男女比偏った世界ならモテるという甘えた考えは捨てろ 作:HIGU.V
癖を煮詰めたような作品の為、ご期待に添えるかはわかりませんが
最後まで自分の癖を曲げずに書こうと思います。
それと感想は順次返信させていただきます。
零細SS書きなもので、こんな数の熱量は初めてです。
何時も目の前に君は居た
初めて彼に会った日のことは、流石に覚えていない。
偶然すれ違っていなければ小学校の入学式の日だから、記憶が曖昧だ。
それでもクラスの数少ない男子で、男子なのに女子よりも体が大きい子が居た記憶はわりとある。それが彼、出部谷十三だった。
十三は小学校が始まって少しすればクラスの中心人物になった。何を聞いても教えてくれたし、優しくて話が面白いからだ。
そんな彼と仲良かったからなのか、周りの女子は僕に対して怖い顔で、なんで十三とずっと喋ってるの? って聞いてきて怖かった。そんな認識があったのは覚えている。
それはまぁ僕の勘違いもあったんだけど。
他のクラスから覗きに来る女子をなだめて列を作らせたり、委員会を決めるときに前に出て皆の希望や意見をまとめたりと。どんどん人に話しかけて、問題をテキパキ解決するのが、とても格好良くみえた。
だからだったんだと思うけど、僕の家で遊ぶ約束をして彼が来た時は嬉しかった。当時は何をやったのかは覚えていないけれど、多分テレビゲームかな? でもとても楽しかった、それだけは覚えてる。
そして、彼が来るようになって以降は何度か夕餉の席などで母さんや父さんが、
「彼は最初に来たときから礼儀正しくて、落ち着いてた。祐もああいう風になるんだよ」
と。引き合いに出されたのは覚えている。
いつか十三にはお母さんがいないんだよって、彼から聞いたことを無邪気に母さんに教えれば、大きな声で周りにそう言ってはいけないよと怒られた。
彼の生まれに関しては、ぼんやりとわかったのが中学の頃で。どこかの時にふと気になって政府の孤児支援教育プロジェクトというものを調べて。気持ち悪くなった。
母さんも父さんもそれを知っていて、なのにあんなに真っ直ぐに育っているんだと、きっと驚いて同情したんだと、思う。
華と十三を引き合わせたのは勿論僕だ。
小さい頃から仲良しだった華に、小学校で出来た友達を自慢したかったのかもしれない。気がつけば二人は仲良くなっていて、嬉しかったけど、少し寂しくなってしまった。
そんな思い出がある気がする。
うん、子供だったからあんま覚えてないや。
僕は十三にテストの点数で勝てたことは一度もない。ゲームでだって最近まで手加減されてた。ずっと僕のヒーローだった。
それが普通だと思っていたから、彼は何でもできると思ってたから。十三が少しずつクラスの中心じゃなくなっていくのがわからなかった。
どうして彼を除け者にしようとするんだろう?
そして、彼はどうしてそれを受け入れてしまうんだろう。
その理由がわかったのは、第二次性徴期に入ってからだった。怖い気持ちはあるけれど、女の子を女の子として見るようになった、確かティーンエイジャーになった辺りかな。
僕が男性の中で、容姿が優れている方で、彼がその逆であった。
そんな馬鹿みたいな理由だった。
これをいうのはあまりにも礼を失するから言えてないけど、絶対におかしいと理不尽で不条理だと、そう感じた。
人より大変な生まれの彼が、人よりも良いことをしているのに、外見が悪いということだけで。恵まれた生まれと容姿を持って生まれた僕よりも軽んじられる。それは努力や精神性の否定なんじゃないか。
そんな高尚な大義名分を掲げてみれるほどじゃないけど、ただただ不平等で不快だなぁって感じだ。
そう思うと、キャーキャー騒いで僕にいい顔をする女の子達が、急にひどくつまらないものに見えてきた。ものすごく傲慢なんだけれども、僕が好かれるのは【当たり前】のルールなんだろうって、思えたからかな?
僕の努力とか成し遂げた事実とかは、彼女たちにとってどうでも良くて、顔がいいハンティングトロフィーなんだろうな、なんて。
思春期特有の恥ずかしいこじらせ方だよね? 今は流石に反省してるんだ。
でも今でも無意識にそうしちゃいそうになるから、ある意味外見に釣り合う物を背負わされたのかもしれない。
だからなのか、十三にちょっとでも優しい人を見ると、ドキドキするようになった。うん、我ながら変だとは思ってる。
遠回しに、周りと違うことをするヒロインが好きみたいなんだそういう漫画あるかな? なんて彼に相談したりもした。
おもしれー女が好きなんだなと笑われて、冗談でそうかも? ってかえしたっけか。
もう高校も折り返しを過ぎたのに恥ずかしいけれど、僕は十三離れが出来てないのだ。いろんなものの判断基準を、ずっと一緒に居た彼に投げてしまっているところがある。歪だとは思うけど、華はそれで良いんじゃない、とも言ってくれる。
そんなになるほどまでに彼の事を見て考えていたから、そんな僕だから2つ面白い、いや面白いっては失礼だな。興味深い事に気がつけた。
1つは彼にほのかな思いを持っている娘がいることだ。僕に向けている山火事みたいなぐわーって感じじゃなくて。ちょっと気になるみたいないじらしいそれだ。正直少し羨ましかったけれども、流石にそれを口にだすのは憚れるのはわかる。
きっかけは彼がバイトを始めてしばらく経った後、彼とのちょっとした雑談に同学年の後輩の話がまざり始めるようになったときだ。自分でも訳わからないけれど、なんか気になる所があったんだ。
さり気なく質問したり、人を使って様子を探ってもらえば。その後輩さんはどう見たって彼の事を気になっているようだ。
というか何だよ、オペレーションを全部教えて、不慣れな点を見つけたら翌週に苦手なところをまとめた、メモ帳に貼れるサイズのアドバイスとコツ付きのマニュアルを作って渡したって。
髪型のチェックをしてたから毎日化粧と髪飾りの小さい変化を見て、場合によっては褒めつつも改善を促したって。
クレーム対応や酔っぱらいの接客が不慣れだからって、見つけたらすぐ代わらなきゃいけないって。
おそらく人生で初めてできた後輩だからつい世話を焼いてるけど、なんかうざがられてるみたいだって。
僕が言うのも変だけれども、君も大概クソボケだよ。恋愛的な意味はともかく、普通に人間として好かれるでしょそこまでやれば。
というより普通そんなにシフトかぶらないよ? 学校も違うのに。
後に他に、いつの間にか先輩からもまた違った感じの思いを向けられる様になるけど、それは一旦置いておく。
もう1つ気がついたことは、彼は極端だと思う程に強い批判的思考をしていること。というかもしかしたら解離性同一性障害なんじゃないかということだ。
前から少し声に漏らして自分に言い聞かせていたんだ。中学の時に放課後人気のない場所に女の子に呼び出された時とかに。一瞬驚いたような顔をして、にやけたかと思えば。そうだなってつぶやいて、すって顔が落ち着き苛立たしいものになる。
何に対するそうだな。なのかはわからなかったけど、独り言? なんて思って見る目を変えてみれば時折、自分の考えにツッコミをしているのかなって思った。
でも幼少期からの彼と僕の会話のテンポと少し違う独り言のタイミング、そしてその独り言の内容が肯定なんだけど、出力されるアクションが基本的にあまりにも後ろ向きであること。
それらから、なにかあるとそれを否定するなにかがあって、それに同意をしてるんじゃないかって。そう思ったんだ。彼の中にもう一人の人格があるなんて漫画の読みすぎだとは思ったけど。
でも彼の思考回路が時々極端に歪むのは肌感覚でわかった。先程の後輩の竹之下さんもそうで、なにかしら恋愛的アプローチを受けているのに何故かそこだけ極端に否定的解釈をする。鈍感になるんじゃなくて否定するんだ。
ようは【愛情】関係だけにネガティブな人格を作ってるんじゃないかなって思った。幼少期の想像できないような環境で、誰を信じていいかわからない彼が。
自分を守るために作ったんだと僕は考えた。とても口には出せない。
まぁ色々言ったけど、とにかくネガティブなんだ。二人でのんびりだべっている時、彼が恋愛に関心があるのはわかるけれど、自分なんかとても。誰に好かれるわけもない。なんて言ってるんだ。
だから、山上先生が滅茶苦茶好みっていう────それがほぼ外見的理由だけというまぁ上品ではないそれにしても。聞けた時は嬉しかった。彼女が僕の馬鹿げた計画に賛同してくれたのも、本当にありがたかった。
彼女はもしかしたら、生徒から告白されるのに慣れているのかな? でも男子生徒なんて今まで累計で50人も見てないと思うんだけど。まぁいいか。
とにかく、僕はずっと前を歩いていた彼を後ろからずううっと見ていた。
だから、どうか。彼がまたまっすぐと歩いてほしいんだ。それが君を苦しめることになっても、僕のエゴだけれども。君に押し付けられた善意を熨斗をつけて返す。そのネガティブなところだけでも直してほしいから。
「あはは、ぶー君似合うそれ」
「本当、本当、似合うよ、うん」
3人組の高校生が、人の溢れるショッピングモールで買い物をしている。ありふれた光景ではあるが、2つほど目を引くところがある。1つは男二人に女子一人という人数構成だ。女子が飽和すると言える程男子が少ない昨今において。男の子二人と買い物をする女の子など、フィクションになって久しい。
もう1つは男の子の片割れの容姿がとても優れていること、でなく。
「似合うわけねーだろ!」
体格が大きい男子が、奇抜な格好をさせられていることだろう。彼は完全に祐と華のおもちゃになっていた。
冬も深まってきた頃、3人はとある目的で買い物に向かった。それはお互いのプレゼントを選ぶという、高校生らしい微笑ましい理由だ。出部谷は二人で行けばいいのにと、冷めたことを言ったが華の3人で行くの!という鶴の一声に誰も逆らえなかった。
とはいったものの、アルバイトをしている学生と、かなりの額のお小遣いをもらってる二人では金銭感覚に差がある。しかもあまりセンスもない彼は、二人が欲しいと言ってくれるものを買うほうが楽だと考えており、ありがたさすら覚えていた。
だから全く想定してなかったのだ。
「いや、こんな高い物もらえないって」
「いいの、これはわたしと祐君の両親からのプレゼントだから、10年分の」
「僕達のはまた別だよ、受験勉強のためだと思って受けとって欲しい」
彼が二人に手を引かれるように訪れたのは眼鏡ショップだった。いまだに分厚い牛乳瓶の底のようなメガネをしている彼に、最新の研磨技術で薄く軽いながらもしっかりと度数のでるメガネを購入するためだった。当然フレームも新調する。
「滅茶苦茶いいタブレット買える値段するし」
「じゃあ、出世払いで返せば良いよね? 母さんからだし」
「うん。わたしもママならそう言うと思う」
彼にとっての出世払いは文字通り出世するほど働くという意味である。そう言われてしまうと何も言い返せないために、彼はもう度が合わなくなりかけていた分厚い実用性いっぺんのメガネを新調し、それなりにまともなデザインのものを購入した。
その後も洋服に靴、小物まで片っ端から主に華のコーディネートでこれもプレゼントだからという声で持ち帰る荷物が増えていく。時折彼女自身や祐の物も入るために止められないでいる出部谷。からからと笑いながら二人を追いかけて時々揶揄してくる祐と。昔のころの華が暴走し始めた時の関係を思い出すひとときだった。
「うんこれでぶー君もまぁ多少は、祐君程じゃないけど格好良くなったよ、絶対値で!!」
「相対評価だと、俺消しカスになるじゃんそれ」
「仕方ないでしょ、元が論外だったのを最低限にしたんだから」
「祐、お前の彼女が口悪いぞ」
二人の気軽なやりとりをみて、祐は笑みを漏らす。三人でばかみたいな事をしたのは何時ぶりだろうか。昔は家の中でばかみたいな遊びもしたというのに。
「まぁ僕は華の為に格好良くあろうと、努力してるからね。こっちの勉強も頑張ったら?」
「お前まで……でもそうだよな……意味ない? 0ではないだろ?」
「下の下が、下の上よりの下の中になったよ?」「華、もう少し手心を」
元があまりにも論外だった、サイズの合わないよれた服と履き古したボロボロの靴。最近食生活を健康的なものにしているのと、運動を増やしていることを聞きつけた華が。
この機会に抜本的な改善案を決議し、全会一致で可決されたのだ。なお議決権を誰が事実上所有しているかは部外秘である。
「ぶー君。大事なのは良くしようと。体裁を整えようとすることだよ?」
「華?」
「だめだから、意味ないからって投げ出さないで。結果はともかく頑張るのはやめちゃ駄目」
「……そうか」
その言葉に出部谷は小さく頷く。祐もそれを見て笑顔だ。いつも二人の後ろか祐の隣で出部谷の後ろにいる華が、こうして何かを積極的にする時は。
それだけ大事なことでいつも良い結果を出してきた。彼女がもしかしたら一番【二人を】見ているのかもしれない。祐の目的にも出部谷の目的にも沿う形なのだから。
「それじゃあ、俺もこれでモテモテになれ────」
「それは無理だよ、ぶー君は言動が気持ち悪い時あるもん」
「格好良い友達に対してなんて事を言うんだ!」
「そういう意味の格好良さは、祐君だもん! ぶーくんは管轄外!」
「二人共、声大きいよ」
祐は暴走気味の二人をなだめながら、近くの店員に笑顔で頭を下げる。そしてその笑顔を本物にして二人の肩を叩いて店を後にするのだった。
Q,ブサメンキモオタ卒業?
A.そんな簡単にできるなら、こうも拗れない。
人として最低限のラインから、男子高校生として最低限のラインにまで改善程度です。
キャラ造形的にそこの努力を怠る男を好きになるのはおかしいので。
書かないと思うけど、次回のおでかけはスキンケア&髪型編になるはず。
祐の口調が話を追う毎に優しくなってるのは、彼女が出来て精神的に落ち着いて。攻撃性を上げ壁を作るための俺口調が、昔の素の口調になっているからという裏設定があります。
決して私のかき分けの簡易化のためではないです。
これだけははっきりと真実を伝えたかった。
(この話で大事なのは、どう見ても女の子にコーディネートしてもらったぶたくんという存在を作ることだと気づけた人はゲイのサディスト)