高杉レン。
マリク・イシュタール。
武藤遊戯。
海馬瀬人。
準決勝に進出する四名のデュエリストが決定したところで、決勝トーナメント初日の日程が終了した。
参加者たちが眠りにつく中で、ある部屋の扉が開く。
「リシド……貴様がいなくなればオレを封印できる者はいない……死の闇が迎えに来たぞ……なにっ!?」
深い眠りにつくリシドに永遠の眠りを与えるべく、マリクが千年ロッドを掲げる。だがここで、ベッドがもぬけの殻であることに気づいた。
「ククク……コイツとの契約でね。あのハゲを殺させるワケにはいかねぇのよ」
扉の影からバクラが姿を現す。
「貴様は……そうか、奴の一部を取り込んでいたか。フフッ、引っ込んでな!」
「――ッ!? ガハッ!」
千年ロッドから溢れた闇の力が、バクラを壁に叩きつける。
「ハハハ、このまま押し潰してやろうか。……むっ」
「……ククッ、千年ロッドとやらの力も、たいしたことねぇな」
バクラの首から提げられた千年リングが怪しく光り、闇の力を跳ね返す。
「……ほぅ」
「千年アイテムに選ばれた者は、闇の
「死にたがりが……いいだろう。相手をしてやるよ。表に出な!」
夜風が吹きすさぶデュエルリングで、闇の
「闇のゲームに敗れた者は闇に呑まれる。まぁ、消えるのは貴様だがな、バクラ」
「今のうちにほざいてな。闇に葬られる前によォ。クククッ」
『デュエルッ!!』
「オレ様の先攻――チッ、テメェの片割れが話したいとよ」
――ボクは真実を知った。貴様が父を殺したという真実を。決して貴様を許すことはできない!
「おいおい、都合の良い解釈をするんじゃねぇよ。オレを生み出したのはテメーの心の闇だろーが。破壊と憎悪、憤怒と邪悪、その結晶体がオレってワケだ。つまりテメーがオレに父殺しをさせたんだよ!」
――確かに、ボクの心の弱さが生み出した惨劇には違いない。
マリクは瞑目し、亡き父の姿に想いをはせる。
――五年前のあの時、ボクの前に現れたあの男こそ……
(……あの男?
「ゴチャゴチャと御託を並べやがって……つまり何が言いてぇんだ? 主人格サマよォ」
――ボク自身……そして貴様を葬ることが父への償い
「クククッ、ケヒャァ! やってみなァ!」
マリクの闇人格が見下すように笑った。
――いくぞ、バクラ!
「オレ様に命令すんじゃねぇ!」
(クソッ、考えがまとまらねぇ。何なんだヤツは。死人はおとなしく死んでろってんだ。まあいい。まずはコイツをぶっ殺して千年ロッドをいただく!)
「オレ様のターン、ドロー!」
(悪くねぇ手札だ。まずは下準備をしねぇとな)
「モンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
バクラ LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2
セ:セットモンスター
■:伏せカード
■:伏せカード
■■□□□
□□セ□□
□□□□□
□□□□□
闇マリク LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「オレのターン、ドロー。《予想GUY》を発動。デッキから《ギル・ガース》を特殊召喚。さらに《ニュードリュア》を召喚。バトルだ。ギル・ガースでセットモンスターを攻撃!」
殺戮マシーンが巨大なカタナを振り下ろす。
「セットモンスターは《魂を削る死霊》だ。残念だったな、こいつは戦闘では破壊されないモンスターよ」
「チッ、カードを1枚伏せてターンエンドだ」
「エンドフェイズに罠モンスター《死霊ゾーマ》を守備表示で特殊召喚するぜ」
闇マリク LP4000 手札3 モンスター2 伏せ1
ニ:ニュードリュア 攻撃力1200
ギ:ギル・ガース 攻撃力1800
■:伏せカード
■□□□□
□ニギ□□
□□魂ゾ□
□□□□■
魂:魂を削る死霊 守備力 200
ゾ:死霊ゾーマ 守備力 500
■:伏せカード
バクラ LP4000 手札3 モンスター2 伏せ1
――――――――――――
「オレ様のターン、ドロー。ヒャハハハハッ、テメェにオレ様の必殺コンボを見せてやるぜ。魔法カード《闇の指名者》を発動。モンスターカード名を1つ宣言し、宣言したカードが相手のデッキにある場合、そのカード1枚を相手の手札に加えさせる。オレ様が宣言するのは《ラーの翼神竜》!」
「なんだとっ!?」
バクラのありえない戦術に、マリクの目が見開く。それでも《闇の指名者》の効果はデッキに宣言したカードがある場合、手札に加えなければならない強制効果。
マリクはデッキから《ラーの翼神竜》を手札に加えた。
「ライフを800払い、《洗脳-ブレインコントロール》を発動。テメェの《ギル・ガース》をいただくぜ。そして《エクスチェンジ》を発動」
「チッ、それが狙いか」
「さあ、好きなカードを選びな。といってもオレ様の手札は1枚だがな。オレ様はテメェの神をいただくぜ!」
エクスチェンジは手札交換だけでなく、手札を公開するため、相手の戦術を把握することもできる。
だが、バクラがライフを失ったことで闇の決闘が効力を発揮する。バクラの肩が闇に喰われた。
(この程度、なんてこたぁねぇよ。オレ様の手札はモンスターカード1枚。奪われたところで問題ねぇ。ヤツの手札は……チッ、《手札抹殺》がありやがる。これで手札を入れ替えられたら、戦術を読んでも意味がねぇな。まあいい。このターンで決めりゃいいだけよ)
バクラの手札に神のカードが加わった。
「ヒャハハハハッ、神のカードをゲットだぜぇ! 3体のモンスターをリリースし、《ラーの翼神竜》を召喚!」
金色の翼を広げ、最高位の神がバクラのもとに舞い降りる。
ラーの翼神竜 攻撃力3900 守備力1900
「クククッ、神の力はこんなモンじゃねぇよなぁ! 派手にいこうぜぇ! ラーの翼神竜の効果発動。オレ様のライフを3100捧げ、神の攻撃力に加える!」
バクラ LP3200 → 100
ラーの翼神竜 攻撃力3900 → 7000
バクラのライフが低下したことで、その身体のほとんどが闇へと消えていく。
「ヒャハハッ、オレ様は闇そのものだ。関係ねぇんだよこんなモンは! バトルだ! ラーの翼神竜で攻撃! ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
神の業火がマリクへと迫る。
「攻撃宣言時、リバースカードオープン」
「無駄だ! 神にはどんなカードも通じねぇ! テメェも分かってンだろうが!」
「愚かなやつだ。オレが神への対策を怠っているわけがないだろう。《ディメンション・ウォール》を発動。この戦闘で発生するダメージは貴様が受ける。これはモンスターを対象にする効果ではない」
「なっ!? クソが! ならラーの翼神竜の効果を発動するぜ。このカードの攻撃力を5700下げ、オレ様のライフに変換する」
ラーの翼神竜 攻撃力7000 → 1300
バクラ LP 100 → 5800
「これで発生する戦闘ダメージは100だ!」
「戦闘で破壊されたニュードリュアの効果が発動する。フィールドのモンスター1体を破壊する」
「そんなモンが神に通用するかよ」
――バクラ、神を奪ったからといって調子に乗るな。ラーの翼神竜は必ずフィールドに維持し続けるんだ
「分かってンよ。オレ様はこれでターンエンドだ」
バクラ LP5700 手札0 モンスター1 伏せ1
ラ:ラーの翼神竜 攻撃力1300
■:伏せカード
■□□□□
□□ラ□□
□□□□□
□□□□□
闇マリク LP4000 手札3 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「オレのターン、ドロー。《手札抹殺》を発動。オレは手札を3枚捨て、3枚ドローする」
「オレ様に捨てる手札はねぇ」
手札を一新し、マリクの表情が一変する。口角を上げ、腕を真横に振って叫んでくる。
「バクラ! 神は返して貰おう! 《グラナドラ》を召喚。そしてグラナドラの効果でライフを1000回復する!」
闇マリク LP4000 → 5000
「そしてグラナドラをリリースし、《痛み分け》を発動。貴様はモンスター1体をリリースしなければならない。貴様自身の手でな」
「甘いんだよ! チェーンして《戦線復帰》を発動。墓地の《魂を削る死霊》を守備表示で特殊召喚するぜ!」
「甘いのは貴様だ。さらにチェーンして《D.D.クロウ》の効果発動。このカードを手札から墓地へ捨て、貴様の墓地の《魂を削る死霊》を除外する」
これで対象を失った戦線復帰は不発となる。
「……くっ、ならラーの翼神竜の効果を発動するぜ。神の攻撃力をオレ様のライフに変換する」
ラーの翼神竜 攻撃力1300 → 0
バクラ LP5700 → 7000
「神は真の所有者の墓地へと行く。オレはこれでターンエンドだ」
――くっ、ラーがやつの墓地に……
「……エンドフェイズにテメェが手札から捨てた《彼岸の悪鬼 スカラマリオン》の効果を発動するぜ。デッキから《クリッター》を手札に加える」
闇マリク LP5000 手札0 モンスター0 伏せ0
□□□□□
□□□□□
□□□□□
□□□□□
バクラ LP7000 手札1 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「オレ様のターン、ドロー」
「スタンバイフェイズ、《ラーの翼神竜》は墓地より蘇る。この効果で特殊召喚したラーの攻守は4000となる。クククッ、ラーの必勝パターンに入った。貴様になすすべはない」
「チィ、モンスターをセットしてターンエンドだ」
(ラーが場にいる限り、モンスターを並べても意味はねぇ。クソッ、この勝負は――)
「悪あがきだな。特殊召喚された神はエンドフェイズに墓地へ送られるが、その前に効果を発動しておこう。ラーの攻撃力をライフへと変換する」
ラーの翼神竜 攻撃力4000 → 0
闇マリク LP5000 → 9000
「クハハッ、次が貴様のラストターンだ!」
バクラ LP7000 手札1 モンスター0 伏せ0
セ:セットモンスター
□□□□□
□□セ□□
□□□□□
□□□□□
闇マリク LP9000 手札0 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「オレのターン、ドロー。スタンバイフェイズにラーは蘇る」
ラーの翼神竜が不死鳥の如く舞い上がる。
「ククッ、忙しねぇことだな」
バクラが悪態をつく。それが最期の意地だとばかりに。
「ライフを1000払い、ラーの効果を発動。このカード以外のモンスターをすべて墓地へ送る。ゴッド・フェニックス!」
神の業火がバクラのモンスターを焼き尽くす。
「クリッターの効果発動。デッキから《バトルフェーダー》を手札に加えるぜ」
「ククッ、バトルフェイズを強制終了させるカードか。だがクリッターの効果でサーチしたモンスターの効果は、このターン発動できない。覚悟はできたか、バクラ! オレのライフをラーの攻撃力へと変換する!」
闇マリク LP8000 → 100
ラーの翼神竜 攻撃力4000 → 11900
「受けろ! 不死鳥の羽ばたきを! オレの残留思念ごと消え失せるがいい! ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」
――ぐあぁぁ!
神の業火がマリクの思念ごとバクラを葬り去る。
「カハハハッ、神の炎に抱かれて消えろ!」
「……チッ、今回はオレ様の負けにしておいてやる」
「負け惜しみを」
「だが覚えておけ。オレ様は必ず蘇り……テメェを殺す」
バクラの身体が闇に溶け、千年リングが乾いた音を立てて地に落ちた。
「フフ……あっけないもんだ。次は貴様だ、遊戯……。その後は……すべてを破壊してやる。この衝動は誰にも止められねぇ。クククッ、フヒャヒャヒャッ」
マリクが千年リングを拾い上げ、不敵に笑った。
◇
「あれがラーの翼神竜か。バクラの敗因は「奪う」ことを基本骨子にしたことかな。ふむ、持久戦は不利だな。速攻で決めるしかない……か。さて、準決勝はどういう組み合わせにはなるやら」
レンは小さく嘆息した。
ラーの翼神竜 神属性 レベル10
攻撃力? 守備力? 幻神獣族/効果
このカードを通常召喚する場合、3体をリリースして召喚しなければならない。
①:このカードの召喚は無効化されない。
②:このカードの召喚成功時には、このカード以外の魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
③:このカードが召喚に成功した時、1000LPを払って発動できる。このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するカードの効果を無効にする。この効果は無効化されない。
④:このカードは他のカードの効果を受けない。
⑤:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手はこのカードをリリースできない。
⑥:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、他の自分のモンスターは攻撃宣言できない。
⑦:このカードの攻撃力・守備力はリリースしたモンスターの元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値になる。
⑧:1000LPを払って発動できる。このカード以外のフィールド上のモンスターを全て墓地へ送る。この効果は無効化されない。
⑨:100の倍数のLPを払って発動できる。このカードの攻撃力はこの効果を発動するために払ったLPの数値分アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。
⑩:このカードの攻撃力を100の倍数の数値分ダウンさせて発動できる。この効果を発動するためにダウンさせた数値分LPを回復する。この効果は相手ターンでも発動できる。
⑪:このカードはすべてのモンスターに一度ずつ攻撃できる。
⑫:このカードが墓地に存在する場合、スタンバイフェイズに発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果の発動に対して効果は発動できない。この効果で特殊召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は4000となる。
⑬:このカードが特殊召喚されている場合、エンドフェイズに発動する。このカードを墓地へ送る。
ラーは滅びぬ、何度だって蘇るさ!