最強おっさん騎士、目覚めたら美少女騎士になっていました   作:koshikoshikoshi

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美少女騎士(中身はおっさん)と新型爆弾 その02

 

 そんなわけで今日。

 

 オレは今、南海の珊瑚礁にいる。公国と新大陸の間、国際法上では連合王国領の無人島の近海だ。

 

「うぇぇぇ。まだ足元が揺れている気がする」

 

「ウーィルは、本当に飛行機が苦手なんだね」

 

 公都から海軍のでっかい飛行艇で数時間。窓の外、眼下に広がるのはひたすら青い海ばかり。それほど揺れはしなかったが、やっぱり気持ちのいいものではない。

 

 波ひとつ無い南の海。着水した飛行艇から小型のボートに乗り移り、待ち構えていたのはとにかくでっかい船だった。

 

「空路はるばる我が艦にようこそ、殿下。おつかれではありませんか?」

 

「いいえ。こちらこそ、急な視察をうけいれていただきありがとうございます」

 

 殿下とともに乗艦する時にこやかに出迎えてくれたのは、白いお髭のナイスミドルな海軍のおっさんだった。おそらく艦長なのだろう。

 

 吹きさらしのデッキの上、ウーィルは周囲を見渡す。

 

 艦隊、というには艦影がまばらだが、それでも大小様々な艦が水平線まで点在していることはわかる。軍艦だけではない。輸送船や、ニョキニョキと大量のアンテナを生やした船もいる。さらに公国海軍だけではなく、同盟国である連合王国や皇国の艦も浮いている。上空には何機もの飛行機が飛んでいる。

 

 そのど真ん中、ウーィルや殿下がいるのはひたすらただっ広い甲板だ。甲板の端っこ、ここからはるか向こうの先端部には、すでに同盟国の要人らしき人々が集まっている。そちらへ向かって歩くデッキの上、両側には何機もの飛行機が並んでいる。

 

 ……この船、航空母艦ってやつだよな。公都の港で遠目から眺めたことはあるが、もちろん乗り込んだのは初めてだ。たしか公国海軍にも数隻しかない虎の子のはずだが。

 

 歩を進めながらもの珍しげにキョロキョロしていたウーィルに、艦長の後ろについている若い海軍士官が声をかけてきた。

 

「魔導騎士のお嬢さん。公国海軍が誇る最新鋭空母にようこそ。女性がこの艦にのりこんだのは、あなたが初めてですよ。……珍しいものでもありましたか?」

 

 ふだん大地を這いつくばっているオレ達騎士にとって、航空母艦なんて見る物すべてが珍しいのは当たり前だ。……わかっててきいてるだろ、海軍野郎。まぁ、自分の船を自慢したい気持ちはわかる。すこしサービスしてやるか。

 

「乗艦を許可していただき、光栄です。……この船、滑走路が二本あって、一本は斜めなんですね」

 

 興味津々といった体で尋ねてやった。ウーィルが知識として知っている航空母艦は、公国のものにかぎらず、どれも正面をむいた滑走路が一本しかなかったはずだ。

 

「そのとおり、よくお気づきですね! この斜めの滑走路により、艦載機の着艦時の事故が大幅に減りました。また、着艦と発艦を同時におこなうことが可能なんですよ」

 

 やはり食いついてきたか。若い士官が自慢げに語り始めたぞ。

 

「さらに、艦載機を格納庫から移動させるエレベーターも、従来の空母のように滑走路の真ん中ではなく、舷側にあります。このためこの艦ではデッキを非常に効率よく使うことができるんです!」

 

 へぇ。エレベーターのことは言われるまで気付かんかった。

 

「そう、この艦こそ、同盟国もうらやむ世界最先端の技術を集めた航空母艦! そして、これらのアイディアを提案し、設計に盛り込むよう尽力したのは、誰あろうルーカス殿下なのです!!」

 

 誇らしげな顔の士官が見つめているのはルーカス殿下。公国軍の次の最高司令官になる事が決まっている少年だ。

 

 ほほぉ。よくわからんが凄ぇな殿下。さすが異世界からの転生者。

 

 オレも、隣をあるくハーフエルフの少年の横顔を見つめる。自分が誉められたようで、オレも悪い気はしない。

 

「わ、わたしは、軍事的なことは素人で、た、単に、基本的なアイディアを出しただけですから……」

 

 とはいえ、本人は恥ずかしそうにしているから、あまり褒めすぎるのはそろそろ勘弁してやってくれ。

 

 しかし、海軍による殿下への褒め殺しはこの程度では終わらない。ナイスミドルな艦長までが、はなしに割り込んできたのだ。

 

「私としては、当艦には『プリンス・ルーカス』と名付けることを提案したのですがね。公国海軍においては即位前の命名は前例がないとかで、国防省で廃案にされてしまいましたが」

 

 ……ウインクしながらこんなことを言い出するナイスミドルに対して、『もう勘弁して!』と言いたげな殿下の表情がおもしろい。

 

 この調子だと、殿下が即位した後に進水した軍艦に、本気で殿下の名前が付けられそうだな。オレ個人的には、殿下の名前を冠した軍艦って、平時ならともかく戦争が始まってまんがいち沈められたら縁起でも無いから、どうかと思うけどね。

 

 

 

 

 

 

 デッキに照りつける南洋の日差し。スーツ姿の殿下、騎士の制服のウーィルにとって、正直暑い。

 

 あーー、せっかく綺麗な南国の海の上にいるのに、仕事なのが残念だ。せっかくだから、水着で日光浴でもしたいよなぁ。

 

 口の中だけでつぶやいたつもりだったのだが、殿下には聞こえてしまったらしい。

 

「み、水着!? 見たい。ウーィルの水着姿。夏休みにはバカンスにでも誘って、……あっ! でも、この世界にはまだビキニなんてないんだよな。……公王家御用達の服飾店にお願いして作って貰おうか」

 

 こんどは殿下が意味不明なことをブツブツとつぶやいている。顔を真っ赤にしながら、……これはオレの直感だが、きっとロクでも無いことを想像しているんだろうなぁ。

 

 艦長に先導され、ウーィルと殿下はデッキの先端付近にたどりついた。簡易型のテントの下、椅子やテーブルが並べられ、人だかりができている。

 

 殿下の姿を見つけた大勢の人間が立ち上がり、一礼。軍服だけではない。袖まくりシャツにネクタイだけのおっさんや、白衣の人間もいる。

 

「殿下、おつかれですか? わざわざ飛行艇までつかって、ご自身がここにいらっしゃるまでもなかったのに」

 

 まず声をかけてきたのは毎度おなじみ我が公国の国防大臣。その隣には、護衛役の魔導騎士ブルーノがいる。大臣、このプロジェクトからみの秘密基地でヴァンパイアに狙われたからな。

 

 ……どうでもいいけど、『最新鋭の航空母艦』とやらの上、剣と魔法を使いこなす魔導騎士がふたりも並んでいるというのは、自分でいうのもなんだがちょっとアンマッチな光景だよなぁ。

 

「大臣もご苦労様です。……あれの開発プロジェクトを同盟国に提案したのは私です。最後まで見届ける責任がありますから」

 

「ルーカス殿下、お会いできて光栄です。あなたの提案から始まったこのプロジェクト、ついにここまで来ましたな」

 

 次は恰幅のいいじいさんと握手。このおっさん、新聞の写真でみたことがあるな。連合王国の大臣だったか首相だったか。

 

「ど、同盟国のみなさんのご協力のおかげです」

 

「そうそう。我が国の女王陛下が、是非殿下を別荘にお招きしたいと。ハイスクールの夏休みにでも、避暑にいかがですか? 婚約者である騎士殿とご一緒に婚前旅行と言うことで」

 

 えええ? こここ婚前旅行?

 

 おいおい殿下。いまのは外交的な辞令ってやつだろ? なに真に受けて真っ赤になってるんだよ。

 

「いやいや、殿下。夏休みは皇国にどうぞ。皇子陛下も巫女も是非殿下にお会いしたいと……」

 

 これは東洋人。皇国の軍服をきているおっさんだ。……皇国の巫女って、レンさんの実家のことか?

 

「は、はぁ。もちかえり、宮内省に検討していただきますので……」

 

 国際的な人気者だな、殿下。

 

 

 

 

 

 オレには詳細はよくわからないが、今日、ここで、例の秘密プロジェクトの実験が行われるらしい。

 

 なぁ、ブルーノ。実験の舞台は、ここから数十キロほど先に浮いている王国領の珊瑚礁。……だそうだが、そんな遠くの様子がここから見えるのかね?

 

「さあ?」

 

 肩をすくめるブルーノ。

 

「公国最強の魔法使いとも言われるおまえなら感じるか? 実験場とやらに、魔力を」

 

「いえ、感じませんね。そもそも、実験の詳細について、私はなにも知らされていませんので」

 

 ……そうだよなぁ。オレも含め現場の魔導騎士ごときが、極秘の国家プロジェクトの詳細なんざ知ってるはずないよなぁ。

 

「見えます」

 

 ブルーノに代わって答えてくれたのは、このプロジェクトの提案者だという殿下だ。

 

「……計算通りの出力なら、ここからでも強烈な閃光と、そして巨大なキノコ雲が見えるはずです。衝撃波も感じられるでしょう」

 

 こんな遠くから?

 

 ウーィルにはいまいち想像できない。それは、大型ドラゴンのブレスのようなものだろうか? あれはドラゴンの強大な魔力があってこそのものだが。それとも、火山の噴火のようなものだろうか? 純粋な科学技術だけで、そんなことを引き起こすことが可能なのだろうか?

 

 デッキの上、スピーカーからカウントダウンがはじまった。

 

 殿下がオレの手を握る。わずかに震えるその手を、オレは握り返してやる。……いったい何がはじまるというんだ?

 

 

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