最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)とやんちゃ小僧ども その02

 

 

「おいおいおい、この店ではこのオーガの子に服は売れないっていうのか!」

 

 高級ブティックの店の前。三人組の小僧がエルフの店員を取り囲み、因縁をつけている。

 

「も、もうしわけありません。当店ではオーガに合うサイズはご用意できませんので……」

 

「ふん、たまたまサイズ合うのがあるかもしれないだろ? 店内のすべての服、無理矢理こいつに試着させてみようぜ!」

 

「む、無理です。やめてください!」

 

「へっへっへ、……おまえエルフだろぉ? エルフのくせに、同類のオーガを差別するってのか?」

 

 もちろん、エルフとオーガは同類ではない。公国においては、エルフは獣人と同様、人類とまったく同じ市民権をもつ。しかしオークは人権などもたないモンスター扱いだ。

 

 連中がつれているオーガ。野生のオーガとは思えないから、軍用か鉱山採掘用のオーガ奴隷の払い下げだろう。オーガ奴隷なんて不経済きわまりないもの、今では公国全土でもほとんどいないだろうに、わざわざこんな嫌がらせのためにいったいどこから手に入れたのかね?

 

 まぁそんなことはどうでもいい。いいかげんオレも腹が立ってきたので、さっさと終わらせようか。

 

 

 

 

「えーと君たち。ここは往来だ。通行の邪魔だからどいてくれないかな?」

 

 おっさんなりに、慇懃に、かつ思いっきりドスを効かせたつもりだった。しかし、例によって第三者からみればかわいらしい声なんだろうなぁ。

 

 ああ?

 

 若者がきょろきょろするが、視線があわない。下を見て、やっと気づく。

 

「……なんだ、このちっちゃいのは?」

 

 失礼なやつだな。

 

「大勢で女性ひとりを囲むのはみっともないからやめてくれ、と言っているんだよ」

 

 オレの外見、そして声と似つかわしくない口調に一瞬驚いたようだが、男の表情はすぐに怒りにかわる。

 

「なんだとぉ! ガキが!!」

 

「お、おい。この制服、公国騎士団だ」

 

「騎士団? このちっちゃいのが?? まさか」

 

「……あの紋章、魔導騎士だぞ」

 

「そんなバカな。仮装、いやコスプレじゃねぇのか?」

 

 お、制服と紋章に気づいてくれたか。それは話が早い。わかったらさっさと帰れよ。

 

「ふ、ふん。公国騎士がエルフ共を庇うのか?」

 

 若造のひとりが、あきらかに強がりをいう。

 

「そうだよ。公国騎士は公国市民を護るんだ。彼女はエルフだが公国市民だ。……お前達は、帝国からお小遣いをもらっているようだな」

 

 なんだと!

 

 図星をつかれた若造が逆上する。手にナイフをもつ。拳銃を持ち出した奴もいる。オーガを繋いだ鎖をもった魔法使いが、杖をかまえる。

 

 あーーあ、ガキが。……もう引っ込みつかないだろうなぁ。

 

 

 

 

 小僧共のナイフと拳銃をみて、あつまっていた人々がざわめく。女性の悲鳴がひびく。

 

 当然のように、野次馬の大部分は少女騎士の身を案じている。しかし、少女はその可愛らしい顔に似合わぬ薄ら笑いを浮かべていた。しかも、それをまったく隠す気がない。

 

 ゆっくりと背中の剣をおろす。鞘に入ったまま、左手にもつ。その、場慣れした態度が、小僧共をいらつかせる。

 

「ガキのくせに調子に乗りやがって」

 

 ガキはおまえたちだろう、……って、オレもガキだった。だけど、オレは公国騎士だよ。魔導騎士だよ。それでも、……本当にやるの?

 

「時代遅れの騎士風情が、俺達の邪魔をするとどうなるかわかってるのか?」

 

 うん。たしかに騎士が時代遅れの存在であることは否定しないよ。たとえば組織的で機械化された軍隊相手の戦争では魔導騎士などほとんど役に立たないだろうし、政治的な目的をもった本気のテロを未然に防いだりは正直かなり苦手だ。オレ達の相手は基本的に魔物やモンスターであり、自慢じゃないが脳みそよりも魔力と剣と腕力をつかった力押しの任務が大部分なのだ。

 

 だけどな。君達は、そんな時代遅れの騎士の剣による力押しを、止められるのかな?

 

「……君たちの邪魔をするとどうなるの? 教えてよ。ほら、早くかかってきなさい。そのナイフと銃はおもちゃ?」

 

 小僧共は顔を真っ赤にして簡単に挑発にのってきた。アホだなぁ。

 

 

 

 

「この野郎!!」

 

 小僧のひとりがナイフで斬りつける。

 

 おお、少々ケンカ慣れしているようだ。もしかしたら専門家からナイフさばきの訓練を受けたことがあるのかもしれない。帝国情報部かな?

 

 だが所詮は素人。ていうか、一対一で正面から闘ってという条件付きならば、たとえプロの軍人や殺し屋でも魔導騎士に勝てる人間なんて世界でもそんなにいないと思うけどね。

 

 オレはナイフを簡単によける。

 

 ……そもそも技術以前の問題として、動きが遅すぎる。

 

 そのまま半回転して後ろ回し蹴り。側頭部にブーツの踵をたたき込む。

 

 自分より頭三つ分も身長が低い少女が、まさか頭を狙って蹴りを仕掛けるとは思わない。一撃で意識を刈り取られた小僧が、ゆっくりと倒れていく。

 

 

 

 

 

「う、動くな。撃つぞ!」

 

 もうひとりが拳銃をむける。

 

 へぇ。撃つの? 撃っちゃうの? 早く撃ちなよ。……どうしたの? 銃口が震えているよ!

 

「う、う、う、うるさい! 死ね!!!!」

 

 パン!

 

 乾いた音がひびく。

 

 瞬間。ウーィルの周囲の時間がとまった。銃弾の軌道がはっきりとみえる。

 

 うーん、本当にこの身体、時間や空間を歪ませる能力があるのかもしれないなぁ。

 

 キン!

 

 鞘のまま、剣で弾を弾く。余裕だ。

 

 オレ、全力を出したらどこまで素速く動けるのだろう? この身体の限界について、いつか試してみなきゃなぁ。

 

 

 

 

 銃を撃った小僧は目を見開く。口をあんぐり開けている。

 

 しんじられない。あどけない顔した少女が、剣で拳銃の弾を弾き飛ばした?

 

「あーあ、撃っちゃった。もう後戻りできないよ」

 

 ちょっと鼻にかかった甘い声。無邪気な口調。だが、小僧の耳には悪魔による死刑宣告にしか聞こえない。あわててもう一発引き金を引こうとした瞬間。

 

 え?

 

 少女が目と鼻の先にいた。コンマ数秒前、彼が一発目の引き金を引いたとき、彼女は数メートル先にいたはずなのに。

 

 そして目の前で微笑む。天使のような笑顔。

 

「う、う、う、うわー」

 

 錯乱した小僧が引き金を引く。

 

 撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。ほぼゼロ距離から、照準もつけず引き金を引き続ける。

 

 キンッ、キンッ、キンッ、キンッ

 

 だが、あたらない。すべての弾が弾かれる。剣の動きがまったく見えない。

 

「こんな往来で発砲しちゃったんだから、覚悟はできてるよ、ね?」

 

 息づかいが聞こえそうな距離に迫る美少女が、見上げながらウインク。

 

 ひ、ひぃぃぃぃ。

 

 恐怖の余り仰け反る。反射的に一歩下がる。振り向いて逃げ……。

 

 とん。

 

 逃げようとした小僧がその場に崩れ落ちた。少女騎士が剣の柄でみぞおちを突いたのだ。

 

 

 

 

 

 凶器をもった小僧ふたりが、あっという間もなくのされてしまった。残されたのは、魔法使いと奴隷オーガが一頭だ。

 

 オーガを拘束している鎖を握った若者の顔が、みるみる蒼白になる。ウーィルが視線を向けるだけで、ガタガタと震え出す。

 

「……なんだよ。人を化け物みたいに。こんな美少女と視線があったら、普通うれしいだろ」

 

 悪魔のような微笑み。だが、それに反応したのは微笑みかけた先の小僧ではなかった。

 

 

 

 がぁぁぁっぁぁ!!!

 

 付近のビルが震えるほどの咆哮。それまでおとなしくしていたオーガが、いきなり叫んだのだ。

 

 

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