男女比偏った世界ならモテるという甘えた考えは捨てろ   作:HIGU.V

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30話じゃ無理です……この先輩面倒、むっちゃ長くなる……詰め込みすぎた


依存と憧憬と諦観-3

時たま写真を見せてもらうようになった夏。冷静に考えて、あいつは亜紗美の写真取ってるってどれだけ祐さまの家に入り浸ってるのとか、そこに亜紗美が行ってるのとか、少し思うところはあったが、デートにはついていってないみたいだし、良しとする。

 

ただそれも、受験勉強というやるべきことの前に回数も少なくなってきて。夏が終わった頃の私の中には焦燥感と不安がないまぜになっていた。

正直判定とかを見れば厳しいとしか言いようがない。国内外からその学部学科のゼミに行きたいという人が集まる競争率だから。亜紗美みたいに本気で努力してきて、コンクールやその他の実績があるならともかく。私には大したものがなかったから。その上、一般受験ではもっと成績的に無理なのがわかっていたから。

 

面接の自己PRの練習や、事前提出する論述の添削と動画の撮影とか。此処までやったら終わりなんて区切りがつかない勉強。嫌気が差したわ。

それでも亜紗美と一緒に大学に行きたかったから何とか机にかじりついてたけど。もう本当に無理となって。でも亜紗美も流石にこの時期に同じ試験を受ける訳で内容に被りがあってもいけない。会うことすら少し控えめにしていて。

 

気分転換もかねて、十三からの悪魔のような誘いに乗ってしまった。告白の音声を持ってるなんて、聞いてないわよ!! まぁ休みの日の日中1日くらいならばいいかなって。息抜きは大事よねって思っていたら、その悪魔の誘いを受けた翌日くらいに亜紗美から電話があった。

 

「聞いたわよ、豚君の家にお呼ばれしたそうじゃない?」

 

「な、なんでそんな事を!?」

 

「祐くんが嬉しそうに話してくれたのよ」

 

一瞬バレたのかと思ったけれど、そんなはずはないと自分に言い聞かせる。話のはずみか何かで、十三から祐さまに情報が伝わったのだろう。流石の十三も告白の音声が残ってるのはまずいって認識してたし。予定を断った際にでも正直に言っただけだろう。

どうして祐さまが喜ぶのかはわからないけど。

 

「ねぇねぇ、何着ていくのよ?」

 

「な、何だって良いでしょ!? というか、何のつもりよ!」

 

思わず折角電話くれた亜紗美に強い口調で叫んでしまう。人間後ろめたさがあると素直になれないのね。また一つ知見を得たわ。

 

「これは関係ない話なんだけど、彼ニット系のワンピースが好きなんですって」

 

「だから! 本当に! そういうのじゃないのよ!!」

 

「じゃあ、なんなのよ? わざわざ殿方の家に行くマキの理由は?」

 

素直に言えたらそれで解決なんだけど。理由が貴女の告白のときの会話を聞きに行くことだから。それを言えずになんとか誤魔化して。折角の亜紗美との会話を早めに打ち切ってしまう羽目になった。

悪いことはするものじゃないのかもね、なんか本末転倒な気がしてきたわ。ま、まあ今回限りにしましょう。結果的に亜紗美と話せて気分転換にもなったし。

 

……ニットのワンピースかぁ……ま、まぁ家主の好ましい格好をしたほうが、お呼ばれの際に礼は失しないわよね? そんな気持ちで私はクローゼットを開けたのを覚えている。

 

まぁ十三が実は女性との奇縁が結ばれていたのを知って、少し驚いたのだけれど。

でもまぁそういうのは些事だった。

 

だって私はもうすぐ試験当日で……そして、その結果が振るわなかったのだからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が鳥槇先輩が不合格をくらったというのを知ったのは、本人からではなく又聞きだった。虎先輩→祐経由なわけで、タイムラグは殆どなかったけど。

結局のところ高望みなのは本人もわかっていて、試験の日が終わった段階であまり顔色が良くなかったそうだ。だから、結果が出るまではその話題に関しては聖域化していた。

 

んで面倒なのが後処理だ。なんだかんだいってそれなりの倍率だそうで、無事合格した虎先輩的には目出度いことでお祝いをするべきだし。逆に同じところを落ちた鳥槇先輩の前では祝いにくい。

こういう時どうすんの? と前世さんに聞いてみれば「知らん、わからん」と帰ってくる。基本使えないよね、こういう人生経験が要る時。

 

まぁこういう時に動くべきなのは、嫌われ役ができる人材だと俺は思う。だってそうだろう? これで受験が終わりならともかく、この後の一般試験に切り替えていく必要があるなら、吹っ切る必要がある。

大丈夫だよ、ってポジティブな慰めができる最大の人員である虎先輩は、同じ試験を一人合格しているので嫌味になる。

加えて、鳥槇先輩はなにかあっても家族が味方をしてくれる程度には普通の家の生まれだ。

 

ならば、今後の関係を最悪断っても問題のない俺がいくべきかなって、そう思った。

鳥槇先輩とはどこまで行っても、親友の配偶者の親友みたいな関係だろうし、冷え込んでも問題はないだろう。すでに虎先輩と祐がくっついている以上は。

 

善は急げとばかりに、放課後に3年の教室に向かう。俺の容姿が醜いからか、それとも珍しいからか。後ろ指をさされてヒソヒソと言われているが気にはしない。

山上先生の件で俺は既に痩せ始めているから、無駄なダイエットと揶揄されているのかもしれないな。

 

丁度一人でうつろ気な瞳で出てきた鳥槇先輩。虎先輩は既に帰ったのか今日は登校していないのかわからないけど都合がいい。2年の教室で祐が近くにいるならともかく、俺に話しかけられるのは嫌だろうから、後ろから距離を離して付けていく。

 

「鳥槇先輩、今いいすか?」

 

靴を履き替えて校門まで出た所で、俺はやっと話しかける。こうすれば変な男につきまとわられてるとは言われても親しげに会話してるとは思われないだろう。

 

「何……?」

 

ああ、これは重症だ。一声かけただけでわかる。普段の意思の強そうな目に元気がないのはともかく、刺々しさがあるくらい強気な声に張りがない。多少強引にでも話をするしかないなと思い俺は脚を止めずに横を歩くことで誘導する。

 

「この後時間下さい」

 

「……悪いけど、私忙し「例の音声の件で問題が」……わかったわ」

 

全くの嘘八百だけど、今俺がこの人に興味を持ってもらえそうなのは、このくらいしかない。テーブルにつかせるためのブラフである。

ひとまずはということでそのまま適当な店に誘導できた。学校から一番近いファミレスで、周囲には同じ制服がちらほら見えるがいくつか席は空いていて。運良く隅の方の2人席を取れた。

 

 

「……んで、何よ本題の方は」

 

「流石に気づきますか」

 

「亜紗美か祐様に言われてきたんでしょ?」

 

「いえ、俺が勝手に」

 

まぁあまりにも露骨すぎてバレたけど。注文したコーヒーが来た辺りで、俺はさてどうするかと思い直すが。

まずは先輩の話を聞かないことには始まらない。

 

「もう、終わったのよ。一般じゃ無理、私の頭じゃどれだけ勉強しても間に合わないわ」

 

そこからはツラツラと、此処まで頑張ってきたけど、もう無理だと。まぁ実際話を聞く限りかなり厳しいであろうことも含めて。鳥槇先輩は話してくれた。

注文した飲み物を飲み終えて、お冷すら半分なくなるまでの時間を駆けてポツポツよ。

 

まぁ詳細は省くけれど。ネガティブな気持ちでの語りは、ネガティブさを強調させて、普段の先輩ぽくはないと感じてしまった。彼女の心が弱っている証拠である。

 

ただわかったことは、なんというか……

 

「でも、鳥槇先輩入って何をしたいとかじゃなくて、虎先輩と一緒にいたい以外の理由なかったんですよね?」

 

「え?」

 

「正直な所、何が何でもそこに入りたいじゃなくて。結局はそっちのほうが大きいじゃないですか?」

 

まぁ、触られて嬉しい部分じゃないけど、踏み込むしかないと思った。だから俺も本音を読み上げるように淡々と話すことにした。

同情とか憐憫じゃなくて、突き放した言い方のほうが、この人には良いと思ったから。反発して嫌ってもらった方が、話も早いしね。

 

「俺がもし、祐の両親の会社に入るために、高校を中退して資格試験の勉強する必要があったとしたら。俺は迷わずそうしますよ。目的は祐と一緒にいるじゃなくて、そこで働きたいですから」

 

「なによ、それ」

 

「一緒にいれれば良いっていうのは大層なことですけど。一緒の学部に入るためなら何でもするって覚悟が足りなかったんじゃないですか? だって本当にそうなら今から血反吐を吐いてでも勉強しますし。記念で一緒に受験までで満足したんじゃないすか?」

 

ただまぁ、本心でもあった。どこかこう、真剣味が足りないというか、最初から諦めていたフシがあるというか。本当に一緒にいたいなら、迷惑になることをいとわずに虎先輩と一緒に勉強するなりでよかったんじゃ?

記念受験で落ちてああ残念と、受かってたら良いなぁという。甘えというか驕りのような楽観視で、そう【アンビバレント】だったんじゃないかな。

 

「巫山戯ないでよ、私は真剣に!! ……って怒れたらよかったわね」

 

「……図星、でしたか?」

 

「そこまでじゃないわ、でも……私は亜紗美がいないと何も出来ないから、亜紗美と離れるのが怖い……そう思ってるの」

 

正直これはとても共感できる。俺も祐が一緒にいないことはもう考えられない。そもそも今の生きる意味の多くがそれだ。

今でこそ山上先生の為に痩せるのが目的だけれども。もし山上先生と付き合うの辞めなよ、会社の人とお見合いしてウチの家族になろうよ。って祐に言われれば。俺は悩むけど祐の言葉を尊重する……してしまうと思う。

 

「私は……亜紗美みたいにお姫様になれないのに……どんなに頑張っても無駄だってわかってるから、頑張りきれなかった……きっとそうよ」

 

そして、どんどんネガティブになっていく先輩。まぁなんというか、気持ちはわかるのだけど、そこは俺がだいぶ前に通った道だ。いや行くことを辞めた道でもある。

俺にとっての祐が彼女にとっての虎先輩なんだろう。憧れて真似っ子してる先輩と、諦めて足りない部分のフォローをしようとする俺。その程度の差だ。

 

 

「俺、祐の時々ナチュラルに後ろから刺してくるの嫌いなんですよ」

 

「……え?」

 

だからまぁ、慰めなんてなれない真似はするもんではないし、こういう時は自己語りをして参考にしてもらおうと思う。もとより「女性を慰められる甲斐性なんかねーだろう」と前世さんも言っており、全面的に同意だ。

 

「煽てて冗談言ってからかって笑いあったら、それ君もだよ? みたいに梯子外すやつなんです。意外といい性格してて、ずるいんですよ」

 

これは事実だ、急に冷水をぶっかけてくるところがある。良い意味で社長の息子というかシビアな目線で物を言うのだ。

 

「あと、漫画とかゲームの好きなヒロインもほぼ被らないんすよ。あいつ基本少女趣味だし。でもあと、お前そこは幼馴染選んでおけよ、なんでお嬢様の方行くんだよってなりましたね」

 

先輩が困惑している合間にも俺はどんどん話を続ける。情報をばーっと浴びせて混乱させるのも目的だから。

 

「飯屋でも俺に渡す前提で食べきれないのにコンビプレートで好きなもの取るし。華のお弁当も卵焼きを甘いのリクエストするし、ゲームで手加減すると怒るし」

 

目を白黒させて聞いてる鳥槇先輩は、なんか新鮮で可愛いと思いつつ。何時も早口で語られているので逆をやっているつもりだ。

 

「でも、かわいいんすよ、弟みたいで。あいつみたいになれたらと思わなくはないけど、【代わりたいとは思えない】から。完全には寄り添えないけど。傍にいるんです。だから、無理に全部好きになるのは、違うと思います」

 

そう、俺が言いたいのはそこだ。多分だけど鳥槇先輩は虎先輩の旗持ちではあるけど、全部が好きって感じないのは話を聞いててわかった。でも、それを見ようとしないで全肯定をしている。

それが夢だか憧れの根源なのかはしらないけど、無条件で飲み干そうとしているんだ。

 

だから自分のことですら、感情を推し量れてないし。まずは概念として好きなものの中に嫌いなものがあるのは当然だって、わかってもらうべきだろう。箱推しは上級者の楽しみ方なんだよ。

 

「で、でも……亜紗美は完璧なのよ!? あれでいて、変な冗談で笑う親しみやすさもあるし……」

 

「そんな事言ったら、鳥槇先輩の方がめっちゃ可愛い顔で笑うじゃないですか、ギャップで言えば虎先輩以上ですよ」

 

「なっ……!」

 

「それに、虎先輩のために体はれるし、努力だってすごいしてきたじゃないですか? 俺は勉強とかはともかく、運動は嫌だったし」

 

キャッチボールくらいなら付き合ったことはあるが、それでも俺の後ろに壁かフェンスがあってこそである。

 

「だから、まずは相手と何をしたいか、何を持ってそばにいるのか。それをはっきりさせましょうよ。何でもかんでも後追いするのは人間には無理ですよ」

 

物理的に自分+相手のスペックを内包できないだろう。祐だって俺よりゲームが下手だし勉強は言わずもがなだ……下駄は見ないことにするとして。

 

「なので、勉強よりも前に、まずは虎先輩と会って話すのが良いと思いますよ。なにせ虎先輩はもう暇なわけですからね」

 

そう言えば、驚いた顔からまたムスッとした顔に戻る鳥槇先輩をみて、まぁなんとなく伝わったのかなと思う。

どうせ此処は俺の奢りだし、追加でなにか頼もうかなぁと、安心したらお腹が空いてきた俺はそう思うのだった。今日は臨時のチートデイである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、ありがとう……参考にするわ」

 

十三の楽観的な言葉。それは私にとっては結構意外だったわ。もっとウジウジと面倒だって思っていたから。正直な所、試験に落ちていたことも、ショックでなくて。

なんというか燃料切れのような気持ちだったから。周りが騒がしくてあまり言えなかったけれど。

 

だからこそ、この男の言葉に正直な所。妬ましく思えた。

男に生まれれば、そんなにまっすぐに成れるのかって。

 

素直じゃない私の心はそう結論付けてしまった。でも、どこか嬉しかった。

結果的に少し亜紗美とはこれから長い時間をかけて話し合って折り合いをつけたけど。きっかけをくれたのは事実だったから。

 

 

だから、その少しだけ、素直になって勇気を出そうと思った。

 




なお、ぶた君はお嬢様の姉派で、華が幼馴染派。たまに喧嘩する。
男女比世界のゲームに花嫁イベがあるかって? 良いんだよギャグだし。
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