最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)と騎士団幹部の苦悩

 

 女性騎士達がシャワー室で全裸でキャッキャうふふと戯れているちょうど同じ頃、同じ駐屯地にある騎士団長室ではその主が苦悩していた。

 

 公国騎士団のもっとも重要な任務は、公都の治安と公王家を守護することである。時代の移り変わりに伴い正規軍としての役割は公国陸海軍に、一般の犯罪対応は公都警察にその任を譲った。とはいえ、公王家の守護についてはいまだに騎士団の役割だ。永遠に騎士団の任務であるべきだ。公国市民も公王陛下もそう考えている、……はずだ。

 

 だからこそ、公王宮守備隊には騎士団の中でも精鋭が集められ、要人警護のため日頃から厳しい訓練を積んでいる。

 

 ……にもかかわらず、事件は起きてしまった。よりにもよって、ルーカス公王太子殿下が襲撃されたのだ。

 

 相手は数百年生きてきた本物のヴァンパイア。殿下の警護ついていた騎士はまったく相手にならなかった。たまたま魔導騎士がその場を通りかかり対処できたのは、運が良かったにすぎない。

 

 もともと護衛の騎士が想定していたのは、不慮の事故やテロリストの手から殿下をお守りすることだった。さらに常日頃から陛下や殿下が大げさな護衛を嫌っていたこともある。

 

 しかし、そんなことは理由にならない。ドラゴン襲来のような天災とはわけが違う。明確に殿下を標的とした襲撃が行われ、あわや成功しかけたのだ。これはあきらかに騎士団の失態だ。

 

 そして、犯人の正体はいまだに不明。このままでは襲撃は再び行われるだろう、確実に。騎士団として、そんなことを許すわけにはいかないのだが。

 

「……場所が悪すぎる」

 

 殿下をお守りするだけならば、なんとかなるだろう。相手がヴァンパイアとわかっているのなら、化け物退治を専門とする魔導騎士を使えばよい。そのヴァンパイアが強大だというのなら、大人数でお守りするのだ。なんなら魔導騎士第一第二小隊すべてを動員してもよい。行儀良く躾けられている公王宮守護隊と異なり無作法な魔導騎士小隊の連中を殿下は嫌がるかもしれないが、そこは非常事態ということで納得して頂く。しかし……。

 

「名門ハイスクールですものねぇ」

 

 ため息とともにつぶやきが吐かれる。団長とはことなる声。オフィスには、団長以外の騎士団幹部も呼ばれていた。そのひとり、魔導騎士第一小隊小隊長、レイラ・ルイスだ。

 

 件のヴァンパイアは、ルーカス殿下と同じハイスクールの学生に紛れている。公国最古の伝統を誇る全寮制の名門校だ。代々の公王家だけではない。名家の子女や、全国から選抜された優秀な子供達が集まるエリート養成校として知られており、海外からの留学生も少なくない。政財界の要職は卒業生によって占められ、彼らはみな母校に誇りをもっている。ゆえに、伝統と格式が重んじられ、その教育方針には公国政府ですら簡単には手を出せない。

 

 いまのところ、殿下が襲撃された件について、世間には明らかにされてはいない。同級生の中にヴァンパイアが紛れているなどと生徒達に知らせるわけにはいかない。

 

 しかし、殿下の警護にしろヴァンパイアの捜査にしろ、派遣した騎士により生徒達にけどられぬよう行うのは限界がある。さらに、学校側から騎士団に対して猛烈な圧力もかけられている。さっさと事件を解決し、騎士は校内から出て行けと。

 

「いっそのこと、正式に講師として魔導騎士を校内に常駐させるのはどうでしょう? もともとカリキュラムには護身術や魔導の実習もあったはずですし」

 

 みずからも同校の卒業生であるルイスが、思いつきを口に出す。

 

「ふむ。……それでいこう。その程度ならば、学校側も受け入れるだろう。誰が適任だ?」

 

 名門校のお坊ちゃんお嬢ちゃん相手に講師役を果たせるというと、ブルーノか。彼もあそこの卒業生だし、彼の魔力なら単独でヴァンパイアと渡り合えるだろう。あるいはナティップ。護身術の講師として生徒達に人気が出そうだ。少々品がないのが気になるが。

 

 ……しかし、相手はひとりとは限らない。操り人形があと何人いるのかわからない。そもそも放課後に寄宿舎で殿下が狙われては、講師ではどうにもならない。

 

 やはり講師では限界がある。でも、生徒の中に入り込めるような騎士なんて……。

 

 はっ! 

 

 瞬間、レイラ隊長の頭の中にひとりの少女の顔がうかんだ。おもわず顔をあげると、ちょうど同じタイミングで顔をあげた団長と目があった。

 

「……いるじゃないか、適任が」

 

「し、しかし、彼女だって魔導騎士ですよ! 講師ならともかく、いくらなんでもハイスクールの生徒にまじるなんて無理がありすぎ……」

 

「彼女ならば、外見だけならハイスクールの生徒として十分通用すると思えるが」

 

「た、た、たしかに今のウーィルは外見だけではなく肉体的には高校生でもおかしくない年齢ですが、……って、問題はそこじゃなくて! 彼女はすでにお妃候補として国内外で有名人です。生徒達にだって顔も知られています」

 

「髪の色を変えるとかメガネをかければわからんだろ」

 

「あなたアホですか! そんなわけないでしょ! それに、そんな小細工でたとえ生徒達を騙せたとしても、ウーィルと直接対峙したヴァンパイアを騙せるとは思えません」

 

「かまわん。ヴァンパイア退治も重要だが、今回の件に限ればもっとも重視すべきは殿下の安全だ。ヴァンパイアがウーィルの存在を認識し警戒して殿下に手を出すのをあきらめるのなら、それはそれで良いのではないか?」

 

「それは、……たしかにそうでしょう。で、で、でも、魔導騎士が学生として潜り込むなんて、学園側が認めるとは思えません。なにより、殿下とウーィルの仲をご存じの陛下がそんなことをお許しになるとは……」

 

「やってみなければわからん。宮内省へは私から直々に話をつけてみよう。君も一緒に来てくれ」

 

 殿下の安全と騎士団の名誉を護るため、騎士団長が藁をも掴む思いであることは理解できる。しかし、まさか陛下がこんなアホな案をオッケーするはずがない。レイラはそう考えた。

 

 だが、彼女はその日のうちに頭を抱えることになる。

 

 レイラの予想に反し、はなしはびっくりするほどトントン拍子で進んでしまったのだ。政府の関係省庁も学園も、結局はルーカス殿下の身の安全のためならばと首を縦に振った。

 

 最終的には、「学園には私から直接話を通しておこう。おっと、ルーカス本人には秘密にしておいてくれよ。学校でウーィルと直接出会った息子がどんな顔をするか楽しみだな。わっはっは」という陛下直々のお言葉で決着がついてしまったのだ。

 

 

 

 

 私がウーィルに命じるの? 「あなたは明日からハイスクールの生徒になるのよ。メルと同級生になりなさい」って? 私が?

 

 レイラ隊長の悩みは尽きない。

 

 

 

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