最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)と転生者 その03

 

 月食とは、一年に数回の頻度でおこる、月面が地球の影により覆われる現象である。その時、地球から月を見上げる人々は、明るく輝く満月が端から徐々に暗くなっていく様を見ることになる。

 

 ……満月の夜ってのは基本的にヴァンパイア共が騒がしいと決まっているのだが、月食の時だけは逆に奴らシオシオになるのがおもしろいんだよな。殿下に聞いた話だと、殿下やレンさんの前世の世界では人類は既に月に進出済みだというが、もしこの世界のヴァンパイアが月面に来たら、奴らいったいどうなるんだろうなぁ?

 

 呑気にそんな事を考えながら、宇宙を見上げるウーィル。彼ら守護者と転生者達はいま、月面の中でも地球からみてほぼ正面の地点にいるらしい。すなわち、地球は常にウーィルのほぼ真上にある。

 

 そして、ついさきほどまで真空を通して目に突き刺さるほどの閃光を発し続けた太陽が、ゆっくりと赤黒く暗くなる。こちらから見て、太陽が地球の向こう側に隠されつつあるのだ。

 

 

 

 

 来た!

 

 太陽のほとんどが地球に隠され、はみ出した光により地球周辺の大気だけが明るく輝いている。まるでリングみたいだなとウーィルが思ったちょうどその時、殿下がつぶやいた。オレに抱き上げられたまま。宇宙を見上げたまま。

 

 ルーカスが見つめる方向、いつのまにか虚空に別の光が浮いている。

 

 オレも殿下と同じ方向を見上げる。そうするべきだと、……そうせねばならないと、なぜかオレは知っていた。自分でも理由がわからないまま、宇宙からゆっくりと降りてきた光の玉を見つめる。

 

 それは、もちろん太陽や星ではない。もっともっと近いものだ。しかし、光が強烈すぎて大きさはわからない。真空のため遠近感が狂っているせいもあるのだろう。

 

 

 

 

『異なる世界の知識をもつ転生者に問う』

 

 声が聞こえた。絶対無音の真空の中、頭の中に直接響いた。まったく根拠はないが、声を発しているのは光の玉だとウーィルは確信している。男の声にも聞こえるが、感情がまったく感じられない平坦な口調だ。

 

 

 

 

『赤の転生者よ。この世界は存続に値するか?』

 

「もちろんよ」

 

 赤の転生者と問われて返答したのはジャディおばあさんだ。光の玉を見つめたまま、柔和だが毅然とした声。その様子を、ガキが誇らしげな顔で見上げている。

 

 

 

 

『青の転生者よ。この世界は存続に値するか?』

 

「否! こんな世界などさっさと滅びるべきだ!」

 

 青と問われて間髪いれずに即答したのは、青髪のスカした野郎。同時に巨大ドラゴンが咆える。凄まじい咆哮が頭の中に響く。うるせぇよ、青トカゲ野郎。

 

 こいつらは、この世界にいったいどんな恨みがあるんだろうね?

 

 ……あと、どうでもいいけど、声の主は転生者達を名前ではなく色で識別しているようだ。誰だか知らんが失礼な奴だな、おい。

 

 

 

 

 

『茶の転生者よ。この世界は存続に値するか?』

 

 ……沈黙。答える者がここにはいない。レンさんの解説によれば、茶色の転生者はまだ15歳になっていないということなのだろう。

 

 

 

 

『緑の転生者よ。この世界は存続に値するか?』

 

 やはり沈黙。

 

 

 

 

『白の転生者よ。この世界は存続に値するか?』

 

「……ボクはこの世界、それほど嫌いじゃないよ」「にゃー」

 

 白はレンさん。いつも通りのちょっと捻くれた言い回し。どんな時でもぶれないな、このボクっ娘は。

 

 

 

 

 

『黒の転生者よ。この世界は存続に値するか?』

 

 六人目は黒。ルーカス殿下だ。

 

「存続する価値がある。絶対にある!」

 

 凛とした声。おおお、凜々しいじゃないか、殿下。君のそんな男の子らしい表情が見られておじさんは嬉しいぞ。……あいかわらず自分よりちっちゃい女の子であるオレにお姫様抱っこされたまま、そしてオレの首に抱きついたままなのは減点だが。

 

 とにかく、賛成する者がひとりでもいれば世界は存続するらしいから、今回はめでたしめでたしということだろう。ホント、殿下とレンさんが十五才になる前にあのおばあさんがやられなくてよかったぜ。

 

 

 

 

 

『金の転生者よ。この世界は存続に値するか?』

 

 最後の七人目。これも欠番……。

 

「……な、なによ、これ。やっと15歳になって、この世界を終わらせられるかと思ってたのに! どうしてこうなるよの!」

 

 へ? 七人目? 金? いつのまにここにいた?

 

 声を感じた方向に視線を向ける。オレだけではない。ここに居る転生者と守護者、全員が同時に同じ方向を見る。たったいまこの瞬間まで、誰も七人目の存在に気付かなかったのだ。

 

 そこにいたのは、金色の髪の少女。……ちがう。全身が金色に輝く美しい体毛に覆われた獣人、オオカミ族の少女だ。

 

「こんな世界、どうして存続させたいのよ! 私にはぜんぜん理解できないわ!!」

 

 

 

 

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