男女比偏った世界ならモテるという甘えた考えは捨てろ   作:HIGU.V

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次で第一部が終わるのでそろそろ残りの人物の紹介


取巻きの先輩
鳥槇 マキ とりまき

バイト後輩 
竹之下 純 たけのした じゅん

営業の人
駄場 沙央里 だば さおり


女子体育教師
山上 エマ やまがみ




キーカードが場に揃ってもコンボが不発なら無意味

 

「龍瀧さん本当に紳士で優しくて……モテるのも納得ですね」

 

「だろ? 最高の親友なんだ」

 

俺的にはかなりいろいろあったあの日の次のバイトの日。秋も深まってきたからか、商品の品揃えも変わってきた。そろそろおでんを出す時期で、あれは面倒なんだよなと思いながらも竹之下の話を聞く。

 

どうやら、祐はしっかりと役目を果たしてくれたようだ。どう見ても竹之下は祐にホの字である。壊れた機械みたいに祐のことを褒め称えている。俺としてもとても鼻が高い。

 

しかし彼氏はいいのだろうか。と一応念のため疑問を持ってみる。口には出さないのが仏心だ。

 

仕事中の祐への礼賛を心地よいBGMにしていると、楽しく仕事も終わる。華から言われた言葉は胸に重いし、他の女性陣に約束した以上。竹之下から頼まれない限りは祐とのこれ以上の繋ぎはしない。約束は守るくらいはして友人としての失点を少しでも回避せねば。

 

とはいえ、時間の問題だろう。連絡先も知ってる優しくて顔が良い、性格もいい実家も太い男子だ。竹之下が祐の好みとか情報を俺に求めてくるのは今日この後かもしれない。

 

仕事も終わり、引き継ぎも終わってしばらくだれも来ない休憩室で椅子に座り向かい合って、未だにリピートされている竹之下の語を聞いている。何時もはふ~ん程度である自慢話やらウザ絡みも祐のことなら楽しく聞けるから不思議だ。

 

最も今日はしっかりと要件があるから残っているのだ。

 

そう────

 

「まぁ祐が無事仕事をしてくれたのならば、対価をもらいたいんだが」

 

「あっ……」

 

 

竹之下からは、今回の件できっちり書面で何でもいうことを聞く権利にサインをもらった。俺は祐のスケジュールを俺のリソースで買い取り、それをその権利で彼女に売り払った仲介屋なのである。回収せねば大赤字だ。

 

もちろんこんな子供が作った紙切れ1枚に、法的拘束力はないとは思うが、こういうのは気分が大事だ。これを反故にしたらまずいという契約者の意識があることが重要である。

 

「という訳で、早速聞いてもらえるか?」

 

「い、今ですか!?」

 

きょろきょろと周囲を見渡し始める竹之下。要件を伝えるのは今此処でであり、別に実行自体はこの場でっていう意味ではない。けれどもニュアンスを伝えるのが面倒なので無視することにする。

 

「何でも聞く約束だからな」

 

「な、何をするつもりですか?」

 

髪を撫でたかと思えば落ち着かずそわそわと。俺の目の前で体をもじもじと揺らしながら肩を縮こませている。膝の上で手を組んでこちらを上目遣いで見てくる。

 

まぁそんな風に見ても無駄である、手心を加えるつもりは一切ない。もとより決めていたことだから。役に立ってもらうだけだ。

 

 

「これを使えば俺に絶対服従というわけで、相違はないんだよな?」

 

「はっ、はい!! 女に二言はないですよ! 先輩!」

 

さて、改めて言質も取ったし、いいように利用させてもらうつもりだ。俺の目的のために一肌脱いでもらうのだ。思わぬ形で幸運が舞い込んできたのだから。

 

「竹之下」

 

「は、はいっ!」

 

「俺の命令は」

 

めちゃくちゃいい返事だ、仕事中もこれくらいで返していれば文句はないんだが。まぁ今気にすることではないか。

 

 

「────お前にバイトを続けてほしいんだ」

 

「……へ?」

 

 

そう、俺は竹之下にバイトをやめてほしくない理由がある。とてもとても大事な理由だ。だからこのなんでも言うことを聞く権利は。当然彼女にバイトを続けてもらうために使う。実利優先である。

 

 

「え、あ、そのそれって、いやそんなことで?」

 

しばらく呆けていたが、再起動したのか慌てふためいている竹之下。まぁそんな無理難題ではないからな。拍子抜けしたのだろう。

 

「ああ、約束して欲しい。今年度は少なくともバイトを辞めないことを、俺はお前に働いていてほしいんだ」

 

「えっ……せん、ぱい?」

 

まぁ口調的に頼む形だが、竹之下に拒否権はないのだ。まぁそれでも気持ちよく頷いてもらう方がいいからな。だから俺は軽い頭を下げる、彼氏か祐と過ごす時間が減ってしまうかもしれないが、彼女に店にいてもらいたいのだ。

 

「あの、本当にそんな、お願いでいいんですか?」

 

「ああ。お前にこの店にいてほしい、ダメか?」

 

誠心誠意頼み込む。客商売をしている身であるので朝ヒゲも剃っている。最低限見窄らしくないだろう。であれば充分だこれ以上は加工のしようもないので。

頭上で小さく息を呑んだような気配がする。

 

「ダメ、じゃないです。それじゃあお願いは聞きます。約束ですし」

 

「ああ、ありがとう」

 

 

顔を上げれば安心したような様子で竹之下がそう返してくる。笑みも浮かべているし、よっぽど俺に変な命令されるのが怖かったのだろう。それはまぁ仕方ない。こんな気持ち悪い男に弱みを見せたのだろうから。

 

じゃあそもそもこんなことするなって話であるが。見栄を張るために払う代償というか取ったリスクがあまりにも大きすぎると思う。

 

竹之下は見た目は少なくとも発育が良い可愛い女子高生なので、異性からの視線を意識してはいるのだろう。まぁその異性が周囲にはあまりいないようだが。それ故に色々不安だったはずだ。

 

「え、えっとそれじゃあ、先輩の来月の希望シフト聞いても────」

 

 

 

 

「あ、いや俺今月でやめるんだ。厳密には来週の試験前だからー、うん、出勤は明後日が最終日だな。あとは有給だし」

 

店長とはすでに話をつけてある、その時に竹之下ちゃんがやめないなら大丈夫よ。といわれたのだ。まぁ平日夕方のエースだからな我々は。なのでしっかりと相棒には言質を取ったのである。

 

こんな顔故に苦労して見つけた働き先であり、いろいろお世話になった職場だから不義理は働きたくない。しかしながら店長には申し訳ないけれども辞めて時間を捻出したい理由ができたのだ。

 

まず第一に、竹之下や他のスタッフの休日シフトを頻繁に変わっていたおかげで、予定よりも早く目標までお金がたまった。

 

そして祐の両親とも相談して、高卒で入社するんじゃなくて、先に大学に行きなさいといってくれたので、進学を本気で目指すことにしたのだ。返却不要は嫌なら、無利子で足りない分は貸そうとまで言われれば。俺も真剣に奨学金を取って大学に通わねばならない。

借りれると借りるは大きく違う。最悪どうにかできるのならば頼らず自分でできることを挑戦するチャンスである。

 

社長と先に話が通るって、コネとしてはすごい恵まれていてありがたい。今度お礼を言わないといけない。正直内心では命の恩人のように思っている。恐れ多くて口には絶対出せないけれども。

 

でもこれで高卒で入って金を貯めてから休職して進学という無理なルートをしなくて済むようになった。タイミングの良いことに結果的に祐の無限ハーレム計画も縮小したし。作りたかったな、愛人100人に囲まれる祐の屋敷。

 

 

「え? あ、あの、せ、先輩、辞め?」

 

「ああ、受験勉強に力を入れたいからな」

 

「……え? え?」

 

「ちょっと不安だったけど、竹之下になら任せられるからな」

 

竹之下は、サボりがちだけど必要なところはしっかり働いてくれるだろうし、安心して辞められる。

 

店長は 最悪追っかけて辞められちゃっても仕方ないけどねぇ、なんて言っていたが。続けてくれるなら万々歳だろう。

 

確かに仕事はしばらく大変になるだろうけど、竹之下に限ってそれを理由に便乗して辞めるなんて無責任なことはないだろうという確信はあったので。

 

その時に交渉してみます。と伝えている。後は店長に残ってくれる約束をしましたと言えばもう大丈夫だ。

 

「それじゃあ、お疲れ。これからも頑張れよ」

 

「え、あ、まっ!!」

 

まぁ俺は普段ここに客としても来ないから、会うことはもうないだろうけれど。学校も違うしな。あ、祐関連でヘルプが入ったら会うことになるのかな。

 

そう思いながら、俺は休憩室を後にして店長のいるバックヤードのモニタールームに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだかんだで秋の試験も終わり、会心の手ごたえを覚えていたころ。取巻き先輩から死霊の様なローテンションで救援要請が来た。

 

《もう無理……私は亜紗美みたいになれないの……》

 

受験本番、AOだか選抜だかが来月に迫っており。追い込みの日々に限界が来ているそうだ。虎先輩も流石に対策で忙しいのか祐も少し会う回数を減らしている様子だ。

 

先輩方はどうやら一緒に勉強できる内容の受験ではないために、効率を考えて空いた時間は各々勉強に当てているのだ。

 

なんだかんだで虎先輩の情報をもらったり、結局は使わなかったが、他の3年の諸先輩方の素行なども入手した。お世話になった先輩である。あと個人的に色々応援した身だ。

 

なので俺は禁忌の手段に出ることにした。

 

《紙のアルバムつくったんですけど見に来ます? あと、虎先輩の告白録音してあるんですけど》

 

《あんた最低ねっ! それすぐ消しなさいよ! 本当に消したか確認に行くわよ!》

 

ということでなんと、俺の家に来ることになったのである。こんな風にちょっと愉快な所もある先輩なのだ。本当に祐にもうちょっと距離が近ければなぁ。俺が初手で虎先輩に相談してしまったことで警戒を上げてしまったのかな。完全に悪手だった。

 

「おじゃまするわよ」

 

「はい、どうぞ」

 

我が家は2LKのどう考えても一人で住むには広いマンションだ。一応まだ3人暮らしということになっているし、俺に家賃の請求は来ないので、別に良い。

 

「案外綺麗にしてるのね、良く祐さまとかがいらっしゃるの?」

 

「殆ど来ませんよ。鍵は渡してるんですけどね、駆け込み寺に使えるように。でも基本俺が遊びに行くので、祐がたまに来るくらいです。中学上がってからは華も来てないと思います」

 

二人共家に各種遊戯があるので、わざわざ物もない俺の家に来る意味なんてないのである。

 

「そう、それで例の物はどこにあるのよ?」

 

今日の取巻き先輩はグレーのロング丈のニットワンピースだ。長い髪は束ねて肩にかけていて落ち着いた雰囲気だ。大人ぽくて女性的な服装で、偶然にも昔祐に話した俺の好みにかなり近い。眼福である。

 

だけれども少しやつれた……いや痩せたのだろうか? なんか春頃よりも化粧をしっかりしている気がする、正直確証はないが。だとしたら受験のストレスをごまかす為であろうし、女性は本当大変だ。

 

滅多に入れない紅茶を用意して差し出して、あらかじめ用意しておいたアルバムを大量にテーブルに並べる。彼女はその間なにやらリビングを落ち着かないようでウロウロしていたようだ。

 

まぁ我が家にはほとんど物が無い。家族写真とかも当然ないしインテリアもない。落ち着かないのは仕方ないだろう。観葉植物くらい置くべきか?

 

「それじゃあ自分は部屋にいますので」

 

「……十三が解説してくれないの?」

 

「いや、解説って、というか音声はイヤホンですし」

 

まぁカメラマンなので、写真に関してはいつのですとか差し込めるけれども。

 

「さて亜紗美、ごめんね。でも忙しいからって会ってくれない、遊んでくれないあなたが悪いのよ」

 

なんかよくわからな言い訳を始めながら早速イヤホンをはめて、俺が出来心でいいところまで録音してしまった、虎先輩の告白を聞き始める取巻き先輩。

うわぁ、人の表情ってあんなに恍惚になるんだ。怖いな。冷静に考えて、やっぱり祐にもらってもらうよりかは、厳密には虎先輩が責任とってもらう形で、間接的に祐のところに行くのがいい気がしてきた。

 

そういう関係性の女性も多いからな、この社会。

 

「……ふぅ……ねぇ? これ」

 

「あげませんし、今日中に消しますよ、本当に魔がさしていただけなんで」

 

そりゃ結婚式とかで流せば盛り上がるかもだが、トークアプリの通話が偶然繋がってしまっていて、それを偶然録音してただけなんだから。本人の了承を得ないといけない。今日まで持っていたことすら忘れかけていたけど相当やばいことなんだ。

 

「そ、そうよね、それじゃあアルバムの方を」

 

そこでピンポーンと来客のチャイムが鳴る。この時間に来客は珍しい。駄馬、駄場さんは基本週の半ばに来るから今日は来ないはずだし誰だろう。

 

「はい、どうぞ」

 

本当はいけないけれど面倒なので、インターホンで確認する前にドアをガチャリと開けてしまう。祐にいわせれば不用心だろうが、まぁ俺だし。しかし、ドアに手をかけて開き始めたところで違和感に気づく。

 

あれ? マンション入口のオートロックのインターホンじゃなくて、ドアホンがいきなり鳴ったよね?

 

「お久しぶりです、先輩」

 

そこにいたのは、竹之下だった。ボーダートップスGジャンを羽織って、プリーツスカートというなんか見たことない私服だ。何時もはブレザーの制服だったから別人というか、知らない人かと思った。というか、え? なんで?

 

「えっと、どうした? ……竹之下?」

 

「彼氏に振られました、あげてください」

 

いや理由と行動が全く分からないし、そもそもこいつは俺の家も知らないはずだと思うのだが。いやシフトの連絡用にトークアプリのIDは昔交換してたが。

 

呆けたままでよく理解できてない俺の横を通り抜けて、玄関まで入ってきている竹之下。しかし急に動きが止まった。

 

「……誰か来てるんですか? 女性の靴ありますけど」

 

「あ、先輩がいま来ていてな」

 

「……そうですか、お邪魔します」

 

「いや、だから来客が」

 

そんなしばらく見ないうちに無茶苦茶強引になった竹之下が、静止を振り切って部屋にあがっていく。なんだこいつ? よっぽど傷心なのだろうか?

 

しかしあいつの彼氏ってどう考えても見えざるピンクのユニコーンだし。なんだ? バイトが辛かったのか?

一先ず俺も後を追うと、リビングで二人が向かい合って立っていた、いやいや座ればいいじゃないかよ。

 

「えっと、初めまして? その……どちら様?」

 

ほら、取巻き先輩びっくりして固まってるじゃないか。

 

「私は竹之下 純と言います。出部谷先輩とは職場の同僚で毎晩のように顔を合わせていました」

 

「そう、初めまして。私は鳥槇マキ。彼とは先輩後輩の関係よ。今日はお招きされたのだけど」

 

なんか楽しそうに笑顔で会話を始める二人。一先ずお茶でも用意してあげるかなぁと思うが、そんなにカップあったかと考え直す、仕方ないからマグカップでいいか。戸棚をごそごそと整理していると。

 

「出部谷さん!! 今週分早くもらえますかぁ!?」

 

聞き覚えのある声の人が、勝手にドアを開けて入ってくる。だからここオートロックなんだけど。

竹之下もそうだけれど、もしかして駄馬さんは普段から裏から入ってるとかじゃないよな? いや普段はきちんと下から来てたな。

 

玄関に取って返して、勝手に上がってきた年齢が俺の2倍の女性を出迎える。いつものスーツ姿であり、今日も仕事だったことがわかる。お疲れ様である。

 

「あの、要件は今度聞くので、今来客が」

 

「その来客が見えたから、早めにもらっておこうと思ったんですぅ!」

 

言っていることが全く分からない。来客にそんなに時間がとられるものでもないし、要件だって数時間で終わるぞ。数日後まで泊まり込みとかの合宿でもないのに。

 

「あ、私もたまには上がっていいですか、夏頃の掴んで叩かれた時以来ですけど」

 

「……どうぞ」

 

それを言われると弱いため、家に上げる。あの時は割とどうかしていたから仕方がないが、どちらかというとふざけるなという戒めでやったことなのだが、無関係とはいえないので。そうして、何とかジョッキまで取り出して、渋くなり始めた紅茶を用意して、不揃いなお茶会が始まったのである。

 

 

 

 

 

「それで竹之下は何の用なんだ」

 

なんか空気が重い会議だ、仕事じゃないのに。俺が使う大き目のソファが1個しかないので、3人には横並びで座ってもらって、俺は椅子をダイニングテーブルから持ってきている。まぁソファーは3人掛けなんで窮屈ではなさそうだ。

 

「さっきも言った通り、彼氏に振られたんです」

 

竹之下の言い分はこういう事らしい。なんでも俺がやめて、シフトが増えて、彼氏と会えなくなり振られたので、責任をとって慰めてほしいとのことだ。

 

いや、お前だけを愛する顔の良い病弱な彼氏じゃなかったのかよと思うし、仮に真実だとしても、俺関係ないじゃんとしか、さらにもし関係あってもどうしろと。お話にならない。

 

「祐の写真集を見せるぐらいしかできないぞ」

 

そう言って脇にあるそれを渡せば、こちらを変なものを見るような目で見てくる。いや変なことを言ってるのはお前だからな、乗ってやってるのに感謝しろよ。

 

「鳥槇先輩はいいとして、駄場さんは?」

 

「そのまえに聞きますが、二人とも出部谷さんの事好きなんですかぁ?」

 

「は?」「は?」「え?」

 

 

なんかいつもより自信満々に、わかめみたいな髪の毛をふわっと揺らしながら横を向いて二人に向かって聞いている駄場さん。もしかしたらこれが営業モードなのかもしれない、初めて見た……最初に合った時はこうだったかもしれないけど、記憶が上書きされている。あの泣きじゃくる姿に。

 

「ただの後輩よ! 趣味が合うだけ! 好きじゃないわよ、十三のことは別に!」

 

「先輩であって、好きとかじゃないんですけど。誤解しないでほしいんです!」

 

ほぼ予想通りの否定の仕方をする取巻き先輩と竹之下。

いや、竹之下から見てもういい加減俺は先輩でも何でもないんだが。でも部活とかはやめても一生先輩になるし、先輩なのか? わからなくなってきた。

 

「とまぁ二人とはこんな感じですよ。というか駄場さん、いきなり何なんですか?」

 

「ちょっと気になって聞きたかっただけですぅ。お気になさらず」

 

俺の用意した耐熱ジョッキに入ってる紅茶を飲む駄場さん、なんかウィスキー飲んでるみたいだな、湯気出てるけど。

 

「そういうあなたはどうなんですか?」

 

「そ、そうよッ! 変なことを聞いたんだから答えなさいよねっ!」

 

そんなに気になるか? 俺のことを好きかなんて、空は青いですかとまではいかないが、パンダは可愛いですか? くらいにはわかり切った質問だ。例外は興味ないという意味で。

 

「あ、わたし。容姿は龍瀧さんの方が良いと思ってます」

 

「は? 駄場さんに祐は絶対相応しく無いんですけど? やめてもらえます?」

 

仮に縮小命令が出てなくても、駄場さんはさすがに年上が過ぎる。前世さんのこともあってなのか、俺みたいに相手の年齢が気にしないのとちがい。あいつは高校生だ。

それになにより駄場さんは人間としてちょっとダメな大人だ。申し訳ないが祐に相応しく無い。お祈りである。

 

「わかってますよ出部谷さん、龍瀧さんは取りません」

 

「なら良いんです」

 

「わたしにはぁ、出部谷さんしかいませんから」

 

「そこは改善してくださいと何時も言ってますよね?」

 

いつものように窘めてみればニコニコ笑って、さっきまでの営業モードがもう終わったのか、それとも俺の気の所為だったのか。駄場さんはさっと立ち上がる。

 

「お暇しますね。お茶ありがとうございました」

 

「え、あ、はい」

 

「それと今週分もらっていいですか? それとも何かお手伝い要りますか? 今度はストッキングじゃなくて下着とか?」

 

「いらないです! 今週分はまだなんで、また今度取りに来てください」

 

「わかりました……ではお邪魔しました」

 

なんかいつもとだいぶ雰囲気が違うなぁ、いつもはもっとダメな感じのお姉さんだけれども、今日は普通の営業の人みたいだ。うむなぜだろう。実は双子とかだったりは、しないか。

 

言葉通り、本当に帰っていく駄馬さんを見送って部屋に戻る。正味10分しか滞在してないし何もしなかったし。何がしたかったんだろう?

 

「今の誰よ? 十三」

 

「何の人ですか、先輩?」

 

「あーえっと……」

 

ソファーの前に戻ると、間髪をいれずに聞いてくる二人。お茶入れている間に自己紹介くらいはしたと思ったんだが、していなかったのか、しかし、あまり公言する物でもないし。

 

眼鏡を外してふき取りつつ、二人の間ぐらいの場所をぼやけた視界で見つめながら、端的に伝える。

 

「献精の営業の人」

 

「けっ!? なっ!」

 

「そ、そうすか」

 

たぶん二人共顔を赤らめてるんだろうなと思うが、見ないのがマナーだと思う。そういう初心なところは祐にでも見せればいいので。俺は経験豊富な人が好きだし。「どうでもいいな」と前世さんがいっている。その通りどうでもいい。

 

「それで鳥槇さんは、先輩の家に何しに来たんですか?」

 

「友達の写真を十三が撮ってるから、それを見せてもらうためによ。受験の勉強の息抜きにお招きされたの」

 

鳥槇先輩とはしっかり約束もしたし、小綺麗に化粧までしてきた。虎先輩を見るために気合を入れているのか、受験勉強の寝不足を隠しているのかは知らないけども。

 

あとお土産も持ってきてくれた。本当に先輩はやはりいい人だ、

 

「先輩、あたしも見ていいすか?」

 

「別に構わない」

 

図々しい竹之下とは違うのである。しかしもう勝手にしてくれ、一人も二人も変わらないからな。ただ一つ言うのならば

 

「二人とも適当なところで帰ってくださいね、好きでもない男の家にいるんだから、言うまでもないでしょうが」

 

噂が立つなんてことはないと思うが、受験生と他校の人間だ。用事が終わったら帰って貰うべきであろう。

 

そういって俺はお茶菓子の用意に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

結局5時の音楽が鳴るのに合わせて、二人は帰っていった。本当に何だったのだろうか?

アルバムを本棚に戻して軽く掃除をしながら振り返る。無言でアルバムを読み耽る二人は少し怖かったぞ。

 

既に風呂も入り終え、晩飯も食べて勉強もノルマを終えた。しかし、まだ大分早いが疲れたのでそろそろ寝るかと思った所に電話がかかってきた。

 

「まだ起きてる?」

 

「おう、もうすぐ寝るかなってとこだ」

 

祐である。車で詰問されてから最近はあまりデートの相談とかもしてくれないが……そもそも相談はあまりなかったか。俺が変な提案をしているだけで。

 

「昨日の授業でやってたとこなんだけど────」

 

「ああ、それは先週の話の発展形で────」

 

何時ものように、他愛もない勉強の話なんかをしていると、ふと今日あったことを話してみようという気持ちになった。どうやら向こうも大した要件はなさそうだし。気晴らしの電話のようだから。

 

「────ということがあってな、訳が分からなかった」

 

「そっか……困ってるの?」

 

「困っているというか、なんか怖い意味不明で」

 

 

録音のこと話せないので、先輩が来た理由はアルバムということにして説明した。しかし、他二人は急に来たのだ。

何かしてしまったのかという恐怖がある、いや駄馬さんはあれが多分いつも通りな気がしなくもないけど。

 

「それじゃあ、先生に相談してみたら? ほら、この前山上先生に困ったら何でも相談しろって言われてたでしょ」

 

「あぁ……確かに」

 

そんな事を言われた気がする。いや言われてないか?でも生徒指導室の人だしちょうどいいのか?

 

「こういう時は頼れる先生に相談するのが良いよ」

 

「そうだな、そうするか」

 

ゆかり先生とは少しギクシャクしていて、少し話しづらい。そういう意味でもちょうどよいかな。ふんわりとした感じではあるが、無事なんとか対応策が見つかったので、自然と話題は別のものに移り変わる。

 

やっぱり祐といると楽しい、馬が合うのだろう。だからこそ、惜しい。もっと幸せになってもらいたいから。

 

そう思いつつ、俺と祐は学生らしく秋の夜長に夜更かしを楽しむのだった。

 





薄々感づいたと思いますが、ぶた君は右ストレート一発で沈みます。
だからストレートを打てない娘を周りに置く必要があるんですね。

そしてまごついてると次の試合を勝手に組み始めます。
だからこっちもセコンドを付ける必要があるんですね。


いろんな物に関する【なんで?】は今しばらくお待ち下さい。
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