最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)とパジャマパーティ その03

 

「ど、ど、ど、どうして、こうなったぁ!」

 

 オレの目の前にあるのは公都市民に大人気の週刊誌。白黒グラビアページのでっかい写真。

 

 結婚式用の馬車。オレの手を取る殿下。その上に踊る見出しは、よりによって特大の活字。

 

『お妃候補は美少女魔導騎士! すでに陛下も公認の仲!?』

 

 オレは頭を抱えるしかない。

 

 

 

 

「くっくっく、もう後戻りできないかもしれないねぇ。君ならばボクも安心して殿下を任せられる。よろしく頼むよ、騎士ウーィル」

 

 行儀悪く椅子の上であぐらをかいたまま、スコッチのグラスを掲げた白髪の少女が笑う。

 

 にゃぁ。

 

 肩の上で白ネコも笑っている。

 

「ま、まて、まってくれ、レンさん! そんな、他人事だと思って楽しそうに言わないでくれ」

 

 確かに、オレは殿下の『守護者』とやらになることを了承した。あの青ドラゴンから護ってやると約束した。世界を存続させるためにな。

 

 殿下と同じ『転生者』であるレンさんが、世界を存続させるためにオレが仲間になることを望むのは当然かもしれないが、しかしそれにしたってお妃なんて……。

 

「誤解しないでほしいな、ウーィル」

 

 どん!

 

 レンさんが、スコッチの残りを一気に飲み干したグラスをテーブルに置いた。すっかり目が据わっている。そしてジト眼でオレを睨む。

 

「ボクはねぇ、殿下ほど真面目じゃない。正直言って『転生者の使命』も『この世界の存続』もあまり興味はないんだ。あの青ドラゴンとその主がこの世界を滅ぼしたいというのなら、勝手にやればいいとさえ思っている。今のところはね」

 

 え?

 

「しかし、そのためにあの青びょうたん野郎が殿下を害そうというのなら話は別だ!」

 

 グラスを強く握る。ふたたび持ち上げる。残りのスコッチを一気に飲み干す。

 

「言ったよね。ボクと殿下は前世、別の世界で双子の姉妹だったんだ」

 

 あ、ああ。そんなことを言ってたな、たしか。

 

「双子と言っても、なぜかボクらの性格は正反対だった。姉は、幼い頃からとにかく生真面目で融通が利かなくてお勉強が大好きでついでに純情な女の子だった。一方でボクは、ほら、このとおり、ちょっと捻くれたいい加減な人間だから、よくケンカになったものさ」

 

 レンさんは、ちょっと遠い目をして天井を仰いだ。

 

「……でもね、ボクは細かいことでガミガミ怒ってくれる姉をなんだかんだ言いながら頼りにしていたのさ。一流大学に残って物理学者を目指して必死にお勉強している姉のことが誇らしかったんだ」

 

 ……たしかに、殿下はまじめそうだよなぁ。アレは前世からだったのか。

 

「転生前の事故だって、姉は運動神経皆無のくせにボクを庇おうとして、結果的に一緒に巻き込まれてしまったんだ。だから、ボクはこの世界で姉を護ってやらなきゃならないのさ。こちらの世界でボクを産み育ててくれた実家に無理をいって、わざわざ地球の裏側の公国まで留学させてもらったのもそのためだったんだ」

 

 ほぉ。たしかにあの殿下なら、身内のためなら平気で身を投げ出しかねないような気はする。

 

「……とはいえ、今はボクも殿下もそれぞれこの世界での立場がある。一生ちかくに居てやるのは難しい。だから、史上最強の魔導騎士との呼び声が高いウーィルが彼の守護者になってくれた時、ボクは本当にうれしかったんだ」

 

 そういうことか。……まぁ、殿下の身を護るだけなら、オレに任せておいて心配ないぞ。

 

「ははは、さすが美少女魔導騎士。そんな可愛らしい姿でも頼りになるね。ボクも安心だ」

 

 おお、安心してくれ。しかし、……しかし、だ。守護者をするのは問題ないが、……お妃は無理です。

 

「なぜ?」

 

 心底不思議そうな顔をしているレンさん。気のせいかも知れないが、白ネコも不思議そうな顔をしてオレを見ている。

 

 なぜって? ……レンさん、君はオレの事情を知ってるんだよね? 確かにオレの外見は美少女魔導騎士かもしれないが、中身はおっさんだぞ。君と同い年の娘もいるんだぞ? 君は、自分の大切な人が、こんな中身おっさんとおかしな噂を立てられて平気なのか?

 

「なにも問題ないよ。転生前から、姉の好みの男性は、頼りになる年上のひとだった。端的に言っておっさん趣味だった。そして、姉はいまや男の子だ。中身おっさんの美少女騎士とお似合いだと、ボクは思うけどな」

 

 えっ、えっ、ええええ? いや、そんな、しかし、……ちょっとまってくれ。

 

 オレは頭をふる。

 

 り、理屈はそうかもしれないが、しかし、しかし、しかし……。

 

「実際、身内であるボクの眼から見て、殿下はウーィルが好きだ。あれはベタ惚れと言ってもいい。ボクとしては、姉には好きな人といっしょになって幸せになってもらいたいのだが、……ウーィルはイヤかい?」

 

 えっ? い、いやってわけじゃ……

 

 

 

 

 

 

 

「おねーちゃん! なに難しい顔してレンとばっかりお話しているのよ!」

 

 頭を抱えたオレを正気にもどしたのは、酔っ払い娘だった。

 

 後ろからオレの首にぶら下がっていたメルが、いつのまにかオレの正面にいる。真っ赤な顔で頬を膨らましてオレを睨む。……息が酒臭い。

 

「それよりもねぇねぇねぇおねえちゃん、殿下との噂は本当なの? どうやって仲良くなったの?」

 

 興味津々という体でオレに迫るメル。いくらオレの方がちっちゃいからって、正面からオレの顔を両手の平で挟むのはやめなさい。

 

「い、いや、『仲良くなった』っていっても、単なる騎士と主君の関係だよ」

 

「きゃーーー、公王太子殿下と公国魔導騎士様の秘められた関係ですって! 禁じられた恋!! なんてロマンチックですこと」

 

 メルの同級生であるお嬢様、ソファの上で酔い潰れていたはずのネグリジェ娘達が、いつのまにか起きてきたぞ。

 

「騎士様、お気をつけあそばせまし。エルフであった亡き妃殿下はご成婚前に一部の旧貴族達から反対が激しかったとききます。何かとあら探しをされたり、嫌がらせをうけたとか……」

 

 あー、ご親切にありがとうございます。でも、そんな心配オレには必要ないですよ。

 

「きゃーーー、すてき。愛する人のためには多少の障害など力尽くで排除するということですのね。さすが魔導騎士様ですわ」

 

 え、いや、そう言う意味では……。

 

「何があっても私たちはお二人のお味方ですわ。邪魔するような輩は、私の実家の力をつかって全力で叩きつぶしてさしあげますことよ。一族郎党根絶やしですわよ」

 

 恐ろしいこと言わないでください。

 

「それよりも、お二人ともなにかと注目されるお立場ですのに、市民の目を逃れてどこでどうやって愛をはぐくんだのですか? 公王宮? まさか、このお家に殿下をお招きして? 殿下が学校をお休みになったときには、……ここで? ま、ま、ま、ままままさか、あのベットで?」

 

 ベットで愛をはぐくんでないから! それに殿下が学校サボるのは例の計画で忙しいからだから! ……血走った目をハート型にして、さらに鼻息があらくして、いったい何を想像しているのだ、このお嬢様は。

 

「おねぇちゃん! ふたりは恋人なんでしょ! 婚約したも同然なんでしょ! おしえて!! ど、ど、ど、どこまで、やっちゃったの?」

 

 メルよ。おまえ、年頃の娘なのにどうしてそうストレートなんだ? そんな物言いをどこで覚えてくるんだ? お父さんは悲しいぞ。

 

「ふふふ。ボクも知りたいな。あの奥手な殿下がどこまでやっちゃったのか、とても興味がある」

 

 レンさん! おまえもかぁ!!

 

「まぁまぁメルのお姉様、おちついて。パジャマパーティはまだ始まったばかり。私がもってきたお父様の秘蔵のワインはまだまだありますのよ。ご一緒にいかがですか?」

 

 え? お、オレは酒はちょっと……。

 

「公国魔導騎士様ともあろう方が、まさか私のワインを飲めないなんておっしゃられませんことよね」

 

「そうだね。酔っぱらえばウーィルも殿下とのあんな事やそんな事を教えてくれるかもしれないね」

 

 あんな事もそんな事もないから!

 

「えー、おねぇちゃん、いっしょに飲もうよぉ。飲んでくれないと、わたし週明け学校でルーカス殿下に会ったら『お義兄ちゃん』って呼んじゃうよぉ」

 

 うわーーーー。やめろぉ! 頼むからやめてくれ、メル!! 飲みます、飲みますからぁ!

 

 オレにとって地獄のパジャマパーティの夜は、まだまだ終わらないらしい。

 

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