「通行人はどいてた方がいいぜ! 今日この街は戦場と化すんだからよ!」
デュエルディスクを装着した少年が声高に叫ぶ。それを見たレンは、やっぱ童実野町って治安悪いな、などと思っていた。
とりあえず街をぶらぶらしてみるが、グールズと思われる人間はいない。少なくとも目が虚ろで黒いフードをかぶっているような怪しい人間はひとりも見当たらなかった。
(こりゃあ平和な大会になりそうだな)
このバトルシティは原作通りアンティルールで行われているが、全体的に価格の安くなったカードの中で、目玉が飛び出るような価格のカードはそう多くない。ましてや開発費1000億のカードなど存在しない。
そんな中で海馬の持つ《青眼の白龍》だけが突出して価値が高い。
(アレは飾っておいて、ウルトラレアのブルーアイズを使うってのは、海馬の性格的にあり得ないんだろうな。まあ海馬が予選落ちすることなんてないだろうが)
適当に売られた
今のレンはビジネススーツにデュエルディスクというミスマッチな姿で、若年層の参加者が多いこの大会では年齢的にも場違いな
故に対戦相手には苦労しなかった。
あっという間に2勝し、パズルカードは3枚となった。別に張り切ったつもりはないが、手を抜くつもりもない。
スーパーで買った大将のきまぐれ軍艦握りを食べ終えると、レンは缶のお茶を飲みながら公園を見渡した。
(ホントに平和だな。なんか拍子抜けだ)
そんなほのぼのモードで引き続き街をぶらついていると、路地裏の方から何やら言い争うような声が聞こえてきた。
「で、でもデュエルを始める前に、このアンティカードで納得してたじゃないか!」
「気が変わったんだよ! いいかぁ、オレはデュエルに勝った! 負けた野郎は勝った人間の言う事を何でも聞かなくちゃならねぇんだよ!」
レンの介入によってデュエルの俺ルールはなくなったが、盤外俺ルールを展開するやつはいるようだ。
「その理屈だと、おまえを負かせばすべて解決するようだな」
「あぁ? 誰だ!」
「なに、通りすがりのサラリーマンさ。出張中のね」
「ハッ! 無理すんなよオッサン! サラリーマンは引っ込んでな!」
「サラリーマンではあるが、デュエリストでもある。おい、デュエルしろよ」
そう言ってレンはデュエルディスクを構える。それを見た金髪の少年は大口を開けて笑った。
「いいぜぇ、受けてやるよ。オレが勝ったら、デッキごと置いていきな!」
「いいだろう」
『デュエルッ!!』
「俺のターン、ドロー! 《地雷蜘蛛》を召喚! ターンエンドだ!」
「は?」
チンピラ LP4000 手札5 モンスター1 伏せ0
地:地雷蜘蛛 攻撃力2200
□□□□□
□□地□□
□□□□□
□□□□□
高杉レン LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
(地雷蜘蛛棒立ちエンド……だと? 伏せカードもなしとは……余程の手札事故か?)
原作よりもカードプールが増し、デュエルの加速したこの世界ではまあまあありえない事態だった。
しかしバトルフェーダーや速攻のかかしのような防御カードもすでに存在する。気を緩めるのは危険だとレンは判断した。
「私のターン、ドロー。魔法カード《
毒々しい色をしたエリマキトカゲが姿を現し、その舌をうねらせる。
「《捕食植物スピノ・ディオネア》を召喚して効果発動。《地雷蜘蛛》に捕食カウンターを置く」
「捕食カウンター?」
チンピラが首を傾げる。見たところステータスに変化はない。ただレベルが1になっただけだ。
「サンデウ・キンジーの効果発動。このカードと地雷蜘蛛を墓地に送り、《捕食植物キメラフレシア》を融合召喚」
「なっ!? 俺のモンスターを融合素材にするだと!?」
「バトルだ。スピノ・ディオネアで攻撃」
一応ゴーズ警戒のために攻撃力の低いスピノ・ディオネアから殴る。だがチンピラがカードを発動する様子はなかった。
(ホントに何もないのか? やはり手札事故の可能性は常にある……か)
デュエルの不条理に嘆きながら、レンはキメラフレシアに攻撃を命じた。
「ぎゃぁあぁぁぁ!! く、くるなぁぁぁ!!」
そして最後の一撃が金髪の少年を襲った。
デュエルはわずか2ターンで決着した。レンはチンピラのレアカードには見向きもせずに、パズルカードだけを取ってその場を後にする。
そして、そのデュエルを離れた場所から見ていた者たちがいた。
「やっぱりアイツ、凄腕のデュエリストだったんだね、兄サマ」
「ふぅん。あんなザコではやつの実力を測る指針にすらならん」
白いコートをたなびかせながら、海馬が鼻を鳴らす。
(社長に就任する前のヤツは、裏方故にほとんど表舞台には出なかった。I2社の設立からペガサスと共に社を支えてきた最古参。一説ではペガサスよりも強いといわれているが、あながち風説というわけでもなさそうだな)
海馬は無意識のうちに口角を上げていた。
「高杉レン。貴様が俺のロードに名を刻むにふさわしいデュエリストかどうか、このバトルシティで見極めてやろう。フハハハハッ!!」
海馬の哄笑が童実野町に響き渡った。
◇
路地裏でチンピラから2枚のパズルカードを巻き上げたレンは、現在5枚のパズルカードを所有している。
(かなり余裕ができたな)
初戦こそ負ければ終わりだが、5枚もあれば1敗や2敗は許容範囲となる。心に余裕を持つことは肝心だが、それが慢心にならないように、レンは一度深呼吸をする。
「あれ? レンさん……?」
こちらを覗き込むようにして問いかけてきたのは、レンの半分ほどの背丈の少年だった。
「レオンくんか。キミもこの大会に参加を?」
少年の名はレオンハルト・フォン・シュレイダー。シュレイダー社の代表、ジークフリードの実弟であった。当然、レンとも面識がある。
「はい。兄さんは「やつが主催する大会など死んでも御免だ」と言ってましたが、僕はモクバくんに招待されて、甘えてしまいました」
海馬瀬人とジークフリードは水と油のような関係だが(一方的にジークフリードがライバル視しているだけだが)、弟同士、レオンとモクバは仲良しだった。
海馬も弟に同年代の友人ができたことは素直に喜んでいる。
(まあ水と油も混ぜれば、いつかドレッシングになるかもしれないし)
ならねぇだろ。
「調子はどうだい?」
「はい。あと1勝です!」
レオンはニカッと笑って5枚のパズルカードを手札を持つように並べた。
「そうか。私と同じだな」
そう言って、レンも5枚のパズルカードを示す。それを見たレオンは感嘆の吐息を漏らした。
「凄いな。さすがはレンさんだ。うん、やっぱり最後は……レンさん、僕とデュエルしてください!」
「それは……いいのかい?」
ジークフリードと親交のあるレンは、レオンともデュエルした経験はあった。そして勝率は、圧倒的にレンが高い。
「はい。思えば、レンさんと
レオンは真摯な目でレンを見つめた。
「分かった。受けよう」
「ありがとうございます!」
「では――」
『デュエルッ!!』
「僕の先攻です。ドロー! 《ドラゴンメイド・チェイム》を召喚して効果発動。デッキから《ドラゴンメイドのお召し替え》を手札に加えます」
黒衣の竜人が嫋やかな振る舞いでレオンにカードを届ける。そしてレオンはすぐさまそのカードを発動する。
「フィールドの《ドラゴンメイド・チェイム》と、手札の《ドラゴンメイド・ルフト》を融合。来いッ! 《ドラゴンメイド・シュトラール》!!」
ドラゴンメイドを束ねる最強の竜。あの青眼の白龍すら上回る攻撃力を誇るドラゴンメイドの長が戦闘形態で出現した。
(ドラゴンメイドの先攻はシュトラールを呼べるかどうかと言っても過言ではない。妨害が少ない環境とはいえ、きっちり呼び出してきたか)
当然だがこの時代、
「カードを2枚伏せてターンを終了します」
レオン LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2
シ:ドラゴンメイド・シュトラール 攻撃力3500
■:伏せカード
■:伏せカード
■□□□■
□□シ□□
□□□□□
□□□□□
高杉レン LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー。ここで速攻魔法《禁じられた一滴》を発動だ。手札の《捕食植物ビブリスプ》を捨ててシュトラールの攻撃力を半分にし、効果を無効にする」
天より降ってきた一滴の液体を浴びて、シュトラールは力を落とす。モンスターカードをコストにしたことで、シュトラールの効果はチェーンできないのだ。
「墓地に送られたビブリスプの効果発動。デッキから「捕食植物」モンスターを手札に加える」
「させません! チェーンして《墓穴の指名者》を発動。ビブリスプを除外して効果を無効にします!」
「サーチを止めてきたか。では《ローンファイア・ブロッサム》を召喚。そしてこのカードをリリースして効果発動。デッキから《捕食植物オフリス・スコーピオ》を特殊召喚。手札の《
うねうねと毒々しい植物がフィールドを埋め尽くしていく。だがまだまだレンの手は止まらない。
「ダーリング・コブラの効果発動。デッキから《烙印融合》を手札に加える。続けて墓地へ送られた《エッジインプ・チェーン》の効果発動。デッキから《
レンの手札がどんどん潤っていく。レオンは警戒を強める。
「《置換融合》発動。フィールドのオフリス・スコーピオとダーリング・コブラを素材に、《捕食植物キメラフレシア》を融合召喚」
フィールドに鮮やかな花が咲く。だがその触手は牙のような棘で獲物を捕らえようと宙を舞っていた。
「《烙印融合》を発動。デッキから《アルバスの落胤》と《
紅き竜が翼を広げ、さらなる仲間を呼ぶ。
「アルビオンの効果発動。墓地の《アルバスの落胤》と《
獰猛な黒鱗の竜が地を踏みしめながら攻撃態勢を取る。
「バトルフェイズに入る。キメラフレシアでシュトラールに攻撃。攻撃宣言時に効果発動。シュトラールの攻撃力を1000ダウンさせ、キメラフレシアの攻撃力を1000アップする」
(くっ、フランメで攻撃力を上げても対抗できない。ならば――)
「シュトラールを対象に、《ドラゴンメイドのお見送り》を発動。手札から《ドラゴンメイド・パルラ》を特殊召喚し、シュトラールを
パルラが身を固めながら出現し、シュトラールが姿を消した。
「この効果で特殊召喚したモンスターは、次のターンの終了時まで戦闘・効果では破壊されません」
「やるな。レオンくん」
「いえ、危ないところでした」
「しかし除外には対応できない。メイン2にキメラフレシアの効果発動。パルラを除外する」
キメラフレシアの触手に捕まり、パルラは次元の彼方へと消え去った。
「くっ、ごめんパルラ!」
「カードを1枚伏せてターンエンド」
高杉レン LP4000 手札2 モンスター3 伏せ1
ア:烙印竜アルビオン 攻撃力2500
キ:捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500
ブ:痕喰竜ブリガンド 攻撃力2500
■:伏せカード
□□□□■
ア□キ□ブ
□□□□□
□□□□□
レオン LP4000 手札1 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「僕のターン、ドロー。墓地の《ドラゴンメイドのお片付け》を除外して効果発動。墓地の《ドラゴンメイド・チェイム》を特殊召喚。チェイムの効果でデッキから《ドラゴンメイド・リラクゼーション》を手札に加えます」
(さすがに継戦能力が高いな。劣勢であってもすぐに立て直してくる)
「墓地の《ドラゴンメイドのお召し替え》の効果発動。フィールドのチェイムを手札に戻し、このカードを手札に加えます。そして発動。手札のチェイムとフランメを素材に《ドラゴンメイド・シュトラール》を融合召喚!」
再びドラゴンメイド最強の竜が姿を現す。
「《ドラゴンメイド・ティルル》を通常召喚。効果でデッキから《ドラゴンメイド・ルフト》を手札に加え、そのまま墓地に送ります」
2体のドラゴンメイドを並べ、レオンがバトルフェイズに入る。スタートステップにティルルがフランメへと姿を変えた。
「フランメでアルビオンを攻撃! 続けてシュトラールでキメラフレシアに攻撃!」
「攻撃宣言時、キメラフレシアの効果発動」
「シュトラールの効果で無効にして破壊します。そしてシュトラールをEXデッキに戻し、ハスキーを特殊召喚。ハスキーでブリガンドに攻撃です!」
ハスキーが地をなめるように疾駆し、ブリガンドに掌底の一撃を加える。
高杉レン LP4000 → 3800 → 3300
「バトルフェイズ終了時にフランメを手札に戻し、ティルルを特殊召喚。カードを1枚伏せてターンを終了します」
「エンドフェイズに、墓地へ送られたブリガンドの効果発動。デッキから《鉄獣鳥 メルクーリエ》を手札に加える。続けてアルビオンの効果発動。デッキから《烙印融合》を手札に加える」
レオン LP4000 手札1 モンスター2 伏せ1
ハ:ドラゴンメイド・ハスキー 攻撃力3000
テ:ドラゴンメイド・ティルル 守備力1700
■:伏せカード
□□□□■
□□ハテ□
□□□□□
■□□□□
■:伏せカード
高杉レン LP3300 手札4 モンスター0 伏せ1
――――――――――――
「私のターン、ドロー」
ここでレンは状況を確認する。レオンの手札はフランメで確定。伏せカードは《ドラゴンメイド・リラクゼーション》。
(ハスキーをどう処理するか……だな)
手札のメルクーリエは、効果を無効にはするが破壊はしない。またダメージステップでは発動できないので、フランメには対応できない。
ドラゴンメイドがバウンスした時に発動する破壊効果も厄介だが、上級ドラゴンメイドの共通効果も厄介だ。融合モンスターが自分フィールドにいる場合、効果で破壊されないというものである。
「スタンバイフェイズに墓地のキメラフレシアの効果発動。デッキから《融合派兵》を手札に加える」
「こちらもティルルを対象にハスキーの効果を発動します。墓地から《ドラゴンメイド・チェイム》を守備表示で特殊召喚。そしてチェイムの効果でデッキから《ドラゴンメイドのお心づくし》を手札に加えます」
「スタンバイからメインへ。墓地の《置換融合》を除外して効果発動。墓地の《烙印竜アルビオン》をEXデッキに戻し、カードを1枚ドローする。《融合派兵》を発動。EXデッキの《烙印竜アルビオン》を公開し、デッキから《アルバスの落胤》を特殊召喚。手札を1枚捨てて効果発動」
「……くっ」
アルバスの落胤は対象を取る効果ではない。恐らくはハスキーが素材にされるだろうが、伏せた《ドラゴンメイド・リラクゼーション》でハスキーを戻しても、他のドラゴンメイドが素材にされるだけだ。
またハスキー以外を戻してハスキーの破壊効果を発動させようにも、ハスキーの効果は時の任意効果であるため、タイミングを逃してしまう。
「《アルバスの落胤》と《ドラゴンメイド・ハスキー》を素材に、《烙印竜アルビオン》を融合召喚。続けてチェーン1でアルビオンの効果を、チェーン2で手札コストにした《エッジインプ・チェーン》の効果を発動。デッキから《
刺々しい尾を振り回しながら、毒竜が翼を広げて飛翔する。
「《魔玩具補綴》を発動。デッキから《融合》と《エッジインプ・チェーン》を手札に加える。続けて《烙印融合》を発動。デッキから《アルバスの落胤》と《
神炎を纏いし竜が翼を広げ、さらなる仲間を呼ぶ。
「手札を1枚捨て、ルベリオンの効果発動。除外されている《アルバスの落胤》と《
灰燼竜バスタード 攻撃力2500 → 3900
「ドラゴスタペリアの効果発動。チェイムに捕食カウンターを置く。捕食カウンターを置かれたモンスターの効果は、ドラゴスタペリアがいる限り無効化される」
ドラゴスタペリアの毒液を浴びたチェイムが苦悶の表情を浮かべる。
「《捕食植物サンデウ・キンジー》を召喚」
「くっ、《ドラゴンメイド・リラクゼーション》を発動。チェイムを手札に戻し、デッキから《ドラゴンメイド・ナサリー》を手札に加えます」
チェイムを融合素材にされると思ったのか、レオンはチェイムを逃がす選択をした。
「ならば自前で用意しよう。サンデウ・キンジーの効果発動。このカードと手札のエッジインプ・チェーンを融合。《捕食植物キメラフレシア》を融合召喚」
再びフィールドに鮮やかな花が咲く。
「キメラフレシアの効果発動。ティルルをゲームから除外する」
パルラに続き、ティルルまでもが触手の餌食となった。
これでレオンのフィールドはがら空きになり、レンの猛攻を防ぐ手立てはなくなった。
「バトル。バスタードとキメラフレシアでダイレクトアタック」
2体のモンスターがレオンのライフを削り切り、勝負は決した。
その直後、東の方角から獄炎が立ち昇った。
◇
レンとレオンが獄炎の場所に辿り着いた時、その場には見慣れた兄弟がそのデュエルを眺めていた。
「ふぅん。ようやく来たか。見ろ、あれが神のカード。オシリスの天空竜だ」
海馬が視線はそのままでレンに声をかける。その額にはうっすらとした汗が光って見えた。
川原では巨大な生物が紅き翼を広げていた。無敵無欠の神として、対面の遊戯を見下ろしている。その威圧は離れていても伝わってきた。
「……ハロー、ペガサス。いきなりだが、まさか神のカードは作ってないよな? 作ってない。OK、ならいいんだ」
携帯電話でペガサスに確認を取った後、レンは視線を下げた。それに気づいたレオンはすぐさま首を横に振る。
「兄さんじゃないと思います。兄さんは北欧神話とかには興味がありますが、オシリスってエジプトの神さまですよね」
(確かにジークらしくはない。あいつが作るならオーディンとかロキとかトールだろう。海馬も……あの様子では違うな。なら――)
レンの脳内にありえない考えが浮かぶ。
(勝手に
カードに精霊が宿ることもあれば、精霊がカードになることもある。
何故デュエルディスクが認識するかとか、深く考えてはいけない。
結局、真面目に考えることが馬鹿らしくなったレンは、そのうちに考えることをやめた。
そして眼下のパントマイマーへと目を向ける。
(グールズはいないはずだが、マリクの手足となる人間はいるらしいな。洗脳って怖ぇな)
改めて千年アイテムのオカルト力に身震いする。
「ふっ、遊戯。もはやボクの勝利は揺るぎないようだな」
「いいや、マリク。このデュエル、俺の勝ちだ」
「何を世迷言を……。やることがないのなら、さっさとターンを終了しろ」
マリクが嘲笑うかのように遊戯の瞳を睨みつける。
「望み通りターンを終了してやるよ。そしてエンドフェイズに、このターン墓地に送られた《暗黒のマンティコア》の効果発動。手札の《
「そのカードの攻撃力は2300。召雷弾では破壊されないが、次のターンにオシリスの攻撃を受けて終わりだ」
神の稲妻を受け、暗黒のマンティコアの攻撃力が大きく下がる。
「《増殖するG》の効果で1枚ドロー。オシリスの攻撃力はさらに1000アップ。ハハハッ、さぁボクのターンだ」
「何を勘違いしているんだ? マリク、俺のエンドフェイズはまだ終わっちゃあいないぜ。墓地の《暗黒のマンティコア》の効果発動。フィールドの《暗黒のマンティコア》を墓地に送り、このカードを特殊召喚するぜ」
最初のマンティコアとは別個体のマンティコアがフィールドによみがえる。
「さあ、増殖するGの効果で1枚ドローしな」
「ぐっ、おまえ……まさか!?」
「墓地の《暗黒のマンティコア》の効果発動。フィールドの《暗黒のマンティコア》を墓地に送り、このカードを特殊召喚。おまえは増殖するGの効果で、デッキからカードをドロー
2体目のマンティコアを犠牲に、最初のマンティコアがよみがえる。マリクはさらにカード1枚ドローした。
「これは……やはりこれは! 無限ループ!」
「マリク、神の攻撃力は無限なんかじゃない。デッキの枚数という限界があったのさ」
やがて、ドローするカードのなくなったマリクに敗北が訪れた。
「さすがだ遊戯。やはり神のカードは真の決闘者の下へと集う」
「……海馬」
遊戯と海馬の視線が交錯する。そんな緊張した空気をバッサリと切り捨て、レンは一歩前に出た。
「遊戯くん。その神のカード、少し見せてもらってもいいかい?」
「む。ああ、構わないぜ」
特に躊躇することもなく、遊戯は神のカードをレンに渡した。
「ふむ、なるほどなるほど。ありがとう遊戯くん。お返ししますよ」
レンは平静を装っていたが、内心では「なぁにこぉれ?」と悲鳴を上げていた。
そしてその背後で、寡黙な人形がゆらりと立ち上がった。
タグを追加しました。オリカ嫌いの方はすいません。3枚だけなので許して!