最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)と新型爆弾 その01

 

 それは、つい昨日のこと。学園での休憩時間。

 

「ウーィル。おねがいがあります」

 

 教室移動の際、廊下にてたまたま隣り合った体で、殿下がウーィルに話しかけてきた。

 

「なんです? 改まって」

 

 いつになく思い詰めたような殿下の表情が気になる。いつにも増して顔色が良くない。

 

「……もしウーィルが良いと言ってくれるのなら、いっしょに行って欲しいところがあるのです」

 

「ん? 月末の殿下の誕生日パーティのことですか? もともと護衛の任務は予定されていますよ?」

 

「誕生日パーティはもちろん参加して頂きたいのですが、今いっしょに行って欲しいと言ったのはそれではなく、新兵器の実験です。……って、え? 護衛? いま『誕生日パーティの護衛』といいましたか?」

 

 うつむき気味だった殿下の顔があがる。

 

「ええ。内外の要人が招待される公王宮でのパーティですから、騎士団あげての厳重な警備体制が組まれるはずですよ。もちろんオレも護衛として参加します。……そうそう、うちのメルまで招待していただいたそうで、ありがとうございます」

 

 殿下の誕生日パーティは、一応公王宮での公式行事であるが、殿下の私的なご学友も多数招待されている。いまだ正体が謎であるヴァンパイアが紛れ込んでいる可能性もゼロではないということで、いつにもまして厳重な警備体制が予定されているのだ。

 

「あ、あれ? 護衛? ウーィルが? なぜ? あれ? あれ?」

 

 しかし、殿下はなぜかあたまを抱えている。

 

「お、おかしいな。パーティでは、ウーィルは護衛じゃなくて招待状のリストに入れていた、……はずだけど。あれ? あれれ?」

 

 で、殿下? どうしました?

 

 ……最近いそがしすぎて、招待状のリストの確認ができていなかった? 私の頭の中ではウーィルを招待するなんて最初から決定事項だと思い込んでいたから?

 

 殿下が口の中でなにやらブツブツいながら唸っている。

 

「あーー、どうしました? 殿下?」

 

「い、いえ、もしかしたら手違いがあったかも知れませんが、……私としては、誕生日パーティにはウーィルにも参加して欲しいのです」

 

「あ、ああ。だから護衛として参加すると……」

 

「そうじゃなくて!」

 

 突然の大声。驚いた。殿下が声を荒げるなんて珍しい。周囲の生徒達も、何事かとこちらを見つめている。

 

「え、えーーと、ウーィルには護衛じゃなくて、……招待客として参加して欲しい、ので、す」

 

 最後の方、なぜか小声になり、顔を伏せる殿下。

 

「はぁ? それって……?」

 

「……イヤ、ですか?」

 

 おそるおそる、上目遣いで見上げる殿下。

 

「あ、い、いえ、イヤというわけじゃないのですが、……それって、一応確認させていただきたいのですが、それは同級生である『ウイリアム・俺王』として、ではないですよねぇ?」

 

「も、も、も、もちろんちがいます。実在する女性である魔導騎士ウーィル・オレオとして、です。……つつつつついでに、エスコート役は、私に、やらせてほしいほしいなぁ、なんて」

 

 ハーフエルフの美少年が、顔を真っ赤にしている。視線が泳ぎまくっている。

 

 はぁ。誕生日パーティの主人公でありホスト役の殿下が、自分の騎士を招待してエスコートって、……いいのかなぁ?

 

「もうひとつ確認させていただきたいのですが、騎士の制服じゃ……だめ、ですよねぇ」

 

「え? えええ? そこが問題? えーと、えーと、だ、だめではないのですが、できれば、……可愛らしいドレスなんて着てきていただけると、うれしい、……です」

 

「やっぱり、そうなるのか。……わかった。努力してみます」

 

 ふう。殿下の全身から力がぬけたのがわかる。安堵。そして、喜色満面の笑顔。

 

 この程度のことでそんなに悦ばなくてもいいのに。オレはあなたの騎士だから、あなたの願いは可能な限りかなえてやるよ。

 

 ていうか、最近の殿下の顔見ていると、とにかく護ってやりたくなっちゃうんだよな。オレこの人のためならなんでもしてやろう、てな感じで。……これ、まさか、守護者になったオレの脳みそに刻み込まれた強制的な本能みたいなものじゃなかろうな。そうだとしても今さらどうにもならんのだが。

 

 まぁいいや。それよりも、……目の前の問題だ。可愛らしいドレスだと? そんなものないぞ? どうする? どうやって買えば、いや作るのか? とにかく、いったいどうすればいいんだ? レイラにたよるか?

 

 そういえば、メルは? あいつ公王宮のパーティに着ていくような服なんてもってるのか? オレはともかく、娘に恥をかかせるわけにはいかん。絶対にだめだ。あああああ、どうする? どうすればいい? やっぱりレイラか。あいつに頼むしかないのか?

 

 

 

 

 

「あ! そ、そうだ。いいい今はこんな話をしている場合ではありません。……ウーィル、最初の話にもどりますが、私が同行をお願いしたかったのはパーティの件ではないのです!」

 

 腕を組んで考え込んでいたオレの両肩を、殿下の細い両腕ががっしりとつかんだ。殿下の方から直接接触してくるなんてめずらしいな。

 

 そういえばそうでしたね。……で、なんの話でしたっけ?

 

「そう、急な話で申し訳ないのですが、もし、……もしウーィルが同行していただけるのなら、あす私は学校をお休みして海軍の視察に行こうと思います」

 

「あす? 海軍が同盟国と合同で極秘の大規模演習をやるとかいう話だけはきいています。それを視察に行く大臣の護衛で魔導騎士の一部もかり出されているようですが、……殿下の予定にはなかったはずですよね?」

 

 もし殿下に予定があるのならば、殿下の護衛役であるウーィルに伝達されていないはずがない。

 

「ええ、もともと私が参加する予定はありませんでした。でも、昨晩からずっとずっと考えて、やっぱり私は出席するべきだと、この眼に焼き付けるべきだと思ったのです。結果を見届け、あんなものを開発してしまった責任を自覚するために。……ウーィルが一緒にきていただけるのなら、ですが」

 

 責任だと? いったいなんの? ……それにしても、えらい急な話だな。まぁ、警護任務ということならば、悩む必要もない。騎士の制服でいいのだろうし。

 

「で、どこに、演習の何を視察にいくんです?」

 

「さきほどウーィルが言ったとおり、あす公都から五百キロほどはなれた無人の珊瑚礁海域において、公国、連合王国、皇国の同盟国海軍合同の大規模演習が実施されます」

 

「公王太子殿下が、単なる演習の視察のためだけにわざわざ南の海まででかける、……わけないですよね」

 

「そのとおりです。演習というのは名目で、実際に行われるのは新兵器、……新型爆弾の起爆実験です」

 

 新型爆弾? 例の秘密基地の島で作っていたという、世界の歴史を変えてしまうという、アレか?

 

「そうです。飛行機で日帰りの強行軍になりますが、……ウーィル、いっしょに来てくれますか?」

 

「……わかりました。オレはあなたの騎士です。あなたの行くところにはどこでもついていきますよ」

 

 そ、そうですか。……では、おねがいします。

 

 ふたたび安堵の表情の殿下。しかし、さっきとは微妙に違う。なんというか、笑顔がちょっとだけ引きつっている。

 

 もしかして、内心ではオレに反対して欲しかったのか? 新兵器の起爆実験とやらを見たくはなかったのか?

 

 

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