最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました 作:koshikoshikoshi
「ではウーィル、私の事は『お義父さん』とよんでくれたまえ」
はぁぁぁ? いいいいきなり何いいだすんだ、この人は?
「はっはっは、冗談だよ。冗談。……今のところはね。緊張しているようだから、場を和ませようとおもっただけさ」
だ、誰のせいで緊張していると思ってるんだろうねぇ、このおっさん?
……まぁ確かに、ちょっとだけだが緊張はとけた。ていうか、こんなおっさんの前で緊張しているのがバカらしくなった。しかし、おっさんの悪乗りはとまらない。
「ところでウーィル。……君はルーカスのことをどう思う?」
陛下の問いはド直球だ。
どう思うって……。可愛らしいお顔しているし、異世界から転生してきたとしか思えないほど科学知識があるそうだし、公国の誇りという言う人もいるな。
「ほぉ。そうだ。そのとおりだ。君は若いのに男を見る目があるね。君の言うとおり、ルーカスは私の誇りなんだ。やさしくて繊細で頭が良くて未来のことを何でも知っていて何よりも亡き妻に生き写しの息子が、私は可愛くて可愛くて……」
立憲君主制である我が公国の国家元首であるアンデルソン公王陛下。小さな島国である公国の独立と権益を守るため、強大な列強相手に一歩も引かないしたたかな外交手腕を発揮する名君として国際社会に知られている。その豪腕政治家の顔と、息子の事を誉められて相好を崩してニコニコしている目の前のおっさんの顔、同じ人物とはとても思えない。
「公王太子としての評価はいろいろあろうが、ひとりの男の子としてルーカスはこの国で、いや世界一出来の良い息子だと思っているのだよ、私は」
このおっさんが国民から広く支持されているのは、そのあたりにも理由があるのだろう。政治には疎いオレも、騎士として、一公国市民として、ひとりの父親として、このおっさんには愛着がある。国を任せてもいいかと思う程度の信頼はある。
「だから最近は、あの純粋で繊細で朴念仁の息子にへんな虫がついたり悪い女に騙されたりしないか、それだけが心配で心配で……」
だからこそ、だ。同じ年頃の子を持った親どうしとして、対抗したくなるのだ。このちょっとウザいほど親バカなおっさんに、意地悪のひとつも言いたくなるのだ。
たしかにルーカス殿下が優秀で可愛らしいのは否定しないよ。しないが、うちのメルの方が百倍は可愛いいもんね!
オレは心の中だけで対抗したつもりだった。大人だからな。だが、一部は口からもれてしまったらしい。
「メル? ああ、君の妹さんか。息子の同級生だったね。うん、確かに可愛らしい娘さんだ。しかし、うちのルーカスよりも可愛らしいとは、聞き捨てならんな。しかも百倍だと!」
お、聞こえてしまったか。
「残念ながらメル・オレオ嬢は、学校の成績ではルーカスに及ばないようだね。うちのルーカスは、あの年齢にして国際的な数学や物理学の論文をいくつも書き上げているんだよ。学者達からは、まるで科学の進んだ異世界から転生してきたようだとさえ言われている。どうだい、凄いだろう!」
狭い馬車の中、オレににじり寄り眼前でいかに自分の息子が凄いのかを早口でまくし立てる男。茶目っ気があるというか、ただの度を超した親馬鹿なんじゃないか、このおっさん。我が子自慢でオレに挑んでくる身の程知らずのおっさんには、一度敗北を知らしめる必要があるな。
う、う、うちのメルなんてなぁ、母親が死んでからあの年齢で家事全般を完璧にこなしているんだぞ。頭でっかちなだけの誰かさんとは違う! 人間として立派なのはどっちかな?
「くっ! た、たしかに、ルーカスは家事などできないが。し、しかし、彼の頭脳は今や公国にとってかけがえないものだ。これは国家機密だが、帝国政府の暗号をすべて解読できる機械を作ったのはルーカスだ。君が先日オーガのついでに成敗した帝国スパイの指令書をすべて解読できたのも、帝国大使館の外交文書を読み放題なのも、彼らの潜水艦の位置をすべて把握できるのも、みんなルーカスのおかげだ! 君の家族が平和に暮らせるのは、ルーカスのおかげなんだ。ウーィル、君はメル嬢の自慢をする暇があったら、もっとルーカスに感謝の念をもつべきなんじゃないのかい?」
なんだとぉ!! うちのメルはなぁ、メルはなぁ、えーーと、オレのかわりにご近所付き合いだって完璧にこなしてくれる。同級生にも大人気だ。ついでにケンカだって強いぞ。そこらへんの男の子には絶対に負けない。おたくの殿下はしょうしょうナヨナヨしすぎなんじゃないか?
「まだ言うか! 確かにルーカスはケンカは弱いが、軍隊に多大な貢献をしているぞ。現在海軍が王国や皇国と共同開発している電波を使って遠距離の物体を検知する技術も、あの子が原理を提案したものだ。あと数年以内に、われわれは空中から飛来するドラゴンや航空機もいち早く検知できるようになるだろう。その他、砲弾の弾道を正確に計算する機械も、高射砲弾が空中の敵のすぐそばで確実に爆発する信管も、みんなルーカスの発案だ。どうだ、まいったか!」
なにぃ。さっきの暗号の話の凄さはいまいち理解できないが、こーゆー武器の話ならオレでも理解できる。確かにそれは凄いことかもしれない。
ちょっと気圧されたオレをみて、親バカおっさんがさらに図に乗る。暴走を始める。
「それだけじゃないぞ。ルーカスはいま、同盟国の科学者達をあつめて新兵器開発を行う超極秘の国家プロジェクトの中心的な役割も担っているんだぞ。あれが完成すれば人類の歴史は変わる。公国は帝国にも大型ドラゴンにも絶対に負けない。ルーカスはそのリーダーになるんだ!」
口角泡を飛ばすとはこのこと。目の前のおっさんの顔をみれば、……くそぅ、勝ち誇ったドヤ顔に腹が立つ!!
どうする? この親馬鹿おっさんにどうやって反論する? さすがのオレも、そろそろメルを誉めるネタが尽きてきたぞ。
し、しかし、おっさん。息子を自慢したい気持ちはよーくわかるんだがな。一介の騎士に対して国家機密をベラベラしゃべっちゃっていいのかよ。オレは公国の将来がちょっと心配になってきたぞ。