最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)とセーラー服 その02

 

「ねぇねぇどんな服、私にもみせなさい」

 

 オーガをぶっ倒したお礼にオレがもらったお洋服。それを強引に奪い取ったナティップちゃんのもとに、レイラ隊長までが集まってくる。

 

 あっらー、本当にかわいいじゃない!

 

 おいおいレイラよ。どうしてそんなに眼をキラキラさせているんだ? おまえ歳はいくつだ? 

 

 

 

 白い半袖のシャツ。特徴的なのは大きな大きな黒い襟。黒いスカートは何本も筋がはいった、フワリとしたおそらく膝より上の丈。

 

「これ、上だけ見ると、海軍の水兵さんっぽい服だな」

 

「セーラー服っすね。ウーィルちゃん先輩しらないっすか? いま公国でも若い女性のあいだで流行ってるっすよ」

 

 ナティップちゃんが答える。

 

 へぇ。全然しらんかったわ。

 

「もともとセーラー服が水兵の軍服に採用されたのは、世界最強をうたわれる連合王国海軍だそうっす。で、我が公国をはじめ各国の海軍にひろまったらしいっすよ」

 

 ナティップちゃんは物知りだな。

 

「連合王国では海軍の人気がとても高いので、いつのまにかセーラー服は一般の女性にも流行しはじめたらしいっす。王室の方々も公式の場で着用しているとか。で、いまでは旧大陸の列強や新大陸でも流行っていると雑誌で読んだっす。女子学生の制服にしている国もあるそうっすよ」

 

 ふーん。わが公国ももともと島国で海軍の人気も高いし、本人や家族がなんらかの形で海軍に関係している市民の数も多い。水兵風のファッションが流行してもおかしくないってことか。

 

「ウーィルちゃん先輩!」

 

 ん? どうしたナティップちゃん。そんな拳を握りしめて。

 

「殿下のご招待、この服でいいんじゃないっすか。きっとウーィルちゃん先輩に似合うっすよ。っていうか、いま着てみて欲しいっす。さぁすぐに着換えるっす。さぁさぁさぁさぁ更衣室へ行くっす。おっとその前についでにいっしょにシャワーも浴びるっす」

 

 こらこらこらこら。背中を押すな。なんだそのオーガ以上の馬鹿力は。その細い身体のいったいどこからでてくるんだ?

 

 

 

 

 

 てなわけで、オレはなぜかナティップちゃんと一緒にシャワーをあびて、その後セーラー服とやらを身につけたわけだが。

 

 純白の半袖シャツ。胸元の赤いスカーフ。極端に大きな黒い襟。

 

 もどってきた詰め所の中、オレはムキムキの魔導騎士達に囲まれガン見されている。……なんだこの状況? 恥ずかしぞ!

 

「噂によると、水兵さん達は遠くの音を聴き取るためにこの襟を頭の後ろに立てて、音を耳に集めるそうっすよ」

 

 ほんとかぁ? 海軍に知り合いがいないこともないが、そんな事をやってる水兵なんてみたことないぞ。

 

 それよりも、だ。これ胸元のV字が深すぎて、上から覗くと隙間から中の下着が覗けそうでやばいんだが。

 

「……それ、普通の女子ならそんなに胸元に余裕ないはずよ。ウーィルの胸が薄すぎるのよ」

 

 ため息をつきながら、レイラがつぶやく。

 

 なんだと、レイラ。もう一度言ってみろ!! ナティップちゃんも、哀れみの目で見るのはやめろ!!

 

 ふりむくと、詰め所の中の男共がみな同時に目をそらす。うんうんと頷いている奴もいる。……おまえらもそう思ってるのか!

 

 

 

 

 ちなみに、もらった紙袋の中にあったのは、このセーラー服の上下だけではない。可愛らしいサンダルまで揃っていた。

 

「このセーラー服? 元々が軍服なのに、裸足につま先がでるサンダルというのは、ただしいのか?」

 

「ここは公国っす。亜熱帯の国っすよ。サンダルのどこが悪いっすか?」

 

 たしかに、公国市民は普段から男女問わずサンダル履きは多いがな。しかし、仕事中の公務員とか、公式の場にはサンダルはあまりいないと思うが。

 

 それに何より気になるのは……。

 

「それよりもなぁ、ナティップちゃん。このスカート。ちょいと短すぎだと思うのだがな……」

 

 スカート丈は膝上10センチといったところか。お子様ならともかく、騎士として、いや社会人として勤務中の女性としてどうなんだ、これは?

 

「そんなことないっすよ。とても似合ってると思うっす。ウーィルちゃん先輩、ためしに回ってみるっす」

 

 言われるがまま、オレはその場で一回転。スカートがフワリと舞い上がる。

 

 うわぁ。やっぱりだめだわ、これ。ちょっと動いただけで、太ももまで丸見えじゃねぇか。さすがにこれじゃあ、魔導騎士の仕事はできない。

 

 ……と、振り向けば、詰め所の中の男共がみな同時に目をそらす。おまえら、どうしてこっちばかり見てるんだよ! 仕事しろ、仕事。

 

 

 

 

「ウーィルちゃん先輩。ここは公国っすよ。我が公国は、古くさい伝統に縛られた旧大陸の列強とは違う開放的なお国柄で、女性の社会進出だってすすんでいるっす。ウーィルちゃん先輩みたいな若い娘はもっと脚をだした方がいいっす。そんな細くて白くてきれいな足を国民の皆様の目から隠すなんてもったいないっす! 国の損失っす!!」

 

 ナティップちゃんよ、どうしてそんなくだらないことをそんなに拳を握りしめて力説しているんだ、君は?

 

 一方で、レイラはちょっと渋い顔をしている。

 

「うーーん、たしかに可愛らしいけど、伝統ある公国騎士が海軍風の服を身に纏うというのは、ちょっと気に入らないわねぇ」

 

 ああ、そういえば、レイラは軍隊嫌いだからなぁ。

 

「なに言ってるっすか、隊長? これは誰がみたって幼女が精一杯背伸びして憧れの水兵さんの格好している図っすよ! これが萌えないわけないじゃないっすか?」

 

 だからおまえはいったい何をいってるんだ?

 

「ふおっふおっふおっ、さすがに『幼女』は言い過ぎじゃのぉ。とはいえ、ウーィルは儂のひ孫と同じくらい可愛らしいのは確かじゃ」

 

 おいおいバルバリー爺さん、あんたのひ孫は小学生じゃなかったか?

 

 

 

 よいしょっと。

 

 オレは背中に剣を背負う。そろそろ迎えの車が来る約束の時刻だからな。胸元と足元が少々不安だが、公王宮にはこのセーラー服で行くといつの間にか決まってしまったのだから仕方が無い。準備をせねば。

 

「ウーィル! お食事会に剣は必要ないんじゃないの?」

 

 鞘に付けられた紐を肩から斜めにかけ、前で結んでいるオレに文句を言うのはレイラだ。

 

 あんだよ。オレにこんな服を着せた上に、まだおまえは注文があるのかよ。

 

「公国騎士が公王宮にいくのに剣を持ってて何がわるいんだ?」

 

 騎士の正装には剣、もしくは魔法の杖が含まれている。たとえ陛下の前でも、剣をもってるのが当たり前だ。ついでに、公国の法律において、騎士はたとえ勤務時間外でも武装が許されている。

 

「それはそうだけど、せっかく可愛らしい私服なのにそんな色気のない長い剣を背負っちゃって、いろいろと台無しだわ」

 

 え? そ、そうか?

 

「わ、わたしは、それだからこそ可愛いと思うっす! セーラー服、幼女、剣、……男の子なら絶対に萌えるはずっす! 殿下もきっといちころっすよ!!」

 

 ナティップちゃん、それはもういいから。

 

「ウーィル!」

 

 うわ! 突然両手を握ってくるな、ブルーノ。

 

「その可憐な姿を見てあらためてわかった。君こそ僕の理想の女性だ!」

 

 な、な、な、何を言い出すんだ? おまえは!

 

「かならず幸せにするよ。今すぐとは言わない。あと十年後、君が二十歳になって大人になるまでまつから!!」

 

 あほ。オレの中身は大人だ。身体だって十六歳だから、二十まではあと四年だ。……じゃなくて、おまえはなにを血迷っているんだ!

 

「ブルーノ先輩、……ウーィルの手を離せ!!」

 

 ジェイボス! おまえさっきまであんなに落ち込んでいたのにもう復活したのか? それよりも、毎度のことだがこの狭い詰め所の中で剣を抜くなって。そのうえ剣に炎の魔力を纏わせるな。

 

「あれれぇ、ジェイボス君。君はウーィルの家族なんだろ?」

 

「か、か、家族だからこそ、ウーィルの身を案じているんだよ!」

 

「ふっ。僕は公国一の魔法使いであるだけではなく、名家の出身で金もあるし、なにより君のようなヘタレの根性無しじゃない。ウーィルを幸せにできるのは僕だけど言っても過言ではないくらいだ。余計な心配はしなくていいよ『お・義・兄・さん』」

 

「あんたにお義兄さんよばわりされる筋合いはねぇ!!」

 

 

 

 

 魔導騎士達がそんなバカな騒動をやってる間に、時間は過ぎていく。そして、約束の時刻。

 

 公国騎士団の駐屯地の正門前、ついに公王宮から迎えの馬車が来た。四頭立てのむっちゃくちゃ豪華な馬車。騎馬隊の護衛まで付いている。

 

 ……あれ? 宮内省からの事前の連絡じゃ、あまり目立たないよう普通の自動車をよこすと言ってたよな、たしか。

 

 ていうか、これ現公王陛下に妃殿下が嫁入りしたときに使われた馬車じゃねえのか? どういうことだ?

 

 




 
 
現実世界の欧米で20世紀はじめくらいにセーラー服が流行ったのは本当らしいです。
 
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