最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)と下っぱ吸血鬼 その03

 

 

 ウーィルの蹴りにより後ろにひっくり返ったヴァンパイアの身体が、ぴょんっと飛び跳ねた。一瞬で垂直に立ち直る。ふたたびウーィルと正対する。

 

 一度だけ目玉がくるりと周るが、もとどおりの端正な顔。驚いてはいるのだろうが、しかしそれだけだ。まったく平気。少女はそのまま距離をとる。

 

「うんんん、ちょっと効いたかな。さすが魔導騎士、魔力で反射速度を強化しているのか? ……ちがうな。空気抵抗も慣性すらも無視したその動き。まさか、時間や空間を操る魔力とでもいうのか?」

 

「……さあな、この身体の能力についてはオレが聞きたいよ。なんにしろ、剣を使うまでもないとは、手応えがなさ過ぎるぞ」

 

「ほざけ。たとえ空間を操る魔力だろうと、私からみればちょっと素早いだけだ。そんな蹴り、ヴァンパイアにはきかないなぁ」

 

 わざとらしい挑発の直後、彼はふたたび前にでる。ウーィルにむけて腕を伸ばす。まったく無造作な動き。しかし、その速度はさきほどのウーィルの蹴りにも匹敵した。

 

 目の前にせまる拳。ウーィルは身体を後ろに倒して避ける。そして、腕をつかむ。飛びついて、足を絡める。

 

 

 

 

「か、関節技?」

 

 生き残りの女性警官が叫んだ。

 

 ウーィルは倒れながら腕の関節を極める。体重をかける。身長が倍もあるヴァンパイアが、コロリと転がる。

 

 くっ!

 

 ぼきっ!!

 

 一切躊躇することなく、ウーィルはそのままヴァンパイアの腕を折った。肘の関節そのものを逆に曲げた。闇夜の中、半ばめくれ上がったスカートからはみでた足の白さがなまめかしい。

 

「ぐわぁ」

 

「……オレはヴァンパイアにはちょっと詳しいんだ。おまえ、見たところヴァンパイア化してせいぜい五年目の若造だろ? これ以上痛い思いをしたくなかったら、さっさと降服した方がいいぞ」

 

 男の腕に絡みついたまま、少女がつまらなそうにつぶやく。

 

 

 

 

 

「人間風情がぁ! なめるなぁ!!」

 

 ヴァンパイアはまたしても立ち上がる。力尽くでウーィルが極めたままの腕を持ち上げ、振り回す。

 

 うそ!

 

 格闘技の心得がある警官が悲鳴をあげた。

 

 あんなことをすれば、腕が……。

 

 ぶち!

 

 関節が逆に曲がった腕が、完全に千切れる。自らの力で引きちぎった腕を、ウーィルごとぶん投げた。

 

「……へぇ、やるじゃん。それでこそヴァンパイアだ」

 

 平然と着地したウーィルが、スカートについた泥を落としながら微笑んでいる。自らの足元にある千切れた腕を、ブーツの踵で踏みつけながら。

 

 

 

 

 くんくん。

 

 ヴァンパイアが、自分の腕の千切れた肘の部分を自分の顔に近づける。すでに半ば再生しかけているその部分を、わざとらしく臭いを嗅ぐ。

 

 いったい何をしているんだ?

 

「へー、この臭い。……魔導騎士、おまえ処女だろ?」

 

「へっ?」

 

 ウーィルは、一瞬なにを言われたのか理解できなかった。数秒間、口をひらきポカンとするだけだった。

 

「技をかけられた瞬間にわかった。私は感触と臭いで処女を見分けられるのだよ」

 

 ドヤ顔でかたるヴァンパイア。

 

 そして三秒後、ウーィルの表情が劇的にかわった。魔物が何を言っているのか、やっと理解できたのだ。顔を真っ赤にして叫ぶ。

 

「うううううるさい。うるさい。うるさい。おまえには関係ないだろ。この身体は十六歳なんだから、あたりまえだ!」

 

 

 

 

 もともとウィルソンは、人とのコミュニケーション能力に問題があった。とりわけ異性が苦手だった。亡くなった妻と出会えたのは奇跡以外のなにものでもないと、今でも思っている。要するに、いい歳をして純情なおっさんなのだ。

 

 そんな純情おっさんの魂が、うら若い少女の身体にやどっているのだ。ヴァンパイアの下品な下ネタひとつだけで顔が真っ赤になり、挙動不審になってしまうのも、仕方がない。

 

「へぇ、……いい臭いだ。たまらない」

 

 ヴァンパイアは、そんなウーィルの様子が面白いらしい。ニヤニヤしながら、わざとらしく自分の腕の臭いを嗅ぎ続ける。

 

「やめろ! 嗅ぐな」

 

 その異様な光景に、少女が震えながらのけぞる。

 

「ばかやろう。へんたい! やめろ! やめてくれ」

 

 いつのまにか、ウーィルは涙目になっていた。

 

 

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