割と平和な遊戯王   作:乾燥海藻類

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第13話 童実野町へようこそ

世界的大企業となったインダストリアルイリュージョン社であるが、その実態は社歴の浅い新興企業である。とはいえ、基盤にペガサスの父がいることもあって、明確に敵対する企業は少ない。

だが世界的ヒットとなったデュエルモンスターズを独占することに難色を示す企業があることも確かだ。

そこで天下三分の計が実行されることとなった。

 

(いや三国志かよ)

 

と内心でツッコミをいれるレンだったが、確かに独占というのは歪みが生まれる一因となる得ることも理解できた。

そこで名が挙げられたのが「シュレイダー社」である。

代表はジークフリード・フォン・シュレイダー。意外にもI2社との付き合いはそれなりに長かったりする。

 

いち早くデュエルモンスターズの可能性に気づいた先見性のある男だった。そしてシュレイダー社は海馬コーポレーションと類似点の多い企業でもあった。

元々は海馬コーポレーションと同じく兵器産業を主力としていた企業であったが、社長(父親)から実権を渡されるとともに、ジークフリードはそれまでの経営方針を撤回してデュエルモンスターズ(アミューズメント)へと舵を切った。

 

ここでジークフリードはI2社に「バーチャルシステム」の売り込みをかけてきたのだ。そのバーチャルシステムというものは、なんというかソリッドビジョンの下位互換のようなシステムだったのだ。

そこで当時I2社の社長であったペガサスはバッサリとシュレイダー社を斬り捨てた。斬り捨てようとした。そこに待ったをかけたのがレンだった。

 

ジークフリードを管理下に置いておこうと思ったのだ。レンは「キャラクター」としてのジークフリードしか知らないが、前世の経験でこういったタイプに恨みを買うと凄まじく面倒臭くなることを知っていた。

たとえこちらに正当性があったとしても、自分が悪いとか自分が未熟だったとは一切思わない。そういう規格外の人間がいるのだ。

 

とりあえずバーチャルシステムの件は脇に置いて、デュエルモンスターズを欧州展開する場合の基盤としてシュレイダー社と提携したのだ。

そこでレンはジークフリードを宥めすかし、時に持ち上げ、(てい)よく利用した。無論ジークフリードは利用されたとは思っておらず、自分の才能が正当に評価されたと思っているので、Win-Winの関係であった。

少々性格に難のある男だったが、経営手腕は本物だったのだ。

 

そうして順調にデュエルモンスターズは世界中に広がっていき、冒頭の天下三分の運びとなる。

いがみ合う海馬とジークフリードの間を取り持つレンは、社長というよりも中間管理職のようであった。

 

言ってみればI2社が「主」で、海馬コーポレーションとシュレイダー社は「従」なのだが、これが海馬(天才)ジークフリード(秀才)レン(凡才)の差なのかもしれない。その凡才は――

 

(これで俺の知らないカードとかも出てくるのかな~。時の女神の悪戯(ターンスキップ)怖いな~。黄泉天輪は勘弁して)

 

などと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、ジイさん。この店で一番のレアカードってなんだ?」

「なんじゃ城之内。(ウチ)のお宝を狙っとるのか?」

「ちっげぇよ! 単純に気になっただけだよ!」

 

城之内が憤慨したように声を荒げる。もちろん双六も本気で言ったわけではない。

 

「そうじゃな。ではちょっとだけ見せてやろう。ちょっとだけな」

 

そう言って双六は棚の奥から小さな木箱を取り出した。

 

「これじゃ」

「ふ~ん。なんか、弱っちいカードだな。これなら俺の持っている《アックス・レイダー》の方が強ぇぜ」

 

箱の中に納まっていたカードは、輝きこそ豪華だが、何の効果も持たないレベル5の通常モンスターだった。ステータスも攻撃力1550、守備力1300と、上級モンスターとは思えないほど低い。

 

「こんなのが前に見た《青眼の白龍》より高ぇのか?」

「金銭的価値という意味ではそうじゃな。もっとも、アレは手放すつもりはないが、これはちゃんとした売り物じゃ」

「その割には飾ったりしてねぇのな」

 

やっぱ売る気ねぇんじゃねぇの、と城之内は思った。

 

「ほっほっ、このカードはの、まだデュエルモンスターズがここまで人気になる前に、あるデュエル雑誌の懸賞で手に入れることのできたカードなんじゃ。確かにこのカードは、決して扱いやすいカードとは言えん。初心者にはお勧めできんカードじゃ。しかしの、熱狂的なファンがおるカードでもある。このカードを中心にデッキを組むデュエリストもおるぞ」

「ふ~ん。でもよぉ、俺このカード見たことある気がすんだよなぁ」

 

得意げに知識を披露する双六を斜めに見ながら、城之内はそのカードに引っかかりを覚えた。

 

「そりゃノーマルカードの方じゃろう。これは懸賞で配られた特別仕様(シークレットレア)じゃからの。ノーマルならウチの店でも1コインで買えるぞい。買っていくか?」

「いや、いらねぇ。悪魔族は俺のデッキじゃ活躍できねぇし、レベル5じゃ《予想GUY》で呼べねぇし」

「……まあそうじゃな。おぬしのデッキには合わんカードじゃ」

 

特に落ち込んだ様子もなく、双六はウンウンと頷いた。

 

「しかしの、城之内。強さだけに囚われとる内はまだまだじゃぞ」

「分かってるよジイさん。デュエルモンスターズはモンスター、魔法、罠のコンビネーションが大事だってんだろ。じゃ、遊戯も便所から戻ってきたことだし、デッキの相談してくらぁ」

 

そう言って城之内は、遊戯とともにデュエルテーブルへ向かった。しばらくして本田と杏子も合流し、会話も賑やかになっていく。

そうしていると、店に来客があった。

 

「いらっしゃいませ~」

「いらっしゃ、あれ? あなたは……」

 

双六に続いて声を掛けた遊戯は、見覚えのある顔に少し驚く。

 

「お久しぶりですね。武藤遊戯くん。私のことは覚えていますか?」

「ええっと、確かペガサス会長の秘書さん……ですよね?」

 

そう言って遊戯が首を傾げる。

 

(ふむ、そういう認識なのか。そういえばお互い顔は知っているが、会話はしていなかったな)

 

レンは社長とはいえ、未だにI2社の顔はペガサスである。ビジネス界の人間ならともかく、遊戯のような一般人なら社長の顔を知らなくとも無理はない。

今でもメディアに露出するのはペガサスの方が多いからだ。

 

「少しお時間をいただけますか? そちらがひと段落してからで構いません」

「そんならもう構わないぜ。城之内、このデッキでもういいだろ」

「う~ん。でもなぁ。このカードも入れた方が良くねぇか?」

「それさっき遊戯がバランスの問題で抜いた方がいいって言ってたカードじゃねぇか。堂々巡りはやめろ!」

 

本田が辛辣に言い放つ。遊戯は苦笑いで返していた。

 

「僕に何か用ですか?」

「ペガサスからの届け物を預かってきました。どうぞ」

 

小さな桐の箱を遊戯に渡す。それを開けた瞬間、遊戯の目が変わった。

 

「……どういうつもりだ」

「ペガサスからの伝言をそのままお伝えします」

 

喉の調子を整え、音域を合わせる。

 

「遊戯ボーイ。かつてワタシは千年眼の魔力に取り憑かれ、道を誤るところでシタ。いえ、一度は誤ったのデース。しかし様々な人と出会い、デュエルの魅力を感じ、ワタシは正道へと戻ることができまシタ。これはもう、ワタシには必要ありまセーン。あなたに託すことにしマース。……だそうです」

「そ、そうか」

「すげぇなあんた。メチャクチャそっくりだったぜ」

「ああ。目ぇ瞑ってたら分からないくらいに似てたぜ」

「数少ない取り柄のひとつです」

 

城之内と本田は素直に感心しているが、杏子だけは、なにこの人……みたいな目でレンを眺めていた。

 

「ああ、それと……」

「ちょっと待ってくれ!」

 

会話がひと段落したと思ったのだろう。声をかけてきたのは城之内だった。

 

「なにか?」

「いきなりでわりぃんだが、俺とデュエルしてくんねぇか? あんたI2社の人間ってことは、デュエル強ぇんだろ」

 

城之内がこう言ったのには意味がある。現在I2社の入社試験にはデュエルがある。筆記や面接を突破してもデュエルで敗北して落ちたという話は、城之内も聞いたことがあった。

とはいえ、I2社の立ち上げからいるレンには関係のないことであったが。

 

「……いや、好都合か。ええ、お相手しましょう」

「ありがてぇ。じゃあ表出ようぜ!」

 

城之内がテーブルの脇に置いていたデュエルディスクを装着する。原作ではバトルシティ開始時に流通し始めたデュエルディスクであるが、この世界では開発が早まり、すでに一般流通を始めている。

店の前でレンと城之内が向き合う。

 

(――覚醒。デュエルモード)

 

レンは頭の中でスイッチを切り替えた。

 

 

『デュエルッ!!』

 

 

「俺の先攻だ。ドロー! 《伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)》を通常召喚。んでもって効果発動だ。このカードをリリースしてデッキから《真紅眼の黒竜》を特殊召喚。さらに魔法カード《黒炎弾》を発動!」

 

黒竜がその(あぎと)を開き、極大の炎を吐く。

 

高杉レン LP4000 → 1600

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

城之内克也 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2

 

真:真紅眼の黒竜 攻撃力2400

■:伏せカード

■:伏せカード

 

■□□□■

□□真□□

 

□□□□□

□□□□□

 

高杉レン LP1600 手札5 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。私がドローしたカードは《守護神官マハード》。ドローしたこのカードを相手に見せることで、このカードは特殊召喚できる」

 

「マハードだとっ!?」

 

「うおっ!? どうしたんだ遊戯?」

 

いきなり叫び出した遊戯に城之内は疑問をぶつける。だが遊戯は自分自身でもなぜ反応したのか分からない様子だった。

 

「マハードを特殊召喚。このカードは闇属性モンスターと戦闘する場合、ダメージステップの間のみ攻撃力が倍になります」

 

「ならそいつを通すわけにはいかねぇな。罠カード《奈落の落とし穴》を発動。そいつを破壊して除外するぜ」

 

マハードが降り立った瞬間、その足元の大地が消え失せ、マハードは奈落の底へと消えていった。だが最期の瞬間、守護神官は望みを託す。

 

「マハードは戦闘・効果で破壊された場合に発動できる効果があります。デッキから《ブラック・マジシャン》を特殊召喚」

 

「ブラック・マジシャンか。あんたも遊戯と同じブラック・マジシャン使いだったんだな」

 

見慣れたモンスターと相対して、城之内はさらに警戒を強めた。

黒魔術師と黒き竜が睨み合う。その光景を見たレンは――

 

(ブラック・マジシャンと真紅眼の黒竜……やはりあの友情のカードは作るべきか?)

 

などと物騒なことを考えていた。

 

「バトルフェイズに入ります。ブラック・マジシャンで真紅眼の黒竜に攻撃、黒・魔・導(ブラック・マジック)

 

「させねぇ! 攻撃宣言時に《串刺しの落とし穴》を発動するぜ。ブラック・マジシャンを破壊し、元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える!」

 

高杉レン LP1600 → 350

 

「バトルフェイズを終了してメインフェイズ2へ。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

高杉レン LP 350 手札3 モンスター0 伏せ2

 

■:伏せカード

■:伏せカード

 

■□□□■

□□□□□

 

□□真□□

□□□□□

 

真:真紅眼の黒竜 攻撃力2400

 

城之内克也 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「おいおい、こりゃ城之内のやつ勝っちまうんじゃねぇか? なあ遊戯!」

「……ああ」

 

本田は盛り上がっている様子だが、遊戯は冷静にデュエルを見守っていた。魔術師デッキはパワーが足りない分、除去札やコンバットトリックを多用する傾向にある。

だが今のところ、そういった動きはない。そのことに遊戯は警戒を強めていた。

 

「俺のターン、ドロー。魔法カード《カップ・オブ・エース》を発動だ。さあいくぜ!」

 

ふたりの中央にソリッドビジョンの巨大なコインが現れる。表が出れば城之内が、裏が出ればレンがカードを2枚ドローできる。

普通の決闘者ならデメリットが大きすぎて使わないだろう。使うとしても《セカンド・チャンス》などのケアできるカードと組み合わせて使う。

だが城之内はリスクを恐れずにギャンブルカードを選択した。

 

「コインは表だ。2枚ドローするぜ。おっし! いいカードを引いたぜ。《ハーピィの羽根帚》を発動。あんたの伏せカードを破壊するぜ」

 

「チェーンして《マジシャンズ・ナビゲート》を発動。手札から《ブラック・マジシャン》を特殊召喚し、その後、デッキから《ブラック・マジシャン・ガール》を特殊召喚。さらに破壊された《マジシャンズ・プロテクション》の効果を発動。墓地の《ブラック・マジシャン》を特殊召喚します」

 

2体の黒魔術師とその弟子が姿を現す。

 

「へっ、だが3体とも守備表示たぁ弱気だな」

 

城之内がそう揶揄するが、なにせレンのライフはわずかに350。何らかの手段で城之内がモンスターの攻撃力を上げれば、それだけで致命のダメージを受けてしまう。

 

「《真紅眼の鉄騎士(レッドアイズ・メタルナイト)-ギア・フリード》を召喚してバトルフェイズに入るぜ。ギア・フリードでブラック・マジシャン・ガールを、レッドアイズでブラック・マジシャンを攻撃だ!」

 

鉄騎士の剣に魔法少女が吹き飛ばされ、黒炎弾によって黒魔術師が焼失する。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだぜ」

 

城之内克也 LP4000 手札1 モンスター2 伏せ1

 

真:真紅眼の黒竜 攻撃力2400

鉄:真紅眼の鉄騎士-ギア・フリード 攻撃力1800

■:伏せカード

 

□□■□□

□□真□鉄

 

□□ブ□□

□□□□□

 

ブ:ブラック・マジシャン 守備力2100

 

高杉レン LP 350 手札2 モンスター1 伏せ0

 

――――――――――――

 

「私のターン、ドロー。《死者蘇生》を発動。墓地の《ブラック・マジシャン・ガール》を特殊召喚。続けて《黒・爆・裂・破・魔・導(ブラック・バーニング・マジック)》を発動。このカードは私の場に魔術師の師弟が存在する場合に発動できる。相手フィールドのカードをすべて破壊します」

 

「すべて!? くっ、なら《鎖付き爆弾》を《真紅眼の黒竜》に装備するぜ。装備状態のこのカードが破壊された場合、相手のカード1枚を破壊できる。あんたの《ブラック・マジシャン》を破壊するぜ」

 

師弟の相乗攻撃により城之内のフィールドは一掃されたが、最後の意地とばかりにブラック・マジシャンを道連れにしようとする。だが――

 

「チェーンして手札の《守護神官マナ》の効果発動。このカードを特殊召喚します。そしてこのカードがモンスターゾーンにいる限り、レベル7以上の魔法使い族モンスターは効果では破壊されない」

 

ブラック・マジシャンの身体に巻き付いた鎖付き爆弾を、マナがその手に持っていた守護杖で解除する。

 

「何やってんだ城之内! 破壊するならブラック・マジシャン・ガールの方だろ。ちゃんとやれー!」

 

「うるっせぇぞ本田ァ! 結果だけ見て語ってんじゃねぇ! 黙って見てろ!」

 

本田のツッコミに城之内は冷たい汗を流した。攻撃力上昇の効果を考慮すれば、選択すべきはブラック・マジシャン・ガールだった。またそうすればマナの効果の適用外だったのでそのまま破壊できたのだ。

とはいえ、ブラック・マジシャンには専用サポートカードも多いので、場に残したくないと考えた城之内の判断も間違いとは言い切れない。

 

「バトルフェイズに入ります。守護神官マナとブラック・マジシャン・ガールでダイレクトアタック」

 

「ぐわぁぁぁ!!」

 

ふたりの少女のダブルアタックを受けて、城之内のライフは尽きた。

 

 

 

「クッソー、もうちょいだったのになー」

 

城之内が悔しさをあらわにして地団駄を踏む。その脇をスルリと抜けてきた遊戯がレンに詰め寄ってきた。

 

「なぁあんた、そのカード――」

 

遊戯の言葉を遮って、レンは自分のデッキから数枚のカードを引き抜いて遊戯に向ける。

 

「なんのつもりだ?」

「このカードたちが、キミのところに行きたがっています」

 

遊戯は無言でカードを受け取る。普段なら他人からカードを受け取るようなことはしないのだが、何故かそのカードたちを見ているといいようもない懐かしさを感じるのだ。

 

「では私はこれで」

「ちょっと待ってくれ!」

 

とはいえ、なんとなく施しを受けるようで座りが悪い。遊戯は思わず声をかけた。

 

「そのカード、大切にしてくださいね」

「……ああ。サンキューな!」

 

笑顔でそう言われて、遊戯は毒気を抜かれたように礼を言った。

 

 

 




《黄泉天輪》 永続魔法

①:このカードの発動時の効果処理として、フィールドのモンスターを全て破壊できる。その後、お互いのデッキからモンスターカードを全てゲームから除外する。
②:お互いのプレイヤーは1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。自分または相手の墓地のモンスター1体を召喚条件を無視して自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはフィールドから離れた場合に除外される。

※確定テキストではないです。でも大体こんな感じ。
現代遊戯王ならワンチャン許される……のか?
①の効果がキツイかな。先攻でやられたら詰むデッキ多そうだし。
②の効果は召喚条件は無視できても、蘇生制限は無視できないからそこまででもないか。
弱点は永続魔法ということかな。
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