人知れず行われた深夜の決闘から一夜明け、決勝トーナメント2日目。
バトルシップは最後の決闘場へと降り立ち、準決勝の幕が上がる。
ガレキの中に聳え立つ塔、
そして準決勝の対戦相手は原作のようなバトルロイヤルではなく、普通にアルティメットビンゴマシーンで決まった。
準決勝第一戦は、高杉レンvsマリク・イシュタール。
準決勝第二戦は、武藤遊戯vs海馬瀬人。
デュエルタワーを昇り、準決勝第一戦が始まる。
(まさか本当に
レンは胸中で小さくため息を零した。
『デュエルッ!!』
「私のターン、ドロー」
「フフフ……闇のゲームの始まりだ……」
デュエル開始と同時に、マリクが千年ロッドを翳す。重苦しい闇があたりを包みだした。
(やはり闇のゲームか。予想はしていたが、あまり気持ちのいいものではないな)
闇の瘴気に息苦しさは感じるが、思ったほどではない。闇のゲームが精神にダメージを与えるといっても、来ると分かっていれば覚悟はできる。そして覚悟を決めた人間はそう簡単には倒れないものだ。
「カヒャヒャヒャッ、苦痛にもがけ、あがけ! その度に全身に快感が走るぜェ。うへぁぁぁ」
(あの顔は結構イラッとくるな)
「……いいぜ。おまえが何でも思い通りにできるってんなら、まずはそのふざけた神をぶっ倒す!」
「ガハハハッ、威勢がいいねェ。貴様は闇に沈む運命なんだよォ! 精々踊ってみせなァ!」
マリクの哄笑とともに、闇の瘴気がますます強くなっていく。
(手札は悪くない。だが手の内を見せすぎるのはまずい。油断しているところを一撃で仕留めるのがこのデッキだ。幸い、相手は俺をなめてくれているようだしな)
「カードを1枚伏せてターンエンド」
高杉レン LP4000 手札5 モンスター0 伏せ1
■:伏せカード
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マリク LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0
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「オレのターン、ドロー。
召喚権が増えたことで周囲がざわめく。マリクの場にはすでに3体のモンスターがいるのだ。
「3体のモンスターを贄とし、神を呼ぶ! 絶対無敵! 究極の力を解き放て! 天を舞え! 太陽の神! いでよ! 《ラーの翼神竜》!!」
暗雲を切り裂いて
ラーの翼神竜 攻撃力3300 守備力1800
「ラーの翼神竜の効果発動。ライフを1000捧げ、神の攻撃力へと変換する」
マリク LP4000 → 3000
ラーの翼神竜 攻撃力3300 → 4300
「バトルだァ! ラーの翼神竜でダイレクトアタック!」
「罠カード《和睦の使者》を発動。このターン、私のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージも受けない。まあモンスターはいないがね」
「ククッ、ダメージを受けないねぇ。なら試してやるよ! 受けなァ! 神の業火を! ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」
吐き出された紅蓮の炎がレンを包み込む。その輝きはあたりを真昼のように照らし出した。
炎は肌を焼き、呼吸を妨げるものでは、ない。これは現実の炎ではない。精神を焼く炎だ。すべては幻にすぎない。幻惑だと分かっているはずなのに――
(この熱量! これが神の炎か! 一瞬でも気を抜けば……持っていかれる!)
飛びそうな意識を必死で繋ぎ止める。灼けるような炎の中心で、レンは歯を食いしばる。
「ぐぁああぁぁっ……ぐはぁっ……」
「ほぅ、神の業火に耐え切ったか。ククッ、ザコも群れれば一撃くらいは防いでみせるか。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
マリク LP3000 手札1 モンスター1 伏せ2
ラ:ラーの翼神竜 攻撃力4300
■:伏せカード
■:伏せカード
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□□ラ□□
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高杉レン LP4000 手札5 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「やはりおまえは……世界の歪みだ。存在してはならない邪悪だ」
「カカカッ! 言ってくれるねェ。だがどうにもできないよ、貴様には。精々あがいてオレを楽しませろ。そして最期には神の贄となるんだよォ!」
マリクは歪んだ笑みを浮かべてレンを嘲笑する。
「その歪んだ因果……俺が断ち切る! 俺のタァァーン、ドロー!」
「この瞬間、《ギブ&テイク》を発動。さらにチェーンして永続罠《召喚制限-猛突するモンスター》を発動だァ」
マリクが2枚のリバースカードをオープンする。チェーンの逆順処理により、まず《召喚制限-猛突するモンスター》の効果が適用され、続けて《ギブ&テイク》の効果が適用される。
「オレの墓地の《ラーの使徒》を貴様のフィールドに守備表示で特殊召喚する。そしてラーの翼神竜のレベルを、そのモンスターのレベル分上げる。まぁ神には何の影響もないがねェ。そして《召喚制限-猛突するモンスター》の効果でラーの使徒は攻撃表示になり、貴様はこのターン、そいつでラーの翼神竜に攻撃しなければならない」
攻撃の強制。レンは負けると分かっているモンスターで神に挑まなければならない。そしてラーの使徒は、中々に厄介な効果を持っていた。
(特殊召喚もできず、アドバンス召喚のためにリリースすることもできない。攻撃を強要することで1ターンキルを狙うのがやつの戦術か。だが伏せカードが剥がれたのはありがたい。このターンで決める!)
「《おろかな埋葬》を発動。デッキから《ワイトベイキング》を墓地に送る。墓地に送られた《ワイトベイキング》の効果により、デッキから《ワイトプリンス》と《ワイトメア》を手札に加え、《ワイトプリンス》を墓地に送る」
「ハァン! ザコ共を躍らせてどうするつもりだァ?」
「今に分かるさ。墓地に送られた《ワイトプリンス》の効果発動。デッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送る。《闇の誘惑》を発動。カードを2枚ドローし、《ワイト》をゲームから除外する。手札の《ワイトメア》の効果発動。このカードを墓地に送り、除外されている《ワイト》を墓地に戻す」
繰り返されるワイトたちの
「《死者転生》を発動。手札を1枚捨て、墓地の《ワイトメア》を手札に加える。そしていま捨てた《ワイトプリンス》の効果発動。デッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を墓地に送る」
これで墓地にいる「ワイト」は8体。
「《ワイトキング》を通常召喚。このカードの攻撃力は、墓地にいる「ワイト」の数×1000となる」
「てことはァ、攻撃力は3000……」
「8000だ」
「8000だとォ!?」
キングはひとり、この俺だ! とばかりにワイトキングが咆哮する。レンが神に対抗するために用意した策は、実にシンプルなものだった。
上から殴る。それだけである。
ラーは墓地に置かれれば必勝パターンに入る。相手ターンでは強固な壁になり、4000のライフを回復される。
そして次のターンでは、その回復したライフを攻撃力に変えて必殺の一撃とするのだ。
(一応ドローフェイズに隙はあるが……)
復活効果自体にチェーンはできないが、その前段階に処理すればいい。《墓穴の指名者》で除外するなり、《転生の予言》でデッキに戻すなど、打つ手はある。
(だが相手もそれは予測しているはず)
デッキバウンスはともかく、除外ゾーンから墓地に戻すカードはそれなりに多い。
(だからこその速攻。ラーの攻撃力は無限じゃない。プレイヤーのライフという限界がある。強力なライフゲインを作られる前に、一撃で仕留める!)
ワイトの王は同胞の死を力に変えて神を
「バトルだ。ワイトキングでラーの翼神竜を攻撃!」
「チィ、手札のジュラゲドの効果発動。このカードを特殊召喚し、オレのライフを1000回復する」
ジュラゲドにはもうひとつ、自身をリリースすることで他のモンスターの攻撃力を上げる効果を持っているが、ラーの翼神竜は他のカードの効果を受けない。それがたとえ
「さらにライフを3900捧げ、神の攻撃力へと変える!」
マリク LP3000 → 4000 → 100
ラーの翼神竜 攻撃力4300 → 8200
「ハハハハッ! 骸骨ふぜいが神に挑もうということ自体が間違いなんだよォ! ハハハハハハハハッ!!」
「手札から速攻魔法《アンデット・ストラグル》を発動」
「ハハハ……ハッ?」
「《ワイトキング》の攻撃力を1000アップする」
王の拳がさらに膨れ上がる。
「おまえがザコ共と見下した者たちの力を見るがいい! ワイト・ハンド・クラッシャー!!」
「あ、ありえないィ……神が……オレが……こんなヤツに敗れるなど……」
白骨の拳が神の翼を撃ち抜いた。
「……バカ……な……ギャァアァァ!」
断末魔の悲鳴を上げて、マリクの邪悪なる意思は闇に溶けて消えていった。
バクラ戦は相手が千年アイテムの所持者&主人格が憑依中なのでそれなりに警戒していましたが、今回の相手は闇マリク視点だと「ただのおっさん」なので、そこに油断があったのかもしれません。