最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)とパジャマパーティ その07

 

 

 ……た、たしかに。幼いメルちゃんとウーィルが同時に家にいた記憶がない。

 

 オレオ家に向かう車の中、レイラは必死に記憶をたぐり寄せる。しかし、どうしても思い出せない。

 

 でも、メルちゃんは昔からオレオ家にいたわ。それは間違いない。誕生祝いも贈ったもの。そして今だって。……も、もしかして、同時に存在しないのは『メルちゃんとウーィル』じゃなくて、『ウィルソンとウーィル』?

 

 頭の中がぐるぐるまわる。現実と辻褄があわない。

 

 そもそもウィルソンが亡くなったのはいつだった? 考えてもみなさい。もし彼が亡くなったとして、そのあと私は騎士を続けられる? 無理よ。絶対に無理。騎士団にいる意味がなくなるもの。ではなぜ私は今も騎士をやっている? ……本当に、彼は何年も前に亡くなったの?

 

 レイラの頭の中で、何かがつながったような気がした。もう少し、あとちょっとで答えにたどり着けそうな気がした。

 

 そうよ。ウーィルはいつ騎士になった? いいえ、いつ『現れた』? いつのまにかベテランのような顔をして魔導騎士小隊を支えている、あのおっさんくさい少女はいったい……。

 

 顔をあげる。横に座るジェイボスがこちらを凝視している。

 

「やっぱり隊長もそう思う、か……。安心したよ。俺だけの頭がおかしくなったわけじゃないってことだよな」

 

「あんたも、……なのね?」 

 

「ああ。……ということは、おっさんと血が繋がっているメルちゃんも、とうぜん気づいているかもなぁ」

 

 車がオレオ家の前に停車したのは、ちょうどその時だった。

 

 

 

 

 

 

「メル、もう告白はしたのかい? その人は君の事どうおもってるんだい?」

 

 誰もが聞きたくて聞けない微妙な問いを、レンさんがさらりとはなつ。その場に緊張が走る。皆の視線を集めたメルが、ちょっとうつむき加減のまま答える。

 

「えーと、……彼、他に好きな人がいるんだ。たぶんあの人にとって私は、二番目だと思う」

 

 なんだとぉぉぉ!!!!!

 

 ウーィルが剣を振り上げた。

 

 あのオオカミ野郎! メルをたぶらかすだけじゃなく泣かせやがって絶対に許さねぇぞ!!

 

 ウーィルの全身からどす黒いオーラが噴き出す。ショートカットの黒髪が逆立つ。怒髪天をつくとはこのことだ。

 

「メル。その人の一番になろうとは思わないのかい?」

 

 ひとり狂乱するウーィルにお構いなく、レンはマイペースだ。

 

「いいの。私は絶対に彼の一番になれないことはわかってるから。私の側にさえいてくれれば、それでいいんだ」

 

 ゆるさん、ゆるさんぞぉぉ!

 

 怒り狂うウーィルの目の前、オレオ家の玄関がノックされた。

 

 

 

 

 

 

 ドアをあけたジェイボスが見たものは、……桃源郷だった。

 

「きゃーーーーー、モフモフよ、モフモフのワンコがきたわぁ」

 

 半裸の少女達が、ジェイボスに群がったのだ。彼の両腕にぶら下がる。メルなどは首に両手をまわし抱きついている。

 

「こ、これは?」

 

 全身の毛皮をモフモフされる微妙な感覚。そこかしこにあたる柔らかい膨らみ。漂ういい臭い。自然と口元が緩む。

 

「えへへへ、ジェイボスさん!」

 

「こ、このお方がメルの思い人ですのね」

 

「たしかに、このモフモフはクセになるね」

 

 ジェイボスはわけがわからない。

 

「じぇいぼす! そこになおれ!!」

 

 ぎくりっ。

 

 声の先をみると、剣をかまえたウーィルがいた。今にも斬りかかってきそうな勢いだ。

 

「う、う、ウーィル、まて。よくわからんが、おちつけ!」

 

 頭に血がのぼっているウーィル。必死に諫めるジェイボス声などもちろん聞こえない。

 

「うるさい!! よくもおれのむすめをもてあそびやがって!!!」

 

 むすめ?

 

 怒りのあまりアルコールが脳みそで沸騰している。目がぐるぐると回っている。すっぱいものが喉まであがってきているがかまわない。ふらふらとおぼつなかい足元で、それでもジェイボスに迫る。

 

「まてって、……おまえ酔っぱらってるのか?」

 

 うるさいうるさいうるさい。きさまのようなはんにんまえのがきは、おれがじごくへおくってやるろ!!

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん、いい加減にしなさい!」

 

 は?

 

 部屋に響くドスの効いた声。発したのはメルだ。呆気にとられる一同。ウーィルの動きもとまる。

 

「世界で一番慕ってた人がいきなり少女姿になっちゃったジェイボスさんの気持ちも、少し考えてあげなさい!」

 

 へ?

 

 あまりの迫力に、ウーィルは反射的に正座。そして、ジェイボスにぶら下がったままのメルを見上げる。

 

「で、でも、このわかぞうが……」

 

「口答えしない! ついでだからもうひとつ言っとくわ。魔法なのか呪いなのかお父さんの身に一体何があったのか知らないけど、私がお父さんの娘なのはかわらないからね。だから、……私は大丈夫。心配いらないの。だから、お父さんは自分の使命を果たしてね、……わかった? おねぇちゃん、返事は??」

 

 は、はい。

 

「はいはいはい、そろそろお開きよ。後片付けは私がやっておいてあげるから、みんなとりあえず寝なさい」

 

 オレオ家姉妹の会話を遮り、手を叩きながらレイラがパーティの閉会を宣言した。

 

「あれ? おばさま? なぜここへ? パジャマパーティーは、まだこれから……」

 

 意識を取り戻したレイラの姪っ子である金髪縦ロール娘が抗議するが、現役魔導騎士小隊長は反論を受け付けない。

 

「この下品な宴会のどこがパジャマパーティーよ! この酔っ払い小娘どもが!! だまって言うことをききなさい!!」

 

 モンスターですらビビる一喝。小娘達が逆らえるはずもない。すごすごとメルの寝室に向かう。四人で同じベットを使うのだという。

 

「れ、レイラ。あたまがわれそうら。もっとちいさなさなこえで……」

 

 ひとりのこりレイラに哀願する酔っ払いは、もちろんウーィルだ。

 

「あんたはぁ! 騎士のくせに小娘達と一緒になってなにやってるのよ! このバカ娘がぁ!!」

 

 ぐわあああああああ。あたまがわれるぅぅぅぅぅ!

 

 その場にぶっ倒れるウーィル。

 

「ちょっとジェイボス。このバカ娘、寝室につれていってあげて」

 

 へいへい。

 

 オオカミ男の逞しい腕が、華奢な少女騎士の体躯を抱き上げる。

 

 うううきもちわるい……。あたまがいたい……。おれはもんだめら、しにそうだぁ……。

 

 小さな口を半開き。よだれを垂らし表情を歪めながら、それでも天使のように愛らしい少女。

 

「ホント、しょうがねぇなぁ。……なぁ、おっさん」

 

「……なんら、こぞう」

 

「俺って、まだ一人前になれないのかな?」

 

「そんなことをおれにきくようだから、おまえはガキなんらよ。いちにんまえかどうかきめるのは、おれじゃない。だれでもない。おまえじしん、ら……」

 

「……そうか。そうだな。わかったよ」

 

 ジェイボスの腕の中、いつのまにかウーィルは寝息をたてていた。

 

 

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