように後にしてるし、もう一人の杉崎君も悪いパス と言って帰っていく。まぁ雪之丞君からしたらね、うん。仕方ないね。
「一応引率がいた方がいいかと思いまして」
夏の繁華街のカラオケに男子だけで行くのは、高校生になっても、まぁ推奨されていない。
「それじゃあ引率という意味で、ついていくわ」
「ありがとうございます、じゃあ祐行こうぜ」
一応俺は先生と祐の関係を当然知ってるし、先生も知られていることを知っているはずだ。この前のプールでも俺に対して何にも言わなかったわけだし。
という訳で、教師と生徒がカラオケに行くことに成功したのである。学校側でも、生徒が英語の歌を歌いたいと自発的に発言したのを面倒を見る形である。
放って置いたら祐が勝手にデートを始めるのならいいんだけど、たぶん祐の性格上ないからなぁ、基本休日の完全オフの日しかデートに誘ってないみたいだし、そういった方向でのリスクは取らないのだろう。
もちろん俺は適当なところでドロンするつもりだ。できれば受付前でカラオケ屋の少し手前で消えるのがベストなんだよね、金もかからないし。
そう考えながら、祐と一緒に出発前のお手洗いに行くのであった。
「わぁ! ゆかりさ……先生歌うまいですね」
「ふふっ、ありがと。よくエマ達と一緒に来てたから。昔の夢はアイドルだったのよ」
「へぇ? 可愛い夢ですね」
「そ、そう? 少し恥ずかしいわね」
目の前で、年上のお姉さんが格好良く歌い上げたのをほめる少年という、とても心温まる光景が繰り広げられている。これを見るつもりはなかったのが、見れた事自体は大変眼福である。
そう、俺もなぜか今カラオケにいるのである。それもこれも全て今横にいるお方のせいだ。
「昔のゆかりはだいぶ夢見がちだったからな」
「もう、エマったら。あなたも大概じゃない、変な癖も治ってないし」
「仕事には支障ないだろう」
ここまで車で送ってくれてそのままついてきた、山上エマ先生である。相変わらず前の開いたジャージ姿だ。俺にダイエットをするように迫ってくる人格者の先生が、なんでいるのかというと……
まず祐とのトイレから戻ると、教室に残っていたゆかり先生が誘ってもいいかしらと祐に確認をとったのだ。当然祐は即答でYESであり、直ぐに連絡が行って気が付けば教師2生徒2でのカラオケとなった。
そうすると逆に俺がドロンすると、祐と先生二人相手になる。ならば俺が居たほうが状況の把握とコントロールができるだけマシだ。
山上先生がハーレムメンバーに入るのならばいいんだが、この人は全くそういう素振りがないのだ。風のうわさでは年上の男性が好みとも聞いていたし、真面目だから生徒は完全に対象外なのだろう。せめて祐からの矢印があればなのだが、色々あってあいつはゆかり先生派なのだ。
友人とはいえ女性が二人いる感じにして、ゆかり先生が山上先生に気を遣うよりかは、俺がいれば自然と2:2となって先生が祐とイちゃつけるだろうと判断したのである。
その代わりと言っては何だが、祐とゆかり先生はとてもいい雰囲気だ。俺がいるの忘れているんじゃないかというくらいに。
最も、祐とゆかり先生は最低でも恋人、十中八九婚約関係で。恐らく肉体関係もあるだろうという仲なので。正直気を回しすぎだとは自分でも思っている。
それは大変結構なことなんだが、あの、ここに山上先生という部外者がいて
「ああ、安心しろ。出部谷。ゆかりの件は私も知ってる」
「あ、そうなんですか」
と思ったが、どうみても教師と生徒じゃない距離感で座っている二人をみても、何も言わないどころか、理解を示してくる。山上先生への懸念事項が全部消えたと言っても過言ではない。まぁ親友同士らしいし、いろいろ話すことはあるのだろう。
なんだ、なら適当にこっちで話し相手になってもらいつつ、たまに歌えば大丈夫か。
「とはいえ、ゆかりが羽目を外すようなら止めるぞ」
「まぁ、それははい」
公共の場なので、この後休憩できるところに消えるのも自己責任ならいいいけれど、さすがにここでは節度が大事だ。
まぁ、結果的にゆかり先生は彼氏といちゃいちゃできつつ、親友のことを気にかけないでいい程度に俺がいるというのは良かったのかもしれない。
タンバリンを振ってる祐は本当お前そういうの似合うなぁという感じである。
ただ、少しこの4人となって思い出したことがある。前に祐がゆかり先生をきれいな先生だなと言った件だ。
それをどこかのタイミング、男子だけで自習だった時間で掘り下げて聞いたことがある。確か女子の身体測定だったか? まぁ人数が偏っているためままあるのだ。自習時間。
いわゆる野郎同士の下賤なはなしであり。その際に、祐は好みの女性として、ゆかり先生をあげて、優しそうで少しおちゃめな感じがいいと言っていた。華には聞かせられないはなしである。
そしてその話聞き出すために俺の好みとかも吐き出したがまぁ些事か。
「ん、どうした? 出部谷」
「いえ、特には」
こと外見だけで考えるのならば、ずばり横にいる山上先生は俺の好みど真ん中だ。背も胸も尻もでかくて足も太い。以上! うん我ながらわかりやすい。だが、まぁそれだけである。祐にも伝えているし、年上好きの俺たちを宇宙人を見るような目で見てる雪之丞が印象的だったが、君も一桁超えると怖いは相当アレだからね。この前学校に来てた用務員の方の娘さん(小学生)がかわいかったはさすがに逆張りが過ぎると思うよ、雪之丞君。
まぁそういうわけで好ましい、女教師とのカラオケであるが。
無事好みの教師を5番目かの奥さんにする予定の祐と。
「にしてもお前、運動続けてるのか? あまり痩せてないぞ……少し筋肉はついたようだが」
「夏バテとかはないタイプなんで」
一方的にダイエットメニューを送られるだけの俺だ。
まぁ世の中そんなもんだ。
ともかくそんなこんなでカラオケはそこそこ盛り上がったのだ。デートっていう感じではなかったけれども。祐が恋人とどんな感じに過ごすのかも多少知れたし良かったとする。
自室、現代では時代が回り少なくなった自分用のパソコンを持っている俺は、先ほどからぴょこぴょこ通知がうるさいメッセージアプリを開いて返信をかいている。
静かな夜であるが、通知音は切りたい。
《毎日勉強ばっかで、亜紗美に会えないのつらい》
《向こうも忙しいから、一緒に勉強なんて誘えない》
《でもたまに息抜きで買い物行ったら亜紗美が下着新調してて辛い、またサイズの更新だったのよ》
まぁこんな感じで取巻き先輩からは定期的に鬼通知が来るのだ。もうただ愚痴を聞いてあげている感じでしかないけど、一応は丁寧に返す。
「まぁそら大きくなる要因はあるだろうからなぁ……」
この情緒不安定な取巻き先輩は、以前連絡先交換してから、たまにこういったチャットの爆撃が来る。受験勉強のストレスで壊れかけているのだ。
夏休みに入って虎先輩と会える回数が減ったので、如実に爆発の頻度が増えている。
《また愚痴は聞きますので我慢してください》
《それはありがたいけれど、そうじゃないの亜紗美に会いたい》
そして俺は虎先輩が割とコンスタントに祐と会って遊んでいることを知ってる。何ならこの前は祐抜きで華と料理の練習なんてしてたのも。それでいて成績は落としてないんだから頭の出来が違うと思う。というかなら会ってやれよと思う。
《十三はもっと亜紗美の写真を撮りなさい》
《別に虎先輩専属キャメラマンでもないんで、祐と華が中心ですから》
正直うざい絡みされるのは面倒だが、虎先輩との仲を引き裂いたのもある意味俺ではあるので、良心の呵責と面倒くささが拮抗するまでは相手をしている。虎先輩の情報はいまだに役立つものも多いので。
《祐さまは格好良いけど、やっぱり亜紗美の顔が見たいわ。水曜日の午後とかでいいかしら?》
《15時までバイトですからその後なら》
定期的に開かれている、俺の最近取った写真の閲覧会兼、愚痴を聞く会である。俺と居ると遠慮せずにぶちまけられるからという理由で、たまに呼ばれる。チャットでもこんだけ書いて、直接会って似たようなことをいうのは、生産性の点で疑問だ。
ただ、俺と一緒にいると周囲の視線が多分、虎先輩といる時と逆になるのが良いんじゃないかと俺は考えている。要するに俺と居る時はあの娘かわいいのに、男の趣味悪い。という調子で彼女が美人側に分類されるのだ。
取巻き先輩が虎先輩といる時? 気分が悪くなるので黙秘だ、べつに取巻き先輩も充分以上に綺麗だと思うのだけどね。虎先輩が規格外なのは認めざるを得ない。
別にどうでもいいのだが、取巻き先輩は俺の名前もデブとかブタとかいう言葉をつかいたくない、漢字が違っても呼びたくないという高潔な理由で名前で呼んでくる。気にしすぎだと思うが、Fワードを言う口は汚くなるという迷信みたいなものだろうか?
というか祐はさまづけで俺は呼び捨てなののほうが俺的に納得いかない。
事実、取巻き先輩は祐に対しての好感度もかなり高く「亜紗美とお似合いよね」といえるほどなのだ。取り巻き先輩的に祐になら任せられるという。
なので、祐のハーレムメンバーに追加できないかと虎先輩に相談したけれど、本人が乗り気じゃないから駄目だといわれてしまった。祐ですら、ちょっとあの人は……と言ってたので、可哀想だと思う。
そら、虎先輩程じゃなくても普通以上にかわいいしスタイルもいいのにね。努力家で手先が器用で手芸が趣味という、割と男の求める女性像に近い人なのに。性格というか言動が少しきつめだけどね。
というか虎先輩がもらってあげるのが筋だと思う。厳密には。
《にしても本当にあんた写真撮ってばっかよね、自分はいないの?》
《カメラマンなんだからいないに決まってるでしょう》
何を当然だと思いつつ返す。既に彼女の脳内は今度あった時の写真のことで頭いっぱいなのだろう、別に前回見せたのと対して変わらないのに。
《あんたのダサい水着で笑えるかと思ってたのよ、残念だわ》
《はいはい、そりゃ悪うございました》
文面だと少し砕けた口調になるもんだなと、いつもより当たりが弱く感じる取巻き先輩の為俺は写真のデータを整理する作業に戻る。
まぁお世話になってる受験生の先輩の為だ、仕方ない。
なにより、お茶代金は向こう持ちなのである。金欠なのにそのくらいはしないとと真面目である。
明日は何のケーキを食べるか考えながら、写真をフォルダ毎に分けるのだった。
そろそろぶた君も大分頭おかしい奴だというのが、定着してきたとおもいますが。
次から一気に展開が動く予定です。