割と平和な遊戯王   作:乾燥海藻類

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第21話 王の拳

人知れず行われた深夜の決闘から一夜明け、決勝トーナメント2日目。

バトルシップは最後の決闘場へと降り立ち、準決勝の幕が上がる。

 

ガレキの中に聳え立つ塔、決闘塔(デュエルタワー)頂上(てっぺん)で決闘が行われるのだ。

そして準決勝の対戦相手は原作のようなバトルロイヤルではなく、普通にアルティメットビンゴマシーンで決まった。

 

準決勝第一戦は、高杉レンvsマリク・イシュタール。

準決勝第二戦は、武藤遊戯vs海馬瀬人。

 

デュエルタワーを昇り、準決勝第一戦が始まる。

 

(まさか本当に神のカード(闇マリク)と闘うことになるとはな)

 

レンは胸中で小さくため息を零した。

 

 

『デュエルッ!!』

 

 

「私のターン、ドロー」

 

「フフフ……闇のゲームの始まりだ……」

 

デュエル開始と同時に、マリクが千年ロッドを翳す。重苦しい闇があたりを包みだした。

 

(やはり闇のゲームか。予想はしていたが、あまり気持ちのいいものではないな)

 

闇の瘴気に息苦しさは感じるが、思ったほどではない。闇のゲームが精神にダメージを与えるといっても、来ると分かっていれば覚悟はできる。そして覚悟を決めた人間はそう簡単には倒れないものだ。

 

「カヒャヒャヒャッ、苦痛にもがけ、あがけ! その度に全身に快感が走るぜェ。うへぁぁぁ」

 

(あの顔は結構イラッとくるな)

 

「……いいぜ。おまえが何でも思い通りにできるってんなら、まずはそのふざけた神をぶっ倒す!」

 

「ガハハハッ、威勢がいいねェ。貴様は闇に沈む運命なんだよォ! 精々踊ってみせなァ!」

 

マリクの哄笑とともに、闇の瘴気がますます強くなっていく。

 

(手札は悪くない。だが手の内を見せすぎるのはまずい。油断しているところを一撃で仕留めるのがこのデッキだ。幸い、相手は俺をなめてくれているようだしな)

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

高杉レン LP4000 手札5 モンスター0 伏せ1

 

■:伏せカード

 

□□■□□

□□□□□

 

□□□□□

□□□□□

 

マリク LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「オレのターン、ドロー。モンスター()も引けなかったのかァ? いたぶりがいがねぇな。ならさっくり殺してやるよォ! 《ラーの使徒》を召喚して効果発動。デッキから同名モンスターを2体特殊召喚する。さらに《二重召喚》を発動」

 

召喚権が増えたことで周囲がざわめく。マリクの場にはすでに3体のモンスターがいるのだ。

 

「3体のモンスターを贄とし、神を呼ぶ! 絶対無敵! 究極の力を解き放て! 天を舞え! 太陽の神! いでよ! 《ラーの翼神竜》!!」

 

暗雲を切り裂いて金色(こんじき)の竜が飛来する。神のカードの中でも最高位を誇る神を、マリクはわずか1ターンで呼び出した。

 

ラーの翼神竜 攻撃力3300 守備力1800

 

「ラーの翼神竜の効果発動。ライフを1000捧げ、神の攻撃力へと変換する」

 

マリク LP4000 → 3000

 

ラーの翼神竜 攻撃力3300 → 4300

 

「バトルだァ! ラーの翼神竜でダイレクトアタック!」

 

「罠カード《和睦の使者》を発動。このターン、私のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージも受けない。まあモンスターはいないがね」

 

「ククッ、ダメージを受けないねぇ。なら試してやるよ! 受けなァ! 神の業火を! ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」

 

吐き出された紅蓮の炎がレンを包み込む。その輝きはあたりを真昼のように照らし出した。

炎は肌を焼き、呼吸を妨げるものでは、ない。これは現実の炎ではない。精神を焼く炎だ。すべては幻にすぎない。幻惑だと分かっているはずなのに――

 

(この熱量! これが神の炎か! 一瞬でも気を抜けば……持っていかれる!)

 

飛びそうな意識を必死で繋ぎ止める。灼けるような炎の中心で、レンは歯を食いしばる。

 

「ぐぁああぁぁっ……ぐはぁっ……」

 

「ほぅ、神の業火に耐え切ったか。ククッ、ザコも群れれば一撃くらいは防いでみせるか。カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

マリク LP3000 手札1 モンスター1 伏せ2

 

ラ:ラーの翼神竜 攻撃力4300

■:伏せカード

■:伏せカード

 

□□■□■

□□ラ□□

 

□□□□□

□□□□□

 

高杉レン LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0

 

――――――――――――

 

「やはりおまえは……世界の歪みだ。存在してはならない邪悪だ」

 

「カカカッ! 言ってくれるねェ。だがどうにもできないよ、貴様には。精々あがいてオレを楽しませろ。そして最期には神の贄となるんだよォ!」

 

マリクは歪んだ笑みを浮かべてレンを嘲笑する。

 

「その歪んだ因果……俺が断ち切る! 俺のタァァーン、ドロー!」

 

「この瞬間、《ギブ&テイク》を発動。さらにチェーンして永続罠《召喚制限-猛突するモンスター》を発動だァ」

 

マリクが2枚のリバースカードをオープンする。チェーンの逆順処理により、まず《召喚制限-猛突するモンスター》の効果が適用され、続けて《ギブ&テイク》の効果が適用される。

 

「オレの墓地の《ラーの使徒》を貴様のフィールドに守備表示で特殊召喚する。そしてラーの翼神竜のレベルを、そのモンスターのレベル分上げる。まぁ神には何の影響もないがねェ。そして《召喚制限-猛突するモンスター》の効果でラーの使徒は攻撃表示になり、貴様はこのターン、そいつでラーの翼神竜に攻撃しなければならない」

 

攻撃の強制。レンは負けると分かっているモンスターで神に挑まなければならない。そしてラーの使徒は、中々に厄介な効果を持っていた。

 

(特殊召喚もできず、アドバンス召喚のためにリリースすることもできない。攻撃を強要することで1ターンキルを狙うのがやつの戦術か。だが伏せカードが剥がれたのはありがたい。このターンで決める!)

 

「《おろかな埋葬》を発動。デッキから《ワイトベイキング》を墓地に送る。墓地に送られた《ワイトベイキング》の効果により、デッキから《ワイトプリンス》と《ワイトメア》を手札に加え、《ワイトプリンス》を墓地に送る」

 

「ハァン! ザコ共を躍らせてどうするつもりだァ?」

 

「今に分かるさ。墓地に送られた《ワイトプリンス》の効果発動。デッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送る。《闇の誘惑》を発動。カードを2枚ドローし、《ワイト》をゲームから除外する。手札の《ワイトメア》の効果発動。このカードを墓地に送り、除外されている《ワイト》を墓地に戻す」

 

繰り返されるワイトたちの饗宴(ダンス)。マリクは意図が読めずわずかに困惑していた。この世界はまだまだ情報の伝達が遅いことに加え、低ステータスのモンスターは軽視される傾向にある。

 

「《死者転生》を発動。手札を1枚捨て、墓地の《ワイトメア》を手札に加える。そしていま捨てた《ワイトプリンス》の効果発動。デッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送る」

 

これで墓地にいる「ワイト」は8体。

 

「《ワイトキング》を通常召喚。このカードの攻撃力は、墓地にいる「ワイト」の数×1000となる」

 

「てことはァ、攻撃力は3000……」

 

「8000だ」

 

「8000だとォ!?」

 

キングはひとり、この俺だ! とばかりにワイトキングが咆哮する。レンが神に対抗するために用意した策は、実にシンプルなものだった。

上から殴る。それだけである。

 

ラーは墓地に置かれれば必勝パターンに入る。相手ターンでは強固な壁になり、4000のライフを回復される。

そして次のターンでは、その回復したライフを攻撃力に変えて必殺の一撃とするのだ。

 

(一応ドローフェイズに隙はあるが……)

 

復活効果自体にチェーンはできないが、その前段階に処理すればいい。《墓穴の指名者》で除外するなり、《転生の予言》でデッキに戻すなど、打つ手はある。

 

(だが相手もそれは予測しているはず)

 

デッキバウンスはともかく、除外ゾーンから墓地に戻すカードはそれなりに多い。

 

(だからこその速攻。ラーの攻撃力は無限じゃない。プレイヤーのライフという限界がある。強力なライフゲインを作られる前に、一撃で仕留める!)

 

ワイトの王は同胞の死を力に変えて神を()つ。

 

「バトルだ。ワイトキングでラーの翼神竜を攻撃!」

 

「チィ、手札のジュラゲドの効果発動。このカードを特殊召喚し、オレのライフを1000回復する」

 

ジュラゲドにはもうひとつ、自身をリリースすることで他のモンスターの攻撃力を上げる効果を持っているが、ラーの翼神竜は他のカードの効果を受けない。それがたとえ自分のカード(仲間)であっても。

 

「さらにライフを3900捧げ、神の攻撃力へと変える!」

 

マリク LP3000 → 4000 → 100

 

ラーの翼神竜 攻撃力4300 → 8200

 

「ハハハハッ! 骸骨ふぜいが神に挑もうということ自体が間違いなんだよォ! ハハハハハハハハッ!!」

 

「手札から速攻魔法《アンデット・ストラグル》を発動」

 

「ハハハ……ハッ?」

 

「《ワイトキング》の攻撃力を1000アップする」

 

王の拳がさらに膨れ上がる。

 

「おまえがザコ共と見下した者たちの力を見るがいい! ワイト・ハンド・クラッシャー!!」

 

「あ、ありえないィ……神が……オレが……こんなヤツに敗れるなど……」

 

白骨の拳が神の翼を撃ち抜いた。

 

「……バカ……な……ギャァアァァ!」

 

断末魔の悲鳴を上げて、マリクの邪悪なる意思は闇に溶けて消えていった。

 

 

 




バクラ戦は相手が千年アイテムの所持者&主人格が憑依中なのでそれなりに警戒していましたが、今回の相手は闇マリク視点だと「ただのおっさん」なので、そこに油断があったのかもしれません。
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