最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)と秘密基地 その02

 

 

 先日の殿下とのお食事会。そして青ドラゴンとの遭遇事件。その時、殿下はオレに教えてくれたのだ。転生者とその守護者の使命について。

 

 

 

 

「私たち転生者とその守護者の使命は、異世界の知識をもって『この世界が存続に値するか』を審判することです」

 

「そ、それはまた、ずいぶんと、重い使命ですね。……で、で、『審判』って、具体的にはどうするんです? 殿下」

 

「簡単です。『この世界に存続する価値などない』と思えばいいんです。転生者全員がそう審判した瞬間、すなわち世界の存続を望む転生者がいなくなった瞬間、この世界は終わります。……『なぜ』なんて聞かないでくださいね。そうなっているとしか、私も聞いていないんですから」

 

 ふーむ。信じられないが信じるしかあるまい。オレをこんな姿の『守護者』にした『転生者』が目の前に居るんだから。

 

「じゃあ、あの青ドラゴンとその主のスカした野郎は……」

 

「彼は、世界は滅びるべきだと信じています。だから、十五年前、先代公王陛下の弟殿下を皮切りに、同意しない他の転生者と守護者を次々と襲っているのです」

 

「……転生者ってのは、何人居るんだ?」

 

「世界中で常に七人だと聞きました。誰かが寿命で亡くなると、新しい者が異世界から転生してくると。しかし、転生者は大人になるまで守護者をつくれず、審判にも参加できません。いま機能しているのは、十五歳の大人になったばかりの私とレン、青の彼を含めて四人だけです」

 

 なるほどね。世界の存続というのは決して盤石ではないということか。あの青ドラゴン、やっぱりあの場で斬ってやればよかったな。

 

「だ、だめです!! 私はモンスターの強さなどよくわかりませんが、あの青ドラゴンが別格なことはわかります。いくらウーィルでも、一対一で勝てるとは思えません。私には、……いえ、この世界の人類にだって、転生者や守護者に対抗する策があります。なければおかしい。だから、ウーィルはあいつとは闘わないでください。おねがいです!」

 

 あの時、殿下はそう言ってオレの両手を握ったのだ。

 

 

 

 

 会議は続いている。

 

 要するに、今この島で作っている秘密兵器とやらこそが、青ドラゴンに対抗する策、ということなんだろう。

 

「信じます。信じますよ。だから殿下、いったん退席しましょう。どこかで横になった方がいい」

 

「それは、……だめです。わ、わたしには、責任があります。あんなものを作り始めた責任を、この世界の人々だけに負わせるわけにはいきません」

 

 責任? 責任だと? こんな少年のくせに、いったい何の責任を負うというのだ? この世界のおとな達が、殿下になんの責任を負わせるというのだ?

 

 ……しかたがないなぁ。

 

 オレはそっと手を握り返してやる。オレがしてやれることは、これくらいしかない。

 

「じゃあ、その責任とやらを、オレにも半分わけてください。オレはあなたの騎士なんだから」

 

 殿下がオレを見つめる。大きなメガネの中、涙をこらえているのがわかる。

 

「あ、あ、ありがとう。ウーィル。ありがとう。ありがとう……」

 

 

 

 

 ごほんっ!

 

 国防大臣が咳払い。オレ達のコソコソ話が聞こえてしまったか?

 

 うるせーよ、大臣のおっさん。若者にはいろいろと事情があるんだよ。ていうか、この場にいるおっさん達。よくもまぁこんなに長時間、集中力が続くものだな。そろそろ休憩いれろよ。

 

 オレの思いをよそに、会議はますます白熱していく。

 

『複数の盗聴器が……』

『情報漏洩の疑い……』

『妨害工作の可能性……』

 

 どうやら計画の保安体制について話が及んでいるようだ。

 

『計画も終盤にさしかかり、分散した各地の工場の労働者の数が多すぎて管理しきれない……』

『つい数日前、最高機密を持ち出される寸前で逮捕したスパイは王国海軍兵士だった……』

 

 参加者全員の顔がくもる。さすがに全員の顔に疲労の色が浮かび始める。

 

「……一旦休憩にしましょう」

 

 議長のひとことで、参加者全員が一息ついた。

 

 国防大臣が吸いかけの葉巻を灰皿に押しつける。殿下がコップの水を一気に飲み干す。新しい水差しをもった若い水兵が、部屋の中央に向かう。連合王国海軍の水兵か。

 

 

 

 

 

「そこの水兵さん、……ちょっとまって」

 

 オレは、この会議室に入ってはじめて口を開いた。背中の剣は既におろしている。

 

 おっさんばかりの室内にいきなり響いた少女の声。ちょっと鼻にかかったロリボイス。その場の全員がこちらを向く。

 

 水兵の能面のような顔が持ち上がる。うつろな眼でこちらを見つめる。声をださずに笑う。そして、飛ぶ。

 

 

 

 

 

 本当の標的が誰だったのか、……大臣なのか、殿下なのか、あるいは科学者達だったのか。いまとなってはわからない。とにかく、水兵は飛んだ。部屋の入り口から会議の主要参加者が並ぶ机まで約五メートルの距離を、一気に飛んだのだ。

 

 信じられない速度。そもそもこの距離を飛ぶ人間などいない。一瞬の間。我を取り戻した保安部隊が拳銃を抜くが、間に合うはずがない。

 

 もともと軍人だった国防大臣は最後まで眼を閉じなかった。だから見えた。迫り来る水兵の青白い顔。赤く血走る目。口元の牙。突き出される鋭い爪。

 

 避けられない。

 

 ……影が走った。黒い影。影? それはまるで空間の裂け目。地面からそれが凄まじい勢いで吹き上がる。

 

 裂け目によって切断された水兵の腕が飛ぶ。吹き飛ぶ。腕から鮮血が噴き出す。

 

 そして目の前。いったいいつの間に現れたのか。剣を振り上げ、立ちはだかる少女。

 

 大臣は、崩れ落ちそうな腰を寸前で立て直す。必死に顔をあげる。こんな少女の目の前、紳士が尻もちなどつくわけにはいかない。

 

「……さすが騎士だな。ありがとう。あれはヴァンパイア、かね?」

 

「大臣もさすがですよ。……こいつはヴァンパイアの操り人形です」

 

 パンパンパンパン

 

 保安部隊の銃撃。水兵は、蜂の巣になった自分の身体を顔色ひとつかえないまま他人事のように眺める。そして、ふたたび顔をあげる。動く。まだある腕をのばす。今度は大臣の隣、少年に向けて。

 

 すぱっ

 

 水兵の首が飛んだ。ウーィルが剣を横に薙いだのだ。

 

 殿下を狙われて、一切の容赦などしない。

 

 胴体から噴水のように噴き出す鮮血が血柱となる。会議室の中、なにもかもが真っ赤にそまった。

 

 

 

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